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ウサマ・ビンラーディンの死で2001年9月11日の米中枢同時テロ後の対テロ戦争にひと区切りがついたが、9・11がきっかけになった国際通貨戦争は続いている。「通貨戦争」とは唐突に聞こえるかもしれないが、通貨発行や外為市場操作を通じて富を奪い合うのが本物の国家というものだ。大量にお札を刷って豊かになる国もあれば、刷らないために貧しくなる国もある。前者の代表が中国であり、後者は日本である。
3月11日に東日本大震災に遭遇した日本はこの通貨戦争をどう乗り切るべきだろうか。
「9・11」の直撃でニューヨーク金融市場は大きく揺れた。米連邦準備制度理事会(FRB)は大量のドル資金供給に踏み切り、以降、金融緩和路線を維持する。当時のブッシュ政権とFRBのグリーンスパン議長は住宅市場に目を付けた。住宅関連の証券化商品に資金を誘導し住宅ブームに火をつけた。日本では日銀がゼロ金利・量的緩和に踏み込む一方、小泉純一郎政権はブッシュ政権の同意を得て03年から円安促進政策をとった。円資金は高い利回りを求めて米金融市場になだれ込み、住宅市況をさらに押し上げた。
中国は好機とみた。ドル発行に連動させて通貨人民元を刷る。活気づく米消費市場に牽引(けんいん)されて自動車、家電などへの投資が活発化し、生産規模が拡大していく。
ところが米住宅市場と証券化商品はいずれもバブルとなって膨張し、08年9月に破裂した。リーマン・ショックである。非常時の米国の武器はドル札だ。まずは不良資産化した住宅ローン担保証券、次には米国債の大量買い取りに乗り出した。FRBはこれまでに約200兆円相当のドル資金を刷って金融市場に流し込んだ。資金の一部は株式に回り株価を引き上げるのに成功し、個人消費を下支えしている。
中国は米国からなだれ込んでくるドル資金を買い上げて人民元に換え、国有商業銀行融資を増やしてきた。この結果、人民元のマネー(現預金合計)量は9・11直前からの10年間で5倍以上増えた。北京はお札を垂れ流す一方で、人民元相場を小刻みに切り上げ、インフレ率を最小限に抑え込んで高度成長の持続に腐心している。対照的に、日本では円マネー量は10年で20%しか増えなかった。「リーマン後」の危機に際しても、日銀はお札を増刷しようとせず、円高・デフレを放置した。国内総生産(GDP)規模は縮小し続け、昨年には中国に抜かれた。
その最中での大震災である。日銀はひとまずは25兆円の資金を金融機関に追加供給したが、ここへ来て回収に転じた。他方で米FRBはドル供給の高水準を保ちながらゼロ金利政策継続を発表した。ドルは円に対して余ると、円高ドル安が加速する。最近の円高の真相である。おまけに政府は復興財源確保のために増税を真っ先に考える。政府も日銀も円高・デフレ容認に傾斜するのだから、民間の消費意欲はますます減退し、企業は投資に尻込みする。
■日本経済にとって、3・11の意味はもはや明白だ。9・11後やリーマン後に米国がとった金融・財政政策に倣うしかない。
政府は増税を避け、復興国債を発行し、大規模な復興事業を粛々と実行する。日銀がお札を刷って市場から国債を買い上げる量的緩和政策は明日にでも可能だ。政策の空白は、今度こそ日本を沈める。
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