04. 2011年8月04日 13:06:07: Pj82T22SRI
茶党ブームも今回の事件で衰退へと転じれば、米国は財政拡大へと転じやすくなるhttp://jp.wsj.com/US/Politics/node_284169/?nid=NLM20110804 米債務問題で再び政治力示した茶会党、目立ち始めた内部疲弊 2011年 8月 3日 19:09 JST 歳出削減と債務上限の引き上げに関する米議会の合意は、過去2年の茶会党の驚異的躍進の総仕上げとなった。共和党と民主党がともに再び歳出に意識を向けることを強いられると同時に、茶会党の政治力が証明された。 しかし、全米各地の茶会党の活動家と指導者は、8月1日の合意には、茶会党が実際に目指す変革がほとんど盛り込まれていないとして異口同音に非難した。 茶会党の上部組織、ティーパーティー・パトリオットのジョージア州ラグランジュ支部でリーダーを務めるエレン・ギルモア氏は「人々は『茶会党の連中は素晴らしいじゃないか。お陰で話し合いの内容が変わった』と言っている。確かに、話し合いは変わったが、それ以外にわれわれは何も得ていない」と話す。 政治を観察している人間の大半が茶会党最大の勝利とみなしているものに対する茶会党活動家の反応は、その活動が抱えるパラドックスを浮き彫りにする。債務上限をテコに下院小数派の茶会党は、共和党に新税導入反対の立場をとらせ、財政支出の防波堤を築いた。 画像を拡大する イメージ Getty Images 米議会議事堂前に集まった茶会党の活動家(6月、ワシントン) 3500の地方支部を持つとされるティーパーティー・パトリオットの創立者で全米コーディネーターを務めるマーク・メックラー氏は「市議会の動きから大統領選まで、この国のあらゆる政治が茶会党の論点に突き動かされている」と述べた。 運動への幻滅も しかし、7月31日に達した合意の内容は、茶会党が表明した債務上限の維持、大幅な歳出削減、均衡財政のための修正案の成立といった多くの目標にははるかに及ばない。緩やかな組織である茶会党運動が直面している最大の問題は、過去2年で劇的に存在感を増した後、その組織と指導力をイデオロギーの力に見合った水準に引き上げられるのかという疑問である。 茶会党のムーブメントには、明確な全米レベルの指導者や中央組織がなく、グループや個人の大ざっぱな連携であることに変わりはない。その活動は、パーソナリティ、戦術、そして社会的保守派と財政保守派の戦いを巡って、分裂を繰り返してきた。 2年前に茶会党の運動を全米レベルまで広げるのを助けた古参の歩兵たちの中には、幻滅した者もいる。「今までに行なった抗議行動、組織、資金集め、地域家庭訪問はいったい役に立ったのか。2年前に比べて生活は楽になったのか。答えはノーだ」と、ダン・ブラックフォード氏は言う。同氏は今年までテキサス州ヒューストン郊外で茶会党支部のリーダーを務めていた。 テキサス州など1年前はまだ茶会党が注目の的だった地域の一部でも、運動がはらむ矛盾が顕在化している。同州の多くの地域では、まだ活発な活動が持続している。7月にヒューストン中心部にあるヒューストン・ホテルで開催されたフリーダム・ワークスの戦略会議では、300人の参加者が会議室を埋め尽くし、終日熱い議論を戦わせた。フリーダム・ワークスは、首都ワシントンを拠点とするリバタリアンのグループで、同グループによると支持者は全米で数十万人にのぼる。 ダラスでは、茶会党は勢力の拡大を続けており、会員はテキサス州全体で2万4000人にのぼると言う。ダラス茶会党の運営委員を務めるカトリーナ・ピアソン氏は、「この運動が、力を増し、成長していることに間違いない」と述べる。 保守的社会政策など焦点ぼやける しかし、テキサス州の他の地域では、かつての指導者達の間に対立や幻滅がある。ブラックフォード夫妻は「Don't Tread on Me(自由を踏みにじるな)」と印刷された茶会党の旗の箱を自宅のリビングルームから片づけた。夫妻はもはや茶会党の活動を信じていないからである。