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強化されたハンバーガー経済学 ビッグマック指数の25歳の誕生日を祝って
2011.08.04(Thu) (英エコノミスト誌 2011年7月30日号)
グルメ版のビッグマック指数は、人民元がそれほど過小評価されていないことを示している。
ビッグマック指数は学術研究のテーマにもなっている〔AFPBB News〕
ビッグマック指数は今年、25歳の誕生日を祝う。この指数は通貨が「正しい」水準にあるかどうかを示す気軽な指針として1986年に本誌(英エコノミスト)が考案したものだ。
通貨のミスアラインメント(均衡レートからの乖離)を示す正確な指針として意図されたものでは決してなく、単に為替レートの理論を消化しやすくするためのツールだった。
それでも、ビッグマック指数は国際基準となり、いくつかの経済書に取り上げられ、少なくとも20の学術研究のテーマになっている。
米国の政治家が中国人民元の大幅な引き上げを求める際に、この指数を引用するまでになっている。これだけ多くの人がこのハンバーガー基準を非常に真剣に受け止めているからには、指数を強化する時期を迎えているのかもしれない。
バーガーノミクス(ハンバーガー経済学)は、購買力平価(PPP)の理論に基づいている。どの2カ国間の為替レートも長期的には、全く同じ商品とサービスのバスケット(この場合はハンバーガー)の価格を等しくするレートに向かって動くはずだという考え方である。
米国のビッグマックの平均価格は4.07ドルだ。中国では市場為替レートでわずか2.27ドルと、米国より44%安い。つまり、修正を加えない生のままのビッグマック指数は、人民元がドルに対して44%過小評価されていることを示している。対照的に、スイスとノルウェーの通貨は100%近く過大評価されているように見える。
ユーロ(参加国の加重平均価格に基づく)はドルに対して21%過大評価されている。英ポンドはやや過小評価されている。日本円はぴったり適正水準にあるように見える。
我々は今回初めて、インドを調査対象に加えた。マクドナルドはインドではビッグマックを販売していないため、ビーフのかわりにチキンで作られたマハラジャマックの価格を採用した。
肉がハンバーガーの総コストに占める割合は10%足らずであるため、これによって結果が大きく歪められる可能性は小さい。この指数では、ルピーが53%過小評価されていることが示されている。
ケチャップを増量
バーガーノミクスは受け入れるのが難しいと言う人もいる。ハンバーガーは、国境を越えて簡単に取引することができないし、価格は、家賃や地代、労働者の賃金など、貿易の対象にならない国内投入コストの大きな違いによって歪められているからだ。
ビッグマック指数は、 例えば、大半の新興国通貨が大幅に過小評価されていることを示している(ブラジルとアルゼンチンは大きな例外)。だが、豊かな国より貧しい国の方が平均的 な物価が安いのは、労働コストが安いからだと想像することはできるだろう。これは、いわゆるバラッサ・サミュエルソン効果の基礎になっているものだ。
豊かな国は貧しい国より生産性がはるかに高く、そのため貿易財セクターの賃金が相対的に高くなる。
企業は労働者の獲得を巡って競争しているため、これが、豊かな国の生産性優位が比較的小さい非貿易財とサービスセクターでも賃金を押し上げる。そのため、貧しい国では平均的な物価が安くなるわけだ。
右図の上段は、ビッグマックのドル建て価格と1人当たり国内総生産(GDP)との間に強い正の相関関係があることを示している。
中国の平均所得は米国のわずか10分の1であるため、経済理論が示すところでは、中国の為替レートは同国の長期のPPP(つまり、ハンバーガーの値段を2カ国で同じにするレート)より低くなるはずだ。
PPPは、中国が豊かになるにつれて為替レートが長期的にどこに向かうかは示すが、現在の均衡レートについてはほとんど何も示さないからだ。
だが恐らく、通貨の現在の適正価格を推定するために、物価と1人当たりGDPとの関係を使うことができるだろう。図の上段では、48カ国のビッグマック価格と1人当たりGDPとの間の「最適適合ライン」が示されている。
それぞれの国について、各国の1人当たり所得を考慮した予想価格(赤線)と実際の価格との差は、通貨が過小評価されているか過大評価されているかを示す、PPPベースの「生」の指数より優れた指針を提供する。
1人当たりGDPで調整したこの代替的なレシピは、ブラジルレアルがそれでも100%を超える高すぎる水準にあり、ひどく焼かれすぎて熱くなっていることを示している(図の下段参照)。
ユーロはドルに対して36%過大評価されている。また、強化された新たな指数は、ユーロ圏内のいくつかの国の競争力のなさにも有益な光を当てている。
ユーロ参加国のハンバーガー価格を比べると、調整後のビッグマック指数は、イタリア、スペイン、ギリシャ、ポルトガルの「為替レート」がどれもドイツの為替レートに比べて大幅に過大評価されていることを示している。
中国については、調整後の指数で見る限り、人民元もドルも他の通貨に対して過小評価されているものの、人民元は対ドルでは適正価格に近い水準にある。
特大サイズの25年祭
貿易加重ベースで見ると、我々の計算は、人民元がわずかに7%過小評価されていることを示しており、とてもではないが貿易戦争の理由にはならない。
この数字は、中国の経常黒字を、例えばGDP比3%といった管理可能な水準まで減らすのに必要な人民元の上昇を計算するモデルに基づき、 20〜25%の過小評価とされた以前の推定値より小さい。中国の黒字が縮小しているため、黒字に基づくこの方式でさえ、今は人民元の過小評価がかつての水 準より小さくなっていることを示している。
何人かの民間エコノミストは、中国の計上黒字がGDP比で、2007年の11%近くから今年は4%足らずまで減少する可能性があると予想している。
自国の生産性が時間とともに上昇するにつれ、中国は今後も自国の実質為替レートが(通貨の上昇かインフレのいずれかを通じて)上昇するのを認めなければならないが、我々の新たなビッグマック指数は、人民元が現在、大きく過小評価されていないことを示している。
最初に焼かれてから四半世紀が経過した今、バーガーノミクスはまだ完璧と言うにはほど遠いが、1人当たりGDPで調整すれば、味は良くなる。それだけに一層、これからも口で言うだけでなく実際の行動で証明し続けなければならない。
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