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この国は、増税症候群におかされ、しかも重症である。
与謝野馨経済財政担当相の「社会保障・税一体改革案」も、菅直人首相肝いりの「復興構想会議」も、そして「政府税調」も消費税増税で競っている。
増税案一番乗りの与謝野氏は大震災の前から消費税増税案を練ってきたとして、後発組の復興構想会議の増税案と混同されてもみくちゃにされるのを恐れ、閣議決定を急ぐ。政府税調委員たちは、そこで自分の出番とばかり、唾をつける。
慢性デフレがこじれ、体力が弱りきっているところに、大震災・原発メルトダウンという大きな傷害を受けて出血が止まらない。今必要なのは、栄養剤であり、輸血であり、将来展望を切り開くプランである。なのに瀕死(ひんし)の国民から血税を絞り取ることしか考えない政治家と官僚、御用学者、御用メディア。
日本は政府債務の95%を国内貯蓄で賄い、なおかつ米国債など世界の借金も引き受けている。海外資産を取り崩せば、いくらでも震災復興財源は捻出できるのに、政官とも素通りする。無知だからではない。怖いからその話題に触れようともしない。その物語は14年前の1997年6月23日にまでさかのぼる。
■政治生命の危機
訪米中の橋本龍太郎首相(当時)はその日、ニューヨークのコロンビア大学での講演で、「ここに米連邦準備制度理事会(FRB)やニューヨーク連銀の人はいないだろうね」とニヤッとし、「私は何回か日本政府が持っている財務省証券を大幅に売りたい、という誘惑に駆られたことがある」と続けた。たちまちウォール街では株式と国債が急落した。ワシントンではルービン財務長官(当時)が憮然(ぶぜん)としてコメントを拒否、議会指導者は「脅しや空威張りにみえる」と怒った。
以来、クリントン政権(当時)の日本冷視が目立つようになり、橋本氏の求心力は衰え、翌年7月に退陣した。永田町では「米国債売り」を口にする政治家は政治生命を失うという伝説が生まれた。筆者は2010年1月に鳩山由紀夫首相(当時)と会った際、脱デフレのための財政支出拡大を裏付ける財源として外貨準備の活用を提言したが、鳩山氏はあの大きな目玉をくるりと回しながら、「米国債を売るようなまねはできません」と即座に答えた。拙案は政府が米国債を買うために発行した約100兆円の政府短期証券(FB)を日銀が市場から買い上げる。そこで政府が長期国債を発行してこの日銀資金を吸い上げる、という内容だ。日銀首脳陣にも拙案をぶつけてきたが、みんな黙り込んでしまう。
そんな中での東日本大震災である。数十兆円規模の復興財源の確保が急がれるが、政府や自民党執行部、さらに首相直属の復興構想会議は復興税創設、つまり増税による財源捻出に傾斜している。デフレの最中で、しかも震災後の自粛ムードや電力不足のもとで需要が減退する中での増税はいかにも具合が悪い。だが、公的債務残高が国内総生産(GDP)の2倍もあるので、増税しか選択肢がないのだとみんな思い込んでいる。
■「日本は貯蓄超過の国」
確かに日本政府の借金水準は先進国でずば抜けて高いのは事実なのだが、その95%は国内の貯蓄で賄われている。しかも国内貯蓄は外にも回され、日本の対外純債権は官民合計で昨年末251兆円もある世界最大の債権国である。この債権を国内の大復興に向け活用するアイデアを議論の俎上(そじょう)にも載せないのは解せない。かの橋本発言以来、日本の政治家や官僚は米国債に関しては思考停止したかのようだ。
実際に、米国は同盟国日本が外準に手を付けるのを嫌がるのだろうか。そう思っていた矢先に、産経新聞ニューヨーク駐在の松浦肇編集委員が興味深い会見記事を送ってきた。相手はピーターソン国際経済研究所のカルメン・ラインハート上級フェローで、共和党政権なら米経済諮問委員会(CEA)委員長候補との呼び名が高い。彼女は「外貨準備を心配すべき国は固定相場制で対外純債務を抱える国。だが、貯蓄超過の日本はまったくの逆で、しかも変動相場制だ」と語り、外貨資産を売却し、復興財源に充てるべきだと説いている。拙論の案は米国債相場に与えるインパクトを考慮して米国債を売らなくてすむように配慮しているのだが、米保守派論客の女史は売っても構わないという思いきりのよさだ。
日本はそろそろ、「米国債の呪縛」から自らを解き放ってみてはどうか。
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