茶会党は力を増すため、他の保守派グループや共和党本流に吸収されつつあり、運動の焦点である連邦財政支出の削減を顧みなくなった、と夫妻は考えるようになった。 同様に、テキサス州の州境近くでは、4人の子供を持つ自営業のトニー・コーソート氏が、2009年に自ら設立したウィチタフォールズ茶会党から脱退した。ムーブメントは、中絶や同性婚への反対といった問題に足を踏み入れることで焦点がぼやけていたと同氏は語った。 共和党のケイ・ベイリー・ハッチンソン上院議員引退に伴う補欠選挙で誰を支持するかで、テキサス州の活動家の意見が分かれている。フリーダムワークスと一部の地元グループは、財政保守派で元州検察官のテッド・クルス氏を推している。他の活動家は、全米レベルの茶会党のグループがテキサス州の選挙戦に飛び込み、中絶反対派で、州議会における茶会党幹部会創立者のダン・パトリック州上院議員を応援していることにいらだちを感じている。 分裂した状況は米国の他の地域でも同様である。茶会党のグループは、一部地域で地方選挙や共和党ポジションの候補擁立に成功しているが、2010年に運動が盛んだった他の地域では、活動が劇的に後退している。 特に顕著なのは注目を浴びた茶会党の候補が2010年中間選挙で劇的勝利を収めたデラウェア、アラスカ、ネバダの各州である。「デラウェアとアラスカはまだ混乱しており、われわれにはほとんど把握不能な場所となっている」とティーパーティー・パトリオットの広報を担当するシェルビー・ブレークリー氏は述べている。同グループは減税と歳出削減に注力し、中絶などの社会問題は避けている。 世論調査からは米国有権者の茶会党支持の低下がうかがえる。ウォール・ストリート・ジャーナルとNBCニュースが7月に実施した全国調査では、自身が茶会党のムーブメントの支持者であると答えた米国人の比率は、2010年の中間選挙前後の30%から25%に低下した。 茶会党の様々な全米レベルのグループのリーダー同士も、互いの足を引っ張り始めた。ティーパーティー・パトリオットのメックラー氏は、2010年に保守派候補者のために数百万ドルの資金を集めた政治活動組織のティーパーティー・エクスプレスは、「茶会党を利用して金を儲けるために作られた」のであり、「茶会党の運動を食い物にする組織である」と言う。メックラー氏はソーシャル・ネットワーキング・サイトのティーパーティー・ネーションを「非主流派」と呼ぶ。 別のインタビューでこれらグループのリーダー達が反論した。ティーパーティー・エクスプレス創立者の1人、サル・ルッソ氏は、「二枚舌を使う」ため、ティーパーティー・パトリオットは信用できないと述べた。 サウスカロライナ州からコロラド州デンバーまで、この数カ月に開催された茶会党のイベントは精彩を欠き、数万人が州都やワシントンに集結した2009年、2010年の活気ある集会には遠く及ばない。ジョージア州の茶会党指導者が今秋に計画していた「フリーダム・ジャンボリー」は、一時は数千人の活動家の参加を見込んでいたものの、関心の低さから7月に中止が決まった。 主催者のウィリアム・テンプル氏は、自身のウェブサイトで、支援が足りないとして他のグループを激しく非難した。「この運動に団結を取り戻すための計画や指示がある者には統率を任せたい」とテンプル氏は7月半ばにサイトに書き込んでいる。 ブラックフォード夫妻は、2009年4月にテキサス州でムーブメントに参加した。その理由の一つは、自動車メーカーと金融機関の救済に関し、民主党と共和党の両方に怒りを感じていたことである。「私の救済はどうなったのか」とブラックフォード氏は言う。「『ほら、ダン、あんたのクレジットカードの債務が1万ドルあるだろう。代わりに払ってやるよ』なんて誰も言わなかった」 まもなく夫妻はテキサス州都で集会を開くバスツアーを組み、愛国的な装飾と合衆国憲法をテーマにした塗り絵の本を茶会党のイベントに運んだ。「極めてシンプルだった。歳出を抑制し、政府による管理を減らし、健全な財政運営を行うだけだ」とブラックフォード氏は語る。 その年の秋までに夫妻はサンハシント茶会党を立ち上げた。