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増税や子ども手当の見直しになぜ容認論が増えるのか
http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/702.html
投稿者 sci 日時 2011 年 5 月 06 日 14:41:21: 6WQSToHgoAVCQ
 

http://diamond.jp/articles/-/12125/votes
【第274回】 2011年5月6日 梅田カズヒコ [編集・ライター/プレスラボ代表取締役] 
増税や子ども手当の見直しになぜ容認論が増えるのか
 冷静に考えたい“本当に将来のためになる”復興政策 

東日本大震災から2ヵ月近くたった今、ようやく復興に向けた総額4兆円あまりの第一次 補正予算が成立した。今後の焦点は第二次補正予算となるが、いまだ必要な財源のメドは立っていない。復興への機運が高まるなか、世間では「増税やむなし」 の声が目に見えて増え始めた。その一方、復興財源の捻出を理由に、民主党の目玉政策だった「子ども手当」の見直しも、いつの間にか決まった。増税もマニ フェストの見直しも、以前から必要性が唱えられていたとはいえ、「復興」を理由に負担ばかりが増す状況の変化を、我々はただ見ているだけでよいのだろう か。将来にわたって本当に有効な復興政策を実現するためにも、その背景を改めて考えてみたい。(取材・文/プレスラボ・梅田カズヒコ)
ようやく本格化する復興への取り組み一般市民からも聞かれる「増税やむなし」の声
「仕方がないですね。おそらく生活は苦しくなりますが、東人本大震災で被災した人たちのことを思えば、我々もできるだけ協力しないと……。何よ り、今議論されている増税は、『人助け』のイメージが強いから、反対する人もそれほど多くないのでは。それに、過去の増税のケースを見ても、国民の生活は 案外すぐに変化に対応できる気もしますよね」
 こう語るのは、東京都内に住む30代の女性である。
 東北三県(福島、宮城、岩手)を中心に、日本中に未曾有の被害をもたらした東日本大震災。福島原発事故による放射能漏れ不安がいまだ冷めやらぬなか、国民は政府与党に対して「対応が遅い」と不満を募らせている。
 そんな遅々として進まないイメージが強かった「復興」への道筋が、震災から2ヵ月近くたった今、ようやく見え始めた。5月2日、総額4兆円あまり の第一次補正予算が成立したのである。このうち、約1兆2000億円はインフラの復旧に、約3600億円は被災者の仮設住宅に、そして約3500億円は、 がれき処理に使用される予定だ。
 今後の焦点は、夏を睨んだ第二次補正予算の成立に向けた動きとなるが、問題はこれらの予算に必要な財源のメドが、まだはっきり立っていないことだ。
次のページ>>財源が厳しい震災復興予算にとって、今の世論は追い風?
 菅政権は当初発行する約44兆円の国債とは別に、東日本大震災の復興に限定した「復興再生債」を新たに発行し、第二次補正予算の財源にしようと考 えている。しかし民主党内には、危機的な財政赤字のなか、潤沢な復興資金を捻出するために「増税は避けられない」という声も多い。一部の幹部もメディアで それを公言し始めた。
 冒頭の女性のコメントも、こうした状況を受けてのものだ。この女性は民間企業に勤めており、同じく別の民間企業に勤める夫と2人で暮らしている。 共働きのため、専業主婦がいる家庭に比べれば収入面での余裕はある。とはいえ、それでも不況の出口が完全に見えないなかで、家計を圧迫する増税への不安は 小さくないはずだ。
 しかし「頑張ろう、日本」を合言葉に、国民一丸となって復興を目指す機運が全国で盛り上がるなか、各種世論調査を見ても、こうした増税を容認する声が目に見えて増え始めていることは事実である。
大赤字に拍車をかける震災復興予算世論の変化は政府にとって渡りに船?
