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東電は私的整理ガイドライン銘柄になるか
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20110615/ecn1106151036001-n1.htm
2011.06.15 森岡英樹の金融スクープ：夕刊フジ
東京電力の株価下落が止まらない。９日には一時１５０円を割り込み上場来安値を更新した。背景には福島第１原発事故の損害賠償を巡る政府の支援策が政治の混迷で宙に浮くのではないかという市場の懸念がある。とめどない株価の下落は、政局のあだ花として東電破綻の可能性を織り込みつつあるようにもみえる。
東電の賠償支援策については５月１３日の閣僚会議で了承しており、政府は今週にも法案を国会に提出する方針である。しかし、東電処理をめぐっては政府・与党内はじめ財界、市場関係者間でいろいろな意見が混在しているのは事実。なかでも東京証券取引所の斉藤惇社長が朝日新聞のウェブマガジンのインタビューで「東電でも（会社更生法で再建中の）日本航空と同様の処理が望ましい」と、法的処理の可能性を示唆したのは衝撃的であった。証券取引所のトップが私見とはいえ、上場する個社の法的処理に言及するのは異例である。かつて斉藤氏は、産業再生機構の社長としてダイエーやカネボウの再生を手掛けた経緯があることから、一般論としての原理原則を語ったのであろうが、この発言を受け東電株は一時、ストップ安に見舞われた。
斉藤発言を受け、枝野幸男官房長官は「政府は（原発事故の被災者が持つ）賠償債権をしっかり守るために全力を挙げている」（６日午後の記者会見）と、改めて東電の法的整理の可能性を否定した。東電に法的整理を適用すれば「事故処理にあたっている事業者の債権、特に中小企業の債権には優先権がないので大変な問題が生じる」（枝野長官）というわけだ。
だが、それでも政府・与党内にも「東電は法的整理されるべき」とする意見が消えないのは、「東電はすでに債務超過に陥っている」（政府関係者）という厳しい状況認識があるためだ。東電が発表した２０１１年３月期決算では、１兆２４７３億円という創業以来最大の赤字を計上したが、依然、２兆円の株主資本と１兆円を超す利益剰余金を計上している。しかし、「本来であれば、通常の事業損益計算とは別に、資産減損、原発廃炉、損害賠償という３つの特別損失の計上を行う必要がある。どうひいき目に見積もっても資産減損が７０００億円、原発廃炉が２兆４０００億円、損害賠償が１兆６０００億円になると試算され、債務超過は免れ得ない」（政府関係者）という指摘には説得力がある。債務超過であれば、粛々と法的整理することが市場のルールということであろう。
しかし、ここで問題になるのは、東電が法的整理された場合に予想される市場の混乱と金融機関への影響となる。そこで金融機関内で検討されているのが、私的整理ガイドラインに基づく東電処理である。私的整理は債権者間の合意により、自主的に負債を整理していく手法で、私的整理ガイドラインに基づき整理された場合、合理的に債権放棄がされたと認定され、税務上損金算入により無税償却が認められる。また、対象となる企業にとっても法的整理に伴う信用力の低下が回避され、事業価値を棄損しなくてすむ利点がある。
このガイドラインに基づけば、政府が求める金融機関の債権放棄にも道が開けるのだが…。
■森岡英樹（もりおか・ひでき） １９５７年、福岡県出身。早大卒。経済紙記者、埼玉県芸術文化振興財団常務理事などを経て２００４年４月、金融ジャーナリストとして独立。
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