http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/453.html
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遠くない将来、
国内生産力が技術革新の停滞、空洞化と高齢化で低迷し、社会保障などのコスト(必要サービス)や輸入コストを賄いきれなくなれば、悪性インフレと金利上昇によるGDP比の歳出急増(負債の爆発)は避けられない。
日銀が買い続ければ名目上はデフォルトはしないだろうが、さらに円安インフレが加速して円関連の金融資産は紙屑になるから、保有リスクがあるという意味では同じだな。
政治家と国民が愚かでなければ、その前に、社会保障の歳出削減と成長戦略、課税強化を行うだろうが、一応、破綻リスクも頭に置いておいた方がいいだろう。
だからと言って、今、海外の国債や株式を買うのが正しいという保証もないし、リスクに対するアリアンツの戦略が長期的に妥当という保証もない。
未来は不確定だ。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110718/277952/?ST=business
大前研一の「産業突然死」
国債に依存する生保、リスクは増大する一方
生保も貯金も蒸発、生活設計がすべて破綻
2011年07月19日
生命保険会社が資産運用での日本国債依存度を高めている。生命保険協会のまとめによると、2011年3月末における生保各社の運用資産に占める国債 の比率は41.3%となり、5年連続で過去最高を更新した。その一方で、1980年代までは50%を超えていた融資比率は13.7%となり、過去最低水準 となった。
このところ原発問題やエネルギー問題ばかり取り上げてきたので、今回は視点を変えて、生命保険会社が傾斜する国債依存の問題を考えてみよう。
日本国債への投資が飛び抜けて高い
言うまでもないが、生命保険会社は被保険者の病気やケガ、死亡などに応じて、あらかじめ決められた保険金を支払う義務を負っている。この保険金は 被保険者が生保会社に支払った保険料(掛け金)を元手にしており、将来の保険金支払いを確実に果たすため、また配当金の原資をかせぐなどの目的で資産運用 を行っている。
下のグラフは資産運用先の推移を示したものだ。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110718/277952/chart1.jpg
2007年から生保各社は資産運用先を急激に国債へシフトした。ここ数年、伸び率は鈍化しているものの、依然として漸増傾向にあることがわかる。 これに対して株式や外国証券は大きく減少した後、漸減傾向にある。かつては銀行と見間違うほどあった貸付金は15%程度にまで落ちたままだ。
その結果、国債だけが飛び抜けており、その他の資産運用先に2倍以上もの差をつけている。2006年以前は投資配分のバランスが取れていたことを 見れば、最近の国債への依存度の高さは「異常」とも思える。そして、なお生保各社は日本国債を有力な投資先と見なしているわけである。
Next:試算運用先のうち株式はわずか5%前後
資産運用先のうち、最も低いのが株式である。割合としては5%前後といったところだ。生保各社が国内企業の株に投資していないのは、低迷する株価 を考えてみればやむを得ない面もある。ならば他の投資先を検討すればいいようなものだが、外国証券に投資しているわけでもなければ、アグレッシブな貸し付 けを行っているわけでもない。
ノルウェーのノルゲス銀行(中央銀行)、米大手金融機関のステート・ストリートなどが積極的に日本株をポートフォリオに組み込んでいるのと対照的 に外国の年金ファンドに比べても、日本の機関投資家は株式組み込みを極端に減らしてきている。乱発される国債をひたすら買っているだけだ。
この状況に危機感を感じるのは、私だけではないはずだ。今年3月末の国債発行残高は約760兆円に達し、借入金などを加えれば「国の借金」は 920兆円を突破した。日本の財政は言ってみれば「メルトダウン寸前」の状態が続いているわけで、こうした事態を収拾する気配も感じられない。
対国内総生産(GDP)比率で見た公的債務は、格付けが(破綻=Dを除くと)最下位まで下がってしまったギリシャや急速に落下中のポルトガル、アイルランド、そして先週になって下図の位置から引き下げられたスペイン、イタリアなどに比べても日本はダントツである。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110718/277952/chart2.jpg
Next:日本の財政が破綻すれば、生命保険は蒸発する
日本の財政が破綻すれば、生命保険は蒸発する
