★阿修羅♪ > 経世済民72 > 150.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
乗数効果と限界消費性向  財務省と内閣府:増税のため改竄? 
http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/150.html
投稿者 sci 日時 2011 年 6 月 10 日 02:18:13: 6WQSToHgoAVCQ
 

財務省が増税バイアスを持っていることは別に否定しないが
三橋らの思い込みとは違い、政府統計では限界消費性向b〜0.7-0.8だな
内閣府の乗数の定義は、理論的な値である 1/(1-b) ではなく
実質的な消費のトータルな増加で定義しているから
家計や企業が政府から得た金を消費にどれだけまわしたかで考えなければならない。
つまり追加所得に対する消費性向を見積もる必要がある。
それが将来の増税やデフレ予測で債務返済や内部留保に回ることでキャンセルされていたというのが現実だな

http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je10/pdf/10p02022_2.pdf
http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/5830/1/ES_v55%284%29_1.pdf
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20090214/apc_mpc
wiki/乗数効果
http://waveofsound.air-nifty.com/blog/2010/07/post-6b87.html

http://ameblo.jp/sankeiouen/entry-10894223325.html
 乗数効果Y、消費性向X とすると、乗数効果の定義は、Y=1/(1-X) です。公共投資のうちGDPにカウントされる公的固定資本形成が0.8であると言っていますので、等比級数の初項を0.8としY=0.8/(1-X)、これにY=1.2を代入すると、X=0.334が導き出されます。 
 つまり、乗数効果の定義から逆算して限界消費性向は0.334です。なぜ、このような低い数値になるかの説明として、「消費や投資で支払われた資金の多くが返済金に充てられること」などが挙げられています。しかし、乗数効果の計算式における公比(限界消費性向)が0.334ということは、貯蓄性向が0.666であるということであり、1のうち0.666が個人消費、企業投資、人件費とみなされない貯蓄、材料費、土地代、債務返済金だということです。これは、いくら急速に債務の返済に走ったとしても、企業や家計を運営するコストはそれほど変わるものではなく、したがって短期間の債務返済には限界があり、急激に消費性向が下降したなどという説明は到底納得できるものではありません。

 乗数効果の定義は消費性向から割り出される数値としています。したがって、乗数効果の算出はあくまで消費性向から行うべきものです。すべての企業と国民の消費性向は財務省が税務を通じて把握しています。その上で、例えば消費性向=0.7という数字を出しているのであれば、限界消費性向もほぼ0.7なのであり、誰が何と言おうと、公共投資の乗数効果は、初項を0.8とすると、その定義から0.8÷(1-0.7)=2.67 なのです。マクロ計量経済モデルによると違う結果になったなどという主張は、乗数効果の定義から否定されるべきものと思われます。


http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2011/06/09/012953.php
三橋貴明第105回 財務省と内閣府 
2011/06/07 (火) 12:40


 最近の内閣府は、財務省の増税路線をサポートする指標や資料を出してくることが実に多い。調べてみると、どうやら内閣府の中に財務省 からの出向組が鎮座しており、彼らが「増税やむなし」あるいは「公共事業、意味なし」といった印象を与える指標を、数字をこねくり回しながら作成している とのことである。
 IMFやOECDへの財務省からの出向者が「日本は消費税増税が必要だ」などと発言し、それが日本の国内マスコミにより、「IMF、日本は中期的に消費税20%が必要と見解」 などと、いい加減な記事に仕立て上げられるのと、構造的には全く同じということだ。
 内閣不信任案の騒ぎを経て、ようやく東日本大震災からの復興に向けた基本理念などを盛り込んだ復興基本法案が、国会で審議が始まりそうである。復 興基本法案は、自民党と公明党が提出したものを丸呑みする形で審議が進んでいるが、財源については「復興債」すなわち国債が中心である。
 本復興基本法は、そもそも今年の4月中には通しておかなければならなかった法案である。関東大震災の際には、震災発生からわずか四週間後には帝都 復興院が設置され、総裁の後藤新平により帝都復興計画が始まった。それに対し、東日本大震災の場合は、震災から三ヶ月が過ぎようとしているにも関わらず、 未だに復興基本法や第二次補正予算(復興予算)が国会を通過していない。被災者の気持ちを思えば、この民主党政権による遅延行為は、怠慢というよりは犯罪 と呼ぶべきだと思う。
 菅直人首相率いる民主党政権が、なぜ復興基本法の審議を始めようとしなかったのか。あるいは、一時は復興基本法や二次補正をほったらかしにしたまま、国会を閉じようといていたのだろうか。なぜ、ここまで菅政権は、復興基本法や復興予算の早期審議を嫌がるのだろうか。
 理由は極めて簡単である。現時点で復興基本法を通し、復興予算を執行に移す場合、財源は国債以外には考えられないためである。そうなると、財務省が「震災を活用して」実現しようとした、復興増税という消費税アップ構想が水泡に帰してしまう。
 現時点の菅政権は、まさに財務省の言うがままに、増税路線を邁進しようとしている。復興増税を実現するには、財源が復興債(国債発行)となってい る自民党、公明党の復興基本法は受け入れられない。だからと言って、そう簡単に復興増税などという過激な手段が、国会を通過するはずもない。
 というわけで、菅政権は復興増税実現のために、復興基本法や二次補正の審議を先送りにし、挙句の果てに通常国会を閉じてしまおうとしたわけである。常識的に考えて、現在の日本は普通に通年国会にするべきだと思うのだが、現在の民主党執行部には常識が通用しない。
 結果、さすがに呆れ返った野党が不信任案を提出し、与党の一部の議員も同調しようとしたのが、今回の騒ぎの顛末である。退陣詐欺という「ペテン行 為(by 鳩山元首相)」により、菅政権の不信任は回避されたが、いずれにせよ菅直人首相は早期に退陣しないわけにはいかないだろう。あそこまで信を裏 切ってしまうと、与党議員といえどもついていけない。
 また、今回の不信任案騒動により、曲がりなりにも復興基本法の審議が始まった。二次補正も近々国会審議を通るであろうし、国会自体も通年で開催されることになる。被災地のためにも、結果的には野党の不信任案提出はプラスに作用するだろう。
 自民党、公明党が提出している復興期本法案が国会を通過すれば、復興の財源は普通に国債発行になる。すなわち、復興増税という財務省の野望が、打ち砕かれることになるわけだ。 
(1/3の続き)
 とはいえ、そんなことで増税路線を諦めようとしないのが、財務省の本質である。
 予想はしていたのだが、復興増税がどうやら無理らしいと明らかになった途端に、今度は「税と社会保障の一体改革による消費税アップ」 という、震災前までの路線が復活してきた。結局のところ、財務省は省益である増税が実現できれば、理屈付けは何でも良いのである。復興増税がダメという話 になれば、単純にこれまでの「税と社会保障の一体改革」路線に戻るだけの話というわけだ。
『2011年5月31日 毎日新聞「消費税:増税まず2〜3% 財務省・内閣府報告書「景気後退主因でない」」
 財務省と内閣府は30日、税と社会保障の一体改革に向けた集中検討会議に、消費税の段階的な引き上げを打ち出した報告書を提出した。有識者の研究 成果などを踏まえ、消費税増税が経済や課税実務に与える影響をまとめたもので、引き上げ幅は2〜3%を想定。97年の増税時の分析をもとに「増税は景気後 退の主因ではない」と結論付けるなど、増税の地ならし的な性格が色濃い。政府はこれを参考に税率や増税時期など具体策の検討を進める。
 報告書は、97年4月の消費増税による消費の落ち込みを(国内総生産の0・06%相当の)3000億円程度と分析。景気は同年5月を境に後退局面に入るが、7月のアジア通貨危機や11月の山一証券破綻などの金融危機の影響が大きいと指摘した。
 ただ、増税による消費の落ち込みが「経済にマイナスの影響を与えたとの見方がある」点は認識。このため増税のタイミングについては「景気が成熟す る前、勢いのある段階が望ましい」とした上で、大幅増税は景気への影響が懸念され、小刻みだと事業者の実務負担が大きい点を指摘。英独で近年、2・ 5〜3%引き上げた事例を紹介した。
 さらに「(増税を)先送りするほど大きな引き上げが必要になり、経済ショックも大きくなる」とし、早期実施の必要性を説いた。08年秋のリーマン・ショック後の需要不足下でも多くの国が増税に踏み切ったとし、デフレ脱却前の引き上げも可能との見方を示した。(後略)』
 色々と突っ込みどころがある記事であるが、まずは内閣府の報告書のソースをご紹介しておこう。
【社会保障・税一体改革の論点に関する研究報告書】http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/syutyukento/dai9/siryou3-4.pdf
 ちなみに、上記報告書の中で、内閣府は、「このように、今から振り返ると、97年度の経済は前年度から後退したのであるが、97年には4月の消費税率引上げ後、アジア通貨危機と金融危機という2 つのショックが日本経済を襲った。7 月にはタイ・バーツ危機に端を発してアジア通貨危機が起こった。危機はその後、フィリピン、インドネシア、マレーシア、韓国などへ伝播し、これを受けて 7−9月期の輸出数量(SNAベース)は2.2%(季調済前期比)減少した)。さらに、11月には三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券が経営破たんし、金 融危機が家計・企業のマインドを悪化させ、経済の動きにも大きな影響を及ぼした。」 と、記事中にもあるように、1997年後半以降の急激な景気の落ち込みは、「消費税をアップしたためではない!」と、問題のすり替えを行っているわけで ある。別に、誰も消費税のアップのみが98年以降のデフレ深刻化の原因である、などとは言っていない。デフレ環境下で消費税をアップし、さらに公共投資削 減などの緊縮財政を強行し、そこにアジア通貨危機や国内の金融危機が勃発した結果、日本のデフレが深刻化していったと言っているだけだ。少なくとも、97 年の消費税アップが、翌年以降のデフレ深刻化の「一因」であることは、間違いのない事実なのである。
