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◆ 関連リンク:
「朝倉 慶: 逆ニクソンショック(金本位制への回帰)−日本の国家破綻を見越したアメリカの目論見(もくろみ)とは?−」
http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/545.html
「世銀総裁の「修正金本位制」発言 と 世界主要国の中央銀行の金への急速なシフト−朝倉慶氏の記事への補足−」
http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/616.html
「第3節 『主要国は金準備増強へ』 の差し替え」
http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/629.html
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【オピニオン】ニクソンショックから40年―現行の紙幣制度の結末はいかに
2011年 8月 15日 21:16 JST
http://jp.wsj.com/Opinions/Opinion/node_289989
40年前の今日、リチャード・ニクソン米大統領は、ドルと金の交換を停止し、制約のないグローバルな貨幣システムを史上初めて導入した。
1971年8月15日以前に金本位制があったという訳ではない。金本位制には程遠い。大半の国は、かなり前から自国通貨と金の直接的な関係を廃止していた。米市民は、金を私的に保有することさえ政府によって禁じられていた。それでもなお、金とのつながりはわずかながら存在していたのである。第二次大戦後の新たな貨幣制度の下、ドルは世界の準備通貨となり、世界の中央銀行はドル準備を固定レートで金と交換する保証を米国から得ていた。しかし、1971年のその日、米国はこの約束を破棄、金との交換を保証しない「法定不換紙幣」の自由な発行に向けた最後の障害を取り除いた。「ニクソンショック」の後、あらゆるマネーは純粋なペーパーマネー、あるいは急速な普及をみせる電子マネーとなった。それは、貨幣鋳造の権限を持つ銀行や中央銀行が、事実上上限なしに創出できるマネーだ。
世界の紙幣本位制は40年続いているが、制度の終幕接近は日を追うごとに確実性を増している。世界経済は、深刻化する金融危機でこう着状態にある。金融危機は、過剰債務と激しい資産バブル、肥大化した銀行が原因だが、こうした不均衡はすべて、前例のない40年間の法定不換紙幣の創造と不自然な低金利、「最後の貸し手」である中銀によってもたらされたものだ。今日の金融政策――米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日本銀行も然り――は、痛みを伴うが決して避けることのできないこうした不均衡の清算を超低金利と断続的な政府債務のマネタイゼーションによって先送りしようとする必死の抵抗に過ぎない。これは、最終的には無駄な努力だったと判明するだけでなく、政策が続けられた場合は完全な通貨の破滅的状況を招くだろう。
完全な紙幣本位制は1971年以前も存在していたが、それは個別の国の話であり、決してグローバルな規模ではなかった。中国人は紙とインク、そして印刷を発明し、1000年前には完全な紙幣本位制を初めて試みた。当時、国家が紙幣を導入した理由は、後に西欧社会が紙幣を導入したのと同じだった。膨張する国の歳出の手当て、たいていは戦費の調達であった。完全な紙幣制度というものは、民間や自由市場ではなく、国家によって生み出されるのが常だった。歴史上のすべての紙幣制度は、ある程度の期間を経て、金融や経済の不安定化を経験し、急速な価値低下を伴った。すべての紙幣制度は、最終的には失敗した。金融当局は、完全な崩壊が起こる前に商品を裏付けとする貨幣制度に戻した。そうしなかった場合は、ハイパーインフレを招き、社会に深刻な影響をもたらした。
米国自身も、初期の歴史において、自国の紙幣制度でこれとまったく同じ経験をした。米独立戦争の戦費調達のために導入された「コンチネンタル・ドル」は、インフレ高進につながり、最後には無価値となった。南北戦争の戦費調達を目的とした「グリーンバック」もインフレを招いた――しかし、この時は、「グリーンバック」が崩落する前に金本位制に復帰した。そして今から40年前、制約のないペーパーマネーに戻ったが、これにはベトナム戦争の費用調達という側面が少なからずあった。
