01. 2011年5月17日 17:02:56: iuZAzOOIL2
マスコミが煽る電力の自由化などにも、思惑があるように思います。http://tanakanews.com/c0204enron.htm エンロンが仕掛けた「自由化」という名の金権政治 2002年2月4日 田中 宇 アメリカ政府が911テロ事件の発生を防ぐことをわざと怠っていた可能性が大きいということを、「テロをわざと防がなかった大統領」など以前の記事で説明してきたが、ブッシュ政権がそんなことをしたのはなぜなのだろうか。それを考える際、参考になりそうな汚職疑惑がアメリカで起きた。昨年12月に倒産した「エンロン」をめぐる事件である。 エンロンは、エネルギーの卸売り会社(エネルギー商社)で、テキサス州ヒューストンに本社を置いていた。アメリカで7番目に大きな企業で、アメリカとヨーロッパのエネルギー市場の2割をこの会社が扱っていた。 エンロンは1985年に米国内の2社の天然ガスパイプライン会社が合併してできた会社で、当初はパイプラインの敷設運営をベースとして、天然ガスや石油を電力会社や工場などなどに売る事業をしていた。 1994年ごろからアメリカで電力自由化政策が始まると、エンロンは企業戦略を転換した。パイプラインや貯蔵タンク、発電所といった施設を保有してエネルギーを供給するのではなく、石油やガス、電力などの売買を仲介する「商社」としてのビジネスを重視するようになった。 電力自由化は、家庭や企業などに電気を供給する配電会社(日本では電力会社の一部門)が、電力をなるべく安く売ってくれる発電会社(発電所)を選んで電力を購入できるようにすることなどを柱とした規制緩和策だった。電力やガスなどを自由に売買できるようにするには、新しく「市場」(取引所)を作ることが必要だった。エンロンは、こうした変化に気づき、社内に取引所を創設し、業界内での扱い高を急増させることに成功した。 そのころはアメリカでインターネットが普及した時期と重なっており、エンロンは「エンロンオンライン」というネット上のエネルギー取引所も立ち上げた。ここでは、電力や原油、天然ガス、石炭などのエネルギー商品だけでなく、紙パルプ、鉄鋼、化成原料、タンカーや貨物船の運賃、光ファイバーケーブルの利用権、排出規制がある二酸化硫黄の排出権、世界諸都市の気温変化の先物商品などが取引されていた。(詳しい説明) ▼まずは議員の大半にカネをばらまく 「売買の対象にならないと思われていたものを市場化する」というエンロンの発想法は、他の方面でもユニークな力を発揮した。その一つは「政治を売買する」ということだった。 この方面で、エンロンの創設者でCEO(会長)だったケニス・レイがまずやったことは、政治家たちに政治資金をばらまき続けるということだった。エンロンは本社がテキサスだったので、テキサス州知事から大統領になったブッシュ大統領や、その父親(元大統領)らテキサスの政治家に多額の献金を行ってきたが、献金先はそれだけにとどまらなかった。 アメリカ連邦議会の上院議員の7割が、エンロンからの献金をもらったことがある、という状態だった。献金先は、ブッシュ元大統領以来、エネルギー産業との結びつきが強い共和党が4分の3を占めていたが、ライバルの民主党にも献金は広く行き渡っていた。 民主党では、上院議員のリーバーマンが、エンロン疑惑をめぐるブッシュ政権への非難の急先鋒となっているが、彼自身、以前にエンロンから小額ながら献金を受けたことを共和党側から指摘されている。誰にでも献金をして、誰が政権に就いても影響力を行使できるようにしたという点では、日本のリクルート事件と似ている。 政界にカネをばらまいたエンロンが目指したのは、アメリカで進んでいた「自由化」を、自社の利益につながるような形の政策にしてもらうことだった。その好例を、カリフォルニア州の電力自由化にみることができる。 ▼電力危機の原因はエンロンの売り惜しみ カリフォルニア州では開発コストがかかるエコエネルギーの普及に力を入れたことなどから電力料金が全米屈指の高さになっていたため、1996年に電力売買の自由化によって料金を下げようとする政策が始まった。 カリフォルニアには全米に先駆けて電力取引所が作られ、電力の自由な取引が始まった。エンロンは、そのプロジェクトをワシントンやカリフォルニア州の政府や議会に働きかけて推進した。 電力会社は、平常時は発電所から長期契約で電力を買っているが、一時的な電力需要増などに対応するため「スポット市場」と呼ばれる自由市場が使われるようになった。エンロンは、長期契約とスポット市場の両方で電力を売り、利益を増やした。 ところが、その後カリフォルニア州の電力自由化は、2000年の後半に大きく破綻してしまった。自由化によって、発電した電力が必ず売れる状態ではなくなり、建設コストがかさむ発電所を作る事業家が減ってしまった。その一方で、カリフォルニアではシリコンバレーなどでコンピューター関連産業が増えて電力需要が拡大し、電力不足になってしまった。 長期契約で電力を確保できない配電会社がスポット市場から買う量が増えた結果、2000年末にかけてスポット市場の電力の値段が高騰し、カリフォルニアのいくつかの地域で一般家庭の電力料金が値上がりしたり、配電会社が電力を確保できなかった地域では何回も停電を余儀なくされるなど、大きな社会問題となった。(関連記事) ところがこうした事態の裏で、電力を売る側のエンロンは、スポット市場の高騰で儲けを急拡大させていた。電力の自由市場には、取引規制がほとんどなかった。政治家への献金が功を奏し、規制を作らないでほしいというエンロンの主張が実現していたからだった。 電力危機が一段落した後、エンロンなどいくつかの売電会社が電力相場の高騰に拍車をかけるため、スポット市場で売り惜しみをした疑いが強まり、エンロンへの批判が強まった。カリフォルニア州政府は、エンロンなどに対し、相場を不正に高騰させた分の合計90億ドルを返還するよう求めている。 エンロンのレイ会長は電力危機が発生したとき「自由化が不十分だから危機が起きたのだ」と主張していたが、実際は正反対のことが起きていたのだった。 ▼自由市場の原則を守って儲けさす カリフォルニア電力危機が起きたのは、ちょうどクリントン政権からブッシュ政権に交代する時期に起きた。カリフォルニア州知事は、ブッシュ新政権に対し、連邦政府がエンロンなど売電会社に命令し、高くない値段でカリフォルニアに電力を供給させてほしい、と要請した。だが新任のブッシュ大統領は「自由市場の原則を曲げる政策をとるわけにはいかない」という立場をとり、救いの手を差し伸べなかった。 経済問題を解決するには、自由市場の流れに任せて「自然治癒」させるのが一番いいという「自由市場主義」(新自由主義)の考えを持っている人がアメリカには多く、その考えからすると、ブッシュの方針はあながち間違いではないという評価を受けた。 ところが、その後エンロンが倒産し、2002年に入って、ブッシュ政権とエンロンとのつながりがマスコミなどによって精査されるようになると、見方が変わってきた。ブッシュ大統領の経済面でのアドバイザーとして最も高い地位にあるホワイトハウスの首席経済顧問となったローレンス・リンゼーは、政権入りする前はエンロンの顧問をしていた人物である。(関連記事) ブッシュ政権がカリフォルニアに対して緊急対策を何もしなかったのは、電力相場の高値が続き、エンロンが儲かるようにしてあげることが目的だったのではないか、との疑惑を持たれている。 ▼エンロンの要求メモとそっくりな新政策 カリフォルニアの電力危機が一段落した昨年5月、ブッシュ政権は電力危機をふまえ、アメリカのエネルギー長期政策を見直した。エンロンのような会社だけが儲かり、一般家庭が停電してしまうような事態の再発を防ぐことが政策見直しの目的であるはずだった。 ところがここでも逆に、エンロンのさらなる利益につながる方向で新政策が定められた可能性がある。昨年4月、新政策を立案中のブッシュ政権に、エンロンのレイ会長が出した3ページ建ての要求メモの存在が、エンロン倒産後に明らかになり、その内容が実際に発表された新政策とそっくりだったことが報じられている。 新政策の立案を担当したのはチェイニー副大統領だったが、副大統領とその補佐官(この人もエンロンから送り込まれた人材と報じられている)が少なくとも6回、エンロン幹部に会っていることが分かっている。 こうして立案された新エネルギー政策は、環境保護をある程度無視して発電所建設や石油・ガスの試掘をやってよいという、エンロンなどエネルギー業界にとっては朗報となる項目が盛り込まれた。その一方で、消費者団体などが求めていた、電力価格に上限を定めるプライスキャップ制をとることは、市場原理を壊すものだとして盛り込まれなかった。(関連記事) エンロン倒産後、チェイニー副大統領は、新エネルギー政策の立案過程について当時の資料を公開するよう、議会から求められた。だが副大統領は「そういうものを公開すると、民間企業一般との間の信頼関係が損なわれ、今後自由に企業から意見を集めることができなくなる」と言って拒否したため、議会側は憤り、議会の調査機関であるGAO(会計検査院)が捜査に乗り出した。 この新エネルギー政策を打ち出す少し前、ブッシュ政権は地球温暖化に関する京都議定書を破棄したが、議定書に盛り込まれていた二酸化炭素排出規制も、エンロンのレイ会長が以前から反対していたことである。ブッシュ政権が、これだけエンロンの言うことを聞く態勢にあったということは、京都議定書の破棄も、エンロンの要求に応じたものだった可能性が強い。 ▼政府委員会のトップを交代させる エンロンの破綻後、米連邦エネルギー規制委員会(FERC)は、電力相場を不正につり上げた疑いで捜査を始めた。ところがここでも、裁かれる側であるはずのエンロンが、裁く側を事前に指名していたことが判明している。 エネルギー規制委員会のパット・ウッド委員長は、昨年夏に就任したのだが、前任者のカーティス・フバート前委員長は辞任直前、エンロンのレイ会長から「政府が管轄している送電線網をエンロンのような民間電力会社が自由に使えるよう、規制をなくしてほしい。それをやらなければ、これ以上委員長の席にとどまれないようになる」と脅されたという。フバートは要求を断った。(関連記事) すると、間もなくブッシュ大統領の人事発令で、フバートは解任されてしまった。後任のウッドは、エンロンの地元テキサス州で電力会社などを監督する公益企業委員会の委員長から昇格した。新委員長は「電力自由化の推進」を掲げ、エンロンの意に添った政策を展開し始めたのだった。 【続く】 -------------------------------------------------------------------------------- ●日本語の関連記事 東奥日報「エンロン火力の行方」 この連載を読んで、エンロンは火力発電所の建設を通して日本の電力市場に参入した後、ブッシュ政権に対日圧力をかけてもらい、日本の電力市場を自由化し、カリフォルニアのようにして大儲けしようと考えていたのではないか、と感じた。原発問題などがあるので、日本の電力会社は、規制に守られた旧体質の業界と思われがちだが、その規制体質がエンロンの参入を防ぎ、日本がカリフォルニアのように食い物にされずにすんだ理由だったのかもしれない。 ここが知りたい エンロン社の倒産が意味するものは?
Enron's California smoking gun Enron accused of unfairly boosting energy prices Enron: The real face of the "new economy" Key Bush Energy Advisers Reveal Large Enron Holdings --------------------------------------------------------------------------------
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