 内閣府の報告書では、さらに、「このように短期間に複数の大きなショックが生じたために、5月以降の景気後退の動きに対して、個別の要因がどれだけ寄与しているかを求めることはきわめて困難である。実際、消費税率が1997年の日本経済に与える影響については見方が分かれている。」 と、消費税増税と98年の極端な景気悪化の関連性についてまとめている。確かに、97年の消費税アップが翌年の景気後退に「どの程度の割合の影響」があったかについては、意見が分かれるところであろう。とはいえ、問題の本質は、「デフレ下の増税は、デフレを深刻化させる」 という話であって、97年の消費税アップに「何割の責任があるか」という話ではない。そもそも、需要が収縮しているデフレ下で、さらに民間支出を絞り込 むこと確実な消費税アップを提言している資料で、「消費税アップが景気悪化の全ての原因ではない」などと言われても困るわけだ。消費税アップを主張する人 は、「デフレ下で消費税をアップすると、経済成長を促進し、日本経済がデフレを脱却する」 というロジックを示さなければならない。もちろん、さすがの屁理屈大好き財務省や内閣府といえども、これほど無茶な主張を筋道立てて主張することはできない。
(2/3に続く)
(2/3の続き)
 また、毎日新聞の記事や内閣府の報告書にある、「(97年の)景気は同年5月を境に後退局面に入るが、7月のアジア通貨危機や11月の山一証券破綻などの金融危機の影響が大きい」 も、これまた眉唾物だ。何しろ、消費税アップやアジア通貨危機が発生した97年の日本の輸出総額は、前年と比較して増大している。96年と比較し、アジ ア通貨危機が起きた97年の輸出は、何と5000億円も増えてしまったのである。どう考えても、少なくとも98年以降のデフレ深刻化は、アジア通貨危機と は無関係であろう。
【図105−1 日本の輸出、輸入、純輸出の推移(単位:十億円)】出典:内閣府「国民経済計算」 
 また、97年から翌年(98年)にかけ、アジア通貨危機の最中とはいえども、日本の輸出はわずかに1兆円減っただけであった。しかも「輸入」の方がさら に激減したため、純輸出は却って増えてしまった。本連載で繰り返えす解説してきたが、GDPにカウントされる貿易項目は、輸出でも輸入でもなく、純輸出の 金額である。
 98年の輸入は、何しろ5兆円近くも減少している。これは、「日本の内部要因により、国内景気が悪化し、結果、外国からの輸入が激減。輸出は増えなかったにも関わらず、純輸出が増えた」と、解釈するべきであろう。
 97年から翌年にかけ、日本の国内景気を悪化させた「内部要因」とは、果たして何であろうか? 消費税増税、社会保障費アップ、そして公共投資削減という緊縮財政以外にあるというのであれば、是非とも教えて欲しいものだ。
 消費税の増税効果のみならず、内閣府の指標には色々とおかしな点が多い。財務省からの出向官僚が書いているのであれば、思わず納得してしまうのだが、公共投資の乗数効果を極端に低く見積もっているのである。
【図105−2 5兆円の公共投資を継続的に増加させたときの乗数】出典:宍戸 駿太郎(元経済企画庁審議官/元筑波大副学長/元国際大学学長)
 何ゆえに内閣府のシミュレーションのみ、公共投資5兆円の乗数効果が最終的に1を切ってしまうのだろうか。理由は簡単。内閣府が公共投資の限界消費性向 を、0.33という極端に低い数値に設定しているためである。すなわち、公共投資として政府が支出した場合、その三割強しか消費に回らないと仮定している わけだ。
 極端に低い消費性向でシミュレーションしている理由を、内閣府は、「消費や投資で支払われた資金の多くが返済金に充てられること」 などと主張している。しかし、現実の世界で公共投資として政府が支出したお金のうち、七割近くが借入金返済や貯金に回ってしまうなど、考えられるだろうか。しかも、内閣府は最近、公共投資の消費性向をいきなり引き下げた。
 すなわち、財務省からの出向官僚が、公共投資の効果を低く見せるために消費性向を「低い数値に改訂した」としか考えられないのである。現在の中国 は、インフレ率を低く見せるために、最も値上がりしている食料品がCPI(消費者物価指数)に占める割合を引き下げた。似たようなことを、内閣府は実施し ているというわけである。全ては、増税という財務省の省益を実現するためである。
 昨今の日本は、中国共産党を笑える状況ではなくなってきた。財務省や内閣府(の財務官僚)のプロパガンダに対抗するためには、日本国民が本連載で解説してきたような情報で武装するしかない。難儀な話と思うかも知れないが、他に方法はないのである。
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2011年6月10日 02:53:19: Pj82T22SRI
>追加所得に対する消費性向を見積もる必要がある。

これが限界消費性向の定義だから、やはり内閣府の見積もりは0.33ということだな
しかし、それが家計消費性向からの推定値と一致していないということだ
当然、家計だけではなく企業の限界消費(投資)性向も考慮しないといけないということだが、それでも0.33は、かなり低めに見えるのは、やはり財務省バイアスのせいかw
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je10/pdf/10p02022_2.pdf
可処分所得を用いて限界消費性向を推計した場合、80 年には80%程度であったが緩やかに上昇を続け、
2008 年には95%に達している。一方、雇用者報酬+社会給付を用いて限界消費性向を推計した場合、80
年に70%強であったものが90 年までに80%弱まで上昇したが、その後は安定した推移をたどっている


02. 2011年6月10日 02:59:38: Pj82T22SRI
 
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis260/e_dis259.html 
 
  
短期日本経済マクロ計量モデル(2011 年版)の構造と乗数分析
佐久間 隆、増島 稔、前田 佐恵子、符川 公平、岩本 光一郎※
内閣府経済社会総合研究所
2011 年1 月
Economic and Social Research Institute
Cabinet Office
Tokyo, Japan
※内閣府経済社会総合研究所・計量モデルユニット:佐久間隆(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究
官)、増島稔(内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官)、前田佐恵子(内閣府経済社会総合研究所特別
研究員、内閣府政策統括官(経済財政システム担当)付参事官(企画担当)付参事官補佐)、符川公平(内
閣府経済社会総合研究所研究官)、岩本光一郎(内閣府経済社会総合研究所客員研究員)
本稿は計量モデルユニットにおけるモデル開発作業の一環である。本稿の公表にあたり事前審査として
行った所内セミナーでは、討論者の猿山純夫氏((社)日本経済研究センター主任研究員)及び小野研究所
長はじめ出席者の方々から大変有益なコメントをいただいた。また、内閣府の同僚諸氏からもご助言をい
ただいた。ここに記して御礼申し上げる。言うまでもなく、残された誤りは全て筆者達の責によるもので
ある。
2
The ESRI Short-Run Macroeconometric Model of the Japanese Economy:
Basic Structure, Multipliers, and Economic Policy Analyses (2011version)
Abstract
This paper describes the basic structure and multipliers of the 2011 revised version of The ESRI
Short-Run Macroeconometric Model of the Japanese Economy, which was first released in 1998.
The model is basically a demand-oriented, traditional Keynesian-type model with IS-LM-BP
framework; however, it adopts recent developments in econometrics, such as co-integration and
error correction to ensure long-run equilibrium. The use of the new techniques contributes toward
the stabilization of the long-run behaviors of the model.
The 2011 version has modified the form of production function from Hicks neutral to Harrod
neutral to ensure long-run equilibrium as IMF MULTIMOD and FRB/GLOBAL do.
The following are some of the multipliers of policy simulations. The fiscal multiplier, i.e., the
effect of government investments on GDP, is 1.07 in the first year. The effect of income tax
reduction is smaller due to its leak to household savings. 1% point rise of short-term interest rate
reduces real GDP by 0.48% in the first year. These characteristics of multipliers are not significantly
different from the 2008 version.