 もともと日本人は、世界でも増税、特に消費税の引き上げにシビアな国民として知られてきた。近年の日本の政治家は、「増税を持ち出した途端に国民にそっぽを向かれる」というジンクスもある。
 たとえば1989年、竹下内閣の下で採択・施行された消費税は、わかり易いケースだった。その年の参議院選挙では、消費税の廃止を訴えた社会党が 躍進した。以降、2010年の参議院選挙で「消費税を10%まで引き上げる」と演説して議席数を減らした菅総理に至るまで、歴代総理は20年もの間、消費 税の増税論議に苦しんできたと言える。
 この20年間で最も選挙に強かった政治家・小泉純一カが、「私の総理大臣任期中は消費税率の引き上げは行なわない」と明言していたことも、このジンクスを裏付けていると言えよう。
 日本の公的債務の対GDP比は、約200%と言われている(ただしご存知の通り、日本の国債は国内の需要が非常に高く、金利も低い)なか、この震 災の影響で復興に向けたインフラ整備などにも予算を割かなければいけない。このようなダブルパンチの状況を受け、米格付け会社のS&Pは4月27日、日本 国債の格付け見通しをついに「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。
次のページ>>増税は景気減退を招く一方、必ずしも債務減少につながらない
 今後、日本国債に対する世界的な信用不安が巻き起これば、日本は金利の上昇とそれに伴うさらなる借金の増加という、悪循環に陥る可能性もある。増税、減税いかんにかかわらず、日本の財政問題が危機的状況にあることに違いはない。
 こんな状況もあって、一部の国民の気持ちは「増税やむなし」へと傾きつつある。増税の「具体的な形」についてはいくつか議論が分かれるものの、う がった見方をすれば、消費税の引き上げを悲願としていた政権にとって、今回の震災は大きなチャンスになる側面もあるだろう。たとえ「火事場泥棒」と罵られ ようとも、である。
 この国と国民にとって不幸なのは、税金という国の根幹を成す政策について、平時における充分な論議が行われないまま導入に至る可能性が高いことではないか。今一度、税金のあり方についてよく考え直してみる必要はある。
増税は景気減退を招きかねない一方、必ずしも公的債務の減少につながらない
 問題は、増税の実効性である。消費税であれ、所得税であれ、法人税であれ、全ては景気の影響を受ける。つまり、税率を増やしたところで、所得が落ち込んでいたり、消費が落ち込んだりしては、引き上げた意味がないと言える。
 言わずもがなだが、消費税が3%から5%に引き上げられた1997年以降、消費税の税収額こそ伸びたものの、景気減退の後押しで日本全体の税収は 落ち込んでしまった。一方で、これらの増税によって公的債務が減ったという記録はどこにもない。むしろ、増税後も債務は増え続けた。これらの経緯から、増 税が必ずしも公的債務の減少につながるとは言えない。
 もちろん当時の景気減退は、バブル崩壊後の平成不況において政府が有効な経済・金融対策を打てなかったという原因も大きい。社会構造が大きく変化 しているなかで、過去と現在を単純な税率の違いだけで語ることもできないだろう。だが、増税=「借金の返済」「復興」と単純に言い切れないことは明らか だ。
次のページ>>増税議論の傍ら、ひっそりと見直しが決まった「子ども手当」
 実際、増税容認論が増える一方で、国政に対して不信感を露にする声も根強い。
「もちろん、私だって将来的には消費税を引き上げなければいけないことはわかっています。しかし、まだ歳出を削減するべき事業は山ほどあるじゃないですか。そういったムダなバラマキを続けながら、いきなり増税と言われても納得がいかないですよ」(30代・男性)
増税が「規定路線」と見なされる傍ら、子ども手当もひっそりと見直しが決定
 実は、今回の震災において国民生活に影響を与えかねない「変化」は増税だけではない。増税に注目が集まっているため、あまり大きな話題になってい ない感があるが、民主党は子ども手当や高速道路無料化など、マニフェストの一部を見直す考えを示した。前出の男性が指摘する通り、増税を視野に入れる一方 で、復興財源を捻出するための「歳出削減」を迫られているのだ。
