http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/390.html
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資産課税して再分配に使うなら増税も、もちろん悪くはないが
仮にデフレ不況が続くとしたら、単純に課税して財政赤字を減らすのは
短期的には、あまり望ましくはないだろう
http://diamond.jp/articles/-/13095
出口治明の提言:日本の優先順位
【第14回】 2011年7月12日
著者・コラム紹介バックナンバー
出口治明 [ライフネット生命保険椛纒\取締役社長]
「景気がよくなるまで増税は控えるべき」は俗説に過ぎない
政府は、7月1日、社会保障・税一体改革成案をまとめ、閣議報告を行った。本文が15ページ、別紙1が1ページ、別紙2が7ページ、別紙3が4ページと全体でもわずか27ページしかないので、まずは一読してほしい。何事にもよらず批判する前には、その大前提として相手の言い分を虚心坦懐に聴く必要があることは言うまでもあるまい。
社会保障と税は
なぜ一体改革が必要なのか
ところで、なぜ社会保障と税の「一体改革」が必要なのか、最初にわが国の財政の現状を確認しておこう。今年度の一般会計予算92兆円のうち税収はわずか41兆円しかない。実に44兆円を将来世代の負担となる借金(公債金収入)に依存せざるを得ない異常事態となっている。
加えて668兆円の公債残高があり国の借金のレベルとして世界最悪であることは周知の通りである。
次に92兆円の内訳(使途)を見ると、国債費が22兆円、地方交付税等が17兆円あって、これらは政府の裁量の余地がないので、実際に政府が動かせるお金は実は残りの53兆円しかない。その中で社会保障関係費が29兆円を占めている。その次は文教及び科学振興費の6兆円、公共事業関係費の5兆円、防衛関係費の5兆円が主なものであるから、社会保障関係費の突出振りは明らかであろう。
しかも社会保障関係費は他の経費と異なり、わが国の少子高齢化に伴って年々確実に肥大していく。過去20年間で歳出はおよそ200兆円弱増加したが、その内150兆円程度は社会保障関係費が占めている。この一事をとっても、社会保障関係費をどうコントロールするかという問題が死命を制するのは明らかであろう。
要するにわが国の財政の現状を一言で表現すれば「収入(税収)と支出(社会保障関係費)のバランスが崩れている」もしくは「収入の割には社会保障給付に使い過ぎている」ということなのだ。これが社会保障・税の一体改革が必要とされる所以である。
この日本の情況を
「外」からみればどう見えるのか
人間は自分の姿が一番良く見えない動物である。自分の姿を見るためには、他人に見てもらうことが一番である。これは国や社会、企業についても等しく当てはまる真理であろう。では、外から見たわが国の財政の現状はどうか。
次のページ>> 日本人の社会保障費と税の負担率は意外に低い
OECDは今年の4月21日に1年半振りに対日経済審査報告書を公表したが、その中で「消費税率は20%程度まで引き上げることも求められる」と指摘した。またIMFは今年の6月16日に公表した報告書の中で、「高齢化に伴う歳出圧力の高まりに直面する日本の財政再建には、消費税増税が最も適しており、2012年から6年間で段階的に15%まで引き上げるよう」提言した。
OECDやIMFの提言の背後には、わが国の国民負担率が低いという事実がある。すなわち社会保障負担率と租税負担率を合算して、国民所得比で見ると(出所:財務省HP国民負担率の国際比較)わが国の38.8%に対して、英国が46.8%、ドイツが52.0%、フランスが61.1%、アメリカが32.5%となっている。アメリカ一国だけがわが国より低いが、これは社会保障負担率がわが国(16.8%)の約半分(8.6%)であることが主因であって、租税負担率については大差がない(日本:22.0%、アメリカ:24.0%)。
すなわち、外から見れば、わが国は少ない税金でたくさんの社会保障給付を支出している訳であるから、両者のバランスが取れるように増税を行うべきだし、仮に増税を行っても諸外国と比べて決して国民負担率が過重になる訳ではない、と見えるようだ。このように租税負担率にまだ余裕のあることが、わが国の国債の格付が(膨大な借金にもかかわらず)高位安定していることの証左でもあろう。
因みにEUでは、社会保障財源を確保することを目的に、加盟国に付加価値税(わが国の消費税に相当)を最低15%とするように求めている。
このような外からの眼に対して、わが国の政府が自らに課した一体改革成案は「2010年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げる」ことであった。時期・上げ幅共に、中途半端な感じを与えるだけではなく、閣議決定ではなく閣議報告となったため、菅内閣の本気度が疑われても仕方があるまい。もっとも10%という税率そのものは自民党も是認している水準であり、増税に向けて2大政党の足並みが揃ったという点では、それなりの意味があると考える。
消費税は素直に見れば公平な税である
