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署名記事が過剰な悲観・楽観どちらかに偏りがちなのは、世の人々の不安回避バイアスのせいか
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/12308
Financial Times米国の失われた10年?日本のような運命をたどる恐れ
2011.06.21(Tue) (2011年6月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
雇用回復の足取りが極めて鈍い(写真は米コロラド州デンバーで開催された州主催のジョブフェアに来場した求職者ら)〔AFPBB News〕
米国の景気回復が失速したことを受け、重大かつ恐ろしい疑問が浮上している。この国では景気後退が終われば雇用が急速に回復するのが普通だが、今回はそうなっていない。
雇用回復の歩みがあまりに遅いために、米国はいつ完全雇用を回復できるかではなく、回復する頃には「完全雇用」という言葉がどんな意味になっているか、が問題になっているのだ。
ホワイトハウスは、景気回復のピッチはすぐに速まると考えている。先週にはバラク・オバマ大統領も「道路のこぶ」という表現を用い、あくまで一時的な現象だという認識を示した。
労働市場の柔軟性と高い生産性の伸びが弱点になった可能性
だが一方には、この減速は長引くだろうし、さらに悪化する恐れもあるとの指摘がある。見過ごすわけにはいかない懸念である。これによれば、恐ろし いことに、米国が経済成長の牽引役として頼りにしてきた特性――労働市場の柔軟性と高い生産性伸び率――が毒性を帯びた可能性がある。
運が悪ければ、米国特有の長所と見なされていた特性は短所に変質しており、米国の行く手には日本の1990年代のような「失われた10年」が待ち受けている可能性があるという。
現在の主流派の見方はもっと楽観的で、かいつまんで言えば、次のようになる。
2011年上半期の景気回復は弱々しかったが、これは特殊あるいは一時的な要因によるものだ。悪天候、軍事費を支出するタイミング、財政による景気刺激策の段階的廃止、日本の震災、原油価格の急騰、欧州諸国の債務に対する懸念などがその主なところだ。
これらの要因が重なった結果、上半期の経済成長率は1.5ポイント押し下げられ、2%にとどまった可能性がある。このペースでは失業は減らない。
だが、こうしたマイナス要因の一部は下半期になれば弱まる公算が大きく、経済成長率も3〜4%に回復するだろう。これまでの落ち込みが大きいだけに3〜4%では十分とは言えないが、失業は緩やかながらも減少するだろう。
住宅市場が安定するまでにはまだ時間がかかることは、楽観論者も認めるところ〔AFPBB News〕
消費者が自分たちの債務を一息つけるレベルまで減らしたり、住宅市場が落ち着いたり、いわゆるグレートリセッション(大不況)の後に生じた諸問題が片づいたりするまでにはしばらく時間がかかることは、楽観論者も認める。
だが最終的には米国の景気は回復し、現実の国内総生産(GDP)と潜在GDPとの差は縮小するという。
こうした見方の根拠は、生産性の力強い伸びに求められる。従業員を迅速に解雇できるという、米国経済のよく知られた特徴を反映した特性だ。
現実のGDPや雇用はまだたどたどしいものの、潜在GDPは成長している。確かに現在はこの現象が悪い方向に作用しているが、状況が改善すれば失業者たちは再び雇用される。米国の労働市場は摩擦が小さく、解雇されるのも早いが雇用されるのも早いのだ。
米国企業は、状況が許せばすぐに稼働率を引き上げる。最終的には、他の国では見られない米国労働市場が新たな雇用を生み出し、以前と同じような高成長を実現するだろう――以上が楽観論者の主張である。
米国が経験したことのない長期失業
しかし、本当にそうなるのだろうか? 今回は、異なる点が2つ出てくる恐れがある。第1に、今回の景気後退は異常に深刻でそこからの回復も異常に遅いため、米国経済は前代未聞の長期失業率に見舞われている。