 産経新聞が4月25日に行なった世論調査では、民主党支持者のなかにも、マニフェストの見直しを求める回答が86.8%に上っていることがわかっ た。こうした世論を受け、野党の自民党や公明党は補正予算に理解を示す一方、マニフェストの見直しを迫った。その結果、まず子ども手当の見直しが正式に決 定。政府は毎月1万3000円支給していた子ども手当を、10月以降は1万円に減額すると発表した。
 未曾有の国難に直面している現在、政府が少しでも財源を確保したい気持ちは理解できる。国民の関心も大地震、大津波、福島第一原発関連の報道に集 中しており、「子ども手当どころではない」というのがホンネなのかもしれない。現在のところ、反発も少ないように見える。この状況も、政府にとって「渡り に船」と言えそうだ。
 しかし、こういった手当は本来、政治のかけひきとして扱われるべきものではなく、簡単に止めてはいけない類のものではないだろうか。息子が生まれたばかりというサラリーマンはこう話す。
「そもそも、こういった支援制度は始まったり終わったり、減額されてまた始まったりという状況が続いては、全く役に立ちません。国がつくる制度 は、一度始めたらできるだけパーマネントに運用されるべきでしょう。生まれた子どもはお腹のなかには戻らないのだから、たとえ政権が変わってもある程度恒 久的に手当てを保障してもらわないと、社会保障の意味がないのでは」(30代・男性)
次のページ>>復興への「痛み」を分かち合うことは尊いが、冷静な議論は必要
 確かに、子ども手当はその内容からして、政権が倒れたり大事件が起こったからと言って、そう簡単になくなってしまっては困るタイプの制度だ。安心して子どもを生める社会になるためには、制度を末永く運用する必要がある。
「今から後の時代に生まれた子どもにはおカネを支給できない」とあっては、本来は強い理想が込められた政策であっても、それこそ単なる政治運営の 道具になり下がってしまう。家庭にとって、子育ては時間がかかるし、長期的スパンで考えなければいけない重要なライフプランだ。結局のところ、基本理念の 部分で国民に理解されなければ、制度そのものを存続させても効果は薄い。
復興への「痛み」を受け入れることは尊いが、将来の重要な議論を置き去りにするべからず
 去る5月5日は「子どもの日」だったが、残念ながら日本は少子化の真っ只中にある。それが年金制度の崩壊や経済の停滞感など、多くの問題の元凶と なっている。子どもを産めない社会になっているのは何が原因なのか。国民が未来に向けて希望が感じられないことも一因かもしれない。
 今は増税議論と平行して進められているマニフェストの見直しだが、場当たり的な見直しに終始すれば問題の解決にはつながらず、それは巡り巡って、将来にわたる安定的な税収の基盤を脅かすことにもなりかねない。
 そういった意味においても、復興には未来の日本を見据えたビジョンが大切と言えるだろう。政府には、日本の大きな転換点となる時代において、子の代、孫の代まで有効な「復興基本計画」を、ぜひとも考えて欲しいものだ。
 もちろん、増税についても社会保障の見直しについても、日本復興のために痛みを受け入れようとする人々が増えることは、前向きなトレンドに違いな い。しかし、足もとの状況だけを見て、重要な議論を置き去りにしてしまうことがあれば、むしろ本末転倒である。それは、被災者の心情を慮るあまり消費を自 粛して、かえって景気を落ち込ませてしまう状況にも似ていると言えないだろうか。
 我々は、中長期的な視点から「将来にわたって本当に有効な復興政策とは何か」を、問い続けていくべきだろう。
質問1 増税やマニフェストの見直しに賛成? それとも反対? 
42.8%
マニフェストの見直しには賛成
32.9%
どちらも反対
14%
どちらも賛成
5.8%
増税には賛成
4.5%
何とも言えない
 