増税の話を持ち出せば必ず寄せられるいくつかの反論がある。まず消費税の逆進性という話が持ち出される。すなわち消費税は消費のうち生きていくために最低限必要な食費などの割合の高い貧しい人ほど負担が重くなるという話だ。これに対しては英国などのように食料品や医薬品を非課税にするという方法が考えられる。また、そもそも論で考えれば、別の考え方もありうる。
次のページ>> 日本の政府もグローバルに見ると、意外に「小さい」
すなわち、人の一生には浮き沈みがある。所得の多い時期もあれば少ない時期もあろう。しかし、仮にいくら稼いだとしても、現実にはそのお金を使って消費しなければ、楽しい人生を送ることは誰にもできやしない。このように人間の一生を素直に見据えれば、消費税こそがすべての人に対して公平な税であると実感できる、という考え方である。この場合、貧しい人には給付によって報いるという方法になろう。
このような考え方に立脚したとしても、わが国では高所得者には累進的に所得税が課せられているのであるから、所得の再配分機能が損なわれる心配はない。さらに付言すれば、相続税を100%の方向で、若い世代に対する贈与税を0%の方向で再構築すれば世代間の再分配機能についても心配する必要がなくなると考えるがどうか。
わが国は小さい政府である
次に、増税の前に歳出を徹底して見直すべきだという主張が寄せられる。それはその通りだろう。だからこそ最大の歳出項目である社会保障との一体改革なのだ。もちろん、その他の経費についても税金の無駄使いは許されない。筆者は6月14日の当コラムで参議院は1年の時間をかけて決算内容を徹底精査せよと主張した。しかし、社会保障を除いたその他の経費は合計しても24兆円しかない。数字の多寡をしっかりと押さえなければ、およそ実効性のある議論はできないということを銘記しなければならない。
歳出の無駄のスケープゴートとして、常に槍玉に上がるのが役人であり霞が関だ。役人・霞が関バッシングほど、わが国で喝采を浴びているものは他にはないと言っても過言ではないかも知れない。「大きい政府から小さい政府へ」という耳ざわりの良いスローガンもよく聞かされる。
これについても数字で考えて見よう。GDPに占める政府最終支出のうち、人件費の占める割合を見ると(2009年、OECD及び内閣府)、わが国は6.4%、アメリカが11.0%、英国が12.1%、ドイツが7.4%、フランスが13.3%となっており、わが国はすでにこれら5ヵ国の中では最も小さい政府を実現しているということになる。なお、公務員数の国際比較については、野村総合研究所のレポート(2005年11月)があるが、それによると国と地方を合わせた人口1000人あたりの公務員数は日本の42.2人に対して、アメリカが73.9人、英国が78.3人、ドイツが69.6人、フランスが95.8人となっており、ここでもわが国が小さい政府であることが実証されている。
次のページ>> 景気が好転しないのは、日本の財政に不安が残るから?
小さな政府の話は、特に政治や経済等社会的な問題については、情緒的な国語ではなく、誰にでも検証可能な算数で話をする癖をつけなければ、有意義な議論はできないという1つの好例であろう。実態的な根拠のないスケープゴート叩きほど無意味なものはないと考える。
「景気が良くなるまで増税は控えよ」
という主張は正しいか
最後に横綱級の反論が押し寄せてくる。一体改革成案にも「政府は日本銀行と一体となって、デフレ脱却と経済活性化に向けた取組みを行い、これを通じて経済状況を好転させることを条件として」税制抜本改革を実施する、と述べられているように、景気が良くなるまで増税を控えよという主張である。この主張は正しいだろうか。
まず、この主張に従えば、景気が良くなるまで増税は実施できなくなるが、仮に、この先景気が良くならなければ一体どうするのだろうか。
次に筆者は63才になるが、旧友が集まれば、ほぼ必ず老後をいかに過ごすかという話になる。その際の最大公約数は「いつまで生きるかわからないし、政府も当てにならないから貯金するしかない」というものだ。
つまり、将来に不安があるから消費を控えるのである。そして、わが国のGDPの6割は消費が占めているのである。政府が「年金・医療・介護はこの先心配なく。その財源として消費税を上げますから」と断言すれば、貯蓄の大半を保有している高齢者は消費に向かうのではないだろうか。市民を消費に向かわせる最大の原動力は、財源の裏付けのあるサスティナブルな社会保障制度の再構築であると考える。増税が不景気を招くのではなく、将来の先行きに対する不安が不景気を招くのだ。
仮に消費税率を10%上げるとした場合、来年から2%ずつ5年間にわたって消費税率を上げ続ければ、駆け込み需要によって、かえって景気は早く上向くのではないか。しかも来年は、復興需要に伴う景気の上昇が見込まれているので、消費税率の引き上げを併せて実施すれば、上昇のスピードに弾みがつくことも十分考えられる。「若い世代」の次期首相が、2012年からの消費税引き上げを断行すれば歴史に名が刻まれるだろう。
なお、97年不況は主として消費税の引き上げがもたらしたものだという話も繰り返し語られているが、経済学者による実証的な研究でそれが確実に裏付けられたという話は寡聞にして知らない。さすがに、景気を刺激するために国債を増発すべきだとか、景気が良くなれば増税しなくても何とかやっていけるという暴論は影を潜めたが(景気のピーク1990年度でも税収は60兆円しかなく、しかも60兆円を超えたのはこの年1回限りである)、景気が良くなるまでは増税は控えるべきだという一般受けのする俗説を乗り越えて前進を続けていくためには、さらに議論を重ねる必要があるだろう。
