http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/835.html
Tweet |
米国がインフレで引き締めに転じるまでは暴落はなしか
日経ビジネス オンライントップ>IT・技術>大竹剛のロンドン万華鏡
顧客は「政府に絶望」広がる金のネット取引
2011年5月23日 月曜日
大竹 剛
「アナーキック(無政府主義的)。これが我が社の顧客の特徴だ」。こう語るのはポール・タステイン氏。金のネット取引市場を運営する英ベンチャー、ブリオンボールトの社長だ。
「無政府主義的」とはいささか過激だが、誇張ではない。欧米諸国でインフレ懸念や債務問題が深刻になる中、国債や通貨の信用力が低下している。政府の無能ぶりに絶望した個人が、同社を通じて安全資産の金に投資しているという。
預かり資産は1000億円以上
ブリオンボールトがサービスを開始した2005年当時、金価格は1トロイオンス(*1)=400ドル台で推移していたが、今年4月に同1500ドル(約12万円)の大台を突破した。
*1=金の取引で一般的に使われる単位。1トロイオンス=31.1035g
この間、同社の顧客も増え続け、現在2万3000人を超える。社員数はわずか約30人にして、昨年の売上高は3億ポンド(約400億円)、税引き前利益は360万ポンド(約4億7000万円)、預かり資産は前年比93%増の8億2900万ポンド(約1100億円)。現在、同社が保有する金は22トンにも達している。
人気の理由は、同社が個人でも金地金、いわゆる金の延べ棒を手軽に取引できるようにしたからだ。
これまで個人投資家にとって金の敷居は高かった。ロンドンなどの専門市場は、会員制で地金商や商社、投資会社などのプロしか参加できない。取引単位は最小で400トロイオンス(約12.5kg)で、今や日本円換算で約6000万円。個人では容易に手を出せない。
そのため、個人が金に投資する手段は、金で運用されている投資信託や、数gから1kgの小さな金地金や金貨を購入するくらいしか方法はなかった。しかも、貴金属店で流通している金地金には、輸送費などの諸経費が専門市場のスポット価格に上乗せされている。タステイン氏によれば、上乗せ幅は一般的に8%程度にもなるという。
この状況に、ブリオンボールトが風穴を開けた。仕組みはこうだ。
まず、同社がロンドン、チューリヒ、ニューヨークにある専門市場の会員として、金地金を購入する。その金地金の所有権をシステム上で1g単位に小分けにし、顧客にネット販売する。顧客は購入した所有権を、顧客同士、同社のネット市場で24時間、好きな時に売買できる。金地金は1本12.5kgの金塊のまま各市場の保管会社が管理し、顧客には届けない。そのため、従来、金地金の個人販売で発生していた輸送費などコストを、上乗せする必要がない。
売値、買値は顧客自身が提示するが、市場原理が働き、その価格はおのずとスポット価格に近づいていく。ブリオンボールトは手数料として、取引金額の0.02〜0.8%と、年間0.12%の金地金保管料を徴収する。それでも、顧客が負担する取引コストは、従来と比べると格段に安い。
ブリオンボールトの取引画面
「適正価格3844ドル」の強気
タステイン氏は最近、独自の計算式を基に金の適正価値を「1トロイオンス=3844ドル」と算出し、話題となった。「英国では、(危機から抜け出す)解決策は見えない」など、欧米の経済状況に警鐘を鳴らす発言には、金への投資を呼び込もうとする“ポジショントーク”の側面もあるのだろう。
金相場は5月2日に史上最高値1577ドルを記録した後、一時1463ドルまで暴落して急ブレーキがかかった。だが、欧米の債務問題はくすぶり続け、ビンラディン殺害で地政学的な緊張も高まっている。何度もバブルと指摘されながらも、その都度、高値を更新し続けてきた過去数年の金相場を振り返れば、彼の見立ても、あながち大げさとは言い切れないのかもしれない。
このコラムについて
大竹剛のロンドン万華鏡
ギリシア危機を発端に、一時はユーロ崩壊まで囁かれた欧州ですが、ここにあるのは暗い話ばかりではありません。ミクロの視点で見れば、ベンチャーから大企業まで急成長中の事業は数多くあるし、マクロで見ても欧州統合という壮大な実験はまだ終わっていません。このコラムでは、ロンドンを拠点に欧州各地、時にはその周辺まで足を延ばして、万華鏡をのぞくように色々な角度から現地ならではの話に光を当てていきます。
⇒ 記事一覧
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。