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中国の地方政府が抱えるデフォルトの爆弾 地方債の暴落が国有銀行を直撃する 2011.08.04(Thu) 柯 隆
中国経済は年率10%前後の成長を続けているが、インフレが高騰している。そのため政府は追加利上げを実施するとしながらも、基本的な政策スタンスは「適度な金融緩和の維持」(胡錦濤国家主席)を変えていない。
インフレを抑制するために金融引き締めは必要だが、性急な引き締めを実施すると、景気がハードランディングする恐れがあるからだ。中国経済を取り巻く外部環境が急速に悪化しているのはそれが原因である。
対外債務の危機は考えられないが・・・
世界経済は新たな金融危機の入り口に差しかかっている。欧米諸国で起きている債務危機のほとんどは、正確に表現すれば対外債務の危機だ。貯蓄率の低い国々で対外債務の返済が難しくなり、債務危機が勃発したのである。今回のギリシャ危機はその一例だが、かつてのメキシコ危機(1995年)も同じだった。
だが、中国の対外債務は危険な状況にない。
中国政府が発表している対外債務統計によると、2010年末現在、対外債務残高は5489億ドルであり、GDP比の債務比率は9.3%程度である。その上、中国政府が保有する外貨準備は3兆2000億ドルに上るため、対外債務のデフォルトの可能性がほとんどない。
中国経済の10%前後の成長の原動力は、主に設備投資とインフラ関連の投資である。毎年の巨額の投資資金は主に中国国内でファイナンスされている。家計の貯蓄率は30%に上り、政府部門と企業セクターの留保分を参入すれば、国全体の貯蓄率は50%に達する。
一方、中国政府はここ数年、景気を下支えするために、毎年、多額の国債を発行している。ただし、中国のGDPは約40兆元(約500兆円)である のに対して、国債残高は6兆元未満に過ぎない。債務比率は20%未満である(ちなみに日本の債務比率は220%で、アメリカは90%)。
中国の国債の引き受けを見ると、国内の金融機関と一般家計がほとんどだ。外国の金融機関や投資家による引き受けはほとんどない。右肩上がりの中国経済のトレンドを考えても、国債償還が難しくなり債務危機に発展することは、ほとんど考えられない。
したがって、中国経済の持続的な成長を脅かしているのは、対外債務と国債の返済が難しくなるということではない。
ここで心配されているのは、地方政府債務のデフォルトの可能性である。
地方債務を膨らませるきっかけになった「分税制」改革
制度的には、中国では地方政府が起債することはできないことになっている。これまで中央政府は地方債の発行を試みるために、財政部(省)が地方債の代理発行を行ったことがある。その金額は数千億元程度だったため、債務危機に発展するほどの規模ではない。
だからといって、地方債務危機が杞憂だということにはならない。
地方政府の隠れ債務問題を解明するためには、1994年の「分税制」改革にさかのぼる必要がある。
それまで、中央政府も地方政府も、税収の分配についてかつての計画経済のやり方を引き継いだ「どんぶり勘定」だった。地方の税務局は、中央政府に税収を納めるよりも、地元の財政支出を優先する傾向が顕著だった。そのため中央政府の財源が年々減少する傾向にあった。
こうした背景の中で、中央政府は94年に中央税と地方税を分離する「分税制」の改革を断行した。同時に、中央政府の出先機関である国税局を、各地方に設置した。
分税制の改革により、中央政府は、地方政府に支配されていた税収の一部を取り返すことができた。だが、地方政府にとっては、財源の一部が失われてしまった。
中国経済は94年頃から高度成長に入り、地方政府は都市再開発に伴う財源を確保する必要があった。しかし、正規の税収以外に財源を確保することが、ほとんど不可能だった。何よりも、法的に地方政府による起債は認められていなかった。多くの地方政府にとって、財源確保は緊急な課題となった。
90年代後半、都市部の再開発がブームとなる。その中で、「土地の払い下げによる売り上げはその土地を擁する地方政府に帰属する」という中央政府の決定が下された。地方政府にとって土地の払い下げの売り上げは貴重な財源となったのである。
しかし、それだけでは不十分だった。多くの地方政府はこれらの財源と土地を担保にして、実質的に巨額の債務を借り入れた。
中国国家審計署(会計検査院)の会計検査によれば、2010年末現在、地方政府の債務残高は約10兆7000億元に上る。GDPに占める割合、すなわち債務比率は26.7%に達している。地方債務の構成比について、直接返済義務を負う債務は全体の63%であり、担保責任のある債務は22%である。
