http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/558.html
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http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20110728
中国高速鉄道事故を受けて25日から26日にかけて主要紙社説はこれを取り上げています。
【朝日社説】中国鉄道事故―背伸びせず原因究明だ
http://www.asahi.com/paper/editorial20110725.html
【読売社説】中国高速鉄道 安全軽視が招いた大事故だ
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110724-OYT1T00746.htm
【毎日社説】中国鉄道事故 安全より国威発揚優先
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20110726ddm005070169000c.html
【産経社説】中国高速鉄道事故 安全置き去りの国威発揚
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110726/chn11072603130004-n1.htm
【日経社説】官民一体で中国から国産技術を守ろう
社説タイトルからも明らかですが、朝日、読売、毎日、産経の論調はほぼ一致しています、事故は国威発揚優先するあまり安全軽視が招いたものであるとの論ですが、特に朝日社説はタイトルの「背伸びせず」も含めて「上から目線」な少しばかり挑発的ともいえる表現が多いです、朝日社説の結語から。
中国当局は日欧の協力も求めて事故を徹底的に調査し、安全第一の基本を確立しなければならない。それができなければ、交通機関にとどまらぬ幅広い分野で進む急成長に対して、技術の安全さを危ぶむ、中国リスク論さえ招きかねない。
「日欧の協力も求めて事故を徹底的に調査」すべきと指摘をしたうえで、このまま「安全第一の基本を確立」できなければ「幅広い分野で」「中国リスク論さえ招きかねない」と結ばれています。
この朝日社説に代表される日本メディアの論調は中国メディアにも取り上げられているようですが、それはともかく興味深いのは一人異彩を放つ「【日経社説】官民一体で中国から国産技術を守ろう」であります。
社説は「中国の高速鉄道で惨事が起きた。多数の犠牲者が出たのは残念だ。」と冒頭こそ事故に触れていますが、すぐに「中国版新幹線」の特許申請の動きを警戒します。
一方、日本の技術を使った別タイプの「中国版新幹線」では特許申請の動きを見せる。「改良し国産といえる水準に高めた」との主張だが、そうした強引な手法も気にかかる。
鉄道に限らず、自動車やハイテクでも、中国政府が現地生産を認める代わりに中核技術を開示させたり、合弁相手の中国企業に設計を自由に変えていい権利を認めさせたりと要求をエスカレートさせている。技術を出せば「独自技術」と言い出さないか。企業には大きな不安だ。
産業分野問わず、まず「現地生産を認める代わりに中核技術を開示」させ、さらに「合弁相手の中国企業に設計を自由に変えていい権利を認めさせ」、やがて「独自技術」と言い出すのが中国の手口だと指摘します。
次に、国産技術を中国に取られないためには民間だけでは限界があると主張します。
競争力の源泉である国産技術を中国に取られないために、企業は何ができるか。有力市場で事前に特許を押さえておくなどの目配りは経営の基本だ。ただ知的財産権を守る法的措置だけでは十分ではない。
中国市場への進出を目指す外国企業は、中国の規制当局から工場立地の許可や事業認可を受けなければならない。許認可の見返りとして技術移転を要求されれば、現実には抵抗するのは難しい。
たとえ世界貿易機関(WTO)協定に抵触する可能性があっても、中国との関係は悪化させたくない。要求を拒み、中国が米欧のライバル企業に許認可を与えるのも困る。苦渋の決断を迫られ、泣く泣く先端的な技術を中国の合弁相手に開示する日本企業は少なくないはずだ。
中国から国産技術を守るためには、欧米諸国を見習って官民一体で交渉すべきだと結びます。
そのためには、日本の競争力に関わる重要な案件では、官民一体で交渉にあたり、不当な要求に対抗する必要がある。経済産業省や外務省は個別企業の問題だとして看過せずに、交渉の前面に立つべきだ。
米国や仏独の政府は企業の対中進出の交渉の要所で外交力を発揮し、企業の利益を守っている。首脳外交で企業の個別案件を取り上げる場合も多い。日本の対中外交の当事者に企業の利益を守る気概はあるか。
他紙が事故の原因が中国当局の安全軽視にあると指摘、日欧の最新技術を中国が駆使しきれないことを指摘しているのに対し、日経一人、そんな未消化の「中国版新幹線」技術ですら「独自技術」と主張し各国で特許申請の動きまでおこしている中国の手口に警鐘を鳴らしているわけです。
