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(回答先: “思考停止”のあなたへ〜日本2020年のシナリオ〜金融の津波に襲われた時にどうする? 投稿者 sci 日時 2011 年 6 月 30 日 10:29:52)
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日経ビジネス オンライントップ>$global_theme_name>ニッポンを俯瞰する基軸〜“思考停止”のあなたへ〜日本を襲う金融の大津波にどう対応する?プランBに備えよ
2011年7月1日 金曜日
大上 二三雄
日本を将来襲う可能性が有る金融の大津波、その状況は日本の価値暴落とそれに伴う経済・金融の大混乱である。具体的には、円安、国債の暴落(金利は上 昇)、制御不能なインフレ、金融恐慌、経済の混乱に伴う大幅な経済の落ち込み、といった現象であろう。地震と津波は局所的な現象であったが、この大津波は 確実に日本全土を襲い、そしてその影響は世界に波及する。
危機のトリガーから危機的状況へ
では、そのような危機をもたらすトリガーとなる現象は何であろうか? 筆者は、図−1に示すような以下の二つの事象を、危機のトリガーとして想定する。
・国債暴落(=長期金利の急上昇)
・円の暴落(=為替の急激かつ大幅な円安)
1990年よりここまで赤字国債の発行を続け経済を維持してきた現在を例えれば、からからに乾いた藁の上に薪が積み重なった状況である。ここに上げた多くの危機のトリガーのうち一つでも本当になれば、火が付き燃え上がることは、想像に難くない。
そのようなトリガーにより起こった危機は、どのように拡大していくであろうか。筆者は、まずは年率20%程度の円安・インフレといった状況に陥る可能性が大きいと思う。
円安・インフレの進行と同時に国債は暴落する。そうなると、国民は金融機関の経営への不安を感じ、郵貯・銀行預金の引き出しや保険解約へ殺到する。更に は、自らの預金の実質的価値が目減りすることを避けるために実物資産を購入する動きが強まり、インフレはさらに昂進する。
金融機関のバランスシートが国債やその他債権の暴落で傷んだところに、預金者の引き出しが殺到することになり、多くの金融機関は倒産の危機に瀕し、その結果産業界に資金が回らなくなり、経済混乱から経済はマイナス成長、物価は上昇というスタグフレーションの状況に陥る。
危機的状況の逆進性
このような金融・経済危機において最大の被害者は国民、それも弱者である。この20年における金融危機や不況は、国民にきわめて深刻な影響をもたらしたかと言えば、それはNOである。
無論、低成長や低金利は多くの国民をじわじわと苦しめているのだが、個々の生活レベルを見れば所得が低下したもののデフレの恩恵もあり、必ずしも危機的 な状況には至らなかった。しかし今回の危機で、その痛みをもろに受けるのは弱者、次にはある程度の資産を持つ一般的な国民である。インフレの進行に応じて 年金や保障費が上がらなければ、その分実質的な生活が苦しくなる。企業倒産から失業も増加するであろう。倒産を免れた企業でも、平均すれば経済成長率の低 下で、インフレに見合った昇給を実施することは難しくなる。
金融危機の津波は、弱者により大きな被害をもたらす、逆進的な災害である。年金や社会保障費で暮らす者に最も厳しく、次には倒産企業の従業員へ厳しい、そして倒産を免れた企業においても従業員の生活は、一様に厳しくなるのである。
このような20%のインフレが仮に5年続いたとすれば、計算上物価は2.5倍、為替は250%の円安となる。そこまで行けば、国家債務も実質上半分以下になり日本の価値も相対的に調整され、経済は落ち着きを取り戻すであろう。
消費税よりもっと強烈な、国民等しく課税するインフレーション・タックスの効果である。日本の実質経済規模も半分以下とは言わないが、80%程度まで減 少しているのではないか(かなり当てずっぽうです)。1997年に金融危機に襲われた韓国に比べるとかなり深くて長い危機ではありましたが、さあ、ここか ら再出発という感じであろう。
しかし、インフレの初期段階でそれに合わせ年金や生活保護、その他社会保障費を上げたり、金融恐慌や経済対策のため国債の発行を拡大したり、外貨交換の 規制などを行うと事態は破壊的な状況に陥る。津波の被害は幾何級数的に拡大し、最終的にはハイパーインフレーションに陥り日本壊滅、世界経済は大混乱と いった状況が予測される。
それこそ原発が、圧力容器や格納容器を含め、一気に爆発したような想像を絶する状況になると思われる。
こうなると、その後の危機の状況がどのような結末をもたらすかは、予想できなくなる。いずれにしても経済の混乱はより深く長くなり、政治的にも社会的にも、破壊的な混乱がもたらされる可能性が高い。
プランB 準備政策
さて、いよいよこのような事態に備えるプランBを解説していこう。プランBは大きく災害に至るまでに準備する準備施策と、災害が発生した際に行う実施施策に分かれるが、先ずは準備施策を述べて行く。
準備施策の中でまず重要なのは、日本の金融・経済システムおよび国家財政の体質向上施策であり、具体的には以下の項目が考えられる。
・増税と社会保障抑制の一体的改革により、財政バランスを良化させる。
・経済成長実現により経常黒字幅拡大をもたらす経済政策
−新成長戦略の実施
−政治主導による国内産業構造改革により過当競争抑制と国際競争力向上
−徹底した規制・制度改革
−国際的競争環境のイコール・フッティング
−雇用流動性の向上
−中小企業は弱者保護から強者育成へ
これらはいずれも、現状政策課題に上がっているものの、実行局面において主として既存利害関係者の調整がかなわず、実効が上がっていないものが多い。
それから、プランBの発動が想定されるような金融・経済状況において、現状の準備が十分でない項目は、以下のようなものがある。
・自治体破産法制の整備
−現状自治体再建の法制はあるが、債権カットや破産管財の法制は無い。
・諸外国との相互依存関係を強化(特に対中国)
−中国を始め諸外国の上質な人的・金銭的資源を、日本に取り込む(老人施設入居、企業での採用促進)
−中国特定地域との相互関係を重点強化(華北部?)
