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http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=avNs4rhTGe14
8月10日(ブルームバーグ):ペリー・ビース氏は高校生だった1972、73年の夏、米ウィスコンシン州で隣人の農場の干し草を俵にまとめるアルバイトをした。肉体労働の厳しさを痛感した同氏は、別の方法で金を稼げるように大学へ行こうと決意した。
38年後、証券法専門の弁護士と債券トレーダーのキャリアを経て、同氏は農場に戻ってきた。
といっても、今度は所有者としてだ。インディアナ州グレンジャーの投資会社、セレス・パートナーズの共同創業者として同氏は、イリノイ、インディアナ、ミシガン、テネシー州の61の農園を管理している。これらの農園の価値は6330万ドル(約49億円)相当。この投資に熱心になった同氏は農場経営に専念するため2008年に、クオンツ運用会社のパナゴラ・アセット・マネジメント(ボストン)で70億ドル相当を債券で運用する仕事を辞めた。ブルームバーグ・マーケッツ誌9月号が報じた。
ある春の午後、ビース氏(54)はインディアナ州とミシガン州の田舎道をジープ・チェロキーで走りながら、果樹園やトウモロコシ畑、大豆畑を物色する。「スリーリバーズ」のような名前の町々はすぐに通り過ぎてしまい、間にはただ広大な畑が広がる。見渡す限りの畑で作物が芽吹いている。
「何だって?」
赤いゴルフシャツにカーキズボンの同氏は「農地に投資するファンドを始めるために退社すると言ったとき、皆『何に投資するんだって?』と聞き返した」と話した。「ウォール街は永久に理解できないだろう。コンピューターで株を売買するのとは違う」と語った。
農地への投資は株式投資のリターンを上回った。ビース氏によると、セレス・パートナーズは設立直後の2008年1月から今年6月末までに、年平均16.4%のリターンを上げた。リターンの大半は土地を借りて作物を育て販売する農民からの地代と土地の値上がりによるものだ。8品目で構成するスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)GSCI農産物指数は同期間に年率5.3%上昇。一方、S&P500種株価指数は約1%下落した。
世界的な食料価格の高騰に伴い、投資家は米国や欧州の一部、中南米、アフリカの農地への投資に参入しつつある。資産家のヘッジファンド運用者、ジョージ・ソロス氏のファンドは南米の農地に投資するアデコアグロに23.4%出資している。ヘッジファンドのオスプレー・マネジメントとパスポート・キャピタル、米ハーバード大学の寄付基金も農地に投資。運用資産4660億ドルの米教職員保険年金連合会・大学退職株式基金(TIAA−CREF)はオーストラリアとブラジル、北米の農地約24万ヘクタールに20億ドルを投資しているが、これを倍増させたい考えだ。
最良の投資先
1996年に世界の商品相場上昇の始まりを予言したジム・ロジャーズ氏(68)は「農地は世界で最良の投資先の一つだとかねて言ってきた」と指摘、「雨が降る場所の農地を買い、仕事がよく分かっている農民に任せなければならない。そうすれば、作物は値上がりしているので二重に利益が得られる」と話した。
中国やインドなど新興市場での中産階級台頭を背景に、食料品需要の拡大は止まる気配がない。55品目から成る国連の指数によると、6月の価格は2月に付けたピークからわずかしか下がっていない。国連食糧農業機関(FAO)は6月の報告で、価格が2012年いっぱい高止まりすると予想した。過去3年にはあまりに多くの投資家が食料品値上がりに乗じようと参入したため、農地バブルが生じている可能性もある。コロラド、カンザス、ネブラスカなど農業が盛んな州を管轄するカンザスシティ連銀は5月に、1−3月(第1四半期)に農地の価格が前年同期比で20%上昇したと発表している。
バブル
ロジャーズ氏は「農地もバブルになるだろう。あらゆる農産品のバブルも来るだろう」と述べた。同氏は南米の農地を保有するアグリファーマ・ブラジルに投資している。
ヘッジファンド運用者のスティーブン・ディグル氏(47)は、農業は究極の安全な投資先だと言う。同氏は2008年9月のリーマン・ブラザーズ・ホールディングス破綻(はたん)後に自己資金で農場を買い始めた。S&P500種はその後の半年で43%下落した。同氏はウルグアイでの8000エーカー(約3000ヘクタール)のほか、イリノイ州南部の農地とニュージーランドの80エーカーのキーウィー・アボカド園を購入した。
オプションとワラントを使って相場の動きに賭けるディグル氏は「投資銀行が全部つぶれるだろうと、本気で信じた」という。「誰もが『金を買え』と言っていたが、結局のところ金は食べられない。もし何もかもが無価値になって3つの農場しか残らなくても、そこそこ裕福でいられる」と同氏は話した。
食物連鎖
ディグル氏が共同で設立したヘッジファンド、アルトラディス・ファンド・マネジメント(シンガポール)が約7億ドルを失った後、同氏は3月にこのファンドをたたみ、別のヘッジファンド、バルぺス・インベストメント・マネジメントをシンガポールで設立した。同氏は保有する5つの農場をバルペスが運営する投資管理グループにまとめる計画だ。20年にわたりアジアで働いてきた英国人の同氏は、向上心の強いアジアの人々が口にする食べ物が食物連鎖の上の方に変わってきたのを目の当たりにしてきたという。
「豊かになった中国の人々が何を食べるかはすぐ分かる」として、「乳製品と肉が増えるということだ。肉も豚肉と鶏肉ばかりではない」と同氏は述べた。
農地は投資家に、商品相場の循環的な変動から逃れるすべを提供した。S&P農産物指数が100%以上値上がりした後、急激な下落が起きるという循環が1970年以降の商品市場では少なくとも4回あった。これに対し、米農務省がまとめる農地1エーカー当たりの平均価格は1980年の737ドルから2011年の2350ドルへとほぼ一貫して上昇している。
TIAA−CREFの天然資源・インフラ投資責任者、ホセ・ミナヤ氏は「農地はバリューチェーンの中で最もリスクが低い部分だ。生産における最重要の部品でもある」と述べた。
記事に関する記者への問い合わせ先:Seth Lubove in Los Angeles at slubove@bloomberg.net
記事に関するエディターへの問い合わせ先:Laura Colby in New York at lcolby@bloomberg.net.
更新日時: 2011/08/10 13:00 JST
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