増税が不人気な政策であることは百も承知だが、人口が少なくなる私たちの子どもたちの世代に、これ以上の負担を先送りしてもいいと考える大人はほとんどいないはずだ、と筆者は信じたい。紙数が尽きたので、社会保障改革については稿を改めて論じることにする。
(文中意見に係る部分は全て筆者の個人的見解である。)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/kentohonbu/pdf/230630kettei.pdf
1
社会保障・税一体改革成案
平成23年6月30日
政府・与党社会保障改革検討本部決定
はじめに
社会保障と税の一体改革については、平成22 年10 月に政府・与党社会保障改
革検討本部を設置し、以来、同年11 月から12 月にかけて社会保障改革に関する
有識者検討会を開催、本年2 月から6 月にかけては社会保障改革に関する集中検
討会議を開催するなど、精力的に議論を進めてきた。また、この間、与党(民主党・
国民新党)においても、民主党社会保障と税の抜本改革調査会等において議論を
深め、報告の取りまとめ等を行ってきた。
本成案は、「社会保障改革の推進について」(平成22年12月14日閣議決定)(別
紙1)に基づき、政府・与党におけるこれらの集中的な検討の成果をもとに、社会保
障と税の一体改革の具体的方向について取りまとめたものである。政府・与党に
おいては、本成案に基づき更に検討を進め、その具体化を図ることとする。
この改革の実現のためには、立場を超えた幅広い議論の上に立った国民の理
解と協力が必要であり、本成案をもって野党各党に社会保障改革のための協議を
提案し、参加を呼び掛ける。
本年3 月11 日に発生した東日本大震災は、我が国に未曽有の被害をもたらした。
この国難を克服していくためには、単なる災害復旧にとどまらず、活力ある日本の
再生を視野に入れた復興のための施策を推進していく必要がある。このため、被
災地・被災者に十分に配慮し、社会保障・税一体改革については、復興対策との両
立を図りつつ取り組むものとする。この中で、未来志向の見地から、被災地を少子
高齢化が進む日本の先進的モデルとしていく。
2
T 社会保障改革の全体像
1 社会保障改革の基本的考え方 〜「中規模・高機能な社会保障」の実現を目指して
現行の社会保障制度の基本的枠組みが作られた1960 年代以降今日まで、@非
正規雇用の増加等の雇用基盤の変化、A地域・家族のセーフティネット機能の減
退、B人口、とりわけ現役世代の顕著な減少、C高齢化に伴う社会保障に関わる
費用の急速な増大、D経済の低迷、デフレの長期化等厳しい経済・財政状況、E
企業のセーフティネット機能の減退、といった社会経済諸情勢の大きな変化が生じ
ている。
これらを踏まえ、国民の自立を支え、安心して生活ができる社会基盤を整備する
という社会保障の原点に立ち返り、その本源的機能の復元と強化を図っていくこと
が求められている。
社会保障改革を行うに当たっては、社会保障国民会議、安心社会実現会議以来
の様々な議論の積み重ねを尊重し、昨年12 月の社会保障改革に関する有識者検
討会報告で示された「3つの理念」(@参加保障、A普遍主義、B安心に基づく活
力)や「5つの原則」(@全世代対応、A未来への投資、B分権的・多元的供給体制、
C包括的支援、D負担の先送りをしない安定財源)を踏まえたものとしていくことが
重要である。
まず、セーフティネットに生じたほころびや格差の拡大などに対応し、所得の再
分配機能の強化や家族関係の支出の拡大を通じて、全世代を通じた安心の確保
を図り、かつ、国民一人ひとりの安心感を高めていく。このため、セーフティネット
から抜け落ちていた人を含め、すべての人が社会保障の受益者であることを実感
できるようにしていく。制度が出産・子育てを含めた生き方や働き方に中立的で選
択できる社会、雇用などを通じて参加が保障される社会、子どもが家族や社会と関
わり良質な環境の中でしっかりと育つ社会を目指す。
社会保障は国民が支え合いの仕組みに積極的に参加することで強固なものと
なっていくが、そのためには、サービスの不足、就職難、ワーキングプア、社会的
疎外、虐待などの国民が直面する現実の課題に立ち向かい、情報開示や必要な
効率化などの質の向上を図りつつ、より公平・公正で自助・共助・公助の最適なバ
ランスによって支えられる社会保障制度に改革をしていく。支援を必要とする人の
立場に立った、包括的な支援体制を構築し、また、地域で尊厳を持って生きられる
3
よう支える医療・介護が実現した社会を目指す。
そして、より受益感覚が得られ、納得感のある社会保障の実現を目指し、国民皆
保険・皆年金を堅持した上で、給付と負担のバランスを前提として、それぞれ
OECD 先進諸国の水準を踏まえた制度設計を行い、中規模・高機能な社会保障体
制を目指す。
以上のような改革の基本的考え方にたち、必要な社会保障の機能強化を確実に
実施し、同時に社会保障全体の持続可能性の確保を図るため、以下の諸点に留意
しつつ、制度全般にわたる改革を行う。
@ 自助・共助・公助の最適バランスに留意し、個人の尊厳の保持、自立・自助
