「インフレ実現で財政再建可能」のウソ
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投稿者 sci 日時 2011 年 8 月 22 日 10:35:41: 6WQSToHgoAVCQ
インフレで財政再建ができないわけではない
正しくは実質経済成長(生産力の増強)なしの単なるマネー増刷インフレでは
結局、金利上昇や、名目歳出の急増により、GDP比の債務残高が劇的に下がるわけではないということ
つまり、インフレ継続によって、多くの国民の預貯金など財産権が破壊され
国内投資の減少や、物価に対して賃金が伸びず、政府の歳出増加もできないため
短期的には経済は混乱し、当然、低所得な底辺層ほど生活水準が低下する
ただし長期的に見て、それを上回る利益(実質経済の成長)が日本にとって十分期待できるなら、別に避けることもない
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20110818/222149/?ST=print
まっとうな理論で考える日本経済
「インフレ実現で財政再建可能」のウソ
- 2011年8月22日 月曜日
- 國枝 繁樹
インフレによる税収増加はフィスカル・ドラッグの存在を考慮すれば、中長期的には税収のGDP比率増加につながらない。
予期せぬインフレは、既存の公債残高の実質価値を低下させるが、財政再建策が先送りされている場合、深刻な副作用もある。
インフレ実現まで財政再建を先送りするのではなく、本格的な財政再建策と積極的な金融政策の最適なポリシー・ミックスが求められている。
最近、「名目成長率が4%以上になれば、財政状況は大幅に改善する」との主張がよく聞かれる。しかし、名目成長率を基準に、財政再建を語ることには問題が多い。「名目成長率」は、「実質経済成長率」と「インフレ率」の和であるが、この2つの財政への影響は異なるため、両者の効果の違いを踏まえない議論はミスリーディングだからである。実質経済成長率の増加による税収増加は望ましいが、インフレによる税収増加に過剰な期待を持つことには疑問がある。
実質経済成長とインフレの財政への影響の違いは最近の白川方明日銀総裁の講演においても強調されている。また、与謝野馨・経済財政担当大臣も、物価上昇が財政に与える影響や、名目成長率と税収増の関係などについて8月下旬までにまとめるよう、内閣府に指示したと伝えられている(朝日新聞2011年7月20日朝刊)。
インフレが財政再建に影響を与える経路としては、通貨発行益の増加、税収の増加および予期せぬインフレによる既存の公債の実質価値の低下が考えられるが、通貨発行益による歳入への影響は限定的であることについては前回の記事で説明したので、本稿では、インフレの税収への影響および予期せぬインフレによる既存の公債の実質価値の低下とその副作用について述べる。
税収弾性値のマジックとフィスカル・ドラッグ
インフレによる税収増加の効果を強調する議論として、税収弾性値の概念を用いて、インフレ率が増加すれば、それ以上の増加率で税収が増加するとの主張がある。税収弾性値とは、税制改正の影響を除いた上での、税収の増収率と名目GDPの増加率の比である(実質値で定義されることもある)。現在、税収弾性値としては1.1が使われることが多い。1.1程度の税収弾性値を推計している最近の実証研究としては、北浦・長嶋(2007)や橋本・呉(2008)などの研究がある。
なお、税制改正の影響を無視して、税収の伸びと名目GDP成長率の伸びを単純に比較して、ずっと高い税収弾性値を主張する論者もいるが、1990年代末の景気低迷時に減税が講じられ、景気回復期に定率減税の廃止などの増税措置が取られたことなどを考慮すれば、税制改正分を調整しない税収弾性値の推計は、景気変動のみに基づく増減収分を超えて、税収が税制改正分だけ過剰に変動するため、過大推計となる。そうした過大推計に基づいて、財政再建策を先送りできるとの主張が誤りであることは明らかである。
さて、過大推計に基づく議論は別にしても、名目値で定義された税収弾性値が1よりも大きい場合、実態経済の状況が改善しなくても、インフレ上昇で名目GDPの成長率が増加すれば、それを上回る率で税収が増加するため、税収のGDP比率の増加が期待できるように思える。単純に考えると、税収弾性値1.1でも、10年後には、名目所得に比較して2.6倍近くの率で税収が増加することを意味しており、その効果は無視できないように思える。
しかし、残念ながら、そうした主張はなぜ税収弾性値が1を上回るのかについての深い理解に欠けている。インフレになれば、実質所得は不変でも名目所得は増加する。税制は名目所得を課税ベースにしているので、税額も増加する。現実の(労働)所得税制においては、各控除の存在や限界税率の累進的な構造のため、名目所得の増加以上に税額が増加する。このため、実質所得が増加していないにもかかわらず、実質の税負担が増加してしまう。「ブラケット・クリープ」と呼ばれる現象である。
さらに資本所得の場合にはより重大な問題が生じる。インフレにより資産の名目価額が増加するため、資産の実質価値が増加していなくても、キャピタルゲイン課税が課されてしまう。また、利子所得の場合も実質金利が不変でも名目金利が増加するため、実効税率が増加する。法人段階では、減価償却額がインフレで調整されないため、過少となるため、投資の限界税率が増加する。このため、個人段階・法人段階を通じてみた場合、資本所得に対する実効税率はインフレにより重くなる。
これらの要因により、実質所得が増加しなくても、インフレにより名目所得が増加すれば、実質的な税負担は重くなってしまう。これが、インフレによる名目所得の増加に対する税収弾性値が1を超す値となる理由である。
このような形での隠れた増税は、実態経済に深刻な悪影響を及ぼしうる。労働所得などについても歪みが生じるおそれがあるが、特に問題なのは、資本所得にかかわる歪みである。
東日本大震災はもとより、政治の迷走もあいまって、日本経済はますます、先が見通えない状況に陥っています。復興財源の議論や巨額の財政赤字など、日本が抱える問題は一刻も早く手を打たなければならないものばかりにもかかわらず、具体策となると議論百出、なかなか結論は出ません。しかも、議論の中には、「??」と首を傾げたくなるようなものも…。ここでは、「まっとうな」経済理論で、日本財政はじめ、日本経済が抱える問題点と解決策を明かにしていきます。
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國枝 繁樹(くにえだ・しげき)
一橋大学国際・公共政策大学院及び経済学研究科准教授。ハーバード大学経済学博士。専門は財政学、マクロ経済学等。共著に『生活保護の経済分析』(日経・経済図書文化賞受賞)。共訳書に『コーポレート ファイナンス(第8版)』(上)、(下)ほか。
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