・・・
この日経社説の警鐘「官民一体で中国から国産技術を守ろう」をあざ笑うかのような報道が連日続いています。
26日付け時事通信記事から。
EV技術、中国に「無制限供与」=開発は現地ブランドで−日産ゴーン社長
【北京時事】日産自動車のカルロス・ゴーン社長は26日、当地で記者会見し、中国での現地生産に乗り出す電気自動車(EV)について、合弁先の中国企業に「技術を無制限で供与する用意がある」と表明した。同社長は「中国だけでなく、世界中どこでも同じ方針だ。提携契約でも最初から決まっていた」と説明した。
ただ日産は、中国でのEVの開発・生産では、同社が実用化に成功したEV「リーフ」の現地生産は避け、現地専用ブランド「ヴェヌーシア」で新規に行う方針。ゴーン社長はこの点について「(独フォルクスワーゲンなど)現地生産を決めた競合他社もこうした方針を採用している」と強調、技術流出への警戒感ものぞかせた。(2011/07/26-18:56)
http://www.jiji.com/jc/c?g=ind_30&k=2011072600759
総額6000億を投じて中国での現地生産を230万台に拡大、合弁先の中国企業に電気自動車(EV)の「技術を無制限で供与」し、EVの現地生産に踏み切るとした日産自動車のカルロス・ゴーン社長の北京での会見なのであります。
広東、湖北、江蘇省に完成車の新工場を造るだけでなく、エンジンや変速機など部品工場も増やし、100%中国生産を達成、中国での市場シェア10%を目指すとのことです。
うむ、半分外資企業のようなものですがこの日産の方針は、いつかたどった道をまた繰り返そうとしていると感じるのは私だけではありますまい。
虎の子の最先端のEV技術がこうして合弁先中国企業に流出し、やがて彼らは「独自技術」と称して早ければ数年後、日産の強力なライバルとして出現することになるのでしょう。
高速鉄道のときもそうですが、中国が技術的に遅れている分野では海外の優秀な最先端技術を競わせ中国に導入させ、やがてその技術を「独自技術」として世界市場に打って出るわけです。
こうした手口で中国は繊維業界、家電業界などいろいろな世界市場でシェアを拡大していきました。
白物家電で世界シェアトップは中国・海爾集団(ハイアール)であります。
28日付け読売新聞記事から。
三洋電機の白物家電事業、ハイアールに売却へ
パナソニックが、子会社の三洋電機の洗濯機と冷蔵庫事業を、白物家電で世界最大手の中国・海爾集団(ハイアール)に2011年度中をめどに売却することが28日、分かった。
課題となっていた三洋との重複事業の解消を進展させる。ハイアールは、三洋の技術やブランドを活用し、日本や東南アジア市場での販売拡大につなげる狙いだ。
近く三洋とハイアールが基本合意する。売却額は約100億円とみられる。洗濯機を製造する三洋アクア(大阪府守口市)など日本と東南アジアにある三洋の洗濯機と冷蔵庫関連の子会社など10社程度(年間売上高計約700億円)が対象。従業員約2000人もハイアールに移る。
三洋とハイアールは02年、家電分野で包括提携し、現在も三洋が冷蔵庫の生産をハイアールに委託し、ハイアール製品の日本国内での修理を引き受けている。
(2011年7月28日12時11分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110728-OYT1T00526.htm
パナソニックの子会社三洋電機の洗濯機と冷蔵庫事業の、中国・ハイアールへの売却額は約100億円であります。
これにより、ハイアールは三洋の技術とブランドを手にすることができます。
日産の中国進出記事とこの三洋の白物家電事業売却記事はふたつ並べて考察すると2つの点で実に示唆に富んでいると思います。
一点目は、中国側の視点で考えた場合、電気自動車(EV)など先端技術で中国が遅れをとっている市場においては、中国は合弁事業などを通じて将来の「独自技術」獲得のためのノウハウを得ます。
やがて産業競争力が付けばハイアールのように買収により外国の優れた技術を獲得していきます。
二点目は中国のこうしたやり方に、日本企業が結果として進んで協力している点です。
進んで協力しているというよりも、日産にしてもパナソニック・三洋にしても、報道によれば日本側から積極的に動いていることがわかります、彼らにすればその時点での利益追求の企業論理からすれば正しい選択であると主張することでしょう。
「官民一体で中国から国産技術を守ろう」と主張する日経社説ですが、現実は国産技術の中国流出はダダ漏れに近いものがあります。
まったく歯止めがきいていません。
経営側が利益追求以外の志をもたない限り、国産技術の中国流出は止められないのかもしれません。
(木走まさみず)
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