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グローバル化が進展する限り、主権国家の役割と機能が、今後、低下していくことになるので
国家に頼らずに自立できる個人や企業は世界中で相互互恵関係を強めることで成長していく
一方、国家に依存しなくては生きていけない多くの大衆や旧既得権層が存在し続けることも間違いないので
緊張関係は、当分、続いて行くことになるのだろうし、著者が思うほど、そう簡単に主権国家の役割が消えさることもない
http://diamond.jp/articles/-/13597
【第4回】 2011年8月22日山口揚平 [ブルーマリーンパートナーズ 代表取締役]
世界は三層構造でできている
「国家」「企業」より重視したい所属先は?
僕たちが生きる世界は、「国家」「企業」「個人間の紐帯」の三層にまたがっている。この三層 のうち、「国家」に対し「企業」や「個人間の紐帯」の重要性が増してきた。たとえば、日本の将来を悲観し、国外脱出を図ったところで、それは「国家」の枠 組みの話でしかない。むしろ、「企業」や「個人間の紐帯」での自分の存在感を増す努力をすべきだ。それには、英語とITリテラシーは不可欠だが、プラスα の能力が必要である。
“ホリエモン”、“英語公用語化”、“ウィキリークス”・・・から導ける一つの仮説
堀江貴文氏は、収監前に出演した朝まで生テレビで、「尖閣なんてあげちゃえばいいんだよ」と発言をしていた。覚えている人も多いだろう。それに対して、重鎮の参加者たちが顔を真っ赤にして反論している姿が印象的だった。
なぜ彼の口からそのような発言が出たのだろうか?
ユニクロを展開するファーストリテイリングや楽天が英語公用語化を掲げ、三菱重工業と日立製作所の合併が話題になった(その後、両社は否定しているようだが)。
これらの企業行動の背景には、一体何があるのか?
wikileaksという世界中の匿名情報を暴露している組織のトップ、ジュリアン・アサンジ氏が逮捕された。アサンジ氏の逮捕については、アメ リカやイギリスをはじめ多くの先進国の公安・警察が連携して、彼の身柄の拘束に力を尽くしていた。結果的にアサンジ氏は、「スウェーデンでコンドームなし にセックスをした」などを筆頭にやや曖昧な強姦容疑で逮捕され、Wikileaksのような情報組織は一旦、勢力を削がれる形となった。
事件の動機には何があったのか?
この、一見なんの関連もなさそうな三件の事象の背景を探ろうとすると、ある一つの仮説が成り立つ。それは「世界は三つの“層”で出来ていて、その三層が明確化・対等化しつつある」ということだ。
次のページ>>国家に対し企業の存在感がますます増大している
三層のなかでは、「企業」に続き「個人間ネットワーク」が台頭
三つの層とは何か?
まず第一層として、地政学的に切り分けられた『国家(ソブリン)』、その上に第二層として、国境を超えて地上をまるで雲のように漂う『企業(グ ローバル・カンパニー)』、最後に第三層として、さらにその上にオゾン層のように点在し結びつきあう『個人間の紐帯(ネットワーク)』がある(図1)。
図1 世界の三層構造
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今、起きていることは、これまでぼんやりと分かれていたもののそれほど意識されてこなかった、この『国家』『企業』『個人間の紐帯』という三つの層がくっきりと分かれ、それぞれが対等の立場を持ち始めている、ということである。
図2 グローバル企業の売上高は中堅国家のGDPを凌ぐ!〜国家のGDPと企業売上高(オレンジ)を多い順に並べたランキング〜
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『国家(ソブリン)』について、言うべきことはそれほどない。
