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欧米より鈍い日本の長期金利低下、政局不安で債券需給に暗雲
2011年 05月 31日 13:11 JST
[東京 31日 ロイター] 急低下する欧米の長期金利とは裏腹に日本の指標10年債利回りの低下ピッチが鈍ってきた。菅内閣に対する不信任案の成否や、東日本大震災の復旧・復興対策の本丸と位置付けられている追加補正論議を巡り、政局が行き詰まりかねない。
専門家の間では、単月の国債償還額が供給額をはるかに上回る「6月の特殊事情」を後ろ盾にした強気見通しがコンセンサスとなっているが、その一方で長期債需給には暗雲も垂れ込めている。
長期金利の指標10年債利回りが節目の1.1%を前に足踏みしている。
日本相互証券によると、5月6日に年初来高値となる1.135%を付けてからは、おおむね1.1%台前半で推移。このため、財務省が6月1日に入札する新発10年国債(315回債、2021年6月20日償還)は、投資判断の目安となる表面利率が年1.2%と、むしろ前回債より0.1%の引き上げが濃厚だ。
海外金利をめぐっては、米国でデットシーリング(債務の上限)が米金利低下の原動力となり、節目の3%をうかがう展開となる一方、欧州ではポルトガルやギリシャなどの債務問題が質への逃避を加速させ、ドイツ国債は3%を割り込んだ。
ビー・エヌ・ピー・パリバ証券東京支店の島本幸治・投資調査部長は「震災のダメージが広がる中で世界的にみても景気減速が明らかになっており、内外先進国の国債市場に追い風が吹いている」と話す。
それにも関わらず、長期金利の低下ピッチが鈍っている背景に「ゆうちょ銀行などの大口投資家が鳴りを潜めている」(市場筋)ことがある。
銀行などの金融機関が国債投資にどのタイミングでいくら配分するかは、年度当初に決めるのが一般的だ。政府が3月13日に今回の地震災害を「激甚災害」に指定し、災害復旧に向けた財政支援に全力を挙げることを決めた時点では、『4月の1次補正編成は国債市場に影響しないが、2次補正の全容が固まる6月にかけては財政不安が広がりやすい』との予想が多かった。
財政不安の広がりは、より償還期間の長い国債利回りの上昇を促す。このため、「6月の金利上昇局面が絶好の買い場との読みが、国債投資を先送りさせていた」(前出の市場筋)という。
しかし、6月22日までの国会会期中に当初、想定していた2次補正論議が決着するのかどうかはっきりせず、「8月の臨時国会に先送りされるのか、野党の批判をかわす狙いで今会期中に小ぶりの『1.5次補正』が編成されるのか」と憶測が巡る状況に陥っており、「運用計画を見直さなければ新発10年国債には手が出せず、オフ・ザ・ラン(既発債)や、価格変動リスクの小さい2年物や5年物などの中期国債での運用にとどめているのでは」(在京の外銀関係者)という。
財務省によると、ことし6月に償還を迎える利付国債は約21兆円に上る。月次の発行額(約10兆円)をはるかに上回るため、市場では「債券需給が引き締まり、国債利回りは低下しやすい」(国内証券)と楽観する声が多い。
しかし、償還国債の3分の1を占める約7兆円は、日銀が金利正常化に軸足を移した06年発行の5年物国債となっており、「(当時の5年国債の表面利率が0.8%から1.5%だったことを踏まえると)代替投資を図るにも、デュレーションリスクを取ってまで利率1.2%以下の10年国債に投資するインセンティブは働きにくい」(前出の市場筋)との声もくすぶる。
市場には「今回の震災は、直接的には金利低下圧力の高まりと金利上昇タイミングの後ずれを招いた。現時点では中期的な金利見通しや投資行動を変更していないが、今後、政治・経済両面から、投資環境が大きく変化する可能性がある」(プルデンシャル・インベスト・マネジメント・ジャパンの坂口憲治・投資運用本部長)との声もあり、政局の長期化は金融機関の債券収益に暗い影を落としそうだ。
(ロイターニュース 山口貴也;編集 伊賀大記)
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