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コメント
 
01. 2011年5月06日 15:52:07: cqRnZH2CUM
>「大震災から復興するために、増税」などという、おかしな政策を実行に移した事例は存在し ない

オーストラリアでは天災復旧に対して増税で賄ったが景気は良いようだから
三橋の言うこともあてにはならないが

日本で増税が良いかどうかははわからないな


http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2011/05/05/012634.php
三橋貴明第100回 ショック・ドクトリン(後編)
2011/05/03 (火) 09:08 
 前回、前々回と「消費税増税を実現するためのショック・ドクトリン」について取り上げた。すなわち、「震災から復興するためにこそ、増税」なる奇妙な理屈である。
 断言しておくが、世界の歴史をさらっても、「大震災から復興するために、増税」などという、おかしな政策を実行に移した事例は存在し ない。震災等の「ショック」が発生した場合、余程のことがない限り、国民の支出意欲は削がれる。国民の支出意欲とは、GDP(国内総生産)そのものであ る。
 震災等のショックで国民の支出意欲が減退すると、GDPは一時的に縮小方向に向かう。結果、政府の税収は黙っていても減ってしまう。そのため、普 通の国であれば、震災後は国債発行など、GDPに「ショック」を与えない形で復興の原資を調達する。と言うよりも、それ以外の方法で復興資金を調達した ケースなどない。
 もちろん、国債の発行のみでは長期金利の上昇や、円高による輸出企業へのダメージも発生する。当然の話として、日銀の国債買取などを「パッケー ジ」として行わなければならない。散々に繰り返して恐縮だが、日銀が金融市場から国債を買い取るのみならず、国会決議の上で、直接引き受けをしても構わな い。この場合は、長期金利は上昇しないため、円高などの回避が、より容易になる。
 財政法第5条の条文は、以下の通りである。
『第5条 すべて,公債の発行については,日本銀行については,日本銀行にこれを引き受けさせ,また,借入金の借入については,日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し,特別の事由がある場合において,国会の議決を経た金額の範囲内では,この限りではない』
 東日本大震災という国難にが「特別な事由」でなくして、果たして何を持って「特別な事由」と呼ぶのだろうか。甚だしく疑問である。
 さて、実のところ「ショック・ドクトリン」の本命は、財務省が意図している増税ではない。増税同様、インフレ対策の一種である「自由化」あるいは「規制緩和」こそが、ショック・ドクトリンの本命なのである。
 何しろ、ショック・ドクトリンの元祖は、新自由主義の本家たるミルトン・フリードマンである。フリードマンは、新自由主義の本家として「完全なる 自由主義経済」を主張し、ケインズ型の政策を批判した。フリードマンは、1930年代の大恐慌すらも、市場の失敗ではなく、政府の失策が原因だと主張して いるのである。
 具体的な新自由主義の方策として、フリードマンは「あらゆる政府の規制の緩和」や、「徹底的な経済の対外開放(貿易の自由化)」などを主張している。
 無論、フリードマンは上記の政策を現実のものにするためには、困難を伴うことを理解していた。だからこそ、フリードマンは、「真の改革は、危機的な状況によってのみ可能になる」 なる言葉を残したわけである。
 「真」かどうかはともかく、危機的な状況により「改革」が可能になり、実際に実行に移したのが、96年に始まる橋本政権である。橋本政権は、震災 により痛めつけられた日本経済を「強靭にする」というお題目で、金融ビッグバンや消費税アップなど、様々な規制緩和、緊縮財政を実行に移し、日本経済を奈 落の底に突き落とした。
 くどいようだが、筆者は別にフリードマンの新自由主義や構造改革、あるいは財政健全化について、何らかのイデオロギーに基づき、全面的に否定して いるわけでも何でもない。単に、環境によって「正しい政策」と「間違った政策」があると主張しているに過ぎない。フリードマン式の構造改革や、財務省がお 好みの増税なども、実施する上で正しい環境というものは存在する。単に、現在の日本は違うと言いたいだけである。
『2011年4月18日 産経新聞「日本経団連 復興のためにも「TPP早期参加を」」