Effects of Macroeconomic Policies in Japan on Real GDP
(% deviation)
Effect of Government
Investments
(1% of Real GDP)
Effect of Income-Tax
Reduction
(1% of Nominal GDP)
Effects of Short-term
Interest Rate Rise
(1% point)
1st Year
2nd Year
3rd Year
1.07
1.14
0.95
0.22
0.64
0.65
-0.48
-0.69
-1.01
3
目 次
第1章 短期日本経済マクロ計量モデル(2011 年版)の概要
第1節 モデルの基本的構造 ┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄ 4
第2節 これまでの主な改訂状況 ┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄ 7
第3節 今回の推計作業について ┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄ 8
第2章 モデルの動学的パフォーマンス
第1節 主要乗数シミュレーションの結果 ┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄ 10
第2節 モデル乗数の線型性 ┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄ 19
補論 開差項モデルと指数算式モデルの比較 ┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄ 22
参考・参照文献 ┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄ 26
付属資料T 乗数詳細表 ┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄ 29
付属資料U 変数名一覧 ┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄57
付属資料V 方程式体系 ┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄ 61
4
第1章 短期日本経済マクロ計量モデル(2011 年版)の概要
第1節 モデルの基本的構造
内閣府・経済社会総合研究所では、様々な政策や外的ショックが日本経済に与える影響
を分析するために、「短期日本経済マクロ計量モデル」を開発し公表している。このモデル
は、1 年程度の短期的な調整過程を示すことに主眼をおいたものである。
基本的な形は、堀・鈴木・萱園(1998)に従い、IS-LM-BP 型(マンデル=フレミング・
モデル)のフレームワークをもとに、価格が期待修正フィリップス曲線で内生化されてい
る「価格調整を伴う開放ケインジアン型」である。
1998 年版モデル以降、経済理論の進展に基づく方程式体系の改良と、年々の経済の変化
を踏まえた再推計が行われており、方程式体系および乗数結果を含め、論文の形で公表さ
れている1。
(モデルの構造)
短期日本経済マクロ計量モデルは、四半期ベースの推定パラメータ型計量モデルであり、
2011 年版においては 方程式数152 本(うち推定式48 本)の中型のモデルである。
本モデルは、財貨・サービス市場、労働市場、貨幣市場、及び外国為替市場の 4 市場か
ら構成されている。市場別のモデルの構造は以下の通りである。
(1) 財貨・サービス市場
需要側は、家計と企業の合理的な行動を前提とした民間消費、投資(企業設備、住宅)、
モデルでは外生扱いとする政府支出、所得及び相対価格要因で定まる外需(輸出−輸入)
の合計として決定される。このうち民間消費は、短期的には可処分所得により決定される
が、長期的には家計保有の人的・物的資産に依存する。また設備投資は、要素価格均衡式
(資本の限界生産力が実質金利に等しい)に基づく均衡資本ストックへの現実資本ストッ
クの調整として捉えられ、その調整速度が資本コストに依存するように定式化されている。
GDP 水準は、価格調整が完全でない短期においてこの総需要により定義的に定まり、その
関係がモデルのIS 曲線を構成する。一方、供給側では、短期的には所与である生産要素(労
働供給、資本ストック)が生産関数を通じ潜在GDP に変換される。長期においては、生産
水準から決定されるマクロの稼働率(GDP ギャップ)が期待修正フィリップス曲線を通じ
物価や労働供給に影響を与え、設備投資が資本ストックを変化させるため、その調整メカ
ニズムにより均衡稼働率水準への回帰が生じる。
(2) 労働市場
要素価格均衡式(労働の限界生産力が実質賃金に等しい)を基礎として均衡労働分配率
1 1998 年版のモデル以降、2001 年版、2003 年版、2004 年版、2005 年版、2006 年版、2008 年版が公表され
ている。
5
を導出し、それと現実の労働分配率との乖離が失業率及び労働需要を決定すると考えた。
他方、労働供給は、人口や高齢者の割合、実質賃金に依存して決定される。
(3) 貨幣市場
マネーサプライはマネーの需給均衡式である LM 曲線によって決定される。短期利子率
は、マクロの需給ギャップと物価上昇率に依存して決定される。長期金利は、短期金利と
の期間構造から決定される。名目金利から期待物価上昇率を差し引いた実質金利は、資本
コストとして財貨・サービス市場にフィードバックされ、総需要水準にも影響する。
(4) 外国為替市場
ここでは為替レートが決定される。為替レート決定のメカニズムは、内外相対価格によ
る均衡レート、内外金利差、およびリスク・プレミアムに依存するいわゆるアセット・ア
プローチによる。為替レートは輸出入価格、実質輸出入及び要素所得の受け払いに影響を
与え、それらから経常収支が決定される。資本収支は、外国為替市場の均衡関係(BP 曲線)
により、定義的に定めている。
なお、政府部門は一般政府ベースで定義されている。支出側は、政府投資と政府消費お
よび社会保障給付であり、このうち政府投資は外生的に、他は内生的に決定される。歳入
側は、個人税、法人税、間接税(含む消費税)および社会保障負担から構成され、すべて
各々の賦課ベースを説明変数として内生的に求められる。
以上の4 市場と政府・財政部門のメカニズムを要約すると、以下の要約表のように整理
できる。
6
要約表(モデルの構造)
(1) 財貨・サービス市場
(需要)
C = C((C/HK) -1 ,A(L)YD, NW) 個人消費
IP/KP = IP(KP/KP eq , UC/P) 企業設備投資
IH = IH(HK, KH, r) 住宅投資
X = X(WD, P/E・P * ) 輸出
M = M(Y, P/E・P * ) 輸入
Y = C + IP + IH + G + X - M 国内総生産(IS曲線)
KP = KP -1 + IP 資本ストック
UC = UC(r) 資本コスト
(供給)
Y p = F(KP, L s ) 潜在GDP(生産関数)
dP/P = P(B(L)(dP/P) -1 , GAP) GDPデフレータ上昇率
GAP = Y/Y p GDPギャップ
(2) 労働市場
L s = L s (W/P, POP) 労働供給
L D = L S (1-UR) 労働需要
UR = (CU, (YW/NI)/(YW/NI) eq ) 失業率
(3) 財政
G = CG + IG 政府支出
TP = TP(YW) 個人税
TC = TC(NI - YW) 法人税
TI = TI(P・Y) 間接税
SC = SC(YW) 社会保障負担
SB = SB(W, POP65) 社会保障給付
BG = TP + TC + TI + SC - G - SB 一般政府財政バランス
(4) 貨幣市場
M S = M D (i s , P・Y) 通貨の需給均衡式(LM曲線)
i s = i s (C(L)dP/P, GAP) 名目短期金利
i l = D(L)i s 利子の期間構造
r = i l - dp/p 実質長期金利
(5) 外国為替市場・国際収支
E = E(i l -i l
* , P/P*, ρ) 為替レート
ρ = Σ BC/(P・Y) リスク・プレミアム
BC = P・X - E・P * ・M 経常収支
BC + BK = 0 国際収支の均衡条件(BP曲線)
BK :資本収支NW :純資産
CG :政府消費POP :15歳以上人口
CU :稼動率POP65 :65歳以上人口
IG :政府投資(外生) W :賃金率
HK :人的資本及び家計保有の物的資本WD :世界需要
KH :住宅ストックYD :家計可処分所得
NI :国民所得YW :雇用者報酬
(備考)添字の eq は均衡値、*は外国変数、A(L)はラグ演算子を表す。
7
第2節 これまでの主な改訂状況
(エラーコレクション型推計式の採用)
推計式の定常性を確保するとともに、変数間の長期的な均衡関係とそれに至る短期的な
調整過程を直接的に記述するエラーコレクション型推計式を2001 年版より採用しており、
モデルの安定性確保に寄与している。
一方で、変数間の因果関係が直感的に把握しにくくなったこと、必ずしも調整過程に理
論的整合性が保たれていないことや、推計された調整が長期にわたるものが見られること
など、改善の余地もある。
(フォワード・ルッキングな期待形成)
現行のモデル体系においては、為替レートや物価などの期待を定式化するときには、基
本的に過去の実績値に基づいた適合的期待形成が用いられている(バックワード・ルッキ
ング)。しかし、現在の政策変更が将来に関する期待に影響を与え、経済主体の行動を変え
る可能性を考慮すると、経済主体の期待が合理的に(フォワード・ルッキングに)取り込
まれている必要があり、適合的な期待形成だけでは十分でないとする批判がある(いわゆ
るルーカス批判)。
こうした問題意識のもと、村田・青木(2004)では、2003 年版モデルに、期待が重要な
役割を果たす7 変数に将来の期待を組み込んで、フォワード・ルッキングな期待形成を取
り込んだシミュレーションを行い政策インパクト(乗数)の分析を行った。インフレ期待
やそれに伴う金利決定ルール、将来資産額などのフォワード・ルッキングな期待の変化が
目先の経済活動に大きな影響を与えている中で、本モデルを予見された将来の変化の影響
を踏まえた分析を可能にするツールへと発展させることが重要であり、フォワード・ルッ
キングな期待形成の導入を検討することの意義は小さくない。
(連鎖系列データの採用)
国民経済計算系列が2004 年12 月より順次、連鎖化されたことは、固定基準方式下で問
題とされていた、基準年から離れるに伴って増大する指数の歪みを小さくし、実質変数間
の関係をより安定的に捉えることを可能にしており、計量モデルにとっては好ましい影響
を与えている。
本モデルにおいては、2005 年版より連鎖系列を推計に用いることで、実質系列(デフレ
