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世界経済が繰り広げるゲームの結末 ハッピーエンドは期待できない  来るべき不況を楽しめ? 緊縮一本やりの姿勢に潜むリスク
http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/295.html
投稿者 sci 日時 2011 年 6 月 30 日 11:40:54: 6WQSToHgoAVCQ
 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/3877?page=3
世界経済が繰り広げるゲームの結末 ハッピーエンドは期待できない
2010.07.01(2010年6月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
2013年までに財政赤字半減、日本は例外 G20首脳宣言

トロントで開催されたG20サミットは、財政健全化が成長を下支えするというまだ正しいと証明されていない考え方を前提としていた〔AFPBB News〕

カナダで週末に開催された20カ国・地域(G20)によるサミットは、主要国の協調に向けた一歩だったのか、それとも不和へと後退する一歩だったのか。その答えは「両方」であるように思われる。

 「経済成長に優しい財政健全化計画」を求めれば、全員にいい顔ができる。ただそれには、急激な財政健全化は経済成長を阻害せず、むしろ下支えするという、まだ正しいと証明されていない考え方が前提になる。

 筆者は、サミットの結果を詳細に検討する代わりに、もっと大きな問題に思いを巡らせてみた。世界は今どのような状態に至っているのか、という問題だ。そうこうするうちに、英国の子供たちが楽しんでいる「包み渡しゲーム(pass the parcel)」が頭に浮かんだ。

 輪になって座った子供たちが、包装紙で幾重にも包まれた賞品を音楽に合わせて手渡していく。音楽が止まったら包みを持っている子が包装紙を1枚だけはぎ取り、また音楽に合わせて隣の子に包みを手渡す。これを繰り返し、最後の包装紙をはぎ取った子が中身の賞品をもらえるというゲームだ。

 大人たちの包み渡しゲームは、これに比べると恐ろしく高度だ。いくつものゲームが同時進行しており、包みの数が多く、その中には「賞品」だけでなく「罰」も入っている。

 国際通貨基金(IMF)が今回のサミットのために用意した「G20相互評価プロセス」に関する報告書で指摘しているように、参加者が協力し合った方がこのゲームは上手に進められる。しかし、それを実行するのは非常に難しい。報告書には立派な言葉が並んでいるが、そうした協調行動は取られない可能性の方がはるかに高い。
同時進行する4つの「包み渡し」ゲーム

 世界経済では4つの包み渡しゲームが行われている。第1のゲームは金融セクターの内部で行われている。各プレーヤーの狙いは、包装紙がはぎ取られるたびに手数料を徴収する一方で、不良債権が最終的にほかのプレーヤーの手に渡るようにすることにある。

 第2のゲームは、金融セクターと金融以外の民間セクターの間で繰り広げられている。これに参加する金融機関は、最終的な損失は顧客がかぶるように仕向ける一方で、できるだけ多くサービスをその顧客に売りつけることを狙っている。

 第3のゲームは金融セクターと国家との間で行われている。参加する金融機関は、ほかのすべてが失敗しても、その損失を国家が肩代わりするよう仕向けることを目指している。国家に救済してもらえたら、今度は自らが破綻に追い込んだ国に空売りを仕掛けて一儲けできる。

第4のゲームには多数の国家が参加している。各国の狙いは、過剰供給がほかの国の手に渡るようにすることにある。つまり貿易相手国の民間セクターをまず破綻させ、次に公的セクターを破綻させた黒字国が勝ちなのだ。これは「自分に理があると思いながら近隣を窮乏化させる」ゲームと呼べるかもしれない。今ではドイツが、ユーロ圏で実に上手にこのゲームを進めている。

 これら4つのゲームとG20サミットは一体どこでつながるのか。一言で言えば、両者はあらゆる側面でつながっている。
OECD予測、米経済成長率見通しを上方修正 日・ユーロ圏は引き下げ

ウォール街をはじめとした金融機関や各国が繰り広げるゲームが今の危機を生んだ〔AFPBB News〕

 第1のゲームは、不良資産を金融システム全体にまき散らした。第2のゲームは非金融セクターに過剰債務をもたらし、デレバレッジング(負債の圧縮)を強いた。第3のゲームは、予想通り国家財政にダメージを与えた。そして第4のゲームは危機の一因であり、今ではその後の景気回復の障害になっている。

 これらのゲームは互いにリンクしているため、1つのゲームを変える時にはほかのゲームも一度に変えなければならない。G20はこの点を分かっているものの、その理解度はまだ十分ではない。

