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最近、欧州金融市場で話題になっているのが財政統合トレード(Fiscal Union Trade)と呼ばれるトレード戦略です。これはひとことで言えば欧州共同債発行を先取りした戦略です。
【通貨統合トレード】
通貨統合とは欧州連合に新しい周辺国が加盟する場合、その新加盟国が自国の通貨を捨て、ユーロを採用する場合に発生するトレードを指します。
例えば、トルコがEUに参加し、リラを廃してユーロを採用するということに相当します。つまりリラがユーロにコンバージョンする際にアービトラージの機会が生じるという考え方です。
【財政統合トレード】
財政統合トレードという名称について
これは金融市場に定着した、通貨統合トレード(Conversion Trade)という概念をパロディー化したものだと言えます。財政統合トレードは通貨統合トレードの「通貨」を「財政」に置き換えた呼称です。
それでは「財政統合」とは・・?
欧州連合(EU)は第二次大戦後、半世紀もの時間をかけてゆっくり地域統合を進め、ようやく共通通貨の制定に漕ぎ着けました。
しかし現状ではEUは中央銀行は持っていますが、欧州財務省に相当する機関は持っていません。
それはEU全体の予算を策定したり資金調達したりする権限を持つ機関が欧州には存在しないことを意味します。
予算策定権や債券の発行を決める権限は今でも個々の国に帰属します。
平たく言えば「通貨はユーロという共通通貨を使用しているくせに、国債の発行になると未だにギリシャ国債とかイタリア国債という風に個々の国が債券を出している」という状況がそれです。
中小企業より大企業の発行する社債の方が一般に信用力が高いのと同じ理屈で、発行体が大きければ大きいほどその債券の市場性(marketability)は向上します。
このため「ギリシャ国債をやめて欧州共同債を発行しよう!」という事が若し決まったら、突然、ギリシャをはじめとする周辺国の問題などずっと小さいものになるし、通貨ユーロそのものも強くなる可能性があるわけです。
なぜなら流動性、市場性に優れたユーロ共同債は米国財務省証券と同等か、それ以上に魅力だと考える投資家が続出すると考えられるからです。
【財政統合トレードの第一歩はEFSFによるギリシャ国債買い上げ】
さて、欧州共同債は現在の欧州憲法の枠組みでは実施は困難です。
また欧州共同債を出すということは裏返しに見れば予算の策定権が各国から取り上げられ、欧州連合に集中することを意味しますからこれは国家の主体性や民主主義のプロセスを脅かすものと見做されるため強い反発が見込まれます。
しかし当座の措置として妥協的な暫定案はいろいろと考えられています。
いますぐにでも出来る措置の一例はEFSF(欧州金融安定化基金)によるギリシャ国債の買い上げです。たとえばEFSFが欧州中央銀行(ECB)の保有しているギリシャ国債を肩代わりしてはどうか?というアイデアが市場で話題になっています。
またEFSFがギリシャに資金を融通し、そのお金でギリシャが市場からギリシャ国債を買い戻し、そうすることによって将来の償還から来る借り換え負担を軽減するという手法も議論されています。
さらにEFSFが民間金融機関からギリシャ国債を買い上げる、ないしはギリシャ国債の代わりにEFSF債を渡すという方法も論じられています。
EFSFがギリシャ国債の究極的な保有者となった場合、目先のヘアカットは避けられますがギリシャ国債の償還時にはEFSFに額面価格でキャッシュを払うのか、それともヘアカットするのかの問題がいずれ生じます。つまりヘアカットの議論は「先送り」されるわけです。
【下振れリスクだけでなく上振れリスクも】
上に述べたようないろいろな方法で危機回避するシナリオが現実に検討されており、それらは実行に際して制度面、法律面などからいろいろな制約を受けているけれど、やって出来ない事ではないという事です。
するとユーロ問題は「ダウンサイドしかない」と決めてかかるのは早計であり、逆に物事が良い方向へ進展するという「上振れリスク」にも一応気を配っておく必要があるということです。(抜粋)
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