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■中国マネーに買いたたかれる
久方ぶりにニューヨーク、ワシントンに立ち寄ってみたら、耳に入る話題は「チャイナ」についてばかり。現金を鞄(かばん)に詰めた中国人の買い手がマンハッタンを跋扈(ばっこ)している、寮費を含めた年間の授業料が500万円もする東部某名門大学への中国人留学生数が4年間で10倍増えた、国防総省の情報技術(IT)スタッフには中国人が採用されている、などなどだ。極めつきは、ワシントンに本部がある世界銀行のご託宣で、2025年には人民元がドル、ユーロと並ぶ3大基軸通貨になるという。隣の国際通貨基金(IMF)では、とんでもない容疑で逮捕されたストロスカーン前専務理事の後任にはポストを独占してきた欧米に代わって中国から選ばれるという説が流れるのも無理はない。
■急速な台頭
中国マネーパワーの急速な台頭を端的に示すのは人民元現預金合計量(M2)である。米中枢同時テロ「9・11」直前から現在までの10年間で5倍以上増えた。対照的に、日銀はお札を増刷したあとは回収し、円マネー量は10年で20%しか増えなかった。デフレが慢性化し物価の下落以上の速度で国内総生産(GDP)規模は縮小し続け、昨年には中国に抜かれた。
人民元を裏打ちしているのはドルである。中国は米国からなだれ込んでくるドル資金を人民元に換え、それを元手に国有商業銀行融資を増やしてきた。中国政府は外国為替レートを管理し、人民元相場をドルに対して小刻みに切り上げてきた。人民元は円のような国際決済通貨とはいえず、中国から外への持ち出しは制限されているが、中国の企業、投資家、消費者は本国の銀行の口座にある預金量に応じて外国でほぼ自由に投資やショッピングができる。
「紙切れ」という点では人民元はドル、ユーロ、円など主要国通貨と同じで、しかも現在唯一の世界基軸通貨ドルに比べて値打ちが上昇を続けているのだから、人民元は変動が激しい円以上に国際市場で幅をきかせられる。
中枢テロ後、米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長(当時)とブッシュ政権(同)は金融緩和により住宅市場にてこ入れし、住宅ローンを証券化して史上空前の住宅ブームを演出した。中国は中枢テロから3カ月後の世界貿易機関(WTO)加盟を弾みにして、対米輸出に加速をかけてきた。国内外企業からの自動車、家電部門などへの国内投資が活発化し、生産規模が拡大していく。
■もくろんだ株価上昇
米住宅市場と証券化商品はいずれもバブルとなって膨張し、08年9月に破裂した。リーマン・ショックである。米国の武器は連邦準備銀行券(ドル札)だ。FRBは不良資産化した住宅ローン担保証券、次には米国債の大量買い取りに乗り出した。FRBのドル資金供給残高は「リーマン」前には100兆円相当弱だったが、現在までに約200兆円相当を上積みする量的緩和政策をとって金融市場に流し込んだ。
その最大の狙いは、株価の引き上げである。米金融機関が手にしたFRB資金の多くが株式市場に回りリーマンで暴落した株価が底を打ち、反転していく。米国の家計の株式保有は1200兆円相当もあり、株価が上がれば消費者心理が上向く。そこで国内生産が増えて雇用が増えるとオバマ政権とバーナンキFRB議長はもくろんだのだが、失業率の改善はなかなか進まない。国内の消費需要の対象が中国など新興国の製品に回るからである。
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