http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/209.html
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地震や津波以外にも、いろいろ災難はある。
今後は、個人の身体や財産の損害を全て、政府財政(他人の税負担)から補償するならともかく、今回だけ公的に負担するというのは明らかに不公正であっておかしい。
しかも元々、借金も家財も持ってなかった人は何の恩恵もないだけでなく、税金やインフレ(国債・緩和)で他人の借金まで肩代りさせられてしまうというのは、完全に間違いだ。
基本はこれまで通り自助だろう。
どうしても返済できず、話し合いで債務調整もできない場合は、法的な手続きを経て自己破産なり倒産なりして出直せばいいし、そうした負債のせいで地域の基幹的な金融機関が倒産して、不必要な連鎖倒産のリスクが発生しそうになった場合は、公的な利益のため、税金を投入すればいい。
http://diamond.jp/articles/-/12761/votes
ポスト3.11の論点 日本と日本人の選択肢【第21回】 2011年6月17日
原 英次郎 [ジャーナリスト/ダイヤモンド・オンライン客員論説委員]
だれが最終的に二重ローンの損失を負うのか 問題の本質をぼやかした“まやかしの救済策”
「いま、二重ローン問題が深刻化している。やっとの思いで住宅を自立再建した人々の中で、不公平感と生活の厳しさと将来の不安を訴える人が 急速にふえてきている。」これは阪神淡路大震災から5年後に、兵庫県震災復興研究センターが出版した『大震災いまだ終わらず』に、神戸商科大学の菊本義治 教授(当時)が記した一節である。
大震災で工場の建屋も設備も流されてしまった。にもかかわらず、設備を更新したときに地元の金融機関から借り入れたおカネが、まだ数千万円も残っ ている。事業を再開させたいが、既存のローンがあって、新たな借り入れが難しい。あるいは、新規のローンを借り入れたが、既存ローンと合わせて借入額が膨 らみ、返済額が増えて経営が非常に苦しい。
これがいわゆる「二重債務」「二重ローン」問題である。個人の住宅ローンについても、構図は同じだ。こうした二重ローン問題は、被災地の経済を復興させるためにも、人々の生活に安心をもたらすためにも、解決しなければならない最重要課題の一つである。
民主党、自民党の二重ローン対策の中身
震災から3ヵ月がたって、ようやく与党民主党を始め、各党の二重ローン対策がまとまってきた。その中身を簡単に見てみよう。
まず民主党案である。同党の案では、最初にお金を借りている債務者を中小企業(事業性ローン)と個人(住宅ローン)に分ける。次に企業については「再生が可能」、「判断が困難」、「再生が困難」の三つに分類する。
再生が可能と判断された企業については、企業再生支援機構や、官民出資で新設される中小企業再生ファンドが支援する。例えば、民間金融機関から、 対象となる中小企業の債権を買い取り、出資に切り替える。借入金にくらべて出資であれば返済の義務がなく、利益が出ないうちは配当もしなくてよいから、返 済負担は軽くなる。
再生が困難と判断された場合は、私的整理ガイドラインのスキームなどを使って、債権者(金融機関)と債務者(借入人)の間で話し合い、債権放棄などの債務の整理を行う。
次のページ>>損失をだれが負担するのか、いずれも不明確な救済案
難しいのは、「可能」と「困難」の間にある再生の「判断が困難」な企業の場合だ。相談窓口を設けて、再生可能のルートに乗せるか、再生が困難のルートに振り分けられることになる。
一方、個人の住宅ローンについては、住宅の再建を希望する場合と、希望しない場合に分けられる。両者共通の課題である既存の住宅ローンについて は、住宅金融支援機構における既存ローンに関しては、金利の引き下げや返済の猶予を行う。また、個人向けの私的整理ガイドラインを策定し、金融機関が債務 免除を行いやすくする。こちらは、返済不能の可能性が高い人を想定していると思われる。
住宅の再建を希望して、新規に住宅ローンを組む場合は、住宅金融支援機構の災害復興住宅融資について、金利の引き下げや、返済期間の延長を行える ようにする。再建ができない、あるいは希望しない場合は、災害公営住宅を建設して、被災者に住宅を提供する。以上が、民主党の骨子だ。
次が自民党案である。債務者を企業と個人に分ける点では同じ。企業については、企業再生支援機構に加えて、「東日本大震災事業再生支援機構」を新設し、民間金融機関からの債権買い取り、資金の貸付、出資などを行う。
民主党案との大きな違いは、個人に対する措置だ。自民党案では、既存の住宅ローンに関して、金融機関の債務免除(ローンの棒引き)を義務付ける。 被災して「債務超過」となり、震災発生後に被災地域において住宅を取得するために、新たに資金を借り入れた人で、債務免除の申し込みをした人を対象者とす るとしている。
損失をだれが負担するのかいずれも不明確な救済案
では、この二重ローン問題をどう考えたらよいのか。特に民主党案では、さまざまな方法が提案されているが、とてもわかりにくい。なぜそうなるの か。民主党案では、「国・自治体・金融機関・被災者がそれぞれ痛みを分かち合い」とあるが、痛みを分かち合う際の基本原則が明確ではないからだ。
次のページ>>「自助」「共助」「公助」どの原則に立つのかを明らかにせよ
