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7月1日、財務省からちょっと面白い統計データが発表された。とはいえ、形式としては毎月行われている定期的な公表統計であり、財務省から中身についての特段の解説もされなかったので、大々的に報道されることはなかった。
それは、「平成22年度 23年5月末租税及び印紙収入、収入額調」と「平成23年度5月末租税及び印紙収入、収入額調」だ。毎月、税収などがどのように国に入ってくるかの進捗状況を示したもので、前者は「平成22年度分の税収等」、後者は「平成23年度分の税収等」のそれぞれ5月末時点での数字だ。
「平成22年度分の税収等」は予算では39兆6000億円と見積もられていたが、実際には、東日本大震災前まではまずまず景気が良かったので、法人税収が7兆5000億円との見込みに対して9兆円になるなどした結果、全体で見積もりよりも1兆9000億円も「上ブレ」て41兆5000億円になった。
このため、平成22年度は剰余金が出ることとなった。剰余金の半分は翌年度、つまり23年度の財源にできるが、残りの半分は国債償還に充てなければいけないという財政法の決まりがある。しかし、いま現在は震災復興のための補正予算が必要なので、国債償還の決まりを破ることは許される。そこで、7月25日に成立した2次補正予算では、この剰余金を全額2次補正予算の財源にした。
ここまでは、めでたしめでたしで済むのだが、問題は、なぜ2次補正予算がこの時期まで成立させられなかったか、である。
実は財務省は、この国難にあっても増税を諦めていない。復興財源も、国民感情にはお構いなく増税で賄いたいというのが率直なところだが、すぐには実現できない。一方で財政規律にこだわる財務省は、復興国債の大量発行はなんとしても避けたい。そこで財務省は、22年度の剰余金が判明する7月1日が過ぎるまで、補正予算の編成を遅らせたのである。
そのために利用したのが復興構想会議(議長・五百旗頭真防衛大学校長)だ。会議の議論を踏まえて予算を作るという戦略を立て、新聞・テレビの大手メディアもまんまとその作戦に乗せられた。復興構想会議が被災地の役に立たなかったのは明らかだが、税の門外漢である五百旗頭議長が会議の冒頭で増税に言及したり、時間の引き延ばしをしたりという財務省シナリオには忠実だった。結果として、2次補正予算の財源は国債発行に頼らず、前年度剰余金を充てることができた。財務省の完勝だ。
7月1日に公表されたもう一つの「平成23年度分の税収等」にも、興味深いデータがある。今年度は始まったばかりなので税収の全体像はまだわからないが、確定していることがある。それは、4月と5月の揮発油税収が前年度の約3倍にあたる34億円と、大幅増になったことだ。今年度の揮発油税の見込み税収は2兆6000億円だが、このペースが続けば数百億円の税収増となりそうだ。
理由は、言われてみれば簡単だ。原発が動かせない分、火力発電所などに頼らざるを得ず、電力会社が重油などを大量に使っているからだ。
財務省は、税収増に関しては口をつぐみ、その一方で、財源不足についてはことさらにアピールして、増税の必要性を声高に訴える。実にちゃっかりしたものだ。財務省は、正直でも誠実でもない。国民はそのことを、しっかり覚えておいたほうがいい。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/14593
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