国家とは知っての通り、地政学的に分割され、政府によって統治されている地域コミュニティのことだ。人々は、身体的な移動コストを理由に何千年も この国家というコミュニティに依存して生きてきたし、今もそうだ。国家は、政治的には巨大だが、その債務をみれば明らかなように、先進国も途上国、経済的 には瀕死の状態にある。
『企業(グローバルカンパニー)』の存在感は、人々の想像以上に大きくなっている。GE(ゼネラル・エレクトロニック社)には病院から学校までなんでもそろっているし、アップルがアメリカ政府より多くの現預金を保有していることはよく知られている。
世界のGDPをみれば、第1位はアメリカ、第2位に中国、第3位日本と誰でも知っている先進国が続くものの、25位のウォルマートを皮切りに、 29位にロイヤルダッチシェル、41位にトヨタ自動車など、徐々に『企業(グローバルカンパニー)』が登場し始める。なんと2010年の世界のGDP(企 業の場合、売上高)のトップ100のうち、4割以上を『企業(グローバル・カンパニー)』が占める(図2。オックスフォード大学で企業の世界分業を研究している琴坂将広氏に依頼して作成した資料による。GDPも売上も名目を用いている)。
個人間の『紐帯(ネットワーク)』は、インターネットの発明によって、乗数的に加速してきた新しい層である。
インターネットは、ようやく20歳(ハタチ)の誕生日を迎えたにすぎないが、1991年8月6日に最初のウェブページが公開されてからわずか20 年の間に膨大に増殖し、現在では196億8000万のウェブページが存在する。すでに世界の記録情報の90%以上を飲み込んだウェブは、今、人々の経歴や 個人間の関係といった有機的な情報を蓄え始めた。
ソーシャルネットワークは、個人間の紐帯を明らかにし、強固にし、組織化し続ける。早晩、ウェブは我々の「履歴書」となり、個人の「クレディット(信用)」の源泉となるだろう。
いつかはFacebookやTwitterといった個々のサービス自体は弱体化し衰退するだろう。だが、紐帯を強化する流れはとどまることはない。やがてウェブ上のコミュニティはそこに必要な機能(憲法・教育・医療・福祉・市場・法律など)を自ら造り始めるだろう。それは、今の国家が保有しているものである。
三層の対等化に気づかない「国家」
最初の疑問に話を戻そう。
まず、堀江さんの「尖閣あげちゃえば?」発言について。
僕が思うに、彼は『国家』という枠組みがもはや絶対ではないことを直観しているのだろう。
つまり、第一の層である『国家』よりも第二、第三の層である企業や個人間の紐帯(ネットワーク)の方が威力を増しており、人々の関心や生活の中心 がそちらにシフトしてきていることを鋭く察知しているのだ。だから彼にとって常に、国という土台で考え、日本のために、という前提で話をする論壇の重鎮達 とは議論の歯車がまったく合わないのである。
次のページ>>三層(レイヤー)は対等になってきた
次に、グローバル化する企業行動について。
今、『企業』は静かに、日本という『国家』から離陸し、世界の空へと飛び立とうとしている。その理由として、40%超という懲罰的な日本の法人税を指摘する人もいる。しかし僕は、それは本質ではないと思う。
これらの日本企業は、そもそも「自分たちは日本国の一部である」という認識を持っていない(捨てた)のである(もちろん日本に貢献したいと思っているが)。それがユニクロや楽天の動きである。英語公用語化は、些末な各論にすぎない。
政府や行政、財界という『国家』に属しそこに従事する人々は、そうした企業の認識を本質的に理解していない。「日本企業は日本国のもの」だ、と心のどこかで堅く信じている。彼らは企業の海外移転の動きを察知し、法人税の引き下げなどの対処策を採っているものの、残念ながらこうした企業にすれば引き留めの小細工にしか映らない。
三菱重工と日立の合併の話について様々な課題が挙げられつつも、これが本当なら僕は英断だと思う。なぜなら、今回の合併の本質は、『国家』という縛りから解き放たれ、グローバルに戦う“決意表明”と受け取れるからだ。
繰り返しになるが、もはや「国家」の土台に企業やウェブがあるのではない。三層(レイヤー)は対等ということだ。