ータ)に連鎖構造を導入した。さらに、2006 年版では輸入系列にも連鎖構造を導入したが、
今回(2011 年版)は、2008 年版と同様、実用上の観点から輸入については簡素化を図った。
8
第3節 今回の推計作業について
(推計データの改訂)
今回の推計においては原則として、平成21 年に公表された平成19 年度国民経済計算確
報(平成12 年基準)から得られる1990 年第1 四半期から2007 年第4 四半期までのデータ
を用いた。なお、平成12 年基準の国民経済計算については、従来、1996 年(主要系列につ
いては1994 年)以降の計数しか掲載されていなかったが、平成19 年度版では1980 年まで
の遡及推計結果が公表されており、今次モデルの推計には、この長期遡及データを使用し
ている。
(生産関数の変更)
民間設備投資は、民間最終消費支出などと並び特に重要なGDP コンポーネントの一つで
ある。民間設備投資(IFP)関数は、均衡資本ストック、すなわち定常状態における資本スト
ックの長期的な均衡経路に向かって現実の資本ストックが調整していく過程を表している。
こうした構造は、IMF のMULTIMOD やFRB のFRB/GLOBAL など、多くのマクロ計
量モデルで採用されている。これらのモデルでは、定常状態において、設備投資と資本ス
トックの伸び率が資本減耗率と均衡経済成長率の和に収束する。その結果、設備投資-資本
ストック比率が一定の均衡値に収束する性質を持つ(飛田他(2008)補論参照)。実は、こ
うした性質は生産関数の形状に大きく依存している。一定の人口成長率を前提とした新古
典派成長理論の枠組みで定常状態が存在するようなモデルを検討する場合、技術進歩は労
働節約的と仮定することが理論的には都合が良いことが指摘されている(Barro and
Sala-i-Martin (2003))。MULTIMOD やFRB/GLOBAL では、この条件を満たすコブ=ダグラ
ス型の生産関数が採用されている。
一方、短期日本マクロ計量モデルでは、2003 年版以降、技術進歩が資本投入量と労働投
入量に中立的に作用するヒックス中立的なCES 型の生産関数を採用してきた((1)式)。ヒ
ックス中立的なCES 型生産関数では、安定的な定常状態の存在は保証されない。
γ λ {δ ρ ( δ ) ρ } ρ
1
1 Y = e t K − + − L− − (1)
(Y:実質GDP、K:資本ストック、L:労働投入、γ:効率パラメータ、
λ:技術進歩パラメータ、ρ:代替パラメータ、δ:資本分配率)
これは、IMF のMULTIMOD やFRB/GLOBAL と異なる点であり、2008 年版モデルにおい
て経済理論との整合性という観点から「今後の課題」として特筆されていた点である。今
次モデルの再推計にあたっては、CES 型生産関数という大枠は堅持しつつ、技術進歩を労
働節約的と仮定したハロッド中立的なものに改めた((2)式)。
9
γ δ ρ ( δ )( λ ) ρ ρ
1
1
− − −
⎭ ⎬ ⎫
⎩ ⎨ ⎧
Y = K + − e t L (2)
この修正により、今次モデルにおいては、設備投資が定常状態において均衡経路に収束す
ることが保証されることとなった。
10
第2章 モデルの動学的パフォーマンス
第1節 主要乗数シミュレーションの結果
本節では「短期日本経済マクロ計量モデル」による主要なシミュレーション結果(乗数)
を紹介する。各表の数値は、インパクト・ケースにおける各変数の水準の、標準ケース(シ
ミュレーション上のインパクトを加える前のケースで、実績値に等しい)における同変数の
水準からの乖離率、あるいは乖離幅を示している2。
詳細の解説は次頁以下に譲るが、結果の概略をまとめれば以下の通り。
1) 財政支出の拡大
実質 GDP の1%相当の公共投資の継続的な拡大は、実質GDP を1 年目1.07%、2 年
目1.14%、3 年目0.95%拡大する。
2) 所得減税
名目 GDP の1%相当の個人所得税減税(継続減税)は実質GDP を拡大させ(1 年目
0.22%、2 年目0.64%)、その効果は3 年目まで持続する。減税乗数は公共投資乗数に比
べ小さいことから、税収減が景気拡大を通じた増収で相殺される程度は小さく、1 年目
の財政赤字は対GDP 比で0.95%ポイント増加する。
3) 消費税増税
消費税率の 1%引き上げは実質GDP を1 年目▲0.15%、2 年目▲0.35%抑制する。
4) 金融政策
短期金利の 1%引き上げは実質GDP を1 年目▲0.48%、2 年目▲0.69%抑制する。こ
の背景には、金利の上昇による設備投資、住宅投資の抑制、円高などが影響している。
5) 外生的ショック
外部環境の変化として a)為替レート10%減価、b)原油価格20%上昇、c)世界需要1%
増加の影響をみた。為替レート減価は実質GDP を1 年目に0.19%拡大する(2 年目は
0.38%)。原油価格上昇は実質GDP を1 年目に▲0.22%、2 年目に▲0.38%減少させる。
また世界需要が1%増加すると実質GDP は1 年目に0.07%、2 年目に0.13%増加する。
なお、いずれの結果についても、モデルの内挿期間である 2005 年からの3 年間を対象と
しているが、「短期」分析を意図したモデルの性格上、2 年目以降の数字は参考程度に解さ
れるべきものである。また、以下の乗数はあくまでもモデルの動学特性を検討するための
機械的テストの結果であり、これをもって直ちに現実の政策効果を評価することは適切で
ない点に注意を要する。言うまでもなく、現実の政策効果は時々の経済社会環境に依存す
るからである。
2 本稿で使用した統計パッケージは Portable TROLL Release2.05 である。
11
(1)財政政策シミュレーション
本節では代表的な財政政策のケースとして、(1)政府支出拡大ケース、(2)個人所得税減税
ケース、(3)法人所得税減税ケース、(4)消費税増税ケースの4 つをとりあげる。政府支出拡
大ケースでは、通常行う実質政府支出の継続的拡大以外に、実質政府支出を一時的に拡大
するケース、名目政府支出を拡大するケース等も紹介している。
@政府支出拡大の効果
ここでは公的固定資本形成を実質GDP の1%相当額増加させた場合の効果を検討する。
次節でも示す通り、本モデルには、ある程度線型(対称)性が想定できるので、政府支出削減
の効果は、政府支出拡大効果の符号を逆にしたものと考えてよい。
@)政府支出の継続的拡大
実質の公的固定資本形成を標準ケースの実質 GDP の1%相当分だけ継続的に増加した場
合、実質GDP の乗数は1.07%(1 年目)となる。ピークは2 年目(1.14%)で、3 年目(0.95%)
にはやや低下する (表2−1 参照)。2008 年版では、実質GDP の乗数は1 年目1.00%、2 年
目1.10%、3 年目0.94%であった。需要項目別に見ると、消費は所得の増加を受け緩やかに
増加する。一方で、設備投資は、金利上昇によるクラウディングアウトにより、マイナス
で推移している。
経済の拡大により、支出拡大の一部は税の増収で相殺され、一般政府赤字の増大は支出
増額に比べれば小幅に止まるが、支出額全体がカバーされることはなく、赤字残高は拡大
する(財政収支の対名目GDP 比は標準ケース比で1年目▲0.67%ポイントの悪化)。
国際収支への影響では、所得の増加と為替の増価による輸入の拡大(1.03%〜1.74%)、金
利上昇による対外利払いの増加の影響により、経常収支の対名目GDP 比は▲0.18%〜▲
0.50%ポイント悪化する。
なお、乗数の大きさは金融政策のスタンスにも依存しており、例えば、貨幣供給量一定
の下で同様の財政拡大を行うと、乗数は金利上昇の影響を受け利子反応関数を用いたケー
スに比べ小さくなる。一方、短期金利一定の下で行えば、事実上の金融緩和となるため乗
数は3 年目でも1 を上回る(1 年目1.21%、2 年目1.39%、3 年目1.31%)(付属資料T参照)。
12
表 2−1 実質公的固定資本形成を実質GDP の1%相当額だけ継続的に拡大
実質GDP
(%)
実質GDP
成長率
(%ポイント)
消費
(%)
設備投資
(%)
住宅投資
(%)
財・サービス
輸出
(%)
財・サービス
輸入
(%)
GDPGAP
(%ポイント)
1年目1.07 1.19 0.15 -0.72 0.17 -0.04 1.03 1.04
2年目1.14 -0.09 0.40 -0.90 0.65 -0.21 1.59 1.10
3年目0.95 -0.17 0.32 -1.54 1.13 -0.45 1.74 0.99
名目GDP
(%)
民間消費
デフレータ
(%)
単位時間
あたり賃金
(%)
失業率
(%ポイント)
財政収支対
名目GDP比
(%ポイント)
長期金利
(%ポイント)
経常収支対
名目GDP比
(%ポイント)
為替レート
(%)
1年目1.28 0.18 0.64 -0.08 -0.67 0.13 -0.18 -0.07
2年目1.88 0.69 1.25 -0.07 -0.52 0.20 -0.34 -0.76
3年目2.31 1.24 1.88 -0.02 -0.63 0.25 -0.50 -1.72
(備考)
1. 実質公的固定資本形成が標準ケースの実質GDP の1%に相当する額だけ増加し、それがシミュレーション期
間中継続するものと想定した。
2. シミュレーションは、2005 年〜2007 年の3 年間の実績値を標準ケースとして行っている。
3. 実質 GDP および需要項目、名目GDP、民間消費デフレータ、賃金、為替レートは標準ケースからの乖離率を、
GDP 成長率、GDP ギャップ、失業率、財政収支対名目GDP 比、長期金利、経常収支対名目GDP 比は乖離幅
を示している。
4. 為替は名目対米ドルレートで、符号が負の場合は円の増価を意味する。
5. (備考の)2.〜4.については、以下すべてのシミュレーションについて同様。
6. 金融政策の前提は、1990 年以降で推定した短期金利に関する政策反応関数によっている。これは、短期金利
の1%引き上げケース(表2−6)を除き、以下のシミュレーションについて同様。
7. 短期金利一定と仮定した場合の実質GDP への影響は1 年目1.21、2 年目1.39、3 年目1.31 となる。
A)名目政府支出の継続的拡大
名目の公的固定資本形成を標準ケースの名目 GDP の1%相当分だけ継続的に増加させた
場合、名目GDP でみた乗数(1 年目)は1.20%となる。その他の変数の推移及び需要項目
別の支出動向及び財政バランス等に与える影響については、基本的に実質支出拡大ケース
とほとんど同様である(表2−2 参照)。
表 2−2 名目公的固定資本形成を名目GDP の1%相当額だけ継続的に拡大
実質GDP
(%)
実質GDP
成長率
(%ポイント)
消費
(%)
設備投資
(%)
住宅投資
(%)
財・サービス
輸出
(%)
財・サービス
輸入
(%)
GDPGAP
(%ポイント)
1年目1.01 1.10 0.14 -0.67 0.16 -0.04 0.97 0.98
2年目1.02 -0.14 0.37 -0.81 0.60 -0.19 1.45 0.98