−日本の中国向けプライベートバンキングビジネスを強化
−ASEAN(非華僑国)、インド、EUとの関係強化(近攻遠親)
・外貨獲得手段の維持・拡大
−円安で競争力を増す製造設備の維持・拡大
−対外国人向け観光施設・拠点整備
・外交的安定の獲得と財政・金融外交政策準備
・プランB実施諸政策の準備
・金と外貨の蓄積
−現在の外貨準備1兆ドルは充分か検証要
これらの施策は、その多くが現状の金融・経済政策との協調が充分に可能なものであり、プライオリティを上げることで取り込み可能であろう。
次は、プランBの内容である。内容については、図−2にまとめたようにその項目は多くの省庁にまたがり多岐にわたる。実施にあたっては、現在の復興庁設 置でもたもたしているような状況は問題外。政府の関係各省庁のみならず、日銀や金融界を中心にした経済界とも緊密に連携した組織を構築し、運営にあたる必 要がある。
そのような運営の中核となりうるインナー組織を、非公式かつ早期に立ち上げ、内容に関する議論と共に実際に起こりうる状況を想定した「演習」に取り組んでいくことが望まれる。
また、重要なのはこのタイミングで長年出来なかった日本の産業構造と社会システムの改革を一気に行うことである。表の中では、低生産性産業の再編 と抜本的な規制制度改革、そして優先順位に基づく緊縮予算の実施による全面的な行政サービスの見直しと再構築が、それにあたる。ここで重要なのは、そのよ うな準備を事前にきちんと行っておくことである。そうでないと、各所から上がる要求の火の手に対して適格な対応が出来ず、結果的により混乱を大きく長引か せ、国民の不利益を大きくしてしまうからである。
最後に
東日本大震災の復興にもたつき、原子力問題から全国レベルの電力危機が派生し、多くの製造業が国外移転を考える現状はプランBにとっては危機的な状況と 言える。また、不穏な動きを強める中国は、軍部と現在の指導部が徐々に不穏な雰囲気を醸し出しつつあるさまは、1920年代から軍部が台頭した日本の状況 を思わせる。
一方で、太平の夢からいまだ抜けきれない日本は、当時の中国の状況に被るものが有るのではないか。このような迫りつつある危機に、日本の政治や企業、国 民は未だ性善説を信じているように思える。それはそれで幸せなことであるが、政治が今の体たらくから脱し、リアリズムに基づいた政策を行わないと我々の日 本の将来は危うくなると思われる。この課題提起が少しでも、そのような行動を前進させることを祈りたい。
ニッポンを俯瞰する基軸〜“思考停止”のあなたへ〜
我々は、長期的かつ俯瞰的な視点で考え話す機会を意識的に自ら作りだしていかない限り、一見、自分に関係のないように思われる政治、外交、社会、グ ローバルといったテーマに関しては、思考停止の状況に容易に陥ってしまうのではないでしょうか? 数十年という長期的な時間の中で俯瞰的に物事を見ること によって、現実に起こっている事柄が、また違った色に見えてくるはずだ。
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大上 二三雄(おおうえ・ふみお)
エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社 代表取締役 1981年東京大学工学部卒業、アクセンチュア入社。92年9月統括パートナー就任。ハイテク、保険・金融、情報サービス産業などの分野において、経営戦 略、企業変革コンサルティング、アウトソーシング、ベンチャー投資および戦略的提携等に従事。2003年10月エム・アイ・コンサルティンググループ株式 会社を創業、代表取締役として、コンサルティングや事業開発、人材育成に取り組む。また、2005年東京大学総長室アドバイザー就任。現在、東京大学 EMP(エクゼクティブ・マネジメント・プログラム)アドバイザーとして、プログラムの立ち上げに尽力した。他、ISL(Institute for Strategic Leadership)の経営者ゼミ・ファカルティ、九州アジア経営塾碧樹館プログラム・アドバイザー、立命館大学経営大学院客員教授を務める。 主な著書に、『戦略アウトソージング』、『人材マネジメント革命』、『ハーバード・ポケットブック・シリーズ』(エム・アイ・コンサルティンググループ(株)監修)など。福岡県北九州市出身。Twitterのアカウントはohue230。
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