その層と層との戦いの象徴的なケースが、Wikileaksのアサンジ氏の事件であった。
WikiLeaksのアサンジ氏の拘束は、個人の刑事・民事事件の問題ではない。情報を暴露された国の安全保障の問題でさえない。アサンジ氏拘束は、『国家』と『個人間の紐帯』というレイヤー(層)間の覇権をめぐる戦いなのだ。
台頭する『紐帯』の脅威を察知した『国家』が互いに連動し、彼らにとって元凶であるアサンジ氏の拘束につながった、という見方が妥当ではないだろうか。
次のページ>>日本脱出より三層に適したリテラシー強化を優先しよう
僕は、今日の戦争、それからこれから起こる戦争は、もはや国と国の間では起こらないと思う。高度に民主化された先進国間では戦争が起こる可能性は著しく低い。世論の柔軟な変容によって緩衝作用が働くからだ。
エジプトの革命は、ネット(Facebook)の勝利と言われているように、今後の戦いは、国家間ではなく、『国家』『企業』『個人間の紐帯』の三つどもえで冷戦のように静かに行われるのだ。
日本脱出を考えるより先に「個人間紐帯」での存在感を高めよう
今後、僕たちは三つの層で必要とされるリテラシーを、それぞれバランスよく取り込まなければならないと思う。
その意味では、「日本から脱出する」などという話は無意味である。なぜならそれは、単に『国家』という層でのみの議論にすぎないからだ。国家の枠組みでのみ考え日本という国を捨てたところで、他国でアイデンティティの喪失にあうのがオチだろう。
今すべきことは、日本を出て行くことではない。日本という「国家」だけでなく、『企業』や『個人間の紐帯(ネットワーク)』の層における存在感の比重を高めてゆくことが必要だ。そしてそのためのリテラシーを養うことこそが大切である。
企業におけるリテラシーは、これまでさんざん日本企業で培われてきた「協調性」や「忠誠心」、「(組織内)政治力」に加え、最近、叫ばれているビジネス英語やロジカルシンキングだろう。それらについて、ここであえて言う必要は感じない。
次のページ>>ITと英語に加え度胸&愛嬌は不可欠なリテラシーだ
問題は、第三の層、紐帯(ネットワーク)におけるリテラシーである。
紐帯においては、コミュニケーションの共通言語である英語は必須である。ただそれはビジネス英語とは違う。文法や各式よりも、意味や思いを伝えることをより重視した別の技術である。
それから、ITリテラシーである。この分野は新陳代謝が激しい。半年もすればほとんどのIT分野は主役が交代している。だからハード・ソフト・サービス問わず、新しく可能性のあるものを試し、生活に取り入れつづける意識的な努力が求められる。
中級レベルでは、肩書きやプライドを捨て、どこへでも初対面でも飛び込んでゆく「度胸」、いつでも人に助けてもらえる「愛嬌力」が不可欠だ。
第2回では、お金を一切使わずにヨーロッパの国々で宿泊先を確保してゆく人を紹介した。日本中どこでも一ヶ月あれば、家と車と食事にタダでありつけると豪語する人もいる。このような能力はカネがあってもできるものではない。
特に先進国では、ありあまるほどの余剰がある。住居で言えば、日本の空室率は25%にのぼる。やろうと思えばできるはずなのだ。成長が止まり物理 的にゼロサムの世界では、このような資本主義の恩恵である余剰(カスミ)を喰らって生きてゆける力を養うことが、まさに求められている。
さらに、高度なところでは、思索や経験を通して自らの信念、価値観、哲学ををクリアにし、国籍を問わずに互いの価値観や人間性をもってコミュニケーションを行い関係を構築してゆく「ネットワーキング」力が備わっているとよい。また、社会に対し貢献し、価値提供を行いながら、自らのクレジット(信用)をその紐帯の上に蓄え、養ってゆく「クレディットレイジング」力なども必要になるだろう。
こうしたリテラシーを日々積み重ねてゆくことで、三層に分かれた世界を、より軽やかに闊歩することができるようになるだろう。
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