 フランスの政治家タレーランがブルボン家について語ったとされる言葉を借用するなら、政策当局者は何事も学ばなかったし、何事も忘れなかった。現在の財政危機のルーツが民間金融機関にあることについては、特にそうだ。
財政再建を単独で論じるのは大きな誤り

 世間では財政の健全化が単独で論じられることが非常に多いが、これは大変な誤りである。公的債務だけが問題なのではない。すべての債務が問題なのである。

 国際決済銀行(BIS)が先日公表した最新の年次報告書は、この点を明快に論じている。これによると、3つの重要な債務国――米国、英国、スペイン――は、家計の債務のGDP(国内総生産)比が急上昇している間は、公的債務をうまく抑え込んでいるように見えた。スペインに至っては、政府債務は一貫して改善傾向にあった。

 家計の金融資産に対する債務の比率も良好で、債務を巡る状況は総じて健全だという誤った印象を与えるほどだった。ところが金融危機の勃発と資産バブルの崩壊を受けて家計はデレバレッジングに乗り出し、政府は逆にレバレッジをかけることになった。

 これらは鏡に映った像と同じである。民間セクターが貯蓄超過(収入が支出を上回る状態)になれば、財政の赤字か経常収支の黒字(あるいはその両方)が必ず生じる。民間の貯蓄超過の幅が大きければ大きいほど、財政赤字や経常黒字の幅も大きくならないといけない。

 逆に言えば、もし財政赤字を縮小させるのなら、民間セクターが支出を増やして収入との差を詰めるか、経常収支が改善するしかない。当然ながら、これは収入の減少ではなく支出の増加で達成されなければならない。深刻な景気後退の後であれば、特にそうだと言える。

このことは、財政政策に関するG20での決定とどう関係するのだろうか。金融危機勃発前の数年間、世界には大幅な貯蓄超過を抱えるグループが3つ存在した。第1のグループは少数の成熟した工業国で、ドイツと日本がその代表である。第2のグループは(1カ国だけだが)中国。第3のグループは、コモディティー(商品)を輸出する一部の資源国である。

 一方、大半の新興国は金融危機の傷を負っていたことから、これを相殺する赤字は米国をはじめとする多数の先進国と中・東欧諸国が計上することになった。そして危機が発生した時、経常黒字国の黒字は外需の落ち込みに伴って縮小した。

 しかし、そうした外需は急増する財政赤字(特に経常赤字国の財政赤字)によっても支えられていた。従って、公的セクターのレバレッジが民間セクターのデレバレッジングを一部相殺する格好になった。そして今、欧州では周縁国が渋々と、そしてその他の国々が自主的に財政引き締めに動き、緊縮財政が広がろうとしている。

 世間では、この緊縮財政が人々の自信を強め、民間セクターの支出拡大につながると広く信じられている。しかし前述したBISの年次報告書も指摘するように、危機を経た後の経済におけるデレバレッジングは大規模かつ長期的なものになる傾向がある。世界経済の大部分に影響が及んでいるだけに、この負の遺産はより長く居座る可能性が高い。
過剰供給の「包み」を持つ赤字国が緊縮財政に取り組んだら・・・

 要するに、過剰供給の「包み」は黒字国から赤字国の民間セクターに手渡され、危機が発生した後に赤字国の公的セクターに手渡された。この赤字国の多くがこれから緊縮財政に取り組んだら、包みは一体誰の手に渡るのだろうか。

 その答えはまだはっきりしない。この過剰供給は、あちこちの新興国の対外赤字拡大という形で吸収されるのかもしれない。これらの国々は支払い能力が比較的あり、金融市場もそこに目をつけつつある。

 あるいは、米国政府の高官が恐れているように、特にユーロ圏の対外収支が黒字に転じるために、結局はお馴染みの米国の対外赤字が拡大するのかもしれない。過剰供給自体が、中国が主導する形で縮小されるかもしれないし、世界経済の長期低迷の中で消えてしまう可能性もあるだろう。

 ただ、財政赤字削減の必要性をほかの要素から切り離して議論してもうまくいかないということだけは確実に言える。現在の財政赤字は、痛手を負った民間セクターの過剰債務を解消するか対外収支の不均衡を是正するか、あるいはその両方を実行しない限り、縮小できないのである。