メーリングリストには1000人の名前があり、定例会には100人以上が参加した。 2010年11月の中間選挙で、サンハシント茶会党はテキサス州選出の2議席を民主党から奪うことができなかった。それでもブラックフォード夫妻のグループは、全米で起こった展開を大いに喜んだ。一部の州での敗北が注目されたものの、茶会党ムーブメントは、共和党による下院の過半数議席獲得をけん引した。 テキサス州の共和党が州議会における茶会党幹部会を発足させてから、ブラックフォード氏のジレンマが始まった。幹部会議長を務める共和党のパトリック議員は、歳出削減を図るどころか、最初の会合で中絶手術前の超音波検査を義務づける法案の推進に成功したのである。 ティーパーティー・パトリオット内には、軍隊における同性愛から同性結婚にいたるまで社会問題への取り組みを声高に求める一団がある。「社会問題は極めて対立を招きやすい」とブラックフォード氏は語る。 サンハシント茶会党では会合出席者が減少した。ブラックフォード氏は、リーダーを引き継ぎたい人がいるかどうかたずねた。積極的なメンバーの1人であるバイロン・シュルンベック氏は誰も名乗り出なかったと当時を振り返る。「すっかり気が抜けてしまったようだった」とシュルンベック氏は言う。 債務上限引き上げ合意に失望―活動を再生させるとの声も ブラックフォード夫妻は別の手段による政治活動を検討中である。4月に夫妻はサンハシント茶会党の法的な解散手続きをとり、活動から身を引いた。そして茶会党関連用品を箱15個を保管場所に片づけた。 今週の債務法案を巡る合意は、ブラックフォード氏にとって茶会党ムーブメントに最も幻滅した出来事となった。同氏は、合意の条件から見て、多くの共和党員が茶会党の機嫌を取り、本当の価値観を採り入れることなく「茶会党ムーブメントの波に乗った」と述べた。 しかし、こうした失望にもかかわらず、茶会党のリーダーや活動家が、より中央集権的な勢力を目指していると裏付ける証拠はほとんどない。その理由のひとつには、彼らが軽蔑するワシントンの体制側に一段と容易に取り込まれてしまうことへの恐れがある。茶会党ムーブメントの分散された構造は、時に混乱を招くが、意図的にそうしているのであり、強みの一つでもあるとの意見も多い。 茶会党主要グループは信念を曲げることなく、8月1日に債務上限の引き上げを非難し、連携する議員に反対票を投じるよう呼びかけた。下院で法案を承認するための採決が行なわれた時、リーダーである共和党のミッシェル・バックマン議員(ミネソタ州)を含む60人の茶会党幹部会議員の半数近くが、合意に反対票を投じた。 活動家や全米レベルの茶会党リーダーは1日、債務上限引き上げ法案合意に伴う苦い思いも、2012年の選挙に向けた運動の活発化に生かすつもりであると述べた。「われわれはこの議論を変えた」とフリーダム・ワークスのマット・キビー代表は語る。 ティーパーティー・パトリオット創立者の1人であるジェニー・ベス・マーティン氏は、このムーブメントには、1回大きな選挙で勝ったからと言って全ての目標が達成できるという考え方はないと言う。「連邦議会に進出すれば、全てが変わるといった誇大妄想を持ったことはない」とマーティン氏は述べ、「2012年の選挙でははるかに画期的な成果をあげるだろう」と付け加えた。 茶会党グループは、特に2010年の中間選挙のような激戦の末の勝利の後は、一部の活動家が疲弊することは避けられないと述べた。その好例として、ティーパーティー・パトリオットは、ブラックフォード氏が主催するグループが解散した後、ヒューストンで茶会党グループが複数設立されたと述べている。 茶会党支持者の中には、債務上限の引き上げを巡る対立で生まれた敵意が、実際のところ、茶会党に新たなエネルギーを注入することになったと言う者もいる。「何か茶会党を活性化するものを探していたところだ」と、ジョージア州の活動家テンプル氏は語る。「既に様々な活動家から『さあ、バスに乗ろう』というメールをもらっている」 記者: Douglas A. Blackmon and Jennifer Levitz |