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ポルトガルのデフォルトリスクは、ECBの金利引き上げでさらに高まったが
本丸のイタリアまで行くようならユーロは終わりだろう
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920021&sid=ah9k90yVyBiU
次に倒れるのはイタリアか、欧州危機のドミノ−ジョンソン
7月5日(ブルームバーグ):ギリシャ議会は新たな財政緊縮法を採択し、欧州の財務相らは第1次ギリシャ支援の次回融資分を承認した。これで欧州債務危機は下火になったと言えるだろうか。
恐らく違う。1つの明白な理由は、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の4日の警告だ。S&Pは今後1年で償還を迎えるギリシャ国債のロールオーバー(借り換え)に銀行が応じる場合は、同国債を「選択的デフォルト(債務不履行)」と見なす可能性があると発表した。そうなれば、また全員で最初からやり直しせざるを得なくなる。
そうした中であまり目立たないものの、心配ないと言えないのがイタリアだ。不安定な財政状況にあるだけに同国は次に圧力にさらされる可能性がある。同国に約350億ドル(約2兆8300億円)を融資し、デリバティブ(金融派生商品)を通じてさらにリスク資産を抱えている可能性がある米銀も今度は影響を受ける立場にある。
欧州のソブリン債務の再編を想定して、外国為替スワップなどの不透明な市場での信用リスクを現実的な観点でとらえた新たなストレステスト(健全性審査)を米監督当局は呼び掛けるべきだ。こうしたテストを基にすれば、主要銀行は配当を停止し、損失に対する緩衝材としての資本を増強する必要が恐らく出てくる。
多くの市場参加者は、ギリシャが最終的には債務の秩序ある再編を試みると考えている。そうした再編では、欧州各国政府は国際通貨基金(IMF)とともにさらなる支援を約束し、欧州の銀行は債券償還や融資の延長に応じることになろう。そうなった場合、イタリアへの影響は深刻だ。
債務増加
最新のIMF予測では、イタリアの政府債務残高は今年、対国内総生産(GDP)比で120%に達し、その後2016年末までに118%にやや低下する見込みだ。イタリアの10年物国債利回りは先週、約4.9%で推移し、同年限のドイツ国債に対する上乗せ幅(スプレッド)は約2ポイントに拡大した(ギリシャとドイツの国債スプレッドは現在約15ポイント)。金利のさらなる上昇でイタリア債務の見通しはギリシャ並みに向かう恐れがある。
投資家はギリシャ向け融資の損失に間もなく直面すると気付き始めたばかりで、最近まではドイツやオランダなど欧州北部の国の公的資金がユーロ圏周辺国の政府を救済すると想定していた。少なくとも債権者の損失を保護するために必要な程度の救済を期待していた。
救済対象がギリシャのような比較的小さな国の場合にはこの手法も成り立つ。ギリシャの債務残高は約3600億ユーロで、再編によって生じ得る信用損失は1000億−2000億ユーロの範囲内であり、ユーロ圏の経済規模の12兆ユーロと比較すると小さい。
想像できない救済
だがイタリアの場合、債務残高は2兆ユーロ近くに上る。ドイツやIMFが債権者保護で支援に乗り出すことは想像できない。そんな支援パッケージを実施するには、少なくとも5000億ユーロ、場合によっては1兆ユーロの融資と保証を盛り込む必要があり、ドイツのGDPの約2兆5000億ユーロに対してかなりの割合を占める規模になる。債務の対GDP比が約80%のドイツにとって新たな借金を引き受ける力は限られる。
オランダとフィンランド、オーストリア、そしてドイツの4カ国のGDPは合計で約3兆5000億ユーロ。フランスのGDPを足せば2兆ユーロ増えるが、同国の債務は既に対GDP比85%となっており、今後数年は増加する見通しだ。
こうした状況から導き出されるのは、欧州にはイタリアの危機に対応できる十分な財政力がないという冷徹な事実だ。少なくとも、債権者を完全に保護するような方法はないということだ。こうした厳しい数字を乗り越えても、ドイツや他の欧州連合(EU)諸国がイタリアに融資するだろうか。
利回り上昇
投資家がこうした事実に気付けば、その途端イタリア国債により高い利回りを要求する公算が大きい。イタリアの経済成長が期待外れなものとなったり、最近発表した財政緊縮措置が市場に好印象を与えられなかったりすれば、同国の債務には一段と疑いの目が向けられる。この種の不安定さを嫌う長期の投資家はイタリアから手を引き、それによってイタリアの金利は、過去1年半の間にギリシャやポルトガル、アイルランドで起きたのと同様に上昇する恐れがある。
ただ、イタリアには他のユーロ圏諸国に対して大きな利点が1つある。それは国債の大部分が国内金融機関によって保有されていることだ。外国人が逃げてもイタリア当局は新発債入札を支援するよう国内金融機関に圧力をかけることができる。しかし、大方のイタリアの金融機関は同国債のリスクを極めて低く、恐らくゼロと見積もっていることから、利回りが上昇すれば、これらの債券の価値は低下し、それに伴う損失が銀行の自己資本を一気に食いつぶしかねない。
それでもイタリアの銀行が破たんする可能性は低い。当局は寛容さを示すだろうから、銀行が実際の市場価格で資産を評価する必要はなさそうだ。だがソブリン債損失が突出して格下げの可能性が出てくると、銀行は民間セクター向け融資の縮小に踏み切りかねず、これがGDPの伸びを抑え、イタリアの債務の対GDP見通しをさらに悪化させることになる。
ドラギECB総裁
イタリア中銀総裁のマリオ・ドラギ氏が11月に欧州中央銀行(ECB)総裁に就任すれば、同国の銀行はECBから相当の融資を引き出せるだろう。しかし、ECBとユーロ圏17カ国の中銀を合わせたユーロシステム全体のバランスシートは約1兆9000億ユーロしかない。イタリア規模のソブリン債問題に対しては、ECBの融資では問題を先送りする程度しか手がない。
米国への影響はどの程度になるだろうか。ギリシャやアイルランド、ポルトガルをめぐる問題が昨年引き起こした市場の混乱を考えて掛け算をするといい。
先の銀行ストレステストはこうした困難な事態を考慮していなかったため、民間セクターも政策当局者にも指針となる情報がなかった。彼らはただ推測しているにすぎない。これはつまり、米国が金融システム上重要な機関に対する新たなストレステストを実施する必要性を意味している。米銀は大西洋を渡って襲ってくる嵐に耐え得るため、今のうちに十分な資本を積み上げるのが賢明だろう。(サイモン・ジョンソン)
(サイモン・ジョンソン氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
更新日時: 2011/07/05 09:00 JST
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