を国民相互の共助・連帯の仕組みを通じて支援していくことを基本に、格差・
貧困の拡大や社会的排除を回避し、国民一人一人がその能力を最大限発揮
し、積極的に社会に参加して「居場所と出番」を持ち、社会経済を支えていくこ
とのできる制度を構築する。
A 必要な機能の充実と徹底した給付の重点化・制度運営の効率化を同時に行
い、真に必要な給付を確実に確保しつつ負担の最適化を図り、国民の信頼に
応え得る高機能で中長期的に持続可能な制度を実現する。
B 給付・負担両面で、世代間のみならず世代内での公平を重視した改革を行
う。
C 社会保障・財政・経済の相互関係に留意し、社会保障改革と財政健全化の
同時達成、社会保障改革と経済成長との好循環を実現する。
D 国民の視点で、地方単独事業を含む社会保障給付の全体像を整理するとと
もに、地域や個人の多様なニーズに的確に対応できるよう、地方の現場にお
ける経験や創意を取り入れ、各種サービスのワンストップ化をはじめ制度の
簡素化や質の向上を推進する。
2 改革の優先順位と個別分野における具体的改革の方向
(1) 改革の優先順位
厚生労働省案に示す「社会保障制度改革の基本的方向性」(1.全世代対応
型・未来への投資、 2.参加保障・包括的支援(全ての人が参加できる社会)、
3.普遍主義、分権的・多元的なサービス供給体制、 4.安心に基づく活力)を
4
踏まえ、
@ 子ども・子育て支援、若者雇用対策
A 医療・介護等のサービス改革
B 年金改革
C 制度横断的課題としての「貧困・格差対策(重層的セーフティネット)」「低所得
者対策」
についてまず優先的に取り組む。
(2) 個別分野における具体的改革
個別分野における具体的改革項目については、
@ 5 月23 日及び30 日に総理から示された「安心」3本柱、「支え合い」3本柱、
「成長」3本柱について、着実な実行を図る。
A 負担と給付の関係が明確な社会保険(=共助・連帯)の枠組みの強化による
機能強化を基本とする。
B @及びAを前提に、社会の分断・二極化、貧困・格差の再生産の防止の観
点から、社会保険制度において適用拡大や低所得者対策を実施するなどによ
り、セーフティネット機能の強化を図る。
C 世代間のみならず、世代内(特に高齢世代内)での公平の確保、所得再分
配機能の強化を図る観点から、給付・負担両面での見直しを行う。
D 医療・介護・保育等のサービス分野における多様な主体の参加、「新しい公
共」の創出など、成長に貢献し、地域に根ざすサービス提供体制の実現を図
る。
といった点を基本に、必要な機能の充実と徹底した給付の重点化・制度運営の
効率化を同時に実施する。
個別分野ごとの充実項目、重点化・効率化項目の内容及び改革の工程は、
別紙2「社会保障改革の具体策、工程及び費用試算」の欄A〜C に示すとおりで
あり、各改革項目の記述に当たっては、可能な限り具体的な数値目標を示すと
ともに、成長戦略に関係の深い項目についてはその旨付記した。
<個別分野における主な改革項目(充実/重点化・効率化)>
T 子ども・子育て
5
○ 子ども・子育て新システムの制度実施等に伴い、地域の実情に応じた保
育等の量的拡充や幼保一体化などの機能強化を図る。
・ 待機児童の解消、質の高い学校教育・保育の実現、放課後児童クラブの
拡充、社会的養護の充実
・ 保育等への多様な事業主体の参入促進、既存施設の有効活用、実施体
制の一元化
U 医療・介護等
○ 地域の実情に応じたサービスの提供体制の効率化・重点化と機能強化を
図る。そのため、診療報酬・介護報酬の体系的見直しと基盤整備のための
一括的な法整備を行う。
・ 病院・病床機能の分化・強化と連携、地域間・診療科間の偏在の是正、予
防対策の強化、在宅医療の充実等、地域包括ケアシステムの構築・ケア
マネジメントの機能強化・居住系サービスの充実、施設のユニット化、重
点化に伴うマンパワーの増強
・ 平均在院日数の減少、外来受診の適正化、ICT活用による重複受診・重
複検査・過剰薬剤投与等の削減、介護予防・重度化予防
○ 保険者機能の強化を通じて、医療・介護保険制度のセーフティネット機能
の強化・給付の重点化などを図る。
a) 被用者保険の適用拡大と国保の財政基盤の安定化・強化・広域化
・ 短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、市町村国保の財政運営
の都道府県単位化・財政基盤の強化
b) 介護保険の費用負担の能力に応じた負担の要素強化と低所得者への配
慮、保険給付の重点化
・ 1号保険料の低所得者保険料軽減強化
・ 介護納付金の総報酬割導入、重度化予防に効果のある給付への重点化
c) 高度・長期医療への対応(セーフティネット機能の強化)と給付の重点化
・ 高額療養費の見直しによる負担軽減と、その規模に応じた受診時定額
負担等の併せた検討(病院・診療所の役割分担を踏まえた外来受診の適
正化も検討)。ただし、受診時定額負担については低所得者に配慮。
d) その他
・ 総合合算制度、低所得者対策・逆進性対策等の検討
6
・ 後発医薬品の更なる使用促進、医薬品の患者負担の見直し、国保組合
の国庫補助の見直し
・ 高齢者医療制度の見直し(高齢世代・若年世代にとって公平で納得のい
く負担の仕組み、支援金の総報酬割導入、自己負担割合の見直しなど)
V 年金
