http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/559.html
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労働生産性が上昇すれば高い賃金であっても少数の労働者で十分になるが
低賃金であれば労働生産性が低くても、多くの労働者を雇用することで対抗できる
理想的には、規制を緩和し、高い生産性の雇用を増やして、
全体のサービスの質と量を向上させることだが、
きちんと再分配や累進課税が地球全体で行えない限り、そうはならない
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/16838
雇用を生めない米国製造業の「強さ」
2011.07.29(Fri)
(2011年7月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
連邦政府の債務上限引き上げを巡ってワシントンで繰り広げられている気難しい争いを見れば、それだけで誰もが米国の将来を悲観するだろう。
筆者の同僚クライブ・クルックはいみじくも、政治家たちの閉塞状態を米国の労働者たちの「比類なきエネルギーと気概」と対比させている(記事参照)。
雇用なき景気回復に苦しむ労働者
米製造業景気指数、3年8か月ぶりの高水準
米国製造業は生産高を伸ばしているが、雇用者数は減っている〔AFPBB News〕
残念なことに、前者はまだフルタイムの仕事を持っているが、後者の多くはそうではない。連邦議会のムードが刺々しい1つの理由は、失業率を下げられない足取りの鈍い景気回復の渦中にあって、有権者が不安を感じていることだ。
失業率は6月に9.2%まで上昇し、「雇用なき景気回復」によって1460万人が足留めを食らったままになっている。
筆者は今月、米国第2位の輸出企業であるゼネラル・エレクトリック(GE)が所有するノースカロライナとサウスカロライナの2つの工場で働く米国人労働者を見に行く機会に恵まれた。工場訪問では感心することが多々あった――ワシントンよりも多い――が、雇用創出について楽観的になる理由はほとんどなかった。
GEは主に輸出用にジェットエンジンとガスタービンを生産するハイテクな「最新鋭製造工場」をお披露目するために、ジャーナリスト向けの見学ツアーを企画した。
GEの会長兼CEO(最高経営責任者)、ジェフリー・イメルト氏は現在、バラク・オバマ大統領の諮問機関である「雇用と競争力に関する諮問会議」――雇用不足に対処するための取り組み――の議長を務めている。
GEの工場に見る米国製造業の強さ
2つの工場は、中国の台頭にもかかわらず、米国がなぜ今も製造業大国であるのかを説明する好例だ。(数字の数え方によっては)中国の製造業生産高は米国のそれを追い抜いたばかりだが、IHSグローバル・インサイトによると、それでも両国の生産高は日本の2倍、ドイツの3倍に上るという。
中国が大規模な低賃金生産によってこれを達成したのに対して、米国は生産性を向上させた。何しろ中国の労働生産性は米国の12%程度にとどまっている。米国の労働者は極めて生産的で、工場がほとんど労働組合化されていない南部の州では特に生産性が高い。
このことは、GEエビエーションの工場が今年377基のジェットエンジン――80%は輸出用――を生産するノースカロライナ州ダラムではっきり示されていた。ジェットエンジンを組み立てるのは、全員が技術資格を得るために2年間勉強し、組み立てラインの設計の責任を負う技術者のチームだ。
これらは魅力的な仕事だが――技術者の多くは退役軍人――、その数は多くない。工場は新規に人を雇ってはいるが、現在雇用しているのは330人の技術者と20人の管理者だけだ。
米GE、公共事業に2億5000万ドルの投資を発表 - インド
GEのジェフリー・イメルト会長〔AFPBB News〕
イメルト会長は、3300人の労働者が1台2500万ドルもするタービンを生産するサウスカロライナ州グリーンビルのGEの工場で働く従業員1人につき、サプライチェーンで8人の雇用が存在すると言う。
だとしても、これらの工場は、資本集約度と労働生産性の殿堂であって、雇用の殿堂ではない。
「じゃあ『生産性を下げよう』と言えるわけではない」。グリーンビル工場を歩きながら、イメルト会長はこう述べた。「できるだけ安い費用で生産させてもらって、私が世界中至るところで製品を売るために必死で頑張る」
米国の工場を維持したいのであれば、GEなどの企業には、ほかに選択肢はないというイメルト会長の見方は正しい。
だが、そのことは、なぜ製造業の雇用が過去10年間で570万人減少したのか、なぜ米国製造業の雇用に関するマッケンジー・グローバル・インシティテュート(MGI)の最も楽観的な見通しが2020年までゼロ成長となっているのかという理由を説明している。
生産性が伸びて雇用が減り続ける実態
米国製造業に関する問題は、規模が縮小してきているということではない。繊維や電子機器の製造を中国に「オフショアリング」したにもかかわらず、米国の製造業生産高は1997年から2007年にかけて年間3.9%増加している。だが、生産性が同じ期間に年間6.8%向上したため、何百万もの雇用が失われた。
MGIの試算では、製造業がこれまでと同じ道をたどれば、2020年までにさらに230万の雇用が失われる可能性がある一方、完全雇用に戻るためには米国経済は2100万の雇用を創出する必要があるという。
製造業の雇用の小規模な回復――4月までの6カ月間に16万4000人が追加された――は、最近になって失速した。
縮小する中国との賃金格差、「オンショアリング」の動きも
最も期待されるのは、生産性が劇的に向上して、わざわざオフショアリングする価値がなくなることだ。中国沿海部の都市では賃金が上昇しているため、「オンショアリング」の傾向を示す兆候が出てきている。
米国で製造設備を拡大している企業にはキャタピラーやNCRなどがあり、GEもミシシッピーで250人を雇用する航空機エンジンの工場建設計画を発表したばかりだ。
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)のパートナー、ハル・サーキン氏は、中国と米国との賃金格差の縮小は、米国内の生産性向上と相まって、2015年までにノースカロライナやサウスカロライナといった米国南部の州に対する中国沿海都市のコスト面の優位性を取り除く水準に近づくと指摘する。
「中国の労働者が時間当たり25セントしか支払われなかった時は、考えることはあまりなかったが、その方程式は調整されつつある。我々は製造業の雇用が増えているのを目にし始めており、それは大きな波の始まりだ」とサーキン氏は言う。
サーキン氏を信じられればいいのだが、筆者はなかなか信じられずにいる。製造業の生産性は今年第1四半期にさらに4.2%拡大しており、雇用については、米国は単に現状を維持するだけでも生産能力を拡大させなければならないのだ。
特に、比較的教育水準の低い人たちにとっては厳しい状況だ。今は多くの組み立て作業でさえ短期大学の資格が求められているからだ。
労働者がレイオフされる間もワシントンは・・・
中国は雇用競争をまだあきらめてはいない。珠江デルタでは賃金が上昇しているが、それが生産を内陸部に押しやっている。ベトナムやタイ、インドネシアといった国々も、不足分を補っている。
米国製造業には語るに値する話があるが、その話は、雇用なき景気回復に直面している失業中の何百万人もの人々のための仕事に関するものではなく、技術や生産性に関するものだ。
米国の労働者がレイオフされていく傍らで、ワシントンの生産性は今後も驚くほど低いままであり続けるのだろう。
By John Gapper
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