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市場を大きく揺るがし、金融収縮と世界景気の悪化を起こすのは確実だが
まだ世界大恐慌のような事態にはならない
予行演習としては悪くないだろう
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/13354
米国債務がデフォルトしたら・・・すべてのテールリスクの母
2011.06.29(Wed) The Economist 2011年6月25日号)
米国のテクニカルなデフォルトは市場を大きく揺るがすだろう。それ以外に確かなことは何もない。
米財務省は世界一信頼できる借り手のはず・・・〔AFPBB News〕
米国の債務は、信頼できる法廷や、税を引き上げ、紙幣を印刷する比類ない能力によって担保された世界一安全な債務とされている。だが、気まぐれな法律のおかげで、デフォルト(債務不履行)は、大西洋の欧州側だけの話ではなくなっている。
大半の国と異なり、米国では、赤字を出すためには2つの法的ステップが必要になる。1つは予算案を可決すること、もう1つはその資金を借りることだ。
議会は、国がどれだけ借りられるかについて上限を設けている。これまでは議会は常に財務省の現金が尽きる前に上限を引き上げてきた。1993年以降だけを見ても、16回上限を引き上げている。
これまでは債務上限を引き上げてきたけれど・・・
だが、上限引き上げにはしばしば条件が付けられ、今年は下院を支配する共和党がとりわけ厄介な条件を要求している。債務と赤字が過去60年間で最 も多額に上っているため、共和党は、今後10年間、少なくとも2兆ドルの歳出削減を実施し、増税はしないことを望んでいるのだ。
8月2日までに合意に至ることができなければ、財務省はデフォルト(債務不履行)に追い込まれると同省は話している。何についてデフォルトするかは特定していない。財務省としては、債務の利払いを停止する前に年金受給者や兵士への支払い停止を選択することもできる。
だが、あからさまなデフォルトの可能性も完全には排除できない。世界で最も信頼できる借り手が債務の返済義務を果たさなかったら、一体何が起きるのだろうか?
デフォルトの可能性は気付かずには済んでいない。
財務省証券のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の取引は増加しており、CDSスプレッドによって示されるデフォルトに対するプロテクションの価格は上昇している(図参照)。
1年物CDSは今、5年物CDSと変わらないほど高くなっている。これは、長期的な問題は抱えているがそれ以外については健全な借り手相手ではなく、投資家が目前に迫ったデフォルトを織り込んでいる市場で頻繁に見られる現象だ。
*1=記事のサブタイトルにある「テールリスク」は、発生する確率は低いが、発生した時には多大な損失をもたらすリスクのこと
流動性に欠けるCDS市場の状況から言えることは、この市場は誤解しやすいということだ。巨大な米国債市場――短期国債、長期国債、その他の政府証券の市場――自体は、今もほとんど心配ない状態にある。
米国では、8月、11月、2月、5月各月の15日に最も多額の利払いが生じる。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの米国金利戦略責任者プリ ヤ・ミスラ氏は、米国がこの夏数週間デフォルトするかもしれないと思っている人は、8月15日に利払いの期限を迎える債券を売って、11月15日に利払い の期限を迎える債券を買うべきだと言う。そうすれば、前者の債券の価格が後者の債券の価格に比べて下落するからだ。
だが、市場価格を見ても、顧客の話を聞いても、このような傾向は示されていないとミスラ氏は言う。
デフォルトが引き起こす結果については、重大な混乱がある。企業は通常、支払いを行うまで数週間の猶予期間を与えられる。ソブリン債にはそのような猶予期間はなく、従って、財務省が支払いできなくなった日にデフォルトが宣言されることになるだろう。
テクニカルなデフォルトでも高くつく
一部の市場参加者は、このようなデフォルトはすぐに「治療される」ため、単にテクニカルなものにすぎないと主張する。だが、歴史は、テクニカルなデフォルトであっても高くつくことを示している。
米国が正真正銘のデフォルトに陥った例として知られる唯一のケースは(1933年に金で債務を返済することを拒んだ時を除いて)、財務省が1億 2200万ドルの短期国債を期日通りに償還できなかった1979年に発生した。財務省は、個人投資家に対する前例がないほどの高い金利支払い義務や債務上 限引き上げの遅れ、ワープロ装置の故障のせいにした。
