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中国の変化は速い。日本のバブル期より酷かった不動産高騰も、今後、よほど賃金と物価が上昇しない限り、下落に転じつつある。それが、どの程度のレベルの金融不安を引き起こすかは、銀行の貸出状況や、金融政策に依存する
http://diamond.jp/articles/-/12342
【第75回】 2011年5月20日姫田小夏 [ジャーナリスト]
面積、立地、築年数不問で「平米単価3万元」も。かすかに聞こえてきた中国不動産バブル崩壊の序曲
「『インフレ対策のために不動産を買っておけ』と言うのはでたらめ、今不動産を持っている人はすぐに売り払ってしまえ」
中国の著名エコノミスト、謝国忠氏の発言が波紋を呼んでいる。同氏は3月19日、中国建設銀行が主催する広東省での「通貨政策と経済動向サミッ ト」の壇上でこうぶちまけた。「今年は不動産のターニングポイント、中国の大都市の不動産価格はすでに臨界点を越えているため、早晩中国の不動産価格は下 落に向かうときが到来する」――。
過熱する大都市部の住宅価格 上海では実質「年収の30倍」
背景には中国の大都市における住宅価格の常軌を逸した値上がりがある。北京や上海など沿海部の不動産価格は天井高、実需層の手が届かないものと なってしまった。いわゆる「年収の5倍」が住宅価格の標準だとすれば、上海の内環状線の物件は実に「年収の30倍」以上にもなってしまった。
しかも、現在は市内のどこもかしこも「(平米)単価3万元」(約37万5000円、1元=約12.5円)の“一律価格”。広さ、立地、築年数など一切問わずの十把一絡げで売られている状態なのだ。これを異常といわず、何と言おうか。
90年代に中国政府が払い下げた、老朽化し物件価値がほとんどないと言えるアパートですら、現在は平米単価2万元でも買えない。
中国では俗に「自分の月収」=「購入できる不動産の平米単価」だと言われているが、日系企業に勤務する管理職(よくて年収2万元)ですら、今の上海でマンションを購入することは到底不可能になってしまった。
次のページ>>預金金利が賃貸利回りを越え不動産市場に売却の動き
2010年、「中国の大中型の70都市の住宅販売価格」は09年比12.8%増と過去最高の上昇を記録した。中国における不動産価格の狂ったような 上昇は社会問題となり、同年4月に「史上最も厳しい政策」が導入された。過熱を抑制するために何度も追加策を入るも、価格は下落には向かわなかった。
今年5月18日、国家統計局が行った発表によると、「中国の大中型の70都市の住宅販売価格」は北京、上海、広州を含む8割が上昇したと言う。
だが、「統計数字を鵜呑みにするな」と異論を挟む専門家は少なくない。国家統計局が出した「8割は上昇」に、「上昇はウソ、本当は下落」の記事も流れた。「市場はこれを価格の安定だというが、見えない下落だ。むしろこれからは目に見える下落に転じるだろう」の声もある。
預金金利が賃貸利回りを越え不動産市場に売却の動き
今年4月、中国中央銀行は昨年10月以降4度目の利上げを実施。1年物貸出金利は6.31%、預金金利は3.25%と、それぞれ0.25%ずつ利上げした。こうしたことを理由に、不動産を売却して銀行預金に換える動きもある。
これまで手持ちの物件を賃貸することでその利回りを得てきた中国人投資家が、考え方を変えたようだ。
上海在住の投資家は次のようにコメントする。
「利息の方が家賃よりずっといいので、今は売却を考えている。賃貸に出しても借り主の中国人は使い方が荒いので、この内装費用だけでも損をしてしまう」
中国のサイトには「家賃収入か、銀行利息か、どっちが得か」などのケーススタディも散見されるようになった。少し前までの「何が何でも不動産購入だ」という認識が変わりつつある。
次のページ>>上海でも異変。不動産仲介業者は「やる気ナシ」
他方、3月末に北京市が発表した「不動産価格を押し下げる」という新政策が波紋を呼んでいる。昨年一年間で新築の住宅価格が42%も上昇した北京が、口火を切って新政策を導入したのだ。