○ 国民的な合意に向けた議論や環境整備を進め、「新しい年金制度の創設」
実現に取り組む。
・ 所得比例年金(社会保険方式)、最低保障年金(税財源)
○ 年金改革の目指すべき方向性に沿って、現行制度の改善を図る。
・ 最低保障機能の強化+高所得者の年金給付の見直し
・ 短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大、第3号被保険者制度の見
直し、在職老齢年金の見直し、産休期間中の保険料負担免除、被用者年
金の一元化
・ マクロ経済スライド、支給開始年齢の引上げ、標準報酬上限の引上げな
どの検討
○ 業務運営の効率化を図る(業務運営及びシステムの改善)。
W 就労促進
○ 全員参加型社会の実現のために、若者の安定的雇用の確保、女性の就業
率のM 字カーブの解消、年齢にかかわりなく働き続けることができる社会
づくり、障害者の雇用促進に取り組む。その際、地域の実情に応じ、関係機
関が連携し、就労促進施策を福祉、産業振興、教育施策などと総合的に実
施する。
○ ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を図る。
○ 雇用保険・求職者支援制度の財源について、関係法の規定を踏まえ検討
する。
X T〜W以外の充実、重点化・効率化
・ サービス基盤の整備、医療イノベーションの推進、第2のセーフティネットの
構築、生活保護の見直し(就労・自立支援の充実、医療扶助等の適正化、不正
受給防止対策の徹底、関係機関の連携強化などの重点化・効率化)、総合的
7
な障害者施策の充実(制度の谷間のない支援、地域移行・地域生活の支援)、
難病対策の検討、震災復興における新たな安心地域モデルの提示
・ また、社会保障制度の持続可能性向上のためには、次世代を担う子ども・若
者の育成が肝要であり、上記の社会保障制度改革と併せて、雇用流動化に対
応して、手に職をつけ就業につなげるための教育環境整備や、教育の質と機
会均等を確保するための方策、特に生計困難でありながら好成績を修めた学
生等への支援の強化に取り組む。
Y 地方単独事業
○ 以上の改革の方向も勘案し、地方自治体は、国費に関連する制度と相まっ
て、地域の実情に応じて、社会保障関係の地方単独事業を実施する。
[再掲] 貧困・格差対策 〜 重層的なセーフティネットの構築
○ 就労・生活支援が一体となったワンストップサービス
○ 短時間労働者に対する社会保険の適用拡大
○ 社会保険制度における低所得者対策の強化
・ 市町村国保・介護保険における低所得者への配慮、高度・長期医療への
対応(セーフティネット機能の強化)、総合合算制度、年金制度における最低
保障機能の強化
○ 第2 のセーフティネットの構築
・ 求職者支援制度の創設、複合的困難を抱える者への伴走型支援(パーソ
ナルサポート、ワンストップサービス等による社会的包摂の推進)
○ 生活保護の見直し
(3) 社会保障・税に関わる共通番号制度の早期導入
社会保障・税に関わる番号制度は、主として、真に手を差し伸べるべき人に対
する社会保障を充実させ、効率的かつ適切に提供することを目的に導入を目指
すものである。その導入により、国民の給付と負担の公正性、明確性を確保す
るとともに、国民の利便性の更なる向上を図ることが可能となるほか、行政の効
率化・スリム化も可能となる。
その導入に当たっては、制度面とシステム面の両面で十分な個人情報保護策
を講じるとともに、費用と便益を示し、国民の納得と理解を得ていく必要がある。
8
6 月には「社会保障・税番号大綱」を策定し、今秋以降可能な限り早期に国会へ
の法案提出を目指す。
U 社会保障費用の推計
1 機能強化(充実と重点化・効率化の同時実施)にかかる費用
子ども・子育て、医療・介護等及び年金の各分野ごとの充実項目、重点化・効
率化項目にかかる費用(公費)の推計は別紙2の欄D 及びE に示すとおりであ
る。
改革全体を通じて、2015 年度において
充実による額 3.8 兆円程度
重点化・効率化による額 〜▲1.2 兆円程度
を一つの目途として、機能強化(充実と重点化・効率化の同時実施)による追加
所要額(公費)は、約2.7 兆円程度と見込まれる。
2015 年段階における各分野ごとの追加所要額(公費)は、
T 子ども・子育て 0.7 兆円程度
(税制抜本改革以外の財源も含めて1 兆円超程度の措置を今後検討)
U 医療・介護等 〜1.6 兆円弱程度
(総合合算制度〜0.4 兆円程度を含む)
V 年金 〜0.6 兆円程度
再掲:貧困・格差対策 〜1.4 兆円程度
(総合合算制度〜0.4 兆円程度を含む)
と見込まれる。
2 社会保障給付にかかる公費(国・地方)全体の推計
社会保障給付にかかる現行の費用推計については、そのベースとなる統計
が基本的に地方単独事業を含んでおらず、今後、その全体状況の把握を進め、
9
地方単独事業を含めた社会保障給付の全体像及び費用推計を総合的に整理す
る。1
V 社会保障・税一体改革の基本的姿
1 社会保障の安定財源確保の基本的枠組み
(1) 消費税収を主たる財源とする社会保障安定財源の確保
民主党「税と社会保障の抜本改革調査会」中間整理等、社会保障財源のあり
方に関する累次の報告や関係法律の規定を踏まえ、国民が広く受益する社会保
