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アジア企業、東日本大震災の影響はこれから
2011.05.17(Tue) (2011年5月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
震災の死者、お年寄りが過半数 朝日新聞調査
震災は即座に個人的な犠牲をもたらしたが、企業業績に影響が出るのはこれから(写真は東日本大震災で津波の被害を受けた岩手県山田町で、瓦礫の中に立つ男性)〔AFPBB News〕
決算などのデータを見る限り、アジア新興国の大企業の2011年第1四半期(1〜3月期)業績に対する影響は、日本を襲った大地震や津波よりもエネルギーやコモディティー(商品)の世界的な価格急騰の方が大きかったようだ。
売上高で世界一のハイテク企業であるサムスン電子、中国の広州汽車、半導体受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)などは、日本製部品の不足により生じ得る悪影響のバロメーターと目されていた。
しかし大半の企業は、悪影響を受けるのは主に第2四半期になるだろうと話している。東日本大震災が発生したのは3月11日であり、大半の企業は第1四半期末の決算日まで3週間を残すのみとなっていた。そのため、日本製部品の不足は4月になるまでほとんど影響しなかったのだ。
第1四半期の業績への影響は概ね軽微
TSMCは重要な原材料を30日分備蓄している。先日公表した第1四半期の純利益は前年同期比7.8%増だった。日本の地震は同社のサプライチェーン(供給網)には影響しなかったが、顧客は第2四半期に影響を受けるかもしれないと同社では見ている。
中国の大手自動車メーカーである広州汽車の張房有会長は、「(日本の)地震が当社のサプライチェーンに悪影響を及ぼしているために」5月の生産台数は計画を30%下回るだろうと話している。ただ張会長は、この悪影響は「短命」であり、同社の通期業績に大きく影響することはないだろうとも述べている。同社はまだ第1四半期決算を発表していない。
サムスン電子は第1四半期の純利益を前年同期比で30%減らしたが、携帯電話端末と薄型テレビの競争が厳しかったためだとしている。また半導体事業の利益率は拡大しており、地震が日本の生産に打撃を与えたことに起因するメモリーチップ価格の上昇が同社の追い風になったことを示唆している。
台湾のスマートフォンメーカー、HTCは、第1四半期における携帯電話端末の販売台数は前年同期の3倍近い水準に伸びており、日本の震災の悪影響はほとんどないと話している。
韓国のLGエレクトロニクスでは第1四半期の純損失が158億ウォン(1450万ドル)となり、2010年第4四半期の2560億ウォンより縮小した。同社はこの赤字を欧米市場の減速によるものだと述べており、第2四半期には業績がさらに改善すると見込んでいる。
韓国・現代自動車やタイの食品大手には追い風
日本企業が地震で打撃を受けたことが追い風になっていると見受けられる企業もある。韓国の現代自動車では第1四半期に、海外での販売台数が11.6%増えたことなどを背景に純利益が前年同期比で46.5%増加した。傘下の起亜自動車も純利益を前年同期比で91%増やしている。
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一部のアジア食品会社では、日本の水産業の被害が追い風となった(写真は、宮城県東松島市で、津波で住宅地に乗り上げた漁船)〔AFPBB News〕
一部の食品輸出業者も好業績を上げている。津波による漁船の被害と、事故を起こした原子力発電所からの放射性物質漏出のために日本産の水産物が不足しているためだ。
ツナ缶製造の世界最大手であるタイ・ユニオン・フローズン・プロダクツでは、経費と支払利息が増えたために純利益が9.4%減少した。だがアナリストらによれば、日本の大震災に関連する輸出の増加という恩恵を同社は享受している。
また日本にエビを多く輸出しているチャルーン・ポーカパン・フーズは、純利益が7.9%増えたと話している。
大韓航空では第1四半期に純利益が前年同期比で50%増加した。震災後に日本を離れた人々のために旅客需要が伸びたことや、部品の輸送が増えて貨物輸送収入が伸びたことが貢献したという。ただ、原油高のために営業利益は41%減っている。
悪影響を受けた航空会社も
アジア地域の他の航空会社は、日本の震災により悪影響を受けたと話している。中国国際航空(エア・チャイナ)では第1四半期の純利益が前年同期比で23%減少した。タイ国際航空は第1四半期決算をまだ発表していないが、震災のために収入が約6億バーツ(1980万ドル)減ったと4月に述べていた。
世界の航空会社の中で株式時価総額が2番目に多いシンガポール航空は、2011年1〜3月期の純利益を前年同期比で38.5%減らして投資家を驚かせた。燃料価格の上昇がその理由だという。同社はまた、日本の震災の影響などによりロードファクター(平均有償座席利用率)が当面低下する恐れがあると話している。
ガルーダ・インドネシア航空も、第1四半期の純損益が1835億ルピア(2140万ドル)の赤字に終わり、前年同期の180億ルピアの黒字から一転した原因を原油価格に求めている。
アナリストたちは、燃料コストの急増によって利益が減ったと発表するアジアの航空会社が増えそうだと話している。ブレント原油の価格が第1四半期に1バレル=約95ドルから同120ドル超に跳ね上がったことの反映だという。
シンガポールの海運会社ネプチューン・オリエント・ラインズ(NOL)も、第1四半期が1000万ドルの純損失に終わったのは燃料コストのせいだとしている。同社は前年同期にも9800万ドルの純損失を計上したが、今年は取扱量の増加も手伝って黒字に転換できるのではと期待していた。
エネルギーとコモディティー価格の高騰
エネルギーやコモディティーの価格上昇は鉄鋼メーカーにも打撃を与えている。韓国の鉄鋼大手ポスコは第1四半期に純利益を前年同期比で33%減らし、インドネシアのクラカタウ・スチールも76%の減益に終わった。中国の河北鋼鉄集団も3%の減益だった。第1四半期には鉄鉱石とコークス用石炭の価格がともに記録的な水準に上昇していた。
これには電力会社も苦しめられた模様である。マレーシアのテナガ・ナショナルは第2四半期(2010年12月〜2011年2月期)に純利益を前年同期比で37%減らしており、第3四半期の業績見通しも下方修正している。
一方で、天然資源価格の急上昇は、コモディティーを扱う商社の業績向上に一役買っている。例えば香港のノーブル・グループでは、第1四半期の純利益が前年同期比で80%増加した。日本の震災やオーストラリア・クイーンズランド州の洪水の後で石炭価格が上昇し、石炭・コークス事業の収入が59%伸びたという。
シンガポールを本拠地とするコモディティー商社のオラムも、2011年度第3四半期(2011年1〜3月期)には売り上げの増加と利益率の向上を背景に、純利益(特別利益を除くベース)を前年同期比で48%増やしている。
By Kevin Brown
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