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金融政策はトレードオフだから、経済状況を変えることはできても必ず反作用も生じる
例えば量的緩和やPKOは一部の投資家を豊かにするが、彼らの消費が雇用を増やす効果は小さく
じきにインフレによる実質所得減少のマイナス効果が上回って、引き締めに走らざる得なくなり、再び不況に引き戻される
結局、国民の実質生活水準を高めるには、生産性を高めて、国内外で必要とされる付加価値の高い財やサービスの供給を増やし、増えた付加価値を再分配して下層をサポートすることしかないが
そのような構造改革には時間がかかり、しかも多くの努力や智慧を必要とするので
怠惰で依存的な国民と愚かで目先のことしか考えない政治家には、なかなか採用できない
必然の結果として、豊かな国は衰退していくことになる
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110713/221461/?ST=print
政府がどう努力しても、政策で経済状況は変えられない?!
2011年7月14日 木曜日
Bloomberg Businessweek
Zachary Karabell(Bloomberg Businessweek寄稿執筆者)
米国時間2011年6月30日更新「Does Government Matter? 」
米国が建国235周年を迎えるなか、ワシントンでは例年通り、激しい論争が繰り広げられている。今回、焦点となっているのは、米議会が米国の債務上限を引き上げ、米政府が債務不履行(デフォルト)に陥る事態を回避すべきかどうかだ。
これは党派対立が先鋭化しやすい問題だ。米政府の債務残高はGDP(国内総生産)比95%近くに達している。共和党は増税によって政府財源を確保することに強く反対している。そもそも政府が招いた問題であり、政府の規模をさらに拡大するのは問題解決に逆行すると主張する。共和党のジョン・ベイナー下院議長は「この債務問題を招いた元凶は、政府による介入や、『借金が米経済に好ましい効果をもたらす』という政治家の間違った認識だ」と批判する。
共和党は、債務上限引き上げに同意する条件として、政府支出の大幅な削減を求めている。一方、民主党は、緊縮財政は景気回復の妨げになると反論。政府の積極的な関与が今後も経済成長にとって重要だと主張する。バラク・オバマ米大統領は最近、「我々は緊縮財政で繁栄を享受することはできない」と語った。
政府は問題を引き起こす元凶なのか、あるいは問題を解決する救世主なのか。今回の債務上限をめぐる対立は新たな動きだが、論争の中身自体は目新しいものではない。19世紀末の進歩主義の時代から1920年代の自由放任主義の時代の論争も同じだった。米ルーズベルト政権のニューディール政策や米ジョンソン政権の「偉大な社会」計画から、「政府こそが問題」と宣言したロナルド・レーガン米大統領(当時)の保守主義革命における論争も同様だった。
保守派とリベラル派が対立する中で、唯一考えが一致していたのは、「政府には影響力がある」という点かもしれない。リベラル派は政府が適切な役割を果たせば、経済的繁栄につながると考えている。保守派は小さな政府の方が好ましいと考えているが、政府の行動に影響力がないとは考えていない。米国の政治・経済的な議論は、良くも悪くも政府が国家経済に影響を及ぼすという共通の前提に基づいていた。
だが、この前提が間違っていて、政府が問題の元凶でも救世主でもないとしたらどうだろうか。米国が現在直面している問題について、政府は何ら影響を及ぼす能力がないとしたらどうだろうか。
FRBは金利を操作できなくなった
1929年の金融危機の直後、ハーバート・フーバー米大統領(当時)は政府介入の実施を拒否した。フーバー大統領は19世紀的な世界観を墨守していた。政府が社会に介入する役割より、市場の自然な動きを尊重すべきという旧来の価値観だ。20世紀前半、世界大恐慌とニューディール政策の時代を経て、こうした価値観は辺境に追いやられた。それから何十年も、政府の行動が経済的な健全性を左右するという考え方が、米国や欧州連合(EU)、旧ソ連や現在の中国など、ほぼ世界中の政策責任者の共通認識になっていた。
だが、状況は変わってきている。現在、国家が自国経済を統制・管理する能力は大きな制約を受けるようになっている。国家の経済運営における重要な領域の一つが金利だ。2005年、米連邦準備理事会(FRB)のアラン・グリーンスパン議長(当時)は金融政策の効果が出ないことに困惑を表明した。FRBはグリーンスパン議長の時代に短期金利を引き上げた。この金融政策により、長期金利が上昇し、経済活動の低下やインフレ懸念の解消、高騰する米住宅価格の沈静化につながると期待していた。だが、長期金利はあまり変動せず、4%水準にとどまった。グリーンスパン議長はこの想定外の現象を「不可解だ」と評した。