その日本国債は生保(そして年金、貯蓄、信託)に極端に傾斜して組み込まれている。しかし、日本国債が依然として比較的安定していると判断されて いる唯一の理由は、外国から見れば「まだ日本人自体が積極的に買っているから安心に違いない」という「美しい誤解」をしているからだ。
しかし、当の日本人に「買っている」という意識はない。なぜなら国民が直接買っている部分はわずかで、大半は生保のような金融機関が運用先として 買っているに過ぎないからだ。日本株を大量に買っている上述のような外国の機関投資家は日本国債をほとんど買っていない。利回りも小さく魅力が乏しいうえ に将来の不安要因もあるので長期運用の年金や生保に組み込むわけにはいかないからだ。
ということは、いよいよ日本が財政破綻すれば、国債に大きく依存してきた生保各社も自動的に破綻することになる。私たちがずっと支払い続けてきた生命保険も蒸発してしまうのだ。
生保会社は「国家財政が破綻したから生命保険はお支払いできません。もちろん納めていただいた保険料もお返しできません」と宣言せざるを得なくな る。頼みの綱の日本政府が財政破綻してしまえば、もはや生保各社を救済することはできない。生保各社が国債にしがみついている限り、これはかなり高い確率 で起こり得るシナリオと言えるだろう。
しかし、その時は国民にとっての問題は生保だけではない。貯金(特に郵貯)は蒸発し、生活設計がすべて破綻するのと同時動作ということになる。
Next:日本生命は独アリアンツの経営ノウハウを学び取れ
そんな中、国内生保最大手の日本生命に興味深い動きがあった。ヨーロッパ最大の保険会社でドイツに本拠を置くアリアンツに資本参加すると7月5日 に発表したのだ。出資額は約585億円で、同社発行済み株式の1〜2%を取得する。高成長が続くアジアなどの新興国で保険商品の開発、資産運用などに共同 で取り組む考えだ。
これは素直にいいことだと思う。アリアンツはきわめて堅調な経営をしていることで世界に知られる保険会社だ。これを機に日本生命はアリアンツの経営ノウハウを積極的に学び取り、国債依存という脆弱な経営体質からぜひとも脱してもらいたい。
出資額約585億円というのは日本生命の企業規模からすれば微々たるものだろうが、その原資の大部分は被保険者の払い込んだ保険料なのだから、断じて死に金にしてほしくはない。
アリアンツは、被保険者のライフサイクルをにらんだ金融提案に定評がある。たとえば顧客の学歴・職歴、家族構成などから生涯賃金などを推定し、そ れに応じて保険を売ったり、融資したりしている。そして、それにより高い収益を上げている。それに比べれば、日本の生保各社は魅力的な商品を開発できてい ない。学ぶべき点は多いはずだ。
繰り返すが、生保各社が国債への依存度を高めていくのは大きなリスクである。顧客には「万が一のリスクに備えて」といって保険を売っておきながら、保険会社が自らのリスクを放置しておくのは矛盾以外の何ものでもない。
アリアンツへの資本参加という、いわば一種の「外圧」によって、生保各社が経営の健全性を取り戻す戦略を初心に返って練り直してもらいたい。
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大前研一の「「産業突然死」時代の人生論」は、09年4月7日まで「SAFETY JAPAN」サイトにて公開して参りましたが、09年4月15日より、掲載媒体が「nikkeiBPnet」に変更になりました。今後ともよろしくお願いいたします。また、大前氏の過去の記事は、今後ともSAFETY JAPANにて購読できますので、よろしくご愛読ください。
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大前 研一(おおまえ・けんいち)
1943年、福岡県に生まれる。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博 士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。以来ディレクター、日本支社長、アジア太平 洋地区会長を務める。 2005年4月に本邦初の遠隔教育法によるMBAプログラム(ビジネスブレークスルー大学院大学)が開講、学長に就任。経営コンサルタントとしても各国 で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権の国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 著作に『さらばアメリカ』(小学館)、『新版「知の衰退」からいかに脱出するか?』(光文社知恵の森文庫)、『ロシア・ショック』(講談社)など多数がある。大前研一のホームページ:http://www.kohmae.comビジネスブレークスルー:http://www.bbt757.com
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