3年目0.78 -0.22 0.28 -1.38 1.02 -0.41 1.51 0.83
名目GDP
(%)
民間消費
デフレータ
(%)
単位時間
あたり賃金
(%)
失業率
(%ポイント)
財政収支対
名目GDP比
(%ポイント)
長期金利
(%ポイント)
経常収支対
名目GDP比
(%ポイント)
為替レート
(%)
1年目1.20 0.17 0.60 -0.08 -0.63 0.12 -0.17 -0.06
2年目1.71 0.64 1.14 -0.07 -0.46 0.18 -0.32 -0.71
3年目2.01 1.12 1.67 -0.01 -0.53 0.22 -0.44 -1.58
(備考)
名目公的固定資本形成が標準ケースの名目GDP の1%に相当する額だけ増加し、それがシミュレーション期間中継
続するものと想定した。
13
A減税・増税の効果
@)個人所得減税の効果
個人所得税を名目 GDP の1%相当額継続的に減税した場合の実質GDP の乗数は、1 年目
0.22%、2 年目0.64%となる(表2−3 参照)。減税乗数が公共投資乗数に比べて小さいのは、
公共投資が公的部門の支出という形で需要を直接的に拡大するのに対し、減税の場合、家
計の支出行動によってその効果が左右されることによる。
本モデルでは、家計は、一時的な変動を除いた恒常的な所得に基づいて支出額を決定す
ると想定しているため、当該期の家計可処分所得が増加するほどには消費支出は拡大しな
い(1 年目0.34%、2 年目0.88%)。結果として、他の需要項目への波及効果も若干遅れて生
じることとなる。
減税乗数が小さいことから、税収減が景気拡大を通じた増収により相殺される程度は小
さく、財政赤字の名目GDP 比は0.95%ポイント悪化(1 年目)するが、経済成長に伴う税収増
加により2 年目以降は若干マイナス幅が縮小する。
国際収支への影響を見ると、実質 GDP の増加を受けて輸入が増加し、かつ金利上昇によ
る対外利払いが増えるため、経常収支の名目GDP 比は▲0.03〜▲0.25%ポイント悪化する。
表 2−3 個人所得税を名目GDP の1%相当額だけ減税
実質GDP
(%)
実質GDP
成長率
(%ポイント)
消費
(%)
設備投資
(%)
住宅投資
(%)
財・サービス
輸出
(%)
財・サービス
輸入
(%)
GDPGAP
(%ポイント)
1年目0.22 0.49 0.34 0.11 0.19 -0.01 0.18 0.21
2年目0.64 0.21 0.88 0.68 1.38 -0.05 0.73 0.59
3年目0.65 -0.09 1.01 0.55 2.90 -0.16 0.99 0.56
名目GDP
(%)
民間消費
デフレータ
(%)
単位時間
あたり賃金
(%)
失業率
(%ポイント)
財政収支対
名目GDP比
(%ポイント)
長期金利
(%ポイント)
経常収支対
名目GDP比
(%ポイント)
為替レート
(%)
1年目0.24 0.02 0.10 -0.02 -0.95 0.03 -0.03 -0.01
2年目0.85 0.20 0.50 -0.04 -0.78 0.09 -0.15 -0.15
3年目1.17 0.49 0.88 -0.03 -0.75 0.12 -0.25 -0.57
(備考)
1. 個人所得税を標準ケースの名目GDP の1%に相当する額だけ減税し、その変化がシミュレーション期間中
継続するものと想定した。
2. 財政支出は実質ベースで固定されており、名目額は物価の動きに応じて変動している
3. 2.については、以下本節のすべてのシミュレーションについて同様。
A)法人所得減税の効果
法人所得税の減税は、企業の資本コストの低下を通じて、設備投資を増加させる(表2−4
参照)。法人所得税を名目GDP の1%相当額継続的に減税した場合の実質GDP に対する効
果は、設備投資の拡大(1 年目2.29%)などにより1 年目0.39%となっている。しかし、減
税による歳入減が景気拡大を通じて相殺される程度は大きくなく、財政収支の名目GDP 比
は1 年目で▲0.95%ポイント、2 年目▲0.91%ポイントと赤字が拡大する。
14
表2−4 法人所得税を名目GDP の1%相当額だけ減税
実質GDP
(%)
実質GDP
成長率
(%ポイント)
消費
(%)
設備投資
(%)
住宅投資
(%)
財・サービス
輸出
(%)
財・サービス
輸入
(%)
GDPGAP
(%ポイント)
1年目0.39 0.56 0.07 2.29 0.16 -0.01 0.36 0.34
2年目0.70 0.15 0.26 3.77 0.42 -0.07 0.86 0.48
3年目0.60 -0.21 0.30 3.53 0.69 -0.15 1.01 0.23
名目GDP
(%)
民間消費
デフレータ
(%)
単位時間
あたり賃金
(%)
失業率
(%ポイント)
財政収支対
名目GDP比
(%ポイント)
長期金利
(%ポイント)
経常収支対
名目GDP比
(%ポイント)
為替レート
(%)
1年目0.45 0.05 0.26 -0.03 -0.95 0.04 -0.06 -0.02
2年目0.97 0.25 0.73 -0.03 -0.91 0.08 -0.17 -0.23
3年目1.10 0.46 1.08 0.00 -0.90 0.08 -0.25 -0.57
(備考)
シミュレーション期間を通じて、法人所得税の減税幅が各年とも名目GDP 比1%相当となるよう減税(実効税率
で調整)した場合を想定した。
B)消費税増税の効果
消費税率を1%引き上げた(5%→6%)場合、民間消費デフレータは標準ケースに比べ
0.74%(1 年目)上昇する。その結果、実質可処分所得が減少し、消費を中心に内需が弱含み
となるため、実質GDP は0.15%(1 年目)の縮小を示す(表2−5 参照)。他方、財政収支
は名目GDP 比で0.42%ポイント(1 年目)改善する。しかし、他の税収が減少するため、
改善幅は消費税による増収よりは小幅にとどまる。
表 2−5 消費税率を1%ポイント引き上げ
実質GDP
(%)
実質GDP
成長率
(%ポイント)
消費
(%)
設備投資
(%)
住宅投資
(%)
財・サービス
輸出
(%)
財・サービス
輸入
(%)
GDPGAP
(%ポイント)
1年目-0.15 -0.32 -0.21 -0.08 -0.06 0.01 -0.13 -0.15
2年目-0.35 -0.03 -0.49 -0.32 -0.38 0.03 -0.42 -0.31
3年目-0.28 0.11 -0.52 -0.02 -0.71 0.09 -0.47 -0.23
名目GDP
(%)
民間消費
デフレータ
(%)
単位時間
あたり賃金
(%)
失業率
(%ポイント)
財政収支対
名目GDP比
(%ポイント)
長期金利
(%ポイント)
経常収支対
名目GDP比
(%ポイント)
為替レート
(%)
1年目0.26 0.74 -0.14 0.01 0.42 0.00 -0.07 0.03
2年目-0.07 0.63 -0.41 0.02 0.28 -0.04 -0.03 0.06
3年目-0.15 0.48 -0.54 0.01 0.28 -0.05 0.00 0.35
(備考)
1. 消費税率を標準ケースと比べて1%ポイント引き上げ、その変化がシミュレーション期間中継続するものと
想定した。
2. 民間消費デフレータの理論的な上昇率は、1997 年の消費税率引き上げの消費者物価指数(CPI)に及ぼす影響
の旧経済企画庁物価局試算値(消費税率2%ポイント引き上げはCPI 総合を1.5%押し上げる)から想定した。
(2)金融政策シミュレーション
ここでは代表的な金融政策のケースとして、(1)名目短期金利を標準ケースに比べ1%だけ
引き上げるケース、(2)貨幣供給量の水準を標準ケースに比べ1%相当削減するケース、の2
つを検討する。
15
@ 金融引締め効果(短期金利1%引き上げ)
短期金利の1%引き上げによる実質GDP 抑制効果は、1 年目には▲0.48%である。 (表2
−6 参照)。
需要項目別にみると、金利の上昇は設備投資や住宅投資を大きく抑制している(設備投
資は▲3.38%〜▲5.52%、住宅投資は▲0.42%〜▲2.59%)。また、金利高による円高(1 年
目1.40%)により、輸出が抑制される(▲0.21%〜▲1.39%)。輸入については、円高による
輸入物価低下のプラスの効果よりも、所得の減少のマイナスの効果がそれを上回り、1 年目
より減少する(▲0.47%〜▲1.06%)。
金利の変動が民間消費に与える影響は、財産所得の変化を通じた所得効果、他の需要項
目の変動が所得を変化させる効果、物価の変動が実質所得を変化させる効果等、複数の経
路で生じるが、本モデルでは1 年目より所得効果がまさり、消費が増加する結果となって
いる。
表 2−6 短期金利を1%引き上げ
実質GDP
(%)
実質GDP
成長率
(%ポイント)
消費
(%)
設備投資
(%)
住宅投資
(%)
財・サービス
輸出
(%)
財・サービス
輸入
(%)
GDPGAP
(%ポイント)
1年目-0.48 -0.56 0.10 -3.38 -0.42 -0.21 -0.47 -0.41
2年目-0.69 -0.24 0.14 -4.60 -1.35 -0.78 -0.79 -0.41
3年目-1.01 -0.33 0.05 -5.52 -2.59 -1.39 -1.06 -0.51
名目GDP
(%)
民間消費
デフレータ
(%)
単位時間
あたり賃金
(%)
失業率
(%ポイント)
財政収支対
名目GDP比
(%ポイント)
長期金利
(%ポイント)
経常収支対
名目GDP比
(%ポイント)
為替レート
(%)
1年目-0.56 -0.09 -0.26 0.03 -0.19 0.42 0.00 -1.40
2年目-0.94 -0.31 -0.91 0.03 -0.43 0.41 -0.13 -4.19
3年目-1.46 -0.56 -1.61 0.02 -0.56 0.46 -0.26 -6.74
(備考)
名目短期金利が標準ケースと比べて1%上昇し、その変化がシミュレーション期間中継続するものと想定した。
A 貨幣供給量減少の効果
貨幣供給量3 の水準を当初 1 年間かけて漸減的に標準ケース比1%低下させ、その後その
レベルを持続させると、貨幣市場の均衡を達成させるため金利の上昇を引き起こす(長期金
利は1 年目0.21%上昇する)。その金利上昇により設備投資が抑制され(▲1.45%〜▲1.86%)、
また、円高が生じ輸出も抑制される(▲0.08%〜▲0.53%)。
民間消費に対する影響には、短期金利引き上げの場合と同様、本モデルでは財産所得を
通じたプラス効果が大きいことにより、消費は1 年目と2 年目に若干増加している(表2−7
参照)。この結果、貨幣供給量の1%削減による実質GDP の抑制効果は、▲0.23%〜▲0.31%
となっている。
3 日本銀行は 2008 年に従来のマネーサプライ統計を見直し、マネーストック統計を公表している。その際、
各指標の対象金融商品の範囲や通貨発行主体の範囲が見直されたほか、通貨保有主体の範囲や一部計数の
推計方法が変更された。本モデルは2007 年末までのデータを用いて推計していることから、貨幣供給量と