 日本経団連は18日、東日本大震災後の復興に寄与するためにも、日本は貿易・投資立国の立場を堅持し、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を急ぐべきだとする通商戦略に関する提言をまとめた。
 提言は、TPPに参加しなければ、日本は部品と製品の国際的なサプライチェーン(供給網)構築に後れをとってしまうと警告。菅直人首相らがTPP 参加判断の先送りを示唆しているが、「参加棚上げ論を聞くが、関係省庁から連絡は来ておらず早期参加に向けた政府のスタンスは不変だ」(経団連)と強調し た。
 さらに、TPPはアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構築につながる重要な協定で、日本と参加国との貿易額は日本の貿易額の25%、直接投資残 高は同41%を占めていると指摘。不参加の場合は日本企業の売上高が減り、日本国内の生産拠点を海外に移さざるを得なくなるとした。』
 あまりにも予想通りのタイミングで、予想通りの言説が登場し、筆者は思わず乾いた笑いを漏らしてしまった。「東日本大震災後の復興に寄与するためにも、 TPP」というフレーズの響きはいいが、例により文章の前後の論理関係が不明である。というよりも、「震災復興」と「TPP」は、全く繋がらないと断言で きる。
(2/3に続く)
 そもそも、TPPとは農業や製造業、各種サービス業(金融、投資を含む)、政府調達(公共投資含む)などについて「経済を対外開放」し、競争を激 化させようという政策である。日本の新聞はTPPについて論じるとき、「農業 対 製造業」といった、恐ろしく矮小化した報道姿勢を貫いている。とはい え、現状のTPP規約や進行中の作業部会においては、農業、製造業の他にも、金融、保険、投資、建設、医療、法律など、アメリカが得意とするサービス業の 規制緩和が含まれている。TPPは、農業の問題でもなければ、製造業の問題でもない。両者は現在のTPP作業部会において、それぞれ24分の1の項目を占 めるに過ぎないのだ。
 そもそも、農業の問題に絞っても、TPP導入の弊害は大きい。何しろ、今回の東日本大震災において、大きな被害を受けた東北地区は、 日本の「穀倉地帯」なのである。TPP推進論者は、震災による直接的な被害に加え、福島原発により多大な風評被害を受けている日本の農産業従事者に対し、「TPPでアメリカやオーストラリアの農産業が日本に入ってきます。皆さん、頑張って競争してください」 などと言ってのけているわけである。率直に言えば、神経を疑う。
 そもそも、TPP推進論者は農業と製造業を同一の指標で評価する傾向があるが、両者には一つ、決定的な違いがあることに気がついていない。製造業は場所を選ばず、さらに言えば「国を選ばず」操業することが可能だが、農業はそうはいかないのだ。
 製造業であれば、海外との競争が激化した結果、外国に直接投資を行い、生産ラインを移転することが可能だ。より人件費の低い国に製造現場を移すことで、生産性を高めることができるわけである。現実に、日本の製造業の「空洞化」が、問題視されるようになってから久しい。
 ところが、農業の基盤である「土地」は、外国に持ち出すことはできないのだ。米豪など極端に生産性が高い国々との競争を強いられ、苦境に陥った農業従事者は、最終的には廃業するしかない。
 農業従事者の離職は、国内の雇用環境を悪化させ、ただでさえ落ち込んでいる日本人の給与水準の低下圧力になる。それ以前に、外国産の農産物により 外食産業などの競争が激化すると、これまた失業率の上昇要因、給与水準の低下要因になってしまう。デフレで苦しむ国家が「貿易の自由化」などのお題目で、 国内競争を激化させたところで、問題が悪化するだけの話だ。
 そもそも、日本のマスコミのように農業を一体化して捉える傾向には、問題があるとしか言いようがない。製造業については、家電産業、自動車産業などと区別して論評する傾向が強い割に、農業は全てが「農業」なのである。
 もちろん、農業と言っても、色々とある。
 菅直人首相は、「日本の農業は競争力がある。TPPで世界に打って出て、農業を輸出産業に育てる」 といった発言をしていた。この主旨は間違っていないが、「農業を輸出産業にするためにTPP」といった論旨は意味不明である。何しろ、現在、TPPに参 加している国々、あるいは参加を検討している国々のGDPを合計すると、日米両国で九割を占めてしまうのだ。TPPとは世界でも何でもない。日本にとって のTPPとはアメリカであり、アメリカにとってのTPPとは日本である。
 さらに、農業を十羽一絡げのように捉える認識も、問題だ。なぜならば、国民の安全保障に直結する「穀物」を、他の農産物と同一視する態度は、少なくとも一国の首相としては許されるものではないためである。