また、住宅市場の不振とそれに伴うネガティブエクイティ(住宅の評価額よりも住宅ローンの残額の方が多い状態)の発生が状況をさらに悪化させている。住宅を売ってもローンが残ってしまうため、新しい職を求めて転居することが難しくなっているのだ。
失業が長期化すれば、スキルやエンプロイアビリティ(就業能力)は低下する。構造的な失業率が欧州のレベルにじわじわと近づいていることは間違いない。米国経済は未知の領域に入ったのだ。
本紙(英フィナンシャル・タイムズ)のコラムニスト、マーチン・ウルフが先日指摘したように、今回のような景気後退の後には、より多くの人が雇用 されるのであれば生産性の低い伸びは歓迎すべきことだという見方もできる。解雇するよりも労働時間の短縮で痛みを広く分かち合う方がよいというわけだ。
米ノースウェスタン大学のロバート・ゴードン教授も、新しい論文で基本的に同じことを主張している。ゴードン教授によれば、米国労働市場は過去四半世紀の間、「使い捨て可能な労働者」を中心に形成されるという著しく例外的な傾向を強めた。
また経営管理(マネジメント)の考え方の普及と労働組合の弱体化によって労働市場の摩擦はさらに小さくなってきたが、欧州では逆に、雇用助成金と 規制のために労働市場の硬直化が進んだ。今回の大不況と長期失業率の急上昇により、米国経済特有の強みと見られた特性はその真価を厳しく問われているのだ という。
第2の危険性は、同じく生産性の問題を通じて浮かび上がってくるものだが、その起源はこの景気循環局面で債務が果たしている役割に求められる。今 のような経済環境、すなわち家計が債務の削減に努め、かつ金利がゼロに引き下げられている状況では、経済は不思議な動きを示すことがある。
労苦のパラドックス
プリンストン大学教授でニューヨーク・タイムズ紙のコラムでも活躍しているポール・クルーグマン氏と、ニューヨーク連銀のガウティ・エガートソン 氏は昨年発表した論文で、倹約のパラドックス(全員が貯蓄を増やそうとすればその経済は縮小し、総貯蓄はかえって縮小するという逆説)によく似た「労苦の パラドックス」が生じる可能性にスポットを当てた。
この逆説の論理はシンプルだ。ある経済において労働の供給が増えるか、生産性が上昇すると仮定しよう。すると当初は、物価は下落傾向を示すだろう。
もし名目金利がゼロ%に張り付いていれば、実質金利が上昇して債務負担も重くなる。すると、多額の債務を抱えた消費者は支出をさらに切り詰めるようになる。その結果、需要の反応が鈍いどころの話ではなくなり、経済そのものが縮小してしまうのである。
生産性の上昇がGDPを押し下げるとは、何とも奇妙な世界だ。おまけにここでは、労働者が賃金の引き下げを受け入れようとすると失業がかえって増えてしまう(クルーグマン氏とエガートソン氏はこれを「柔軟性のパラドックス」と呼んでいる)。
これに比べたら、雇用も解雇も容易なために長期失業が恒久的に増えるかもしれないとの見方は、さほど奇妙ではない。だが以前なら、米国はそのような心配をする必要もなかった。
強みが再び強みにならなければ・・・
景気が少しずつ回復すれば、いずれ元の状態に戻るのだろう。米国の強みは、再度強みになるのだろう。
しかし、消費者がまだ自らの債務に対処し切れていない現状では、景気の減速が長引けば悪化の勢いが自ずと増してしまう恐れがある。そうした自己強化的な動きは既に始まっており、それゆえに景気回復の動きが止まったのだと見る向きもあるだろう。
楽観論者たちはこれに異を唱え、まだそこまでは進んでいないと述べている。彼らが正しいことが望まれる。
By Clive Crook
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The Economist どうなる米国経済:行き詰まる政策
2011.06.21(Tue) 2011年6月18日号)
米国が景気後退を脱してからの回復ペースはがっかりするほど鈍いが、政策当局は金融、財政の追加刺激策の効果に疑いを抱いている。
今月、米国は2つの経済的な節目を迎える。米連邦準備理事会(FRB)の「量的緩和」(QE、新たに発行した通貨で債券を購入する金融緩和政策)が終わりに近づく。そして、QEが拍車をかけるはずだった景気回復が2周年を迎える。
