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大金持ちが大金持ちなのは、運か才能か巧みな操作か?
アーネスト・ヘミングウェイと著作権代理人とのやりとりを脚色すると次のようになる。大金持ちは金持ちとは大違いだ。彼らにはもっと多くのカネがある――。
格差に関する従来の分析の多くは、所得階層の中間近辺の人たちと、頂点近辺の人たちとの関係に焦点を当ててきた。
だが近年、少なくとも米国では、最も劇的な格差の広がりが生じているのは、頂点にいる人たちとそれ以外のすべての人たちとの格差だ。
・「大金持ち」と「その他」の格差の広がり
米国の所得者の上位1%が獲得する所得の割合は、大恐慌と第2次世界大戦の後に低下したが、1970年代後半から突如上昇し始めた。一方、中間所得者の多くにとっては、賃金は伸び悩んできた。
米国では1976年から2007年にかけて、所得全体の伸びの58%を上位1%の層が手にした。それだけではない。この傾向は加速しているように見える。この数字は、ビル・クリントン大統領の下で見られた1990年代の景気拡大期には45%だったのに対し、続くジョージ・ブッシュ大統領の下では2002年から2007年にかけて65%に上昇した。
そして、大金持ちの中の超大金持ちは、それ以上にうまくやってきた。1990年から2005年にかけて、所得全体に占める上位1%の取り分が2.3%増えたが、そのうち丸2%は上位0.1%の人たちの懐に入ったのだ。
大金持ちのシェアが高まっている理由は何かという疑問は、経済学者が曖昧なデータを駆使して仮の結論を導き出し、そうした仮説が公正さと平等に関する激しい政治的議論の武器として使われる類の議論となってきた。
大金持ちが大金持ちになったのは、彼らが飛びぬけて才能があるためか、飛びぬけて幸運なためか、それとも単に飛びぬけて操作が巧みなためかということについては、何年も激しい議論が繰り広げられてきた。
飛びぬけて才能があるためという説明は、少数の並外れた才能を持つ人たちが同時期にいくつかの分野――投資銀行、企業経営、法律など――に現れ、彼らの生産性に見合う報酬を手にしている、というものだ。
・グローバル化がもたらした勝者総取りの構図?
もう少し洗練された議論は、才能の分布は必ずしも違わないが、グローバル化やその他の構造的変化が多くの業界を「勝者総取り」パターンに追いやり、そうした世界では、上層部の小さな違いが報酬の大きな違いを生み出す、というものだ。
2000年代後半の金融ブームの間は、今は存在しないリーマン・ブラザーズのディック・ファルド氏やシティグループのチャック・プリンス氏のようなCEO(最高経営責任者)の巨額報酬が、投資銀行業界がかつてないほど競争力を増し、生産的が高まったという理由で正当化された。
この2つ目の説明は、国際的なスーパースターの新たなクラブ――食うか食われるかの世界の勝者であるダボスのエリートたち――に関する興奮に満ちた物語を生み出している。こうした勝者の明らかな例は、スポーツの世界で見られる。だがこれは、他の世界には当てはまらないかもしれない。
1つには、上位で見られる不平等のパターンが、不変であるグローバルな経済の法則に従っていないことがある。大半の英語圏諸国では、米国よりも所得再配分的な税制を敷き、平等に対するより強い責務それ自体を目的としている国においてさえ、大金持ちは一段と豊かになった。だが、大陸欧州諸国と日本では、同じ時期に上位1%の所得のシェアは横ばいだった。
・市場を利用して不当な報酬を手にしただけ?
経済効率に懐疑的な向きは、3つ目のもう少し皮肉な説明を提唱している。大金持ち、特にCEO(最高経営責任者)や金融界の幹部は、しばしば好況期に報酬を株式市場と結びつけることで、必要以上の金額を自らに支払う方法を見つけ出したというものだ。
彼らは、リーマンやシティグループの運命を、多額の給料が正当化されなかった証拠として挙げる。この見方に対する主な制約は、国民、株主、従業員がこうした行為を容認したことだ。
ハーバード大学教授で、グローバル化が格差に与える影響の専門家であるロバート・ローレンス氏は言う。「矛盾する説明の間で議論はまだ解決されていない。格差は、経済効率の向上を表しているのか、それとも、経営幹部の給与に対する『怒りの抑制』が弱まったことを表しているのか」。
一定の状況証拠は、「操るのが非常に巧み」という理論を裏づけている。ローレンス教授は、米国企業は過去四半世紀の間、とりたてて一層グローバル化したわけではないと言う。変化する技術が、国内経済の中でさえ、勝者が独り占めする業界の台頭を容易にしてきたのかもしれない。だが、グローバル化の議論は、実際の説明というよりは、事後の正当化のように見える。
・金融危機後にどう変わるか
今重要な問題は、金融危機の結果として何が起きるか、だ。危機後も大金持ちが自分たちの所得割合の上昇を確固たるものにすれば、それは過去のトレンドに逆行する。このことはまた、大金持ちの所得のシェアが上昇しているのは、市場を歪めて操る能力によるところが大きいと主張する人たちに援護射撃を与えることにもなるだろう。
初期の兆候を見ると、企業利益が多額に上り、高額所得者の給与の多くが今も株式市場に基づいていることから、頂点での格差がなくなる兆候はほとんどないに等しい。
ローレンス教授は、「これまで異常に高い(国内総生産=GDP)の利益分配があった・・・これらの利益を手にする権利を持つ人々は非常にうまくやっていくだろう」と話す。
ただ、何が経済を今の道筋に連れて来たかを考えると、そのような結果が、過去四半世紀の米国の大金持ちの台頭を迎えたような諦めの感覚をもって受け止められる可能性は低いだろう。
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