 例えば、日本産の美味しい野菜や果物が、アメリカで大流行したとしよう。日本の果物などは味覚的に世界有数であるため、実際にアメリカ人が日本産の果実に殺到する可能性はありうる。
 ところが、ある年に日本が大不作になったとして、日本産の果実の対米輸出が止まったとしても、アメリカ人はさほど困らないのだ。単に「贅沢な日本産」を味わう機会が減るだけの話で、国民の生命に影響が出るわけではない。
 ところが、TPPで日本国民の穀物消費に関する対米依存度が高まり、ある年にアメリカが天候不順で対日輸出を禁止した場合はそうはいかない。
 2010年夏の天候不順により、ロシアが実際に中東・北アフリカ諸国への小麦の輸出を禁止した。結果、チュニジア、エジプトを皮切りに、食料価格高騰に激怒した国民が大暴動を起こし、複数の国で政権が倒れる羽目になった。
(3/3に続く)
 深刻な不作で、自国の需要すら賄えなくなったとき、TPPを締結していようとも、アメリカはロシアと同じことをするだろう。1973年、アメリカ は実際に極度の不作に陥り、大豆を輸出規制した。アメリカ政府は日本国民のために存在しているわけではなく、アメリカ国民のために存在する。自国の需要を 満たすために、他国への輸出を禁止するなど、当たり前すぎるほど当たり前な、アメリカの「国権発動行為」だ。
 現在の日本は、すでにして穀物自給率が極端なまでに低下している。
【図100−1 07年 主要国穀物自給率(単位:%)】出典:農林水産省
 ちなみに、農水省お得意のカロリーベース自給率ではなく、国際指標である生産高ベース自給率で見た場合、実は日本の自給率は70%で、イギリス (40%)よりもはるかに高い。ところが、生産高ベース自給率で日本よりも圧倒的に低いイギリスさえ、穀物自給率だけは92%なのだ。
 人口が五千万人を超える主要先進国の中で、穀物自給率が30%を切っているのは、唯一、日本だけである。
 農業一つとっても、上記のような様々な問題があるにも関わらず、経団連は「東日本大震災後の復興に寄与するためにTPP参加」などとシンプルに言ってのける。怖い話である。
 そもそも、先の経団連のTPP参加促進に関する記事は、問題点が多い。まず、見出しからして意味不明だ。記事を何度読み返しても、なぜ「復興のためにTPP早期参加」なのか、理解不能なのである。貿易も投資も、国際的サプライチェーンも、東北の復興とは特に関係ない。
 さらに、部品と製品の国際的サプライチェーン構築をTPPで実現できるとは、恐れ入る話だ。アメリカ、豪州、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、 シンガポール、ベトナム、ペルー、マレーシアとTPPを結ばないと、国際的なサプライチェーン構築に後れを取ってしまうとは、なかなか斬新的である。「国 際的」という概念も、随分と範囲が狭くなってしまったものだ。
 また、記事中に、「日本と参加国との貿易額は日本の貿易額の25%、直接投資残高は同41%を占めている」 とあるが、そもそも日本の貿易依存度(=貿易額(輸出+輸入)÷名目GDP)は、二割程度である。日本のGDPの二割の貿易の25%を占めている。すなわち、対GDP比で5%の貿易がTPP諸国と絡んでいるというわけだ。
 この5%という数字の大小は、個人の価値観の問題だ。だが、それにしても、いかにも「日本経済はこれだけTPP諸国に依存している」なる論調は頂けない。
 さらに、直接投資残高に触れておくと、日本の対外直接投資残高の31%(09年)は、アメリカだ。アメリカがTPPに参加するのであれば、直接投 資残高のシェアが高まって当たり前である。まさしく「何を言っているのか」という話だ。繰り返すが、TPPとは日本にとってはアメリカに過ぎず、アメリカ にとっては日本に過ぎない。
 そして、記事の最後の部分。
「不参加の場合は日本企業の売上高が減り、日本国内の生産拠点を海外に移さざるを得なくなるとした」
 一体いつから、経団連は「日本国民を富ませる」という本質的な目的を忘れ、政府を「脅す」真似をするようになったのだろうか。しかも、国民が大震災によりショックを受けているところに、追い討ちをかけるように政府に脅しをかけている。
 経団連に限らず、ショック・ドクトリンを目論む様々な勢力と対抗するためには、結局のところ、日本国民一人ひとりが「正しい情報」を読み取る能力を高め るしかない。そして、今回の震災が、日本国民の情報リテラシー(読み取り能力)向上の一助になると、筆者は固く信じている。
本ブログの「TPP」関連記事はこちら。



