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富田秀夫の素朴な疑問から読み解くグローバル・マーケッツ
無視できない金本位制回帰への動き
2011/06/05 (日) 15:50
先進国通貨への信認は低下する一方で、特に量的緩和で紙幣を増刷する米国への不信は著しく高まっている。先週覗いたFXコンファレンスでも、「脱ドル化」が議論の中心。しかし、代替として期待されたユーロは債務問題で躓き、新興国も将来は有望でも、現状はドルの役割を担える力はとてもない。こうした中で、現実性がないと切り捨てられてきた金本位制への復帰の主張が徐々に力を持ち始めている。
米ノースカロライナ州では、金貨と銀貨を法定貨幣にしようとする法案が州議会に提出された。こうした動きは同州だけにとどまらず、連邦政府の肥大化に嫌悪感を持つティーパーティ運動の支持を得て、12を越える州で内容は異なるが進行中だ。究極の目的は、ドルが一定量の貴金属の裏付けを持つ金本位制への復帰。実現可能性をエコノミストは揃って否定するが、お構いなしに金を利用しようとする動きが勢いを増している。
金本位制支持者は、その実現で、政府が身の丈に合った規模となり、暴走する歳出に歯止めをかけ、インフレを制御できると考えている。支持者は、ティーパーティ以外にも拡大中。政府が金貨と銀貨を鋳造するユタ州では、先月から金貨と銀貨が法定通貨として認められるようになった。購入に際しては、売上税が免除される他、保有によって評価益が出た場合に課税される国のキャピタルゲイン課税を州民に対しては一部還付することも定めた。施行されても、市場価格1500ドル相当の価値を有する50ドル金貨で買い物をする人はいないが、注目すべき動き。
背景には、米国の金融政策が一貫してドルの価値を減価させ続けた事に対する不信感がある。連邦政府に対する不信に根ざすためか、金回帰は、全国的な運動ではなく、現状は州ベースでばらばら。しかし、ティーパーティの集会で機運が高まるケースが多いので、州間の連携に発展する可能性もある。FRB廃止論者でおなじみのロン・ポール下院議員が、金を貨幣として使いやすくするためキャピタルゲイン課税の免除を提案するなど連邦議会でも動きが出てきた。州レベルの動きで米国の金融政策を変えられる訳ではないが、ドル大暴落のような事態に備えて受け皿となる代替通貨のインフラを整備しているとの評価も可能。
大恐慌まで米国や多くの国が金本位制を採用していたが、貨幣量の制約で、有効な景気刺激策を打てずに不況が深刻化したという認識は一致している。そのため、金本位制に仮に復帰すれば、まだ脆弱な景気の回復を遅らせるとの意見が支配的。現在、米国で流通する貨幣の量は、預金などを含めると9兆ドルあるのに対し、1オンス1500ドル換算で米国が保有する金の量は4000億ドルしかない事実が、金本位制復帰を不可能だとする論拠となっている。真の金本位制を実現するには、金価格を7000ドルから9000ドル水準まで上昇させるか、流通貨幣量を激減させるか、その組み合わせしか手がない。
しかし、金本位制支持者も純粋な金本位制への復帰が無理な事は百も承知。その上で、ドルを金の特定価格とリンクさせ、その水準からの価格変動に応じて、金融政策の引き締め、緩和を決定するという、金の保有量に縛られず、金に中央銀行へのチェック機能も果たさせる現実的な提案も出てきた。実現には緻密な議論が必要だが、ドルや紙幣全体への不安が共有される中で、輝きを失わない金を利用しようとする動きは根強く広がっていきそうだ。(了)
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