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黄金の輝きを放つスイスフラン
2011.07.28(Thu)(英エコノミスト誌 2011年7月25日号)
誰もが好きなように見える紙幣
最近、紙幣はあまり人気がない。金相場が7月18日に、米ドル、ポンド、ユーロ、円に対して過去最高値をつけたのを見るといい。
大西洋の両側で見られるゼロに近い金利や債務危機によって、投資家はリスク回避傾向を強め、各国政府がインフレによって債務問題から抜け出そうとしているのではないかと神経質になっている。
だが、このルールには1つ例外がある。スイスフランである。
右図が示すように、スイスフランは貿易加重ベースで見ると、外国人による銀行口座開設を阻止するためにスイスがマイナス金利を課した1970年代よりも強くなっている。
UBSのストラテジスト、マンスール・モヒウディン氏の見るところ、スイスフランは、オーストラリアドルやカナダドルと並んで、トレーダーや投資家が世界経済に対する自分たちの読みをヘッジするために使う「影の通貨」の一員になっている。
米国の財政・金融問題が米ドルに与える影響は心配しているが、米国経済――カナダ経済と密接なつながりがある――に賭けたいと思っている投資家は、米ドルの代わりにカナダドルを買っている。
天然資源が豊富なオーストラリア経済は、中国に直接投資する政治的リスクやコーポレートガバナンス(企業統治)上のリスクを取ることなく中国経済に賭けたいと思っている投資家にとって、オーストラリアドルを魅力的な通貨にしている。
旧ドイツマルクの現代版
UBSの見解では、スイスフランはかつてのドイツマルクの現代版を務めている。スイスは、リスク回避的な投資家にとって多くの魅力がある。インフレ率は1%に満たず、経常黒字は国内総生産(GDP)の15%に達している。
スイスフランの強さにもかかわらず、輸出は堅調に推移しており、2011年と2012年の経済成長率はともに2%を超えると見られている。
国際通貨基金(IMF)はスイスが今年わずかに財政黒字を計上すると予想しており、政府債務残高はGDPの53%と欧州のほとんどの近隣諸国の債務比率を大きく下回っている。
UBSとクレディ・スイスに約7兆円の追加引当、スイス紙
スイスの銀行の資産総額はGDPの数倍に上る〔AFPBB News〕
多くの投資家の心の中では、スイスの潜在的な弱みは銀行部門だった。スイスの銀行の資産がGDPの数倍の規模に上っていることを考えると、スイスに銀行を救済する財力はあるのだろうか?
だが、野村の為替アナリスト、ジェフリー・ケンドリック氏は、銀行は最近のスイスフラン高に貢献したかもしれないと言う。銀行がバランスシートを縮小する過程で、資産を本国に戻すことになったからだ。
通貨高に悩むスイス企業、再度の為替介入はあるか
スイス人は、これまで自国通貨に対する上昇圧力に抵抗しようとしてきた。スイス国立銀行(SNB)は2009年、スイスフラン相場を安値誘導するために介入を行った。
スイス最大の企業の1つ、ABBは最近、スイスフラン高を頭痛の種と表現した。製薬大手のノバルティスでは、米ドルベースで9%の増益だった2011年上半期の決算がスイスフラン建てで16%の減益になった。
こうした問題は当然ながら、SNBが再び対策を講じたくなるのではないかという思惑につながっている。特にSNBのトーマス・ヨルダン副総裁が最近、この問題に関する懸念を表明したことを考えると、なおさらだ。
だが、前回の介入は、スイスフランの上昇を食い止めることはできなかったし、ケンドリック氏によると、SNBはその結果、380億スイスフラン(463億ドル)を失った可能性があるという。これは重要な問題だ。というのも、SNBはスイスの州政府に25億スイスフランの年間配当を支払っているからだ。
昨年は、為替差損が生じたため、SNBの準備金から配当を支払わなければならなかった。これ以上の損失は、恐らく政治的に受け入れられないだろう。
スイス経済も、為替介入の危険を冒す価値があることを示すほど通貨高によって大きなダメージを受けることはなかった。インフレは(食料とエネルギーを除く)コア指数では確かにマイナスになっているが、総合指数はまだプラスだ。2009年当時は、物価が年間1%のペースで下落していた。
経済大国ドイツとの緊密な繋がりがスイス経済の成長を押し上げている。SNBが今年後半に利上げするかもしれないという噂まである(現在の金利はわずか0.25%だ)。そうなれば、スイスフランの魅力が高まるのは必至だ。
購買力平価で見ると過大評価されているが・・・
スイスフラン、対ユーロで史上最高値を記録
スイスフラン高はまだ続く?〔AFPBB News〕
投資家は理性的なのだろうか。経済協力開発機構(OECD)の購買力平価(相対的な物価を調整した尺度)のデータによると、スイスフランはユーロに対して42%、米ドルに対して44%過大評価されている。
市場が突如、世界経済の見通しについてより楽観的になった場合、あるいは欧州の政治家たちが債務危機を解決した場合には、スイスフランは下落しやすくなるだろう。
一方で、投資家が、全く収益を生まず、非常に評価が難しく、2001年の安値から6倍も上昇し、他の資産であればバブルの烙印を押されるほど人々の熱狂を引きつけている資産である金に代わる避難場所を見つけているのは賢明なことのように思える。
スイス人は、強いスイスフランが好きではないかもしれないが、しばらくはその状態から抜け出せないかもしれない。
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