してマネーサプライ統計の代表的な指標であるM2+CD を用いている。
16
表2−7 貨幣供給量を1%相当額だけ縮小
実質GDP
(%)
実質GDP
成長率
(%ポイント)
消費
(%)
設備投資
(%)
住宅投資
(%)
財・サービス
輸出
(%)
財・サービス
輸入
(%)
GDPGAP
(%ポイント)
1年目-0.23 -0.35 0.04 -1.61 -0.17 -0.08 -0.21 -0.21
2年目-0.28 0.09 0.07 -1.86 -0.63 -0.36 -0.34 -0.14
3年目-0.31 -0.08 -0.02 -1.45 -1.00 -0.53 -0.32 -0.12
名目GDP
(%)
民間消費
デフレータ
(%)
単位時間
あたり賃金
(%)
失業率
(%ポイント)
財政収支対
名目GDP比
(%ポイント)
長期金利
(%ポイント)
経常収支対
名目GDP比
(%ポイント)
為替レート
(%)
1年目-0.26 -0.04 -0.10 0.02 -0.08 0.21 0.01 -0.57
2年目-0.39 -0.14 -0.43 0.01 -0.21 0.13 -0.07 -1.96
3年目-0.48 -0.22 -0.61 0.00 -0.17 0.09 -0.11 -2.52
(備考)
貨幣供給量が標準ケースと比べて1年目の第1四半期から毎期0.25%ずつ4 四半期間に渡り累積的に減少し、2 年
目以降は1%低下した水準が持続されるものとした。
(3)外生的ショックに関するシミュレーション
ここでは政策以外の外生的ショックに関するシミュレーションとして、(1)為替レート減
価(標準ケース比10%)ケースと、(2)原油価格上昇(標準ケース比20%)ケース、(3)世界需要
増加(標準ケース比1%)ケースの3 つを紹介する。
(1)の為替レート減価ケースでは、通常は本モデル内で内生的に解かれる為替レートを外
生化した上で、外的な要因により標準ケースに比べて10%減価し、それが継続する場合を
想定している。この場合の金融政策の前提は1990 年以降で推定した短期金利に関する政策
反応関数によっており、財政政策の前提は実質値で一定である。
(2)の原油価格上昇ケースでは、原油のドルベースの価格を標準ケースに比べて20%上昇
させ、それが継続する場合を想定している。金融政策、財政政策の前提は(1)と同様である。
(3)の世界需要増加ケースでは、世界需要を1%増加させ、それが継続する場合を想定して
いる。金融政策、財政政策の前提は(1)と同様である。
@ 為替レート減価の影響
為替レートを外生的に10%円安(標準ケース比)に動かすことにより、輸入物価が上昇し、
その影響により内需デフレータが上昇する(民間消費デフレータは0.12%〜0.39%上昇)。輸
出の拡大と輸入の減少が生じるが4、円の減価により輸入金額が大きく高まるため、経常収
支 (円ベース)の名目GDP 比は大幅には変化せず、1 年目で0.25%ポイントの黒字拡大とな
っている(表2−8 参照)。財政収支バランスは、経済拡大により税収が増加し、改善につな
がる(財政収支対名目GDP 比0.06〜0.22%ポイント)。
4 但し、輸入に対する(輸入物価上昇を通した)為替レート減価の影響は、ラグを持って現れる構造とな
っているため、当初は輸出増加に伴うGDP 増の効果からむしろ輸入が僅かながら増加する構図となってい
る。
17
表2−8 円の対ドル10%減価
実質GDP
(%)
実質GDP
成長率
(%ポイント)
消費
(%)
設備投資
(%)
住宅投資
(%)
財・サービス
輸出
(%)
財・サービス
輸入
(%)
GDPGAP
(%ポイント)
1年目0.19 0.24 0.07 0.03 0.04 1.67 0.15 0.18
2年目0.38 0.23 0.09 0.16 0.19 2.11 -0.18 0.36
3年目0.58 0.16 0.10 0.28 0.33 2.32 -0.17 0.55
名目GDP
(%)
民間消費
デフレータ
(%)
単位時間
あたり賃金
(%)
失業率
(%ポイント)
財政収支対
名目GDP比
(%ポイント)
長期金利
(%ポイント)
経常収支対
名目GDP比
(%ポイント)
為替レート
(%)
1年目0.18 0.12 0.26 -0.01 0.06 0.03 0.25 10.00
2年目0.33 0.18 0.22 -0.02 0.13 0.06 0.22 10.00
3年目0.63 0.39 0.43 -0.03 0.22 0.10 0.15 10.00
(備考)
円の対米ドルレートが標準ケースと比べて10%減価し、その変化がシミュレーション期間中継続するものと想定し
た。
A 原油価格上昇の影響
ドル建て原油価格が外生的に20%上昇すると、輸入金額の増加によって経常収支対名目
GDP比は1年目▲0.37%ポイント赤字が拡大する (表2−9参照)。家計は実質可処分所得が減
少することから消費が低迷し(1年目▲0.11%)、設備投資も抑制される結果(1年目▲0.29%)、
実質GDPは1年目で▲0.22%低下する。
経済の縮小の影響が税収面にもマイナスとなって現れるため、財政バランスは若干悪化
する(▲0.11〜▲0.28%ポイント)。
表 2−9 原油価格の20%上昇
実質GDP
(%)
実質GDP
成長率
(%ポイント)
消費
(%)
設備投資
(%)
住宅投資
(%)
財・サービス
輸出
(%)
財・サービス
輸入
(%)
GDPGAP
(%ポイント)
1年目-0.22 -0.42 -0.11 -0.29 -0.08 -0.02 -0.05 -0.20
2年目-0.38 0.12 -0.34 -0.54 -0.48 0.02 -0.52 -0.29
3年目-0.16 0.20 -0.34 0.00 -0.87 0.13 -0.29 -0.08
名目GDP
(%)
民間消費
デフレータ
(%)
単位時間
あたり賃金
(%)
失業率
(%ポイント)
財政収支対
名目GDP比
(%ポイント)
長期金利
(%ポイント)
経常収支対
名目GDP比
(%ポイント)
為替レート
(%)
1年目-0.54 0.13 -0.47 0.01 -0.11 0.01 -0.37 0.57
2年目-1.01 -0.09 -0.90 0.02 -0.28 -0.04 -0.38 0.90
3年目-0.98 -0.21 -1.04 0.00 -0.23 -0.04 -0.44 1.53
(備考)
1. ドルベースの石油価格が標準ケースに比べて20%上昇し、その変化がシミュレーション期間中継続するも
のと想定した。
2. 標準ケースの原油価格は、1 年目(2005 年)50.26 ドル/バレル、2 年目63.83 ドル/バレル、3 年目69.14 ドル/
バレル。
B 世界需要増加の影響
世界需要が外生的に1%増加すると、輸出が増加し、実質GDP を増大させる(表2−10 参
照)。輸出は1 年目0.42%、2 年目0.60%の増加と緩やかな伸びを示し、また輸出増加はラグ
を伴いつつ設備投資を増加させるため、実質GDP への効果は1 年目0.07%、2 年目0.13%
の増加と徐々に高まる形となっている。財政収支は、経済の拡大による税収増により改善
18
している(0.02%〜0.07%ポイント)。
表 2−10 世界需要を1%増加
実質GDP
(%)
実質GDP
成長率
(%ポイント)
消費
(%)
設備投資
(%)
住宅投資
(%)
財・サービス
輸出
(%)
財・サービス
輸入
(%)
GDPGAP
(%ポイント)
1年目0.07 0.10 0.01 0.06 0.01 0.42 0.07 0.07
2年目0.13 0.04 0.04 0.13 0.05 0.60 0.16 0.12
3年目0.14 0.00 0.05 0.10 0.12 0.68 0.22 0.12
名目GDP
(%)
民間消費
デフレータ
(%)
単位時間
あたり賃金
(%)
失業率
(%ポイント)
財政収支対
名目GDP比
(%ポイント)
長期金利
(%ポイント)
経常収支対
名目GDP比
(%ポイント)
為替レート
(%)
1年目0.09 0.01 0.05 -0.01 0.02 0.01 0.05 -0.01
2年目0.19 0.05 0.13 -0.01 0.05 0.02 0.06 -0.08
3年目0.27 0.11 0.22 0.00 0.07 0.03 0.07 -0.22
(備考)
世界需要が標準ケースに比べて1%上昇し、その変化がシミュレーション期間中継続するものと想定した。
19
第2 節モデル乗数の線型性
マクロ計量モデルの基本乗数については、以下に示す三つの性質(本稿ではまとめて線型
性と表現する)を満たしていることが望ましい。
(1) 狭義の線型性:経済政策の規模がn倍になれば、その政策効果(乗数)もn倍になる性質
(2) 対称性:同じ規模の経済政策の方向(符号)が逆向きであれば、その経済効果の符号は
逆になるが、その絶対値は等しくなる性質
(3) 加法性:複数の経済政策を同時に採った場合、その政策効果はそれぞれの経済政策を個
別に行った場合の効果の合計に等しくなる性質
これら(1)〜(3)の性質が満たされていれば、基本乗数を用いて様々な経済政策の効果を論
じることができる。ゆえに乗数が線型性を有するかどうかは、構築したモデルのパフォー
マンスが良好かどうかを見るための重要なポイントであり、本モデルでも再推計の都度、
この線型性についての検証を行い、その結果を報告している。具体的には、線型性テスト
として(1)〜(3)と関連するインパクト・シミュレーションを行い、その乗数を比較している。
今次モデルにおいては、以下の8 パターンのシミュレーションを実施した。
(1) 狭義の線型性:1%のインパクトを与えたケースと2%のインパクトを与えたケース(為
替増価ケースのみ10%と20%)の乗数比平均を見る。線型性が保たれていれば、この値
はおおよそ2になる筈である。
@ 実質公的固定資本形成を実質GDP の1%相当及び2%相当増加させたケース
A 貨幣供給量を1%減少させたケースと2%減少させたケース
B 為替レートを10%減価させたケースと20%減価させたケース
C 個人所得税を名目 GDP の1%相当減少させたケースと2%減少させたケース
(2) 対称性:同規模のインパクトを正負両方向に与えるシミュレーションを行い、その乗
数比を見る。対称性が保たれていれば、乗数の絶対値は等しくなり、符号のみ異なる筈
なので、乗数比平均はおおよそ−1となることが期待される。
D 実質公的固定資本形成を実質 GDP の1%相当減少させたケースと増加させたケース
E 貨幣供給量を 1%増加させたケースと減少させたケース
(3) 加法性:加法性が保たれていれば、複数のインパクトを同時に与えたケースの乗数と、
別々にインパクトを与えたケースの乗数の和がほぼ同じになる筈である。ここでは両乗
数の比の平均をみているので、値としてはおおよそ1になることが期待される。
F 実質公的固定資本形成の実質 GDP1%相当の増加と貨幣供給量の1%増加を同時に行
20
った場合およびそれぞれを独立して行った場合(拡大政策ケース)
G 上記のそれぞれを減少方向で行った場合(緊縮政策ケース)
