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菅直人首相とその周辺はまるでパブロフの犬のようだ。「財源」と問えば、ただちに「増税で」と反応する。税と社会保障一体改革案は消費税増税、東日本大震災復興構想会議提案は臨時増税、さらにB型肝炎訴訟の和解金支払いにも、福島原子力発電所事故に関連する補償についても増税または形を変えただけの「国民負担」しか考えない。
慢性デフレのために、1世帯あたりの可処分所得は10年前に比べて月当たり4万4400円も減った。やせ細る家計から税を絞り取ることしか考えない。かつての悪代官顔負けの異常な政策はどういうふうに生まれるのだろうか。
◆現実離れの前提条件
そう思って、税・社会保障改革案と復興構想会議提言を再チェックしてみたら、これらの前提条件は見事なまでに現実から遊離している。
まず「税・社会保障」の場合、吉川洋東大教授が中心となって5月30日付でまとめた「消費税増税のマクロ経済に与える影響について」という研究報告書が添付されている。増税が日本経済にどのような悪影響を及ぼすかを詰めたうえでないと消費税率の幅やタイミングを決められない。与謝野馨経済財政担当相肝いりのペーパーである。
じっくり読むと、重大な課題から目をそらしていることがわかる。例えば、1997年の消費税増税をきっかけに日本が長期・慢性デフレ局面に突入した事実を無視している。増税は長期的な影響を経済活動全体に及ぼすのに、当時の家計所得など一時的な要因分析だけで「消費税増税は1997〜98年の景気後退の『主因』であったとは考えられない」と決めつけ、しかも巧妙に「デフレ」への言及を避け「景気後退」と言い抜けた。「デフレよりも日本の財政への国際的な信認、マーケットの信認のほうが大事だ」(与謝野氏)というわけだ。
デフレ下の増税は消費や投資をさらに萎縮させ、個人や企業の所得や収益を減らす。97年の消費税増税の数年後には所得税、法人税を合わせた税収が大幅減収となり、減収額は消費税増収分をはるかにしのいだ。増税により財政収支は逆に悪化し、それこそ日本国債の信認が失われよう。
◆震災憂慮は“言い訳”
もっと愕然(がくぜん)とさせられたのは、3月11日の東日本大震災の衝撃についての考察の欠如である。報告書の末尾に添付されている「有識者の意見」の中で、大震災の影響を憂慮する声が言い訳程度に散見される程度である。
消費税増税のタイミングについては、景気の上昇局面が適切だと論じている。大震災後は、いわゆる復興需要の影響で見かけ上は経済指標が来年は好転するとの見方が多いが、それを増税のタイミングだと言わんばかりである。多くの企業が円高や電力不足を背景に国内向け投資をあきらめ、海外投資に走っている。生産と消費の反転はあるとしても一時的で、増税実施後には急速に減退しよう。
一方、東日本大震災復興構想会議(議長・五百旗頭真防衛大学校長)による「復興への提言」付属の資料には「阪神淡路大震災とのマクロ経済環境の違い」編が挿入されている。そこでは、名目GDPについて、阪神淡路489兆円(94年度)と東日本大震災479兆円(2010年度見通し)と対比している。だが、16年前よりも10兆円も経済規模が少ないその異常さに何の説明も加えていない。その代わり、国地方の長期債務残高、国債の格付けの悪化ぶりなど財源の制約ばかり盛り込んでいる。
報告書のどこにも「デフレ」、あるいは「デフレーション」の一言も出てこない。その代わり、「再生」という言葉は77回、「復興」は258回も繰り返し出てくる。内容のない言葉だけが呪文のように唱えられている。
◆シナリオ通りの会議
委員の一人は述懐する。「いや、実際の会合では増税の意見はほとんど出なかった。なのに、財務省主導の事務当局が財源は増税によるとメディアにブリーフィングしていた」と、いかにも無責任な評論家そのものだ。事務当局が書いたシナリオ通り、会議は踊った。五百旗頭議長は、4月14日の初回会合の後、「復興のための増税」案を記者発表した。「まず増税ありき」の路線は以来、一貫してきた。
ことあるごとに増税論にくみしてきた菅直人首相は提言を唯々諾々と受け入れ、退陣しても次期首相に引き継ぎ、日本を自滅に導くだろう。
せめて、国会の与野党議員たちは、「まるで災害という傷を負った子供に重荷を持たせ、将来治ったら軽くするといっているに等しい」という浜田宏一米エール大学教授の痛烈な批判に耳を傾けてほしい。
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