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先進国に限りなく近い新興国のような、新興国から抜け切れていない先進国のような――。韓国の中途半端な「準先進国」ともいうべき立ち位置は、輸出で最大のライバルである日本との競争を優位に運ぶうえで居心地が良さそうにみえる。
「こうなると円は買われるのにウォンは売られるのか」。欧米のソブリンリスク(政府債務の信認危機)が高まり、世界の金融・資本市場が大荒れとなった先週。在韓日本大使館の幹部はつぶやいた。
ウォン相場は9日のソウル市場で一時1ドル=1096.1ウォンと2カ月半ぶりの安値圏に下落。その後も1ドル=1080ウォン台を中心とした値動きが続く。一方、円相場は政府・日銀の介入にもかかわらず最高値圏での推移。対円のウォン相場は100円=1400ウォンと5カ月ぶりの安値圏に振れている。
円とウォンの値動きのコントラストは、足元の日韓の勢いの差から膨らませるイメージとは重なり合わない。韓国は今年の実質国内総生産(GDP)成長率が4%台半ばと堅調な拡大が続き、経常黒字も積み上げている。それでもウォン安というのは東日本大震災の影響と円高に苦しむ日本勢にとって、うらやましい限りだろう。
長い目で見れば、ウォンは米金融危機に伴う2009年3月の安値(1ドル=1597ウォン)から戻る過程にある。だが金融危機克服後も欧米でソブリンリスクが相次ぎ浮上し、グローバルに運用する投資家の資金は「韓国に出たり入ったりの繰り返し」(財閥系シンクタンク)。このためウォン上昇の足取りは緩やかなままだ。
足元では欧州の投資家が今月1日〜11日に、韓国の株・債券を約3兆1000億ウォン(約2200億円)売り越している。投資家にとってウォンは「先進国と新興国の間の位置付けで、円のような安全資産ではない」(金融研究院の李侖錫=イ・ユンソク=研究委員)。リスクへの警戒をかきたてられる局面では売りが先行しやすくなる。
GDPは日本の6分の1、外国為替市場の取引高は日本の7分の1の規模にとどまる。金融・資本市場では多様な投資家の層が薄く、円やドルなどの先進国通貨に比べ流動性ははるかに低い。
19日の株式市場。本来は価格変動が小さいはずの時価総額上位銘柄でさえ、2位の現代自動車が11%も下落。9日には首位のサムスン電子も一時7%下げる場面があった。
世界の機関投資家がベンチマークに利用するMSCIの株価指数は韓国株を「エマージング」に分類している。IT(情報技術)、自動車、造船など製造業の世界トップクラスへの跳躍は先進国を思い起こさせるが、少なくとも金融・資本市場はまだ新興国という位置付けが実情だ。
それでもウォンが「非安全資産」であることにによってもたらされる適度なウォン安は、適度な水準にとどまり、世界経済が深く落ち込まなければ輸出の競争力を高める好材料になる。そこにはグローバルな投資マネーの流れだけでなく、急速なウォン上昇を抑えようとする政策が効いている。
政府・韓国銀行(中央銀行)はウォン高につながる海外からの資金流入を抑制する規制を立て続けに導入、さらに強化を探っている。ウォン上昇の局面では度々、「為替相場の急激な変動があれば偏った現象を緩和するというのが我々の基本的な立場だ」(朴宰完=パク・ジェワン=企画財政相)とけん制する。実際にドル買い・ウォン売り介入してきたというのが市場関係者の常識になっている。
だがウォン安は原油など輸入に頼る原材料価格の高騰に拍車をかけている。消費者物価は7カ月連続で韓銀の目標上限である4%を上回り、制御が効かない。来年の総選挙、大統領選挙を視野に、最大野党、民主党の孫鶴圭(ソン・ハッキュ)代表は「輸出と大企業優先の為替政策で、庶民が苦しめられている」と指摘。政府批判のオクターブを高めている。
「輸出がダメなら我が国は存在できない」(李明博=イ・ミョンバク=大統領)という韓国。ウォン安志向の政策を続けられるかどうかは、物価抑制や輸出増大の恩恵を国内の幅広い層に行き渡らせる政策がカギを握る展開になりそうだ。
(ソウル=島谷英明)
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