上海や広州、深センなど複数の都市はこれまで新築住宅について価格抑制を目標に据えてきたが、あくまで価格の維持であり、下落させることが目標ではなかった。言ってみれば、高止まりを維持させることが一連の政策のツボでもあったのだ。
この新政策から読み取れるのは、高騰を続けてきた不動産市場に対する、中央政府のアプローチの変化だとの指摘もある。「住宅価格を下げ、一般市民の収入を上げることで不動産を購入させ、バブルの消化を図るという意図も読み取れる」とする地元紙もある。
上海でも異変不動産仲介業者は「やる気ナシ」
さて、上海では昨年末以来、不動産取引が勢いを失い、仲介業者はすっかり手持ち無沙汰といった状況だ。以前は客だとわかると強引にセールスしてきたものだったが、今は店の前に立とうが座ろうが仲介業者が出てくる様子はない。まったく「やる気ナシ」といった具合だ。
かつてはあれほど賑わった不動産取引センターも、 09年末のころと比べると天と地ほどの差がある。「駐車場はガラガラで、もはや人影もない」と近隣住人は漏らす。
上海の中古住宅価格は今ではどこも2割引。今後、住宅価格は値下がりするというオーナーの心理不安が「下落」に転じさせた。それでもなかなか成約には至らない。水面下では「3〜4割引」の攻防が展開しているとささやかれている。
諦める投資家もいる。
次のページ>>住宅賃料の高騰がUターン、Jターンに拍車
「うちのマンションは単価4万元ですが、もはや買い手がつかないことは知れている。物件価格の半額を頭金で入れる必要があり、それを現金で用立てられる金持ちはうちのような中古には手を出さないからね」
売却したいが買い手がつかない。もはや、ここまで上がった不動産に手を出せる者はいない。
住宅賃料の高騰がUターン、Jターンに拍車
一方で、こんな変化もある。都市部の民工、とりわけ上海に入ってくる民工の動きに異変が出始めた。
ある浦東新区の高級マンションに住む中国人主婦はこんな話をしてくれた。
「今、マンションの三階で内装工事していますが、なかなか終わる気配がない。聞いてみると人手不足だとか。地方からの働き手が集まらないようなんです」
春節以降、上海に戻ってこない民工が増えているのだ。民工のみならず、大卒者も含め、地方出身者にとって上海の住宅賃料はあまりに高すぎる。収入の対部分を占め、そこに生活のゆとりはない。
自ずと視野に入れるのが他都市で働くという選択。これまで都市部の産業を支えてきた働き手のからのUターン、Jターン現象が顕著になってきているのである。
「都市部における『住宅は慢性的に不足する』という土地神話が維持できなくなる」と危惧する声もある。都市部の土地は有限、絶え間なく都市に流入する人口が都市部の不動産価格を押し上げる、その構図にゆがみが出るというのだ。
08年、中国の不動産価格は臨界点に達していた。しかし、リーマンショック以降、経済の落ち込みを懸念した中国政府は商業銀行の融資を拡大させた。前出のエコノミスト謝忠国氏は次のように警告する。「もはや、紙幣を刷っても救いがたい局面にある」。
次のページ>>土地神話崩壊の序曲か
さて、中国の不動産専門サイトが行った調査によると、「今後も価格は上がる」に一票を投じたネットユーザーが全体の6割以上を占めた。
しかし筆者の個人的な印象では、少なくとも昨年までは10人中10人が「今後も価格は上がる」と信じていたのだ。これもひとつの変化だと言えるだろう。
下落した不動産価格が再び買い手を集めることも想像できる。さらに物価上昇もとどまるところ知らずとあっては、インフレ対策に不動産を求める動きがまたもや加速するかもしれない。
しかし、沿海部の大都市は少なくとも誰がどう見ても異常。狂奔の先に何が待っているのだろうか。ますます中国不動産市場から目が離せない。
質問1 中国の不動産バブルは続くと思う?
描画中...
77.7%
そろそろ終わる
11.2%
しばらくは続く
7.2%
まだまだ続く
4%
わからない
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