http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/790.html
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このままでは既存雇用が7割、既存産業で8割喪失という可能性は否定できない
ただし規制や税制の改革があれば、そこまで悪化はしないし
新規の起業が生じればさらに成長も可能
http://diamond.jp/articles/-/12264
南 壮一郎 [株式会社ビズリーチ代表取締役]
3年後に未曾有の国内製造業リストラ・ラッシュで7割が失業
社長公募も“人と企業のグローバル化”への布石
――ユーシン社長・田邊耕二氏【前編】
上場企業で異例の社長公募を新聞広告で行い、話題を呼んだユーシン。同社は“ビッグ3”をはじめ、世界の名だたる自動車メーカーにおいて、トップクラスのシェアを誇る日本の自動車部品メーカーだ。今、日本の製造業界はグローバル化が急務だ。というのも、かつて日本人にしか作れなかった物を、今や世界中の企業が作り始めているからだ。メイド・イン・ジャパンの不敗神話が過去の遺産となった今、グローバル化が進む世界市場で、日本企業はどんな人材を求め、どんな企業に生まれ変わろうとしているのか。ユーシン社長、田邊耕二氏に聞く。
30億の広告効果も!
1722名が応募した社長公募の機略
たなべ・こうじ
1934年2月1日生まれ。1956年4月日野自動車入社、1961年退社。1961年4月にユーシン入社、1965年2月同社取締役に就任。1976年2月に同社代表取締役専務を経て、1978年2月より同社代表取締役社長を務める。2006年7月同社最高顧問に就任。08年2月には、同社代表取締役社長に復帰し、現在に至る。
南 御社のグローバル改革路線のひとつとして、次期社長の公募は印象的でしたね。
田邊 英語を話せて、世界のこともよく分かる指導者の必要性から公募を行いました。条件は英語が堪能であり、年齢は30〜40代、待遇は年収3500万円以上というものでした。あちこちで話題を呼び、1722名もの応募がありました。中にはある国の日本大使の方もいましたね。その話題性から、30億円規模の広告効果がありました。
南 広告効果と公募のための周知を兼ねる、すごい戦略だと感じました。
田邊 ヘッドハンティングするより人材の質が高いです。自分で会社を辞めて来るわけだから、覚悟も違う。結果として、8割以上がTOEICスコア900点以上でしたね。
南 今回、社長を採用するにあたり、経営者の価値を判断する時に、一番重要になる判断要素は何でしょうか?
田邊 経営者がグローバルな価値観を土台としているかどうかがまず大切です。国内の価値観ではなく、グローバルな価値観で会社の存在意義を語れること、導けることが重要ですね。
南 グローバルな価値観で会社を導くには、どうすればいいのでしょうか?
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田邊 結局、経営の原点は、なるべく資金を効率よく膨らませることです。ある一定の資金を、一番大きな比率でどれだけ儲けさせるか、それこそが経営手腕です。企業の目的はあくまでもステークホルダーに還元することですから、やはり儲けなければならない。これは経済における世界共通言語です。いくら理屈を言っても、儲かっていなければ何も始まりません。
外務省出身の八重樫氏を
次期社長に選んだ決め手とは?
みなみ・そういちろう
1999年、モルガン・スタンレー証券に入社。2004年、幼少期より興味があったスポーツビジネスに携わるべく、楽天株式会社代表の三木谷氏に直談判し、楽天イーグルスの創業メンバーとなり、初年度から黒字化成功に貢献。 2007年、株式会社ビズリーチを設立。年収1000万円以上の転職市場に特化した、日本初の個人課金型・転職サイト「ビズリーチ」を運営。2010年、クーポン共同購入サイト「LUXA(ルクサ)」を開始。
南 今回の社長採用の選考はどのように進んだのでしょう?
田邊 1722名の応募から書類審査で70名に絞って面接、そして今申し上げた経営者としての要素があるかどうかを判断し、残った10名にディスカッションをしてもらいました。その中で成績順に役職を割り当てました。
南 社長に採用されたのは外務省出身の八重樫永規氏でした。会社の後継者であり、トップとして同氏を選んだ決め手は何だったのしょう?
