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「大き過ぎてつぶせない」は魔法の杖でも消せない
ワイル
6月17日(ブルームバーグ):来月に任期を終え退任するベアー米連邦預金保険公社(FDIC)総裁にとっては、「大き過ぎてつぶせない」銀行の時代は、幕が引かれつつあるという現在進行形ではなく、既に終わったという過去のことのようだ。大き過ぎる金融機関の問題に関してFDICに助言する諮問委員会の創設を明らかにした2週間前のFDICの発表資料を見てみよう。
同総裁はこの中で「大き過ぎてつぶせないと以前は見なされていた金融機関が、今後は公的資金による救済を受ける事態が二度と起きないよう極めて大きな責任を議会はFDICに課した」と述べている。
確かに「以前は見なされていた」と言っている。
表現の問題なのかもしれないし、願望が顔をのぞかせただけかもしれない。いずれにせよ、危機のさなかに世界の金融システムを脅かしたバンク・オブ・アメリカ(BOA)やシティグループ、ゴールドマン・サックス・グループ、モルガン・スタンレーといった銀行を政府は救済しないと同総裁が説得に回ったとは信じ難い。
もちろん資本市場は、そんなことを信じてはいないだろう。信じていれば、これらの金融機関の債券や株式は現在より大きく下落しているはずだからだ。
ドッド・フランク法
ベアー総裁の発言の根拠は、昨年成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)でFDICに新たな権限が付与されたことにある。
FDIC幹部のマイケル・クリミンジャー氏は今週の米議会証言で、同法は「適正に履行されれば、大き過ぎてつぶせない慣行を終わらせる手段」を提供すると述べた。
金融規制改革法は、7000億ドル(約56兆7000億円)規模の問題資産購入計画(TARP)で見られたような種類の救済を禁じている。「システム全体にとって重要」と見なされた金融機関は、危機の際にどのように清算を行うかの「生前遺言」を事前に届け出ることが義務付けられ、信頼に足る計画を提出しない金融機関には自己資本比率の引き上げなどの制裁措置が課せられることもあり得る。大規模な金融機関が支払い不能に陥った場合、政府は従来の連邦破産法11条に基づく会社更生手続きに代わって、秩序立った清算を目指す特別プログラムを適用する選択肢を持つ。
しかし、これらの全ては今後の試練を経ねばならない。FDICの当局者が提出された破綻処理計画を見て、それが十分かどうかを判断できるという保証はないし、金融機関側も行内の実情の把握が難しい巨大組織の首脳が計画を策定できるかという問題があるからだ。
「生前遺言」
金融規制改革法は、公的資金による救済を一切取りやめるわけではない。同法で説明されている清算スキームは、銀行の取り付け騒ぎを回避するため、FDICが財務相から資金を借り入れ、企業に提供することを認めている。
同法は、特別プログラムを適用される企業に5年以内の清算を義務付けているが、5年は迅速とは言えない。また、「納税者が損失を被らない」ようにし、企業の清算費用は必要ならば特別手数料を通じて金融サービス業界が負担すると規定しているものの、それが実現するまでは税金が使われるだろう。
議会は、それを望むのであれば米国の金融カルテルを解体することができただろう。しかし、そうしなかった。あるいはまた、規制当局は大手金融機関に対し、高リスク取引による損失に備えるため、例えば20%の自己資本比率を義務付けることもできるだろう。そうなれば、一部の銀行は清算を余儀なくされるだろうが、そういう状況にもなっていない。
金融規制改革法が求める新たな規制のほとんどは未完成だ。「生前遺言」もまだ存在しない。さらに、新たな規則が設けられても、当局者がそれを確実に実行に移す能力があるのかという疑問も残る。2008年から変わったことと言えば、最も大きい銀行がさらに規模を拡大したことぐらいだろう。われわれは08年当時に比べて安全になったなどとは決して言えない。(ジョナサン・ワイル)
(ジョナサン・ワイル氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
更新日時: 2011/06/17 11:21 JST
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