 大人たちのゲームはこれまで、世界経済にダメージをもたらしてきた。我々がもっと良いゲームに取り組み始めた時、世界経済は回復軌道に乗るだろう。
By Martin Wolf


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/13518
来るべき不況を楽しめ?
緊縮一本やりの姿勢に潜むリスク

(2011年6月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

来るべき不況を楽しんでくれ――。国際決済銀行(BIS)は、米国など多額の債務を抱える国々にはっきりとそう言っているわけではない。しかし、同行がまとめた最新の年次報告書が暗示しているのは、そういうことだ。

 筆者はかつて、ウィリアム・ホワイト氏が首席エコノミストを務めていた時期のBISが金融と財政の行き過ぎについて発した警告を高く評価したし、ホワイト氏の後を継いだスティーブン・チェケッティ氏も尊敬している。しかし、この報告書の主張には同意できない。世界中が一斉に緊縮策に走る際の障害を軽視しているからだ。
「抑制された恐慌」に陥った世界

 確かに、緩和的な金融・財政政策を続けるのは居心地の悪いものである。しかし、異例な時期には異例な政策が必要だ。
各国の金融危機対策には一定の効果、国際決済銀行

スイス・バーゼルの国際決済銀行(BIS)本部〔AFPBB News〕

 現在はなぜ異例な時期だと言えるのか? それは、多くの国が調査会社ジェローム・レヴィ経済予測センターの言うところの「抑制された恐慌」、すなわち民間セクターがデレバレッジング(負債圧縮)を続ける時期に入ってしまったからである。

 BISの報告書は、この見方を暗に否定している。そして世界中が金融と財政の引き締めに乗り出すべきだと主張している。

 この主張は2つの認識に基づいている。第1の認識は、世界経済の生産能力はフル稼働に近い状況にあるというもの。

 第2の認識は、「公的セクターはもとより民間セクターについても過剰な債務の圧縮に取り組むことが、バランスの取れた(実質ベースでの)高成長および安定した金融システムの強固な基盤を築くカギだ。このことは、民間の貯蓄を増やすことと、危機の中心にいる国々が赤字の削減に向けて大々的な対策を講じることの両方を意味する」というものだ。
もし世界中央銀行があったなら

 では、金融政策から考えてみよう。まず、世界全体の金融政策を担当する中央銀行があり、それがインフレターゲットを採用していると仮定しよう。インフレ期待が抑制されている時にコモディティー(商品)の価格が上昇してきたら、この世界中央銀行はどんな対応を取るべきだろうか?

 恐らくこの中央銀行は、これは相対価格の変化であり、生産能力と実質賃金を引き下げるものだと認識するだろう。

コモディティー価格の上昇が一時的なものか長く続くものかどうかはまでは分からないだろうが、インフレ期待が急に強まったり賃金や物価がスパイラル的に上昇したりする事態は避けたいと考えるはずだ。

 だが、名目賃金の上昇率まで引き下げたいと考えるだろうか? コモディティー価格の上昇によるインフレ圧力を相殺するためとはいえ、景気が大幅に鈍化するリスクを冒してまで名目賃金を抑えたいと思うだろうか?

 そこまではやらない、と筆者は思う。もしそこまでやれば、この世界中央銀行は気まぐれで予測のつかないコモディティー価格の変動に反応し、実体経済に不安定性を持ち込んでしまうことになるからだ。
国によって事情も異なれば適切な政策も異なる

 実際には、世界中央銀行なるものは存在しないし、インフレの状況も国によって異なっている。高所得国のインフレはそこそこ抑制されている。片や、新興国にはインフレ率が急上昇しているところが多い。新興国は、コモディティーを高所得国よりも激しく消費したり、高所得国よりも力強い経済成長を遂げたりしているためだ。

 従って、適切な金融政策も国によって異なることになる。幸いなことに、現実の世界ではそれができるようになっている。新興国は金融を引き締めるべきであり、高所得国はそれよりも緩やかなペースで引き締めるべきだ。既に現実はその方向に向かっているが、十分とは言えない。自国通貨高を何としても回避したいという新興国がまだ多いためだ。

 では、高所得国は何をすべきなのだろうか? これについて、BISの報告書はあるシグナルを発している。中央銀行のバランスシート拡大の悪影響に対するヒステリックな反応には根拠がないと論じているのだ。

