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このところイタリア国債の人気が急に無くなっています。
イタリアの10年債の利回りはついに5.4%に乗せました。ギリシャ問題などの経験から、利回りが6%を超えると「赤信号」です。
なぜ急にイタリア国債が売られているのでしょうか?
欧州周辺国は「PIIGS(ブタ)」と揶揄されることが多いです。
PIIGSはポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字を取ったアクロニムです。
これらの国は「欧州の劣等生」ということでひと括りにされているわけですけど、実体経済の動向に関してはさらに2つのグループに分けることが出来ると僕は考えています。
それはFast-moving situation 、つまり状況が刻々変化している国々とSlow-moving situation、つまりゆっくりとしか変化していない国、ないしは経済にぜんぜん変化が無い国という2つのグループです。
この場合、変化(movement)とは「悪い方」への変化を指します。
いま状況が刻々悪化している(ないしは悪化していた)国はギリシャ、スペイン、アイルランドなどです。
一方、状況にほとんど変化が無い国はポルトガルです。イタリアもこちらのグループに入ると思います。
(=イタリアのファンダメンタルズがゆっくりと動いていることに関しては以前の記事に書きました。)
それでは何が刻々とした状況変化を作り出しているのか?といえば、それは資産価格、もっと平たく言えば住宅市場の暗転です。
アイルランド、スペインではサブプライム・バブルが弾けた時に不動産市場が影響を受け、それ以来、住宅市場が冷え込んでいます。
ギリシャの場合は政権交代の時に新政権が旧政権の「ごまかし」を暴いたことが急激な状況変化の直接のきっかけになりました。
さて、前置きが長くなりましたけど上に述べてきたような経緯でイタリアの場合はそれほど「病状」に変化はなく、これまでは持病のようにぐずぐずした展開でした。
ところが最近、急に投資家の態度が冷たくなったのはイタリアの側ではなく、投資家の側に「心変わり」が起きたからです。
その心変わりの第一番目の理由はギリシャ問題の処理の一環として「民間の投資家にも痛み分けというカタチでコスト負担を強いるべきではないか?」という議論です。
つまり額面の100で満額償還するのではなく、30%引きとか50%引きという事にして投資家にも負担をさせないとモラルハザードになるという議論です。
これに対しては反論もあります。
なぜなら本来、100のお金が返って来るところを70しか貰えなければ、残りは「損金」というカタチで決算の際、報告しなければいけません。その際、赤字が出た分は銀行の自己資本が吹っ飛ぶわけです。
従って余り損が大きいようだと銀行の自己資本が十分か?という議論になり、銀行の安定経営を脅かしかねません。
これらの事から「やばい国の債券は早目に処分しよう」という心が働くわけです。
さらに問題を複雑にしているのは「そうなると大変だから、何とかデフォルトは無かったことにして、皆で仲良くギリシャのロールオーバー(借金の借り換え)を助けよう」というシナリオの場合、これはこれで頭の痛い問題が生じるからです。
つまり、折角、デフォルト・スワップ(=デフォルトに対する保険)を購入していた投資家は「一体、どうしてくれるのだ?」という話になるわけです。
ギリシャが支払い不能に陥ることを正確に予想し、それにたいする保険を購入したにもかかわらず、それがデフォルトなしのロールオーバーという事で話をウヤムヤにされたら、「ちゃんと予習をした投資家がバカを見る」ということになるのです。
(デフォルト・スワップなんて、徒労だな)
そう投資家が感じてしまうと次からはデフォルト保険つきでも危ない国の国債は買いたくなくなってしまいます。
これは喩えれば生命保険の未払いが大々的に公認されたら、もう次からは誰もアホらしくて生面保険などに入らなくなるのと同じ理屈です。
いまギリシャ問題の処理を巡って「デフォルト無しのロールオーバー」が議論されているのは、だから生命保険の保険証書が紙クズ化するかどうかに似た大事な議論なのです。
これは難しい議論なのでなかなか結論は出ないと思います。
でもいろいろな「安全メカニズム」の信頼性が保証できなくなった現況では、ヤバい投資対象を手仕舞って、キャッシュにした方が良いわけです。
またクレジット・デフォルト・スワップのような洗練されたヘッジ・ツールが「政治的な理由で使えない」ということになると、もっとシンプルな方法でリスクをヘッジする途を模索しなければいけません。
最近、イタリアの株式市場がつるべ落としに下がっているひとつの理由は「有事にはシンプルなソリューションの方が信頼度が高い」という金融の世界の大原則に沿ってイタリア株をショートすることでリスク・ヘッジする、セオリー通りの投資行動が起こっているからです
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