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黒字ため込む社会福祉法人 −復興事業への拠出 議論を−
日本経済新聞「経済教室」2011年7月7日掲載
松山 幸弘
研究主幹
松山 幸弘
[研究分野]
財政・社会保障
東日本大震災の復興事業で取り組むべき課題は多岐にわたるが、セーフティーネット(安全網)再構築については医療と福祉に大別できる。
このうち医療は、病院や診療所を国の負担で建設すれば2〜3年で着地点が見えてくる。これに対して福祉は、高齢者、障害者、孤児、生活困窮者など救済対象者が抱える問題が多様で長期間の対応が求められる。公費を使った国や自治体による救済では、被災者の福祉ニーズを十分にカバーできない懸念がある。
1923年の関東大震災のときには、慈善事業家などが運営する民間社会事業団体が政府による救済の穴を埋める役割を果たした。この民間社会事業団体を基に制度化されたのが社会福祉法人である。本稿では、今回の復興事業において社会福祉法人が果たすべき役割を考えてみたい。
社会福祉法人制度は、51年制定の社会福祉事業法で創設された。日本国憲法第89条は「公金その他の公の財産は(中略)公の支配に属しない慈善、教育もしくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」と、社会福祉事業であっても政府が助成することを禁じている。その趣旨は政府が補助金支出により社会福祉の責任を民間まかせにするのを防ぐことにあり、GHQ(連合国軍総司令部)の強い意向が反映した結果といわれる。
しかし、戦後復興期の生活困窮者、母子、孤児などを救う施設をたくさん建設するには民間の活用が不可欠であった。そこで、社会福祉事業法で公の支配に属する条件を認可要件に組み込むことで憲法89条への抵触をのがれ、社会福祉法人という新しい経営形態を考案したのである。
社会福祉法人の経営環境としては、措置制度、補助金、原則非課税の3つが重要である。措置制度とは、対象者が福祉を受ける要件を満たしているかを行政が判断し費用も出す仕組みである。社会福祉法人が施設建物を整備する場合、費用の4分の3が補助される(国が2分の1、地方が4分の1を負担)。さらに収益事業を除き税が免除される。社会福祉法人の経営は、厳しい規制により裁量の余地は小さかったものの、措置費をルール通り使っていれば安定が保証された。・・・
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日本経済新聞「経済教室」2011年7月7日掲載記事PDF:105.6 KB
http://www.canon-igs.org/column/pdf/110711_matsuyama.pdf
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