だが、10兆7000億元という金額が地方債務のすべてだと見る者はほとんどいない。百歩譲って地方債務が10兆元くらいだとしても、その一部でもデフォルト(債務不履行)すれば、中国のマクロ経済に与える影響は予想以上に大きい。
都市部のインフラ整備のために債務を積み重ねた
そもそも95年の広東省国際信託投資公司(GITIC)の倒産を受けて、中国政府は地方政府による起債および地方政府帰属の企業の借り入れの担保をすべて禁止している。
しかし、今回の会計検査院の調査では、地方政府が中央政府の規定に違反して直接借り入れた債務は6兆7000億元に上るほか、担保責任のある債務は2兆3370億元もあった。
なぜ、地方政府はこれほどまで債務を積み上げたのだろうか。
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図1 中国地方債務残高の伸び率(注)政府の審計署の調査は連続的なものではないため、2002年の伸び率は1998年から2002年までの平均値であり、2007年の伸び率は2002年から2007年までの平均伸び率である。(資料:「全国地方政府性債務審計結果」中国国家審計署、2011)
図1に示したのは、97年以来の地方債務残高の伸び率の推移である。地方政府の財源を見ると、94年の分税制改革以降、地方税と定められている「営業税」「都市建設税」と「個人所得税」などが大きなウェイトを占めている。そして、中央政府から地方政府への交付税も地方政府にとって重要な財源になっている。
問題は、制度上、地方政府は起債が禁止されているため、都市再開発の財源の確保が難しくなっていることだ。
地方政府は都市部の地下鉄を整備したり、空港ターミナルを建設したりする必要がある。大規模な都市再開発を推し進めるために、中央政府は都市部の土地使用権(定期借地権)の払い下げの売り上げを地方政府の帰属にすることを認めた。
本来ならば、地方政府の建設予算需要と土地使用権の払い下げの売り上げは、概ね均衡するものと思われる。だが、どこの地方も実力以上の都市再開発を進めるために、より大きなインフラ施設を整備しようとする。
その結果、多くの大都市では、地下鉄を整備し運用するための地下鉄会社が設立された。また、空港ターミナルを建設し、運営するための会社も設立さ れている。これら地方政府に帰属している会社は地方政府が直接・間接資本参加して運営され、金融機関から資金を借り入れている。
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図2 東部、中部と西部の地方債務のウェイト(2010年)(資料:全国地方政府性債務審計結果」中国国家審計署、2011)
一般的には、経済発展の遅れている地方ほど資金需要が旺盛であり、債務比率が大きいと考えられる。だが、今回の会計検査院の債務調査では、経済発 展が進んでいる東部地方の債務の割合は50%に上る。それに対して、中部の債務比率は23%、西部の債務比率は27%にとどまる(図2)。
この調査結果から、経済発展の進んでいる東部沿海地域で都市再開発が進み、資金需要が旺盛になっており、債務も多く積み上げていることが分かる。
地方債務がデフォルトすると国有銀行が危機に
今回の調査で明らかになっている地方債務残高は約10兆7000億元だが、金融機関の融資残高の76兆元に比べれば、それほど大きなウェイトではない。既存の地方債務が全部デフォルトするとは考えにくいので、債務危機の勃発を心配する必要はないと見られている。
ただし問題なのは、地方債務のうち80%以上が国有銀行からの借り入れであり、地方債務がデフォルトすれば、金融システムの安全性が脅かされる恐れがあるということだ。
さらに、地方政府は起債する権限がないが、隠れ債務が増える可能性が高い。民主主義の選挙制度が導入されていない中国では、地方政府の歳入と歳出に対する市民の監督が認められていない。そのため、債務問題が拡大する傾向にある。
結論を言えば、地方政府の隠れ債務はすぐには債務危機に発展しないかもしれないが、デフォルトの潜在リスクが常に存在している。
今後、中国では経済政策の動向により、地方政府債務のデフォルト問題が急浮上してくる可能性がある。債務問題が危機に発展するのを未然に防ぐために、その内容を明らかにして、地方政府として債務のスリム化に取り組むことが求められている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/17563
中国の銀行と取引する一般市民の苦痛
ストレステストとはこのことか
2011.08.04(Thu) (2011年8月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
オバマ大統領は「中国を為替操作国と認識」、ガイトナー氏書簡
中国の銀行は目覚ましい再生を遂げたが、顧客サービスはひどい〔AFPBB News〕