 だがその一方で、BISは余っていた生産能力は消えてしまったとも主張している。新興国では、それもあり得る話だろう。BISはまた、1970年代のオイルショックの時には、原油価格の高騰が経済の生産能力に及ぼす悪影響が過小評価されていたと指摘し、今でも余剰生産能力の規模が誇張されていると主張している。


 しかし、単位労働コストとインフレ期待は当時に比べればはるかにしっかり抑制されている。むしろ筆者は、今では中央銀行がその信用力を使い果たしているのではないかと考えている。中央銀行は今後、インフレ期待の動向を注視しなければならないが、インフレ期待が強まる前に予防的に動く必要はないのだ。

 次に、金融政策以上に議論されている財政政策について考えてみよう。筆者が疑問に思っているのは、すべてのセクターが同時に資金余剰になることは不可能であることをBISは承知しているのだろうか、という点である。
BISが言う4つの債務削減方法

 多くの高所得国で民間セクターの債務が過大な水準に達していることを疑う向きはほとんどない。しかし、これはどうすれば減るのだろうか? BISはその答えを「返済」「デフォルト(債務不履行)」「実質所得の増加」「インフレ」という具合に4つ提示している。
レシートや紙幣に大量のビスフェノールA、米研究

米国人は支出を減らし、債務削減に乗り出している〔AFPBB News〕

 ここでは最後の「インフレ」を除外し、「返済」に的を絞って考えよう。債務を返済するということは、支出を所得よりも少なくすることを意味している。米国の民間セクターで今観察されるのはまさにこの現象だ。

 米国の家計部門は、2005年第3四半期には国内総生産(GDP)比で3.5%の資金不足(支出が所得よりも多い状態)だったが、2011年第1四半期には同3.3%の資金余剰になっている。

 企業部門も今では小幅ながら資金余剰になっている。米国の経常収支は赤字なので、当然ながら、米国以外の国々も支出の方が所得よりも少ない資金余剰の状態にある。

 では、この余剰を引き受けているのは誰なのか? そう、米国政府である。そしてこれこそ、抑制された恐慌の意味するところにほかならない。政府部門を除くすべてのセクターが自らのバランスシート強化に同時に乗り出しているのである。
緊縮の穴を誰が埋めるのか?

 それだけでは不十分だ、とBISは主張している。レバレッジ(借り入れ)が大きな国は構造的な財政赤字を出しており、この赤字はできるだけ早く解消しなければならないというわけだ。確かにそうかもしれない。だがその場合、その埋め合わせとなる調整は一体どこで行われるのだろうか?

 国の対外黒字は構造的なものであり、控えめに言っても簡単には解消されないと考えられる。多額の債務を抱えている家計部門の資金余剰は、まだしばらく続きそうだ。従って政府の財政赤字を大幅に削減するには恐らく、企業部門の資金余剰をそれに見合う規模で減らさなければならない。

 これは企業が投資を急増させるか、留保利益を減らすことによって実現できる。前者は経済成長を通じた調整となり、後者は不況を通じた調整となる。では、どちらの可能性の方が高いだろうか?

 もし金融・財政政策の引き締めが投資ブームをもたらすと読者がお考えなら、それは全くのお門違いだと筆者は思う。より可能性が高いのが、利益の縮小を通じた調整だとすれば、GDPは減少すると見て間違いあるまい。そしてそうなれば、実質所得の増加を通じて債務負担を減らすという選択肢は消える。

 残る選択肢はデフォルトだ。これは確かに機能するが、不況と金融資産の破壊を招くことになるだろう。
対外収支と財政収支はコインの裏表

 財政政策を急激に引き締めるのであれば、その影響をどうやって埋め合わせるかを考えないわけにはいかない。

 巨額の債務を抱えた国の民間セクターで新たな問題が生じるのを避けるなら、対外収支を変えるというのが答えになる。つまり、対外収支の調整(今のところ、その実施は事実上阻まれている)と、財政収支の調整はコインの裏表なのである。

 確かに、BISの言うことは正しい。金融・財政政策は正常な形に戻す必要がある。しかし、民間セクターの構造調整が完了するか、あるいは対外収支が大幅に変わらなければ、構造的な財政赤字を解消することはできない。そしてこの対外収支の調整は、対外収支の黒字国で大きな変化が生じない限り実現し得ないのだ。

 BISは大胆にも、民間セクターと公的セクターが同時にデレバレッジングを推進することを求めている。しかし、その影響をどうやって埋め合わせるのかという疑問が残る。BISはこれについて説得力のある答えを示していない。
By Martin Wolf
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