田邊 役人だからという理由で採用したわけではありません。彼は長い海外経験があり、また、いろいろなプレーヤーと調整・開拓ができる交渉力があったからです。当社では、国内外の様々な自動車メーカーと交渉していかなければなりませんから。
そして、彼のリーダーでありチームプレーヤーである資質を買いました。彼のルーツをひもといてみると、彼は東大卒のエリートキャリアですが、高校時代には野球部でキャプテンを務め、甲子園へ行っています。キャプテンをしていたぐらいだから、チームを大切にしながら人をまとめる力もある。
もう一つ、経営者に必要な素養は、“地頭”の良さです。彼は、高校時代に野球でも全力を発揮し、さらに勉強時間が少ない中でも、東大に現役合格したのです。さらに外交官試験も一度でパスし、囲碁も五段を持っている。これは、タイムマネジメント力や能力開発を適材適所で行える地頭の良さを裏付けています。そして、彼は、経営者として最適だと感じましたね。営業統括と社内外のグローバル・コミュニケーションにおいて、その手腕を発揮してもらいたいです。
次のページ>> 国内製造業の7割が失業!?恐るべき未来への課題
南 そして今回同時に、ナンバー2も採用されましたね。
田邊 はい。東大工学部卒の元ソニー、それも外国経験が長い丸子秀策氏を採用しました。彼にはサプライチェーンの効率化を含めた社内の効率運営を担当してもらいます。そして次期社長の八重樫氏には国内外の自動車メーカーとの交渉や事業開発を担当してもらいます。このように2人の役割を明確に分けています。
南 今後もいろいろな方を外部から採用することになると思いますが、どういう方を採用したいとお考えですか?
田邊 今集めているのは幹部クラスです。よって、その次はその人の下で、次の世代の中心になっていくような人の採用と育成ですね。
国内製造業の7割が失業!?
恐るべき未来への課題
南 今、日本製品の国内市場弱体化や海外需要低迷などを目の当たりにして、経済のグローバル化がようやく実感として浸透してきました。これは製造業のビジネスにどんな影響を及ぼすのでしょうか?
田邊 日本はあと2年ぐらいしたら、失業者が溢れて大変なことになるでしょう。というのも、東南アジア、インド、そして中国が、車でも何でも技術的には作れるようになってしまったからです。そして日本では人件費が高いのに対して、インドでは月給6000円で雇うことができてしまうのです。日産がタイに製造現場を作ったこともその事実を物語っています。
今後、製造現場の7割は海外に移転するでしょう。そうすると、日本の製造業には1000万人の労働者が従事しているので、700万人が失業するとこになりかねない。これは大きな社会問題です。さらに問題なのは、この未来の到来に、政府を含め誰も手の打ちようがないということです。
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南 私は海外で育ったからこそ思うのですが、グローバルな視点を欠いた日本の仕事の仕方は、もはや世界では勝ち残れないと思います。どうすればグローバル市場で知的産業の上流域に立てるかが大きな課題ですよね。
田邊 やはり、まず終身雇用、年功序列がまだ大企業では消えてないという実態からの脱却が急務でしょう。私は10年前に両方共やめるつもりでしたが、情勢的に受け入れられなかった。よって、今回は社長公募をすることで強制的に行うことにしました。
社員が会社の売り上げに繋がる仕事をしているかどうかが重要です。まずその確認を徹底しました。売り上げに繋がっている生産性の高い合理的な仕事時間を算出し、その時間が社員の持ち時間の何%にあたるかを個別に算出し、その値が50%以下の人はパフォーマンスが低いということがわかりました。
結局、売り上げに対するコストの大部分はサプライヤーからの仕入れです。それが全体の75%を占め、この仕入れの部分は大きく変動しない。よって残りの25%を占める人件費をいかに合理化するかが企業に問われています。
グローバル化で可能になる
国内技術の世界展開
南 今回の社長の公募や人事は会社を本当の意味でグローバル企業にしていくための第一の施策といったところでしょうか?