過去10年で最も注目に値する企業改革と復活のストーリーの1つは、中国金融業の再生だ。
中国の国営金融機関は、厳密に言えば、1990年代後半までにすべて破綻していた。複数の試算によると、業界が抱える不良債権の割合は全債権の50%に達していた。
政府による救済策が功を奏し、中国の銀行は今では世界最大の規模(時価総額ベース)と利益(絶対ベース)を誇り、世界を代表する金融グループにも引けをとらない強力なバランスシートを持っている。
ところが中国の一般市民にしてみると、中国の銀行には他国の銀行では最も基本的なサービスすら存在せず、銀行に行くことはいまだに日常生活の中でもとりわけストレスがたまる体験となっている。
中国の銀行では、事実上すべての取引に際して、パスポートまたは政府が発行する身分証明書の提示を求められる。
デビットカードを紛失し、再発行を求めたら・・・
窓口でサービスを受けるには、多くの場合、1時間以上も列に並ばなければならない。銀行員は例外なく無能なうえに礼儀を知らない。インターネットバンキングは設計に問題があり、しかも、限られたOS(基本ソフト)にしか対応していない。
7月28日、筆者は招商銀行の最寄りの支店に出向いた。招商銀行は中堅の金融機関で、中国の銀行の中では最高のサービスと最先端の技術で知られる。その招商銀行に足を運んだ目的は、デビットカードを紛失した旨を伝えて再発行してもらうことだった。
用紙の記入を始めると(何年間も自動化が進んできたのに、いまだすべての取引が長々とした書類の照合を必要とする)、口座を開設した支店でなければデビットカードの再発行はできないと伝えられた。
そこで、混雑する北京の通りを苦労しながら移動して指定された支店にたどり着くと、また用紙に記入するよう言われた。そうすれば7日後に新しいカードをここで受け取れるという(郵送はしてくれない)。
パスポートを提示したにもかかわらず、窓口係は、明らかに本人確認のための細かい質問をいくつもしてきた。挙げ句に、キーパッドに暗証番号の入力を求められた。
ところが、口座からお金をいくらか引き出したいと伝えると、窓口係は無表情にこちらを見つめ、「カードがなければ現金を引き出すことはできません」と答えた。
筆者と家族が1週間も飲まず食わずになる可能性があることなど全く意に介していないようで、筆者の哀願も、知ったことではないといった風にはねつけられた。
一文無しの苦境をどう乗り切ろうか思案していると、窓口係は突然、筆者の口座が凍結されていることを告げた。そのため、たとえカードを持っていても、口座のお金を動かすことはできないという。
実はカードが拾われ、口座が凍結されていた
窓口係はさらに調べ、4日前に誰かが筆者のデビットカードを拾い、別の支店に届けていたことを突き止めた。その際、口座が凍結されたという。
なぜ筆者に連絡がなかったのか? なぜ最初に訪れた支店で、既にカードが見つかっている事実が伝えられなかったのか? 窓口係は何も説明せず、デビットカードが届けられた支店に自ら取りに行けば、口座の凍結が解除された時点でそのままカードを使用できるとだけ言った。
いくら中国が共産主義から脱却したばかりで、本当の意味でのサービスが文化として根づいていないにしても、中国の銀行を実際に利用してみると、官僚的で理屈に合わない障害が目に余る。
中でも腹立たしいのが、筆者のような取るに足りない相手には熱心に「リスク管理」(数多くの様々な面倒な規則を、銀行自身はこう呼んでいる)を押しつけてくる一方で、破綻している地方自治体や国の息がかかる借金まみれの企業に巨額の融資をする際は、明白なリスクをほとんど無視することだ。
地方政府や大手企業にはどんどん貸すのに、中小企業や市民は蔑ろ
中国の経済の中で最も活発なセクターを担う中小企業の大部分は、国営銀行と取引できない。そのため多くの場合、規制枠外の金融業者や地下銀行に頼らざるを得なくなっている。
中国にはサービスを重視する国際的な銀行も存在する。しかし、そうした銀行の事業はいまだにかなり制限されており、市場のほんの一部を担うにすぎない。
しかも、政府による資本規制があるため、一般市民は(少なくとも法律上は)国外に口座を移すことができず、大幅なマイナスになっている実質金利と劣悪なサービスで我慢しなければならない。
一方で、中国の銀行はここ数年、少しずつ国外に進出している。他国の銀行を買収した例もあり、世界各地の大都市に支店が開設されている。しかし、既に自国で取引している中国の企業や国外居住者を別にすれば、中国の銀行で感じる苦痛や屈辱に進んで身をさらす人がいるとはとても考えられない。
By Jamil Anderlini, FT's bureau chief in Beijing
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