財務省はその後借りたカネを返済し、おまけに罰金まで払ったが、現在はボール州立大学に所属するテリー・ジヴニー氏とウィスコンシン大学ミル ウォーキー校のリチャード・マーカス氏による後の研究では、デフォルトが一部の連邦債務で60ベーシスポイント(bp、1bpは0.01%)の金利プレミ アムを招いたことが明らかになっている。
現在に照らすと、年間860億ドル、GDPの0.6%に相当する費用負担となる。これほど回避可能な状況に対する罰金としてはとてつもない金額だ。
今デフォルトが起きれば、より大きな注目を集め、より多くの債券保有者に影響を与え、金融システムのより深いところまで影響が及ぶだろう。
米国債の半分以上は、外国の中央銀行を中心とした海外の機関に保有されている。これらの投資家は、代わりとなる換金性の高い投資手段を持っていないため、一夜にして米国債を売却する可能性は低い。
だが、今後は従来と同じだけ米国債を保有するのは嫌がるだろう。中国のような一部の投資家は、既に外貨準備を多様化させている。
ファニーメイの債券などもいまだに持ち高が増えていない〔AFPBB News〕
2008年にファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)という2大住宅公社が連邦政府による救済を余儀なくされた後、外国人はこれらの機関が発行する証券の持ち高を減らした。そして今も、両社が一度もデフォルトしたことがないにもかかわらず、残高を増やしていない。
国内の銀行は、デフォルトが短期間で終わると考えた場合には、巨額の米国債残高を不良債権として分類する必要はない。だが、それでも国内銀行は苦痛を感じることになるだろう。
何しろ米国債は現在、投資銀行のような金融機関が4兆ドル規模のレポ市場で借り入れを行う際に利用する担保の約30%を占めている。
担保として幅広く使われる米国債
さらに米国債は、デリバティブ市場で使われる担保1兆ドルの4〜5%を占めている。デフォルトが起きれば、マネー・マーケット・ファンド(MMF)のような貸し手がより多くの担保、あるいは別の担保を要求する引き金になる可能性がある。
JPモルガン・チェースのマシュー・ザメス氏は4月、証券業界を代表して(財務長官宛に)書簡をしたため、デフォルトは「レバレッジ解消と急激な貸し出しの減少」につながる可能性があると警告を発した。
MMF自体も、さらに3380億ドルの米国債を保有している。デフォルトが起きた場合には、少なくとも1社が恐らく「break the buck」(つまり、投資家に元本を返済できない状態)に陥り、そうなれば、「MMFに幅広い取り付け騒ぎが起きる」恐れがある、とザメス氏は述べた。
こうした展開のどれ一つとして、確信を持てる人は誰もいない。MMFも銀行のように、デフォルトが短期間であれば自分たちが保有する米国債は健全 だと主張するかもしれない。国債の新規発行の一時停止によって供給が抑制され、それが利回りを(上昇ではなく)低下させる可能性もある。
一方、米国は2008年の危機に対しては、銀行やMMF、ファニーメイ、フレディマックの債務を保証して対応したが、自身の債務を保証する力がないことが原因で起こる危機に対して、国が同じことをするのはほとんど不可能だ。
議会が債務上限を早急に引き上げて混乱に対処したとしても、汚点はすぐには消えない。「これまでの我々の前提は、金利が常に期日通りに支払われることだった」と格付機関ムーディーズのスティーブン・ヘス氏は言う。
トリプルA格付けには値しない
同社は、短期間のデフォルトであっても、米国は羨望の的であるトリプルAの格付けを失うことになると警告してきた。
「一度実際に支払いが滞ったら、再び滞る可能性はないのか? もしその可能性があると思ったら、それは明らかにトリプルAには適合しないだろう」とヘス氏は指摘する。
こうした警告には効果がある。下院の共和党議員は異議を唱えているが、共和党の上院院内総務ミッチ・マッコネル氏は6月19日、債務上限の短期間の引き上げへの道を開いた。顔には出さないかもしれないが、共和党議員も民主党議員と同様、デフォルトを怖がっているのだ。
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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます
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