02. 2011年5月06日 16:31:26: ibwFfuuFfU
答え; 国民が無知でバカだからです。

03. 2011年5月06日 17:51:00: o6F4ff3tkc
東京新聞は冴えているね!↓

【社説】週のはじめに考える なぜいま増税論なのか
(前略)たしかに財政事情は厳しい。いずれ増税が必要としても、まず無駄と非効率をなくす。
消費税を上げるなら、共通番号を導入して本当に免除すべき低所得者には一定額を給付する
「給付付き税額控除」を先行して実施する。そんな環境整備が不可欠です。
社会保障制度の抜本改革も避けて通れません。
つまり増税は大震災のどさくさ紛れに持ち出すような話ではないのです。
当面は子ども手当や高速道路無料化などの予算を見直し、不足分は国債発行で賄う。
国債の市中消化が難しいなら、長期金利の上昇圧力を抑えるために日銀が引き受ける。
あるいは日銀が市中からの買い入れ額を増やしてもいい。…
増税論といい東電賠償案といい、国民不在の議論になっている。
霞が関や金融機関の都合が優先しているのです。
菅政権の足元が弱っているのを霞が関が見透かしているのでしょう。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011042402000019.html
>長期金利の上昇圧力を抑えるために日銀が国債を引き受ける


04. 2011年5月06日 18:25:15: LGUfwnafEI
なんか軍靴の音が聞こえる・・・

「一億玉砕」
「撃ちてしやまん」
「月月火水木金金」
「銃後の戦い」

どこと戦ってるんだ?


05. 2011年5月06日 22:12:27: GhHtBOqgm1
「 増税」反対。

06. 2011年5月07日 08:25:42: uKFoqoJusE
子供手当は税制の抜本改革、この火を消してはならない
ばらまきと言いふらす政治家やエコノミストは税制に無知だ、子供手当はこの逆だ。

ばらまきと言うなら金持ちほど有利になる所得控除を全敗すべきだ。
高額所得者は高額医療費でも実質半値で治療できる。
http://www.asyura2.com/11/senkyo112/msg/474.html


07. 2011年5月07日 18:57:37: TEMSYsqDWQ
"増税" に賛成している人間は自分のまわりでは見かけませんなぁ。


増税大好き大歓迎な馬鹿は役所のヤツか癌チョクトなんでしょ。


08. 2011年5月12日 10:15:55: 1vBYZ1ZXK6
この大惨事に置いても
海外子供手当てバラマキ
日本の子供増えず
海外子供手当て支給者の数出費だけが恐ろしく増える
誰のための子供手当てか?・
税金とは日本人の為のものです
管総理が動いた分
国の崩壊が近くなる気がします

09. 2011年7月27日 21:15:40: WjLp8pkoPg
答え マスコミによる情報操作の結果 アンケート自体イカサマ 終わってます。

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