大震災など自然災害からの復旧に当たっては、問題は「自助」、「共助」、「公助」の分担をどう考えるかである。突き詰めれば、二重ローンの問題 は、震災によって発生した損失を、だれが、どれだけ負担するかという問題に行き着く。被災者は工場設備や住宅が消滅し、ローンだけが残っている状態だ。も しローンを免除するとすれば、その損失をだれが負うのかということである。
民主党案を読む限り、その点が明確ではない。例えば、再生ファンドが金融機関から中小企業の債権を買い取っても、その債権(被災者にとっては借入 金)は残ったままだ。住宅ローンについても、返済が猶予されたり、金利が引き下げられても、いずれは返済しなければならない。新たに住宅ローンを組めば、 優遇措置はあっても二重ローンが発生する。
債権放棄(被災者にとっては債務免除)についても、私的整理がベースになっている。被災者と金融機関が話し合いで「解決してね」といっているわけ だ。結局のところ、民主党案は「自助」がベースで、極力、財政負担が増えないようにという、財務省の影響が透けて見える。自助、共助、公助のいずれを基本 原則とするのか。自助が基本であるならば、そのことをはっきり述べるべきだ。
自民党案は、個人の住宅ローンいついては、債務免除という方針が明確だが、その場合にも、だれが最終的に損失を負担するかについでは、やはりお茶を濁している。
「自助」「共助」「公助」どの原則に立つのかを明らかにせよ
ある金融関係者が、今回の大震災と阪神淡路の違いを、こう指摘する。「阪神淡路のときは家屋は壊れたけれども、仕事は残っていた。今回は、職場そのものまで失った人たちが大勢数いる」。それだけ自助努力を求めるには、あまりに事態は深刻である。
ローンを実行している金融機関が債権放棄することを「共助」と考えても、おそらく金額が巨大になり地域金融機関の経営を脅かすだろう。地域の金融 不安にも、発展しかねない。一方、被災地の自治体は財政基盤が弱いことを考えると、「公助」として国が、多くの損失負担を引き受けなければなるまい。
次のページ>>阪神淡路の不幸を繰り返してはならない
では、どこまで被災者を救済するのか。憲法には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定されている。とすれば、 生活の糧を得るための工場や漁船や店舗を再建する、住む場所を確保することを、公が支援することには、国民の多くも異存はないだろう。
では、どの水準まで公助するのか。被災者は資産が消えてローンだけが残っている状態だ。言い換えれば、マイナスからの出発である。だから、せめて ゼロからの再出発ができるように、既存のローンを一部または全額免除するという考えが一つありえる。その原則さえはっきりすれば、民間金融機関が債権を放 棄して、その損失を政府からの資金援助で埋めるか、支援機構やファンドが債権を買い取って、その後、債権を放棄するかといった問題は、技術論であり、いく らでも知恵の出しようはある。
債権放棄という案に対しては、常に公平性の問題が持ち出される。残念ながら、阪神淡路大震災では、被災者からの要望が強かったにもかかわらず、私 的な財産の再建は「自助」が基本とされた。兵庫県など自治体による特別融資や返済猶予などは行われたものの、旧債務の免除は行われず、二重ローンに苦しめ られた(いまも苦しめられている)被災者も多い。そもそも私有財産制度の国である以上、私的財産の再建に当たっては、公的資金は投入しない(貸付金はあり 得る)という原則論もある。
しかし、今回の震災は阪神淡路よりも、はるかに事態が深刻である。そして、何よりこの災害大国・日本に暮らしている以上、だれもが東北の人々と同 じ災厄に遭遇しかねないことを痛感させられた。だから、阪神淡路の不幸を繰り返してはならないし、遅ればせながら、まだ阪神淡路によって二重ローンで苦し む人がいれば、その救済を考えてもよい。
もう一つ、救済を手厚くすればするほど、これを悪用するモンスター被災者が出るという批判もある。確かに、そうした不心得者が出ることは避けられ まい。だが、これは限られたモンスター被災者の存在を言い立てて、より多くの不幸を生んでよいのかという問題である。ここは被災者を信じ、性善説で対応す べきだ。
繰り返すが、二重ローン問題で最も重要なポイントは、負担の原則を打ち立てることだ。国が損失を引き受けるということは、最終的には、国民全体が税金によって損失を分かち合うということである。
次のページ>>各政党は負担の原則という本質論をごまかすな
今回の大震災に当たって、国民は東北の被災者とともにあると決意したのではなったか。国会議員も、自助、共助、公助のいずれを基本原則とするのか を明らかにし、公助がベースであるならば、国民に負担の覚悟を問うべきである。各政党が出す二重ローン対策が、負担の原則という本質論をごまかしたままだ とすれば、それはまやかしの救済策に過ぎない。
(ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)
◆参考記事
貝原俊民元兵庫県知事からの提言神戸はかくて阪神・淡路大震災から立ち上がった東北6県で「広域復興機構」を設立し一体で復興を目指せ
大震災と金融問題・根こそぎ破壊された地域経済これから増える不良債権・復興資金への対応をどのような原則でやるべきか――西村吉正・前早稲田大学教授(元大蔵省銀行局長)に聞く
阪神大震災の教訓が活かせるか「時間との戦い」に苦しむ被災中小企業の今と真の救済策――加藤恵正・兵庫県立大学教授に聞く
質問1 二重ローン問題の救済策は、どの原則に立つのがいいと思いますか?
58.3%
自助
25%
公助
16.7%
共助
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