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1971年8月15日、ニクソン米大統領(当時)はドルと金(きん)の交換を停止すると宣言した。ただの紙切れになった基軸通貨ドルは凋落(ちょうらく)どころか、米国は幾多の試練をくぐり抜け、世界の金融覇権国として増長に増長を重ねてきた。
2008年9月15日にはリーマン・ショックに見舞われたが、米連邦準備制度理事会(FRB)がドルを危機前の3倍まで刷り、屑(くず)になりかけた金融商品を買い支えた。株価は1年前から上昇に転じたが、今回のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の米国債格下げをきっかけに株価とドル相場の急落が続く。
国際金融市場を支配
そこで、多くの読者は問うだろう。ドルは今度こそ基軸通貨の座から滑り落ちるのか、欧州共通通貨ユーロか中国人民元がドルにとって代わるのか、と。筆者の見方は、「ノー」である。なぜか。
訳知り顔で言えば、米国は世界唯一の覇権国という、軍事や政治的要因があげられる。だがそれでは通貨をめぐる国際的な力学を見過ごしてしまう。
最大の要因は、世界の通貨がことごとく紙切れにすぎない中でドル建ての金融商品は他通貨の金融商品を圧倒し国際金融市場を支配している点である。ドルは他通貨に対して下落しても、世界の投資家はドル建ての金融資産を見限るわけにいかない。例えば、金が高騰しているが、国際市場価格はドル建てである。ドルというマネーが株式から逃避しても、金、米国債など他のドル建ての金融資産に移動するだけで、ドル離れが起きているわけでは必ずしもない。
ドルは日本円にも向かうのだが、円もまた金と同じくドル建ての国際商品として投資家に扱われている。日本株もウォール街の投資ファンドからはドル建てで換算されて売り買いされ、円高になれば売られる。逆に言うと、ドルなくして円も日本株も価値が決まらない。ドルは「腐っても鯛(たい)」なのだ。
では、FRBがドル札をいくら刷っても大丈夫なのか。ドル安でもよいのだろうか。
結局できるのはQE3
FRBは金との結びつきを断ち切ったあとも、従来とほぼ同じペースを守ってきたのだが、「リーマン後」に清水の舞台から飛び降りた。米国史上前例のない勢いでお札を刷り増し、量的緩和第1弾(QE1)では紙屑になりかけた住宅ローン担保証券を、第2弾(QE2)では大量発行された米国債を買い上げた。ドル資金を手にしたニューヨーク・ウォール街の投資家たちは一部を株式インデックス投信に、残りは原油や円などの投機に向けた。FRBは株価押し上げ効果を自賛した。日本の一部は「基軸通貨危うし」と騒ぐが、オバマ政権は輸出増につながると評価してやまない。
米国債格下げ後はどうか。財政面では、債務削減は即座には不可能で、結局できるのは、お札の増刷による金融資産買い取りしかない。量的緩和第3弾(QE3)である。だがドル安が急激に進めば、市場で出回っている米国債の約5割を保有する海外投資家が突如パニック売りに転じる恐れが出てくる。そのときが真の「ドル暴落」なのだが、ここでからんでくるのは欧州の財政・金融不安である。
ユーロ加盟南欧諸国の政府債務問題がギリシャからスペイン、イタリアへと広がり、これら諸国の国債を保有する欧州の金融機関を揺さぶっている。そこでユーロを発行する欧州中央銀行はスペインとイタリアの国債を買い上げることにした。すると、ユーロ札発行は増えに増えるので、対ユーロ安によるドル全面安の恐れはない。FRBはドルをもっと刷れるだろう。
米国債最大の保有国、中国はどう出るか。「米国債大量売却」となれば、ドル暴落の引き金を引くが、200兆円相当近くのドル資産の多くが失われ、胡錦濤指導部の責任問題になる。ドルに合わせて人民元相場を切り下げると損失は避けられるが、インフレが高進し、出稼ぎ農民や都市の中間層以下の不満を爆発させる。中国は米国債を売るわけにいかないのだ。
以上、ドル凋落のシナリオはありそうで、そうならない。米欧に比べ、円を刷らない日本だけが、円の独歩高を止められず、デフレをさらにこじらせ、大震災からの復興をどこまでも遅らせる。
40年前に世界通貨は紙切れの時代になってしまったのに、日本だけが発想転換できないで、おカネを刷らない。その結果、消費者も企業も財政も貧しくなるばかりだ。(編集委員・田村秀男)
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★消えた「持続可能な経常収支」http://blogs.jp.reuters.com/
国際金融界から「持続可能な経常収支」という言葉が消えて久しい。
国際収支研究のブームはとうの昔に去り、アカデミアでも金融界のアナリスト、エコノミストの間でも国際収支の専門家はほとんど見あたらなくなった。
1990年代に入って、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では「持続可能な国際収支」が「持続可能な経済成長」という言葉に置き換わり、成長そのものが目的化し、成長さえ達成出来れば、何年も赤字を垂れ流そうと、大幅な黒字を続けようと関係ないという風潮になった。
ー昨年あたりからG20声明等で「経常収支を持続可能な水準で維持するのに資する、あらゆる政策を追求する」という文言が取ってつけたように採用されているが、個々の国の政策努力という抽象概念の話で、具体策については検討する意志がなさそうだ。
昨今の為替市場では、経常収支黒字国の通貨が一番安心だという。それで、スイスフランや円がマネーの「避難先」として選ばれ、最高値を更新している。
「変動相場制」には本来、対外不均衡の自動調節機能が備わっている、または、備わっているとされていた。黒字国の通貨が増価し、赤字国の通貨が減価することで、グローバルな不均衡が是正され、過度な為替の変動を回避するシステムこそが変動相場制だった。
しかし、世界最大の債務国であるにもかかわらずドル高政策を掲げる米国や、通貨高が嫌で巨額の自国通貨売りを続ける中国や日本といった黒字国に踏みにじられ、システムは長らく機能不全に陥っていた。
現在為替市場で進行する事象は機能の復活なのか、それとも戦後金融システムの瓦解の兆候なのか、答えはもう出ているのかもしれない。(抜粋)
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