障の費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点などから、社会保障給付
に要する公費負担の費用は、消費税収(国・地方)を主要な財源として確保す
る。
消費税収(国・地方)については、このうち国分が現在予算総則上高齢者三経
費に充当されているが、今後は、高齢者三経費を基本としつつ、「制度として確
立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための
施策に要する費用」(「社会保障四経費」、平成21 年度税制改正法附則104 条)
に充当する分野を拡充する。社会保障の安定財源確保に向けて、消費税収の規
模とこれらの費用の関係を踏まえ、国・地方合わせた消費税収の充実を図る。
(2) 消費税収の使途の明確化
消費税収(国・地方、現行分の地方消費税を除く)については、全て国民に還
元し、官の肥大化には使わない2こととし、消費税を原則として社会保障の目的
税とすることを法律上、会計上も明確にすることを含め、区分経理を徹底する等、
その使途を明確化する(消費税収の社会保障財源化)。
さらに、将来的には、社会保障給付にかかる公費全体について、消費税収
(国・地方)を主たる財源として安定財源を確保することによって、社会保障制度
1 2011 年度予算ベースでは、社会保障給付に係る国・地方公費は39.4 兆円である。
他方、総務省推計によれば、2011 年度で、地方単独事業として社会保障に関連する支出は7.7 兆円と見込ま
れる。
2 有識者検討会報告において引用されている「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた中期プ
ログラム」(平成20 年12 月24 日閣議決定)参照
10
の一層の安定・強化につなげていく。
(3) 国・地方を通じた社会保障給付の安定財源の確保
上記(1)及び(2)の改革を進めるに当たり、国民一人一人に包括的な支援を
行うという社会保障の考え方からすれば、地域住民に身近なところでサービスを
設計し、実行する地方自治体の役割は極めて重要であり、地方による分権的な
社会保障は、社会保障の信頼を大きく高める。現行分の消費税収(国・地方)に
ついてはこれまでの経緯を踏まえ国・地方の配分(地方分については現行分の
地方消費税及び消費税の現行の交付税法定率分)と地方分の基本的枠組みを
変更しないことを前提として、引上げ分の消費税収(国・地方)については(1)の
分野に則った範囲の社会保障給付における国と地方の役割分担に応じた配分
を実現することとし、国とともに社会保障制度を支える地方自治体の社会保障給
付に対する安定財源の確保を図る。
今般の社会保障改革における安定財源確保の考え方を踏まえつつ、U−2
における総合的な整理を行った上で、地方単独事業に関して、必要な安定財源
が確保できるよう、W(5)に掲げる地方税制の改革などを行う。
(4) 消費税率の段階的引上げ
上記(1)〜(3)を踏まえ、社会保障給付の規模に見合った安定財源の確保に
向け、まずは、2010 年代半ばまでに段階的に消費税率(国・地方)を10%まで引
き上げ、当面の社会保障改革にかかる安定財源を確保する(別紙3)。
2 社会保障改革の安定財源確保と財政健全化の同時達成
未来への投資である社会保障のコストを、将来世代に先送りすることは許さ
れない。現在の社会保障給付の財源の多くが赤字公債、すなわち将来世代の
負担で賄われている。このような状況は、社会保障のあり方としても、危機的と
も言える国・地方の財政状況からもこれ以上放置することはできず、「現在の世
代が受ける社会保障は現在の世代で負担する」3との原則に一刻も早く立ち戻る
3 民主党「税と社会保障の抜本改革調査会」中間整理
11
必要がある。
今回の社会保障改革の目指すところは、「社会保障の機能強化」と「機能維持
―制度の持続可能性の確保」である。社会保障改革の財源確保と財政健全化は
相反する課題ではなく、両者を同時達成するしか、それぞれの目標を実現する
道はない。4
このような考え方に立って、社会保障・税一体改革においては、社会保障給付
にかかる安定財源を確保していくことを通じて、財政健全化を同時に実現する。
具体的には、まずは、2010 年代半ばまでに段階的に消費税率(国・地方)を
10%まで引き上げ、国・地方合わせて、上記U−1で示す「機能強化」にかかる
費用、高齢化の進行等により増大する費用及び基礎年金国庫負担2分の1を実
現するために必要な費用(社会保障国民会議では、この3つの経費を合計して
「機能強化」として試算している)、後代に付け回しをしている「機能維持」にかか
る費用及び消費税率引上げに伴う社会保障支出等の増加に要する費用を賄うこ
とにより、社会保障の安定財源確保を図る5。
これらの取組みなどにより、2015 年度段階での財政健全化目標6の達成に向
かうことで7、「社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成」への一里塚
が築かれる。
W 税制全体の抜本改革
税制抜本改革については、社会保障改革の進め方との整合性にも配意しつつ、
平成21 年度税制改正法附則104 条第3 項及び平成22 年度・23 年度税制改正大