田邊 そうですね。フォード、かつてのGM、ベンツ以外のドイツ車はすべて当社の部品が純正になっています。現在、クライスラーにもシェアが広がっており、ドイツもワーゲンやBMW、アウディにも純正で入っています。つまり、当社は海外でも技術的には完全に通用するという土壌があるのです。BMWについては来年には当社の製品が全体の5割を占めるようになりますね。また、もうすぐ、ヒュンダイが新しく入りそうです。今後、フィアットなどにもシェアを伸ばせたら、世界で1位、2位を狙えるレベルになります。
南 公募で集まった1700名の中で、まず2トップを決め、他にも数名の役員を採用されていますね?どんな役職に就かれるのでしょうか?
次のページ>> 製造業は、8割の国内マーケットを失う可能性も
田邊 当社にはトーソクという子会社があります。まだ国内販路しかないので、これを海外展開したいと考えているのです。トーソクは、一昨年の売上高が約30億円で、経常利益が15億円もある、非常に利益率の高い会社です。ヨーロッパでも同じようなマーケットがあるので、グローバル化して横展開すれば、世界規模でこの利益率で商売ができると考えたのです。よって、もちろん語学が堪能で、ヨーロッパでの海外経験のある方を選び、社長に就任していただくことになっています。
製造業は、8割の
国内マーケットを失う可能性も
南 10年前に社内の制度を変えようとした時に実現できなかったのは、社内の抵抗が大きかったからですか?
田邊 抵抗というより、習慣の問題でした。年功序列、終身雇用が習慣として染みついてしまっていたのが失敗の大きな要因でしたね。しかし、今回は社長公募をすることで強制的にやっていく。要するに、結果を出す人には結果に見合った給与を出すし、結果を出さない人にはそれだけの給与しか出さないことを社員に公言し、徹底的な成果主義を習慣化したかったのです。
そして、成果主義の給料の算出方法を公開します。自分の給料がどのように算出されるというのが分かるようにするのです。つまり「給料=会社への貢献度」という因果関係を知った上で働いてもらうことを習慣づけるというわけです。
南 御社の役員の方々は、ほとんどが内部登用の生え抜きだったと思いますが、そういう方々は入社した時は終身雇用、年功序列であると認識していたと思います。しかし、何十年か経ったのちに、いきなり新しいシステムに沿った給与体系になってしまったと。その状況に直面した時、どういう反応でしたか?
田邊 これは問題かと思うのですが、目立った反応はありませんでしたね。むしろ、新しい環境に体がついていかなかった、という表現が正しいのかもしれません。
次のページ>> 英語、中国語ができない人は競争力を失う時代に
田邊 さらに、もう一つの重大な問題として、これまで国内需要が大きかった製造業において、英語ができる人材がほとんどいないということに危機感をもっていなかったことです。これからは、国内需要は今の2〜3割ぐらいに下がり、7〜8割が海外という時代がきます。
つまり英語、中国語ができない人は、競争力を失う時代がすぐに来るのです。よって私は、3年後には社員の7割をリストラする予定です。当社だけではなく、同業はみなそうなると考えられます。もともと日本には自動車会社が12社もあったため、部品会社の数が多くなりすぎたのです。(後編に続く)
南メモ:
田邊社長によると、「製造業は7〜8割の国内マーケットを失う可能性がある。そのため、3年後には社員の7割をリストラする予定」とのこと。田邊社長のお話を伺い、日本のビジネスパーソンのグローバル化は、急務中の急務であることを改めて痛感しました。
※後編は来週5月24日(火)公開の予定です。
「グローバルへの即応力のない40代は、淘汰される時代」と主張する田邊氏。日本人として生き、世界をまたにかけるビジネスの中で「日本人らしさを超える宿命にある日本人」の姿に気づき、「“能力序列”の時代は、自分で自分にムチを打て」と看破する。これからのグローバル化を「産業は、競争の中でのみ、成長する」と標榜する後半も乞うご期待。
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