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【第188回】 2011年7月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
加藤 出 [東短リサーチ取締役]
穀物価格高騰の恩恵で空前の好況にわく米国農業
米国経済の先行きに不透明感が漂っているが、農業を主産業とする州では様相が驚くほど異なっている。新興国の需要増大をベースにした穀物価格高騰が、農家の所得を急激に増大させ、その波及効果で従来は地味だった地域に経済ブームが起きている。
カンザスシティ連銀の管轄下には、ネブラスカなどの中部の農業州がいくつか含まれている。6月の同連銀の地域経済報告は「成長は依然としてしっかりしている」であり、東西沿岸部の大都市を抱える地区連銀とは異なるニュアンスを示していた。
ネブラスカ州の場合、5月の失業率は4.1%だった。全米の9.1%より圧倒的に低い。リーマンショックで同州の製造業の雇用は大幅に悪化したが、ここ1年で劇的な回復を見せた。新興国需要の高まりによって食品加工業が急成長し、製造業の輸出額は過去1年で3割も増加した。農地価格も急騰。ネブラスカ州では前年比24%も上昇した。
「21世紀のベストジョブは農業だ」。米「タイム」誌2011年7月11日号はそう報じた。昨年の農家のネットでの収入は27%増加し、今年も20%増加する見込みだという。ネブラスカ州グランドアイランドのゼネラル・モーターズの販売店は、昨年最高成績を記録した。シボレー・サバーバン(中級SUV)に乗っていた人びとが、高級車であるキャデラック・エスカレードに続々と買い替えている。
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多くの農業経済学者は今後も農産物価格は上昇を続けると予想している。米国の平均的消費者は、年間に113キログラムの肉を食べている。一方、インドは4.5キログラム未満、中国は45キログラム程度だ。新興国の肉消費量はまだまだ伸びるというのだ。著名投資家のジム・ロジャースは、農家の収入は今後20〜30年で劇的に増加すると見ている。それゆえ彼は、「カネ持ちになりたいなら、銀行員ではなく農家になれ」と話している。
しかしながら、この農業ブームの危うさを指摘する声もある。農地は過去6年で2倍に高騰した。今年の農地の含み益は1970年代に記録されたピークを超えて過去最高に達する模様である。農家の資産の85%は農地だ。カンザスシティ連銀のエコノミストは、金利水準が正常に戻り、もし穀物価格が弱くなったら、農地価格は急落し、農家の資産に対する負債の比率が急上昇すると警戒している。
もっとも、福島第1原発事故の悪影響に苦しめられている東日本の多くの農家にとっては、空前の好況にわいている米国の農家の姿は、あまりに別次元の世界に感じられるのではないかと思われる。
(東短リサーチ取締役 加藤 出)
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