現代のマクロ経済学者の大半は、現在の完全に弾力的な貨幣制度に対して驚くほど寛容だ。それには意外なことに理由が2つある。第一に、紙幣制度には、おしなべて憂鬱な歴史がつきまとう。第二に、紙幣制度は、本質的に資本主義と両立しない。国家の紙幣制度では、事実上、銀行システムがカルテル化され、銀行の資金調達状況と特定の金利は国家機関である中央銀行の管理により決定される。銀行準備の継続的な拡大は、銀行への補助金が続くことを意味し、これにより、部分銀行準備制度を通じたさらなるマネーの創造が促進される。このような経済における信用の伸びは、もはや貯蓄の伸びではなく、中央銀行の政策と銀行のバランスシート拡大意欲の結果としてもたらされる。法定不換紙幣の持続的な投入は、金利を押し下げ、体系的に債務の累積と投資を促す。その投資は、貯蓄ではなく、紙幣増刷によって生じた資金に支えられている。
今日の主流経済学者と中央銀行当局者の頭の中にあるのは、明らかに、自分達は金融操作の帰結を十分に理解し、正確に予測できる、ということだ。彼らには、資金投入の影響は、成長が強かったりインフレが上回ったりしているだけのように思える。成長もインフレも、一連のマクロ統計によって詳細に把握され、現代のエコノミストが盲目的に追っている。ここで中央銀行がなすべきことは、この2つの適正なバランスを目指すことだ。FRBのバーナンキ議長は、昨年11月の新聞の論説で、米国民にFRBの量的緩和策を説明した際、こうした知的な思い上がりを示した。バーナンキ氏は、金利を人為的に低く抑え、FRBの紙幣増刷によって資産価格を下支えする利点を称賛し、こう言った。「住宅ローン金利の低下が住宅をより買い易くし、より多くの住宅保有者の借り換えが可能になる。社債の金利低下は、投資を促進する。株価の上昇は、消費者の富を増やし、自信を高めるのに貢献、一段の消費拡大も可能になる。消費の拡大は、所得と利益の増加につながり、この好循環が経済の拡大をさらに支える」。
もしFRB議長とその委員会が、住宅ローン金利や企業の借り入れ金利、株価のあるべき水準を知っているのなら、また、米家計と企業がどの程度の債務を持つべきか、政府の「適正」な調達コストはどれくらいか知っているなら、なぜ我々に市場が必要なのか不思議になる。
40年間の根強い貨幣介入主義の結果、経済は安い信用と継続的な資産インフレに慣らされてしまった。40年間の貨幣の拡張主義により、価格は歪められ、経済活動は損なわれ、債務は持続不可能な水準にある。不均衡の累積があまりにも深刻で、市場主導の不均衡解消が政治的に受け入れ不可能だとみられていることを、リーマン・ショック以降、我々は知った。信用の調整、債務のデフレ、清算は、市場がどんなに望んでも許される状況ではないだろう。
今、中央銀行は身動きが取れない状況にある。出口戦略がない。低金利とさらなる信用の伸びは、何としてでも維持しなければならない。民間セクターはこれに消極的なため、国家が、中央銀行の「最後の貸し手」からの「最後の借り手」としての存在を強めている。FRBはQE3(量的緩和第3弾)、QE4と進むだろう。住宅ローンと国債の次の買い入れ対象は、社債、自動車ローン、クレジットカード債務、そしてもちろん、さらに多くの国債だ。これらは、最終的には中央銀行のバランスシートに積み上がる。ECBは、増える一方の欧州の政府債務を抱え続けるだろう。しかし、ソルベンシー(支払い能力)の「幻想」は、さらに早い速度でのマネーの創造によってのみ維持されるという事実に国民が気づいた時、国家のペーパーマネーに対する信頼感は急速に後退する。
歴史的にみると、すべての紙幣制度は完全な失敗で終わるか、商品を裏付けとするマネーにタイミングよく戻るか、どちらかである。現行の紙幣制度の開始から40年が過ぎた今、我々はまた同じ岐路に直面している。
(著者の「Paper Money Collapse―The Folly of Elastic Money and the Coming Monetary Breakdown」は来月、John Wiley&Sons社から発行される予定)
記者: Detlev S. Schlichter
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