4 「社会保障強化だけが追求され財政健全化が後回しにされるならば、社会保障制度もまた遠からず機能停止
する。しかし、財政健全化のみを目的とする改革で社会保障の質が犠牲になれば、社会の活力を引き出すこと
はできず、財政健全化が目指す持続可能な日本そのものが実現しない。」(有識者検討会報告)
5 U−2における総合的な整理を踏まえた対応に留意する。
6 「財政運営戦略」(平成22 年6 月22 日閣議決定)において、国及び国・地方の基礎的財政収支赤字の対GDP
比を、2015年度までに2010年度の水準から半減し、2020年度までに黒字化させた上で、2021年度以降におい
て、国・地方の公債等残高の対GDP比を安定的に低下させることとされている。
7 財政健全化目標の達成所要額は、内閣府「経済財政の中長期試算」(平成23 年1 月)を前提としている(年央
に改訂)。
12
綱(閣議決定)で示された改革の方向性に沿って、以下の考え方により検討を加え、
個人所得課税、法人課税、消費課税、資産課税にわたる改革を進める。また、地方
に関わる事項については、地方団体の意見に十分配意して、検討を進めることと
する。
(1) 個人所得課税
雇用形態や就業構造の変化も踏まえながら、格差の是正や所得再分配機能
等の回復のため、各種の所得控除の見直しや税率構造の改革を行う。給付付き
税額控除については、所得把握のための番号制度等を前提に、関連する社会
保障制度の見直しと併せて検討を進める。金融証券税制について、金融所得課
税の一体化に取り組む。
(2) 法人課税
企業の国際的な競争力の維持・向上、国内への立地の確保・促進、雇用と国
内投資の拡大を図る観点から、国際的な協調や主要国との競争条件等にも留意
しつつ、課税ベースの拡大等と併せ、法人実効税率の引下げを行う。地域経済
の柱となり、雇用の大半を担っている中小法人に対する軽減税率についても、
中小企業関連の租税特別措置の見直しと併せ、引下げを行う。
(3) 消費課税
消費税(国・地方)については、本成案に則って所要の改正を行う。いわゆる
逆進性の問題については、消費税率(国・地方)が一定の水準に達し、税・社会
保障全体の再分配を見てもなお対策が必要となった場合には、制度の簡素化や
効率性などの観点から、複数税率よりも給付などによる対応を優先することを基
本に総合的に検討する。
併せて、消費税制度の信頼性を確保するための一層の課税の適正化を行う
ほか、消費税と個別間接税の関係等の論点について検討する。
エネルギー課税については、地球温暖化対策の観点から、エネルギー起源
CO2排出抑制等を図るための税を導入する。また、地球温暖化対策に係る諸施
策を地域において総合的に進めるため、地方公共団体の財源を確保する仕組
みについて検討する。車体課税については、地球温暖化対策の観点や国及び
地方の財政の状況も踏まえつつ、簡素化、グリーン化、負担の軽減等を行う方
13
向で見直しを検討する。
(4) 資産課税
資産再分配機能を回復し、格差の固定化を防止する観点から、相続税の課税
ベース、税率構造を見直し、負担の適正化を行う。これと併せ、高齢者が保有す
る資産の現役世代への早期移転を促し、その有効活用を通じた経済社会の活
性化を図るとの観点から、世代を超えた資産格差の固定化にも配慮しつつ、贈
与税を軽減する。また、事業承継税制について、運用状況等を踏まえ見直しを
検討する。
(5) 地方税制
地域主権改革の推進及び国と地方を通じた社会保障制度の安定財源の確保
の観点から、地方消費税を充実するとともに、地方法人課税のあり方を見直すこ
となどにより、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系を構築する。
また、税制を通じて住民自治を確立するため、現行の地方税制度を「自主的な判
断」と「執行の責任」を拡大する方向で改革する。
(6) その他
上記の改革のほか、社会保障・税に関わる共通番号制度の導入を含む納税
環境の整備を進めるとともに、国際的租税回避の防止を通じて適切な課税権を
確保しつつ投資交流の促進等を図る等の国際課税に関する取組みや国際連帯
税等について、検討を行う。
なお、平成22年度・23年度税制改正においては、このような方向性を踏まえ、税
制抜本改革の一環をなす緊要性の高い改革に取り組んできたところであり、現在、
国会において審議が行われている平成23 年度税制改正については、引き続き、
その早期実現を目指す。
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X 社会保障・税一体改革のスケジュール
社会保障・税一体改革にあたっては、「国と地方の協議の場」で真摯に協議を行
い、国・地方を通じた改革の円滑かつ着実な推進を図る。
社会保障改革については、税制抜本改革の実施と併せ、別紙2に示された工程
表に従い、各分野において遅滞なく順次その実施を図る。
税制抜本改革については、政府は日本銀行と一体となってデフレ脱却と経済活
性化に向けた取組みを行い、これを通じて経済状況を好転させることを条件として
遅滞なく消費税を含む税制抜本改革を実施するため、平成21 年度税制改正法附
則104 条に示された道筋に従って平成23 年度中に必要な法制上の措置を講じる
8。
上記の「経済状況の好転」は、名目・実質成長率など種々の経済指標の数値の