本稿では、内挿シミュレーションと同じく2005 年第1四半期から2007 年第4 四半期に
ついて上記のシミュレーションを実行して乗数を計算している。ただ、今回のシミュレー
ション期間(2005Q1〜2007Q4)を含む近年の我が国では、金利水準がかなり低くなってい
ることに注意しなければならない。つまりベースラインの金利水準が極めて低いため、さ
らなる金利低下の余裕がほとんどなく、金利水準が低下するインパクト・シミュレーショ
ンでは線型性が成立しないこともありうる。ここではモデルの基本的なメカニズムとして
の線型性をテストするために、モデル内のゼロ金利制約(0.001%)を解除した修正モデルを使
って以下の検証を行っている。
(1) 狭義の線型性
@〜Cとも主要変数の乗数比平均は2前後の数値を示しており、本モデルの狭義の線型
性は保たれていると考えられる。
表 2-11 乗数の線型性
GDP PCP RGB BGV FXS
2.01 2.00 2.02 1.98 2.04
(0.01) (0.01) (0.00) (0.02) (0.02)
1.98 1.99 2.02 1.98 2.00
(0.01) (0.01) (0.01) (0.02) (0.00)
2.07 2.09 2.07 2.04 2.00
(0.01) (0.02) (0.02) (0.02) (0.00)
1.99 1.99 2.00 1.99 2.01
(0.00) (0.00) (0.00) (0.01) (0.02)
C個人所得税減税
減価
@政府支出 
A貨幣供給量
B為替レート
増加
減少
*
(備考) 1. それぞれの比の3 年間(12 四半期)の平均値。
2. カッコ内は四半期データで計算した比率の標準偏差。
* 計測区間において乗数が0 に近付き、当該期の比が極端に大きくなる期があるため、その異常期を
除いた10 四半期の平均値をとっている(下掲の対称性についても同様)。
(2) 対称性
D、Eの主要変数の乗数比平均はおおよそ−1 であり、モデルの基本的なメカニズムとし
て対称性を保っていることがわかる。
表 2-12 乗数の対称性
GDP PCP RGB BGV FXS
-0.99 -1.00 -0.98 -1.06 -0.96
(0.01) (0.01) (0.00) (0.04) (0.03)
-0.98 -0.99 -1.02 -0.98 -1.00
(0.01) (0.01) (0.00) (0.04) (0.03)
D政府支出  増・減
E貨幣供給量 増・減
(備考)1. それぞれの比の3 年間(12 四半期)の平均値。
21
2. カッコ内は四半期データで計算した比率の標準偏差。
(3) 加法性
F、Gの主要変数の乗数比平均は大体1 前後であり、モデルの基本的なメカニズムとし
て加法性を保っていることが看取できる。
表 2-13 乗数の加法性
GDP PCP RGB BGV FXS
1.00 1.00 1.03 1.01 0.99
(0.00) (0.00) (0.04) (0.01) (0.21)
1.00 1.00 0.97 0.99 1.02
(0.00) (0.00) (0.04) (0.01) (0.21)
F拡大政策
G緊縮政策
(備考)1. それぞれの比の3 年間(12 四半期)の平均値。
2. カッコ内は四半期データで計算した比率の標準偏差。
上掲の検証結果により、乗数の線型性はおおむね保たれていると判断できる。よって、
今回のモデルにおける内挿シミュレーション期間の政策評価分析においても、これまで同
様、線型性を前提として基本乗数を用いることができる。ただし、この結果はモデル内の
ゼロ金利制約を解除した修正モデルによるものであることには留意が必要である。金利の
低下余地が十分無い時期にあっては、モデルの線型性を前提とした乗数の利用は慎重に進
められるべきと考えられる。
22
補論 開差項モデルと指数算式モデルの比較
1.連鎖方式と短期日本経済マクロ計量モデルの関係
周知の通り日本のSNA は2004 年12 月以降、実質系列の作成において固定方式から連
鎖方式への変更が行われた。これは国際的な潮流であり、経済状況のより正確な把握に資
するものである。一方、連鎖方式はウェイトを頻繁に更新する必要があるなど固定方式に
比べるとコストが高く、またその扱いが固定方式に比較して難しい側面もある。例えば、
ある経済変数(実質値)を構成する下位の項目(コンポーネント)については、その全て
を合計しても大本の経済変数とは一致しない、つまり連鎖方式では加法整合性が維持され
ないということがある。
短期日本マクロ計量モデルにおいては、従来、名目・実質両系列において「GDP=GDP
コンポーネント合計」という関係式5をモデルに内包していたが、実質系列について現在こ
の関係が成り立たなくなっている。このとき、モデル内での対応策としては以下の二種類
が考えられる。
@実質 GDP の定義式を、予め計算しておいた開差項(実質GDP−実質GDP コンポーネ
ント合計、外生変数)を実質GDP コンポーネント合計に加算する形にする
A実質 GDP もしくはGDP デフレータの定義式を連鎖指数算式で構築する
この点、@の対応は、標準ケースにおけるベースライン・シミュレーションだけでなく、
インパクト・シミュレーション時にも開差項をGDP コンポーネントに加算することになっ
てしまうため、理論的にはAの対応が正しいと考えられる。このため、2005 年版以降の短
期日本経済マクロ計量モデルでは、複雑になるものの、GDP デフレータの定義式をパーシ
ェ型連鎖物価指数算式で構築している。
しかし、もしインパクト・シミュレーション時の開差項がベースライン・シミュレーシ
ョン時のそれと大差がないならば、また@とAでシミュレーション乗数に大差がないなら
ば、Aではなく@で対応してもそれほど問題ではないとも考えられる。本補論では、今次
モデルを利用した簡単な比較で、この点を検証する。
2.開差項モデルと指数算式モデルの比較
ここでは前節@の考え方に基づいて構築したモデルを「開差項モデル」、Aの考え方によ
る現行バージョンでもあるモデルを「指数算式モデル」として、両モデルによるシミュレ
ーション結果を比較する。
以下の表A1 の上段「ベースラインケースにおける開差」は標準ケース(ベースライン・
5 名目側:GDPV=CPV+IFPV+IHPV+INPV+CGV+IGV+INGV+BFV、実質側:GDP=CP+IFP+IHP+
INP+CG+IG+ING+BF、GDP デフレータ:PGDP=GDPV/GDP
23
シミュレーション)における開差項、つまり実質GDP からそのコンポーネントの合計を差
し引いた金額を示したものである(開差=GDP−[CP+IFP+IHP+INP+CG+IG+ING+
BF])。下段は、そのベースライン開差項と、指数算式モデルのインパクト・シミュレーシ
ョン(13 種類)における開差項の差額を示している(単位は10 億円)。
表 A1 開差項について
ベースラインケースにおける開差( 実額、1 0 億円)
2005Q1 -202.4
2005Q2 -371.9
2005Q3 -455.1
2005Q4 -381.2
2006Q1 -421.6
2006Q2 -683.6
2006Q3 -614.0
2006Q4 -538.0
2007Q1 -302.0
2007Q2 -411.0
2007Q3 -222.0
2007Q4 -448.6
ベースライン開差からの乖離額( 1 0 億円)
IG1 IG2 IG3 IG4 IG5 個人減税法人減税
2005Q1 147.0 128.2 166.1 147.0 140.7 0.3 -57.9
2005Q2 135.9 107.4 178.3 135.9 128.3 1.8 -67.2
2005Q3 135.8 97.7 188.6 135.8 126.6 2.2 -91.1
2005Q4 137.9 92.5 191.3 137.9 126.6 -1.4 -113.0
2006Q1 116.5 63.6 167.7 -120.3 104.0 -20.0 -138.9
2006Q2 105.8 47.5 152.5 -105.2 92.6 -33.0 -163.0
2006Q3 108.7 51.9 144.9 -96.8 93.3 -35.2 -166.8
2006Q4 108.2 48.3 140.5 -87.6 91.2 -38.6 -171.8
2007Q1 75.7 26.0 92.3 -92.6 56.6 -52.3 -189.1
2007Q2 55.3 6.9 67.2 -77.4 36.3 -67.7 -211.1
2007Q3 35.1 9.8 23.8 -93.2 14.5 -69.8 -212.1
2007Q4 28.3 4.5 15.8 -81.9 4.2 -82.1 -209.2
消費税減税金利上昇貨幣供給為替減価原油価格世界需要
2005Q1 -1.3 86.5 24.7 10.6 2.0 2.1
2005Q2 -0.4 110.9 46.1 11.0 -2.5 0.7
2005Q3 4.4 136.9 68.5 23.1 25.2 -0.3
2005Q4 10.4 143.7 87.0 41.9 22.5 -1.0
2006Q1 31.0 152.8 80.6 56.5 44.0 -2.7
2006Q2 3.6 157.0 71.8 96.1 61.5 -3.9
2006Q3 -15.0 139.9 52.5 202.3 73.3 -3.6
2006Q4 -16.1 141.6 43.4 226.6 67.0 -4.2
2007Q1 -6.2 102.9 17.3 355.0 128.5 -6.6
2007Q2 -12.0 97.2 6.6 383.4 84.6 -8.1
2007Q3 -23.9 27.0 -27.7 540.1 142.4 -8.2
2007Q4 -42.5 16.9 -36.1 574.7 109.3 -9.2
表 A1 にみるように、標準ケースにおける開差項の規模自体は絶対値でみて2000〜6800
億円程度である。そして標準ケースとインパクト・シュミレーション時の開差項を比べる
と、その乖離額は最大で5700 億円に上っており、各シミュレーション時の開差項間の違い
は、誤差の範囲内というにはいささか大きなものとなっている。
24
また、各時点における13 種のインパクト・ケース+標準ケースの開差項を比較し、最大
値をとるもの・最小値をとるもの・標準ケースのものをプロットしたのが下の図A1 である。
図 A1 各ケースにおける開差項の比較(10 億円)
‐1000.0
‐800.0
‐600.0
‐400.0
‐200.0
0.0
200.0
400.0
2004Q1 2005Q1 2006Q1 2007Q1
ベースラインの開差項
最大値を取る開差項
最小値を取る開差項
図からは、最大値と最小値のレンジが一番広い所では7000 億円程度あることが看取でき
る。これらのことから、モデルにおける対応としては、開差項モデルより指数算式モデル
の方が望ましいことが窺える。
表 A2 乗数への影響
C A S E 1 実質公的固定資本形成を実質GD P の1 % 相当額だけ継続的に拡大
開差項モデル実質GDP