実際の問題は、変化する世界を静的な経済モデルで捉えていたことだった。20世紀の大半の期間がそうだったように、米経済が単独で成り立つ経済構造だった頃は、FRBの判断に沿って資本コストや金利が変動していた。しかし現在は、国際市場の買い手と売り手の判断が金利を決定する。FRBが唯一直接コントロールできる短期金利は市場の一要素にすぎない。
2008年の金融危機の後、この傾向はより鮮明になっている。FRBは短期金利をゼロ金利にまで引き下げたが、長期金利は4%の水準を保ち続けた。その後、金利は約3%まで低下した。金利低下の原因は、その水準が世界の市場参加者が選んだ資本調達価格だったからであり、一国の政府機関が定めたからではない。
失業率は依然として高止まりしている
米政府が高い失業率を改善できずにいることも、政府の影響力に疑問を投げかける事実の一つだ。ワシントンでは、オバマ政権が2009年2月に打ち出した8000億ドル(約64兆円)の景気刺激策が過剰だとする向きと、財政出動が不十分だとする向きに意見が分かれている。いずれにせよ、失業率は9%以上に高止まりし、不完全雇用や非正規雇用の統計値はさらに劣悪な状態だ。
積極財政派は「景気刺激策を実施していなければ、失業率はさらに悪化していたはずだ」と主張する。この主張は正しいのかもしれない。しかし実態として、政府が雇用対策に乗り出して2年半がたっても、雇用情勢は改善が見られない。
実際のところ、雇用問題で政府が唯一成果を上げているのは、公務員の直接雇用だ。過去20年間、政府による雇用がなければ、米国の失業率は現実よりはるかに高い水準になっていただろう(政府雇用は1990〜2008年の新規雇用全体の約4分の1を占めている)。だが、政府の直接雇用は、政府が市場の雇用動向に影響力を持つことを示す事例とは言い難い。
EUも中国も米国と同様
いったい何が問題なのだろうか。政府が政策をもって積極的に介入しても、米国の経済的な命運は良い方向にも悪い方向にもほとんど変化しない。これはなぜなのだろうか。ここ数十年、資本が自由に移動するようになり、世界の債券市場が大きくなり、政府が自国の為替相場を操縦する能力は失われた。その結果、政府が経済を思い通りに動かすことはできなくなっている。
さらに、発展途上国への低コスト生産の移管やサプライチェーンの海外展開など、世界的な雇用動向の影響で、政策責任者が国民の雇用を創出するために果たせる役割は極めて小さくなっている。
こうした難題に直面しているのは米国の政策責任者だけではない。EUは、加盟国が自国の経済的主権を放棄した世界最大規模の事例だ。その結果、ギリシャ政府は現在のソブリン債危機について、構造的問題に対処する手段を奪われている。ギリシャは自国通貨や国内の資本コストを統制することはできない。歳出を削減することはできるが、痛みを伴う措置であり、経済の生産性や機能を向上させるわけではない。
中国は大規模な政府介入で急成長を成し遂げている。その中国でも、政府の影響力低下は避けられない。中国政府が今後、資本統制のさらなる緩和や民間の起業促進に取り組むのに伴い、国際市場が中国経済に及ぼす影響が大きくなる。
こうした中で、国や政策責任者に何かできることはないのだろうか。数兆ドル規模の資金や製品、サービスが日々動いている世界の流動的な資本環境において、政府が発揮できる影響力は限られる。だからと言って、米国が債務の返済を怠っても構わないというわけではない。だが、米政界が超党派で合意できる債務と歳出規模の適正な組み合わせを見出せたとしても、失業や国際競争など、経済成長を阻む構造的課題は依然として残るということだ。
政府は危機的な局面において不可欠であり、大規模なリソース投入や研究開発(R&D)の促進、社会的優先順位の設定、民間部門へのインセンティブ提供などを実行できる独特な立場にある。だが、政府はもはや流れを決定する基軸的な存在ではない。
今年の7月4日の米独立記念日を期に、我々は考え方を改めるべきかもしれない。政府は我々が抱える問題を解決する力はないし、我々が直面する問題を引き起こしている原因でもないのだ。現在の米経済が抱える問題についてワシントンを責めるのは、ワシントンを救世主として期待するのと同じぐらい大きな誤りだ。
この考え方が革命や聖戦のように世の中を揺り動かすことはないだろう。だが、政府の力には限界があることを認識し、その限界の中で建設的に取り組むことが好ましい。米政府がこれまで繰り返してきたように、消費拡大のために大規模な景気刺激策を実施して過大な期待をかけても、失望を招くだけだ。成功する見込みのない果敢な計画を打ち出しても、雇用情勢は変化しないし、ますます複雑化・流動化する世界経済の中で国家の競争力や魅力は向上しない。
現代の政治指導者は、政府がいかに努力しても変えられないことがあるのを認める謙虚さを持ち、変化が可能な分野で意味のある変化の実現に取り組むべきだ。
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