改善状況を確認しつつ、東日本大震災の影響等からの景気回復過程の状況、国
際経済の動向等を見極め、総合的に判断するものとする。また、税制抜本改革の
実施に当たっては、予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとする。こ
れらの事項については、政府・与党において参照すべき経済指標、その数値につ
いての考え方を含め十分検討し、上記の法制化の際に必要な措置を具体化する。
以上のスケジュールに基づき、国会議員定数の削減や、公務員人件費の削減、
特別会計改革や公共調達改革等の不断の行政改革及び予算の組替えの活用等
による徹底的な歳出の無駄の排除に向けた取組みを強めて、国民の理解と協力を
得ながら社会保障と税制の改革を一体的に進める。
Y デフレ脱却への取組み、経済成長との好循環の実現
デフレからの脱却を実現するため、政府として強力かつ総合的な政策努力を最
8 平成21 年度税制改正法附則104 条第1項:政府は、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げのため
の財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の
見通しを踏まえつつ、平成二十年度を含む三年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転
させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三
年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、当該改革は、二千十年代(平成二十
二年から平成三十一年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものと
する。
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大限行うとともに、日本銀行に対しては、引き続き、政府と緊密な情報交換・連携を
保ちつつ、適切かつ機動的な金融政策運営により経済を下支えするよう期待する。
これにより、我が国経済を本格的な成長軌道に乗せていく。また、社会保障・税一
体改革により、社会保障分野における潜在需要を顕在化し、安心できる社会保障
制度を確立することが、雇用を生み、消費を拡大するという経済成長との好循環を
通じて、成長と物価の安定的上昇に寄与する。
社会保障は需要・供給両面で経済成長に寄与する機能を有しており、医療や介
護分野での雇用創出や新たな民間サービス創出のための環境整備、ICTなどのテ
クノロジーを活用した社会保障費用の最適化、サービスの質の向上、医療イノベー
ション、ライフイノベーションの推進、ドラッグラグ・デバイスラグの早期解消、先進
医療制度の運用改善、民間企業を含めた多様な事業主体の新規参入促進、「新し
い公共」の創造など、利用者・国民の利便の向上と新たな産業分野育成の観点か
らの諸改革を進める。
社会保障改革の推進について
平成22 年12 月14 日
閣議決定
社会保障改革については、以下に掲げる基本方針に沿って行うものとする。
1.社会保障改革に係る基本方針
○ 少子高齢化が進む中、国民の安心を実現するためには、「社会保障の機能強化」と
それを支える「財政の健全化」を同時に達成することが不可欠であり、それが国民
生活の安定や雇用・消費の拡大を通じて、経済成長につながっていく。
○ このための改革の基本的方向については、民主党「税と社会保障の抜本改革調
査会中間整理」や、「社会保障改革に関する有識者検討会報告〜安心と活力への
社会保障ビジョン〜」において示されている。
○ 政府・与党においては、それらの内容を尊重し、社会保障の安定・強化のため
の具体的な制度改革案とその必要財源を明らかにするとともに、必要財源の安定
的確保と財政健全化を同時に達成するための税制改革について一体的に検討を
進め、その実現に向けた工程表とあわせ、23年半ばまでに成案を得、国民的な
合意を得た上でその実現を図る。
また、優先的に取り組むべき子ども子育て対策・若者支援対策として、子ども
手当法案、子ども・子育て新システム法案(仮称)及び求職者支援法案(仮称)
の早期提出に向け、検討を急ぐ。
○ 上記改革の実現のためには、立場を超えた幅広い議論の上に立った国民の理解
と協力が必要であり、そのための場として、超党派による常設の会議を設置する
ことも含め、素直に、かつ胸襟を開いて野党各党に社会保障改革のための協議を
提案し、参加を呼び掛ける。
2.社会保障・税に関わる番号制度について
○ 社会保障・税に関わる番号制度については、幅広く国民運動を展開し、国民に
とって利便性の高い社会が実現できるように、国民の理解を得ながら推進するこ
とが重要である。
○ このための基本的方向については、社会保障・税に関わる番号制度に関する実
務検討会「中間整理」において示されており、今後、来年1月を目途に基本方針
をとりまとめ、さらに国民的な議論を経て、来秋以降、可能な限り早期に関連法
案を国会に提出できるよう取り組むものとする。
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