だが、6月21日から予定されているFRBの会合で、これを祝う人はいないだろう。この会合ではほぼ確実に、6000億ドル規模の国債買い入れプログラムが6月いっぱいで終了するとの方針が再確認される。
金融および財政政策によりあらゆる景気刺激策が実施されたにもかかわらず、景気回復は期待外れだった。新たに景気後退局面に陥る可能性は低いものの、残念ながら状況は昨年と同様で、上向くはずだった雇用や支出は勢いを失いつつある。
深刻な景気後退の後の割に鈍い回復政治家は不用意にも、世界的な景気回復の一時停滞を、もっとひどい事態へ発展させてしまう恐れがある。
夏を間近に控えているが、市場は冴えない・・・〔AFPBB News〕
世界の主要金融センターは夏を間近に控えているが、市場のムードは明るさからはほど遠い。暗い経済ニュースを受けて株価は何週間も下落し続けている。製造業の生産高は世界中で減速している。消費者は慎重な態度を強めている。
米国では、住宅価格から雇用拡大に至るまで、ほぼすべての統計指標が悪化した。6月半ばには一息つける場面があったが、これも米国の小売売上高と中国の工業生産が懸念されていたほどひどくはなかった、という理由にすぎない。
世界の経済成長は、2年近く前に景気が回復に転じて以来、最も鈍化している。この景気の停滞は単に一時的なものなのか、それとも世界の景気回復はメルトダウンし始めているのだろうか?
大いなる減速
景気を停滞させている原因を一つひとつ見ていくと、この状態は一時的なものと考えられる。第1の原因は、日本の津波被害だ。これが日本の国内総生産(GDP)を大きく低下させ、またサプライチェーンを混乱させて、特に4月の世界の工業生産高を急激に落ち込ませた。
しかし、そうした落ち込みが経済指標に表れる一方で、もっと先を見越した兆候は回復を示している。例えば、米国の自動車メーカー各社の今夏の生産計画は、年率換算のGDP成長率が最低1ポイントアップすることを示している。
第2の原因は、年初からの原油価格の急激な上昇で需要が落ち込んだことだ。このため、カネに困った石油輸入国の消費者から、資産をため込む傾向が強い産油国への所得移転が進んだ。燃料価格の高騰は、特にガソリン消費の多い米国で消費マインドを冷え込ませている。また、アラブ世界がさらに不安定化し、原油価格が再び高騰する可能性も残っている。
とはいえ、少なくとも今のところ、その圧力は弱まっている。米国のガソリン平均価格は、まだ年初比で21%も高いものの、基調としては下落し始めている。これは消費意欲を刺激し、支出を促すはずだ。
景気後退が終了した2009年6月以来、国内総生産(GDP)の成長率は平均2.8%と、ほぼ長期トレンドに沿った数字になっている。
あれほどの深い不況にはまりこんだ後は、通常なら回復ペースはトレンドよりもはるかに速くなるものだ。ところが2009年後半以降、実際のGDPと潜在GDPの差は5%前後のまま推移している(図1参照)。
指標によっては、状況は一層悪い。支出ではなく所得の総計を指標とすると、経済規模は2006年から成長していない。生産年齢人口の中で仕事がある人の割合は、景気の底の時点よりも低い。
2010年12月までバラク・オバマ大統領の主席経済顧問を務めたローレンス・サマーズ氏は6月12日、米国は現在、1990年代の日本のような「失われた10年」の渦中にいると警告を発した。
1990年代当時、米国の政策立案者たちは、苦境から脱する方法をしきりに日本に講義していた。当時財務省の官僚だったティム・ガイトナー現財務長官は、さらなる財政刺激策を講じるよう、日本の財務官僚たちに強く求めていた。
第3の原因は、新興国の多くがインフレ高進を 受けて金融政策を引き締めたことだ。2011年5月の中国の消費者物価指数(CPI)の上昇率は、前年同月比5.5%に拡大した。インドの卸売物価指数は 同9.1%と大幅に上昇している。景気の減速は、各国の中央銀行が対策を講じ、その施策が功を奏し始めているという望ましいサインでもある。
その引き締め政策が行き過ぎているという証拠は見られない。引き締め政策の衝撃で経済が縮小しかねないという懸念が最も大きく指摘される中国においてさえ、そのような徴候はない。