実質GDP
成長率
消費設備投資住宅投資輸出輸入GDPGAP
1年目1.04 1.16 0.15 -0.74 0.17 -0.04 1.00 1.02
2年目1.12 -0.08 0.40 -0.92 0.65 -0.20 1.56 1.08
3年目0.95 -0.15 0.33 -1.53 1.13 -0.44 1.72 0.99
名目GDP
民間消費
デフレータ
単位時間
あたり賃金
失業率
財政収支対
名目GDP比
長期金利
経常収支対
名目GDP比
為替レート
1年目1.27 0.18 0.65 -0.08 -0.68 0.13 -0.17 -0.06
2年目1.87 0.67 1.24 -0.07 -0.53 0.20 -0.34 -0.74
3年目2.29 1.21 1.85 -0.02 -0.63 0.25 -0.49 -1.68
指数算式モデル実質GDP
実質GDP
成長率
消費設備投資住宅投資輸出輸入GDPGAP
1年目1.07 1.19 0.15 -0.72 0.17 -0.04 1.03 1.04
2年目1.14 -0.09 0.40 -0.90 0.65 -0.21 1.59 1.10
3年目0.95 -0.17 0.32 -1.54 1.13 -0.45 1.74 0.99
名目GDP
民間消費
デフレータ
単位時間
あたり賃金
失業率
財政収支対
名目GDP比
長期金利
経常収支対
名目GDP比
為替レート
1年目1.28 0.18 0.64 -0.08 -0.67 0.13 -0.18 -0.07
2年目1.88 0.69 1.25 -0.07 -0.52 0.20 -0.34 -0.76
3年目2.31 1.24 1.88 -0.02 -0.63 0.25 -0.50 -1.72
25
両モデルの差( 開差- 指数)
実質GDP
実質GDP
成長率
消費設備投資住宅投資輸出輸入GDPGAP
1年目-0.03 -0.03 0.00 -0.03 0.00 0.00 -0.03 -0.03
2年目-0.02 0.01 0.00 -0.02 0.00 0.01 -0.03 -0.02
3年目0.00 0.02 0.00 0.01 0.01 0.01 -0.02 0.00
名目GDP
民間消費
デフレータ
単位時間
あたり賃金
失業率
財政収支対
名目GDP比
長期金利
経常収支対
名目GDP比
為替レート
1年目0.00 0.00 0.01 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
2年目-0.01 -0.02 -0.01 0.00 0.00 0.00 0.01 0.02
3年目-0.02 -0.02 -0.02 0.00 0.00 0.00 0.01 0.04
それでは、この開差項における差はシミュレーション乗数にどのくらいの影響をあたえ
るのだろうか。上の表A2 は、公共投資シミュレーション(実質公的投資を実質GDP の1%
分、継続的に拡大)について、実際に開差項モデル・指数算式モデルを構築してシミュレ
ーション乗数を算出し、両者の差をみたものである。表によると、実質GDP 乗数に0.02
〜0.03%の差が見られる。インパクトの効果を正確に知りたい場合には、(現行の)指数算
式モデルの方がふさわしいと考えられるだろう。
26
参考・参照文献:
・ 西崎健司・須合智広(2001)「わが国における労働分配率についての一考察」Working Paper 01-8、
2001 年6 月、日本銀行調査統計局.
・ 本間正明・跡田直澄・林文夫・秦邦昭(1984)「設備投資と企業税制」、経済企画庁経済研究
所『研究シリーズ』第41 号.
・ 村田啓子・岩本光一郎・増淵勝彦(2007)「短期日本経済マクロ計量モデルへの連鎖方式の
導入について」『経済分析』第179 号、内閣府経済社会総合研究所.
・ Abel, A. B. and O. J. Blanchard(1986), “The Present Value of Profits and Cyclical Movements in
Investments,” Econometrica, 54(2).
・ Barro, Robert J. and Xavier Sala-i-Martin(2003), Economic Growth 2nd Edition, MIT Press.
・ Bayoumi, Tamim, Douglas Laxton, Hamid Faruqee, Benjamin Hunt, Philippe Karam, Jaewoo Lee,
Alessandro Rebucci, and Ivan Tchakarov(2004), GEM: A New International Macroeconomic Model,
International Monetary Fund.
・ Brayton, Flint, and P. Tinsley(1996), A Guide to FRB/US, Board of Governors of the Federal
Reserve System.
・ Brayton, Flint, Andrew Levin, Ralph Tryon, and John C. Williams(1997), The Evolution of Macro
Models at the Federal Reserve Board, Board of Governors of the Federal Reserve System.
・ Erceg, Christopher J., Luca Guerrieri, and Christopher Gust(2005), SIGMA: A New Open Economy
Model for Policy Analysis, Board of Governors of the Federal Reserve System.
・ Hayashi F. and T. Inoue(1991), “The Relation between Firm Growth and Q with Multiple Capitale
Gppds: Theory and Evidence from Panel Data on Japanese Firms,” Econometrica, 59(3).
・ Oliner, S., G. Rudenbusch and D. Sichel(1995), “New and Old Models of Business Investment: A
Comparison of Forecasting Performance,” Journal of Money Credit and Banking, 27, pp.806-826.
・ Laxton, Douglas, Peter Isard, Hamid Faruqee, Eswar Prasad, and Bart Turtelboom(1998),
MULTIMOD Mark III: The Core Dynamic and Steady-State Models, International Monetary Fund.
・ Levin, Andrew T., John H. Rogers, and Ralph W. Tryon(1997), “A GUIDE TO FRB/GLOBAL,”
International Finance Discussion papers, 588, Board of Governors of the Federal Reserve System.
27
研究所からこれまでに公表された日本モデル関連刊行物
・ 小林進他(1974)「短期経済予測パイロットモデル SP-15」『経済分析』第52 号、経済企画
庁経済研究所
・ 馬場正雄他(1976)「短期経済予測パイロットモデル SP-17」『経済分析』第60 号、経済企
画庁経済研究所
・ 馬場孝一他(1977)「短期経済予測パイロットモデル SP-18」『経済分析』第69 号、経済企
画庁経済研究所
・ 吉冨勝他(1981)「世界経済モデルにおける日本経済の短期予測モデル」『経済分析』第82
号、経済企画庁経済研究所
・ 経済企画庁経済研究所(1985)「世界経済モデルの考え方と構造」『経済分析』第98 号、経済
企画庁経済研究所
・ 貞広彰他(1987)「世界経済モデルにおける日本経済モデル」『経済分析』第110 号、経済企
画庁経済研究所
・ 安原宣和他(1989)「EPA 世界経済モデルの構造と財政政策の効果」『経済分析』、114 号、経
済企画庁経済研究所
・ 太田清他(1991)「第4 次版EPA 世界経済モデル−基本構造と乗数分析−」『経済分析』124
号、経済企画庁経済研究所
・ 増淵勝彦他(1995)「第5 次版EPA 世界経済モデル−基本構造と乗数分析−」『経済分析』第
139 号、経済企画庁経済研究所
・ 堀雅博他(1998)「短期日本経済マクロ計量モデルの構造とマクロ経済政策の効果」『経済分
析』第157 号、経済企画庁経済研究所
・ 堀雅博他(2001)「短期日本経済マクロ計量モデル(2001 年暫定版)の構造と乗数分析」『ESRI
Discussion Paper Series』No.6、内閣府経済社会総合研究所
・ 堀雅博・青木大樹(2004)「短期日本経済マクロ計量モデル(2003 年版)の構造と乗数分析」『経
済分析』第172 号、内閣府経済社会総合研究所
・ 村田啓子・青木大樹(2004)「短期日本経済マクロ計量モデルにおけるフォワードルッキング
な期待形成の導入の試み」『経済分析』第175 号、内閣府経済社会総合研究所
・ 村田啓子・斎藤達夫(2004)「短期日本経済マクロ計量モデル(2004 年版)の構造と乗数分
析」『経済分析』第176 号、内閣府経済社会総合研究所
・ 村田啓子・斎藤達夫・岩本光一郎・田邊健(2006)「短期日本経済マクロ計量モデル(2005
年版)の構造と乗数分析」『経済分析』第178 号、内閣府経済社会総合研究所
・ 増淵勝彦・飯島亜希・梅井寿乃・岩本光一郎(2008)「短期日本経済マクロ計量モデル(2006
年版)の構造と乗数分析」『経済分析』第180 号、内閣府経済社会総合研究所
・ 飛田史和・田中賢治・梅井寿乃・岩本光一郎・鴫原啓倫(2009)「短期日本経済マクロ計量
モデル(2008 年版)の構造と乗数分析」『経済分析』第181 号、内閣府経済社会総
合研究所


  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
 重複コメントは全部削除と投稿禁止設定  ずるいアクセスアップ手法は全削除と投稿禁止設定 削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告」をお願いします。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民72掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民72掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