世界的な景気鈍化が懸念されるあまり、引き締め政策が早計に中断されるリスクの方が大きい。世界の金融環境が著しい緩和状態にある中で新興国が引き締めの方針を崩すと、インフレがさらに加速し、最終的に恐慌を招く可能性が一気に高まる。
先進国経済の危うさ
成長の停滞は、新興国にとっては必要なものかもしれないが、先進国にとっては現在最も避けたい事態だ。バランスシート不況の後の景気回復が大抵そうであるように、先進国の景気回復は弱くて脆い。
現在の景気の停滞が特に危険なのは、ちょうど時を同じくして、財政・金融両面での景気刺激策が打ち切られようとしており、また、米国、欧州双方で危険な政治の瀬戸際政策が勃発しているからだ。
FRBは追加緩和を実施しない立場を表明している〔AFPBB News〕
景気刺激策からのシフトはかなり進んでいる。2010年、やはり今のような景気低迷の中で、米連邦準備理事会(FRB)は、紙幣を発行して国債を購入する量的緩和第2弾(QE2)による景気刺激策を約束した。
しかし、現在の量的緩和は今月終了する運びになっており、FRBは追加緩和はしないとの立場を明確にしている。
一方、欧州中央銀行(ECB)は2011年7月に再び政策金利を引き上げる予定だ。欧州全土で予算圧縮の動きが激しさを増しており、米国でさえ、景気刺激策が緊縮政策に道を譲る可能性がある。
これらの政策決定には、正しいものもある。米国のインフレ基調はもう厄介なほど低くはなく、低下もしていないため、FRBが差し当たり追加緩和を避けるのは理にかなっている。また、財政面でも米国はこれ以上の刺激策がなくても何とかやっていけるだろう。
しかし間違った判断もある。ユーロ圏では賃金インフレの証拠は乏しく、周縁国の景気が著しく低迷している。そのような中でECBは利上げすべきではない。米国では、大きな危険は、中期的な財政赤字を巡る政党間の対立のせいで、現在米国にとって望ましくない、短期的な歳出削減が実施されてしまうことだ。
ポーカーゲームに興じる政治家
米国の債務上限引き上げを巡る論争は、慎重な経済学的検討によるものではなく、イデオロギーや瀬戸際政策に基づいて進められている。民主党は真剣な歳出改革を考えようとしないし、共和党は増税に断固反対している。ティーパーティー系の多くの人は、歳出削減で妥協するくらいなら米国政府をデフォルト(債務不履行)させた方がましだと思っている。
その結果は危険な手詰まりであり、米国が思い切った短期的歳出削減を強いられ、テクニカルなデフォルトにまで追い込まれる危険性が増大している。
ユーロ圏でも同じような力学が働いている。こちらでは、ギリシャの債務危機の対応策を巡り、ギリシャ国債の償還期限の延長を求めるドイツと、いかなる債務再編も拒否しているECBとの対立が行き詰まり、大きな問題となっている。
6月23〜24日に開催されるサミットで、欧州首脳がお互いのメンツを保つ妥協策を見いだすという望みは残されている。しかし、この対立が長期化するほど、事故に至るリスクが高まる。つまり、ギリシャがデフォルトしてユーロ圏から脱退し、大混乱に陥るという事態だ。
この危険な瀬戸際政策は、不確実性を生み出すことで悪影響をもたらす恐れもある。現在、企業は経済成長の先行き不安から巨額の内部保留をため込ん でいる。世界経済が切実に成長を必要としている今、その成長をもたらす設備投資と雇用増を企業に手控えさせる理由を、政治が与えてしまっているのだ。
政治家たちの頑なな態度が大惨事を招く危険性が現実味を帯びている。米国が厳しい緊縮財政に転じる、あるいはユーロ圏経済が破綻するといった破滅的な事態に至る可能性は、高くはないかもしれないが、無視できるほど小さくもない。
経済論理から言えば、世界経済は一時的な難局に直面しているにすぎない。しかし、つまらない小競り合いを演じる政治家のせいで、事態があっさりとメルトダウンする可能性もあるのだ。
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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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