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卵が値上がりです。納豆が値上がりです、箱入りティッシュも値上がりです。いよいよ諸物価の上昇が目立つようになってきました。これは震災後の一時的な動きではありません。まだ本格的な物価上昇の<助走>が始まったにしか過ぎないのです。
私は一貫して「デフレではない、インフレこそが問題なのだ」と主張してきましたが、今回の諸物価の上昇は、今後収まることはなく、いずれ爆発的な物価高に向かっていくことでしょう。特に注意しなければならないのは、いわゆる必需品、我々が生きていくためにどうしても必要で、何があっても買わなくてはならないものがさらに激しく上昇していくのです。
まだ諸物価が上がってきたと言っても、1割とか2割で穏やかなものですが、やがて毎日のニュースのようにその高騰ぶりが伝えられるようになっていくでしょう。物価上昇は始まったばかりです。震災を契機にしていよいよ水面下でくすぶっていたインフレの炎が燃え出すのです。
現在はあれだけの巨大な震災後ということで過渡期です。ですからいろんな現象が出てきます。評論家でもデフレを言う方も多いですし、インフレの芽が出てきたという方も現れてきました。実際に物の値段を追っていっても様々です。震災後の急激なマインドの冷え込みを受けて、一気に街は活気をなくし、自粛ムードとなっています。ゴールデンウィークの旅行なども低調ですから宿も値段を下げるでしょうし、居酒屋やデパートなども暇で売れなくては、値段を下げなければなりません。いわば震災がデフレを助長した形です。
このような動きは今後も続きますし、ご商売をされている方にとっては、この消費者のマインドの冷え込みは痛く、売上が思うように伸びず、とてもインフレ、好景気という気分ではないでしょう。
それはその通りでこのような経済の落ち込みはちょっとやそっとでは回復しません。例えば阪神大震災の時は震災後、1ヵ月で消費は大幅にダウンしました。その後2ヵ月目には回復基調に入ってきたのですが、やはり震災の痛手は大きく、震災前の水準に達するには1年以上かかったのです。今回は震災の規模も桁違いですし、原発の問題もありますから、余計に回復には時間がかかると思わなければなりません。そういう意味では相変わらずデフレ状態が続くのか? と思ってしまいますが、この自粛ムードが続いて、不景気感が続くのは疑いないでしょう。
【それでも、激しいインフレは来る】
普通、経済学ではこのような不景気ムードではインフレは来ないのですが、今回は違います。それでも激しいインフレがくるのです。宴会を開いたり、高級品の購入はしないかもしれませんが、自分自身が購買するものを考えてみてください。
必要なものは何ですか? まずは食料、ガソリンなどのエネルギー、衣料、などです。衣食ですね。そして被災した東北の人達はこの衣食に加えて住、住むところがいります。まさに衣食住です。これらはどんなに不景気だろうが、社会が混乱しようが、必要不可欠の物であり、何が何でも手当てしなければならないものです。
とりあえず、今回被災された方々のために政府は仮設住宅の建設を急いでいます。ところが資材が手に入りません。建設に使う合板や塗料、接着材などは大量に不足しています。当然値段は上がってきています。それでも手当てしなければなりません。また上下水管などに使う塩化ビニールも不足です。合板ではナンバー1の生産量を誇るセイホクなど主要メーカーが被災、全国の生産量の3割が休止状態です。同じく塩化ビニールでは国内最大の生産設備を誇る信越化学の鹿島臨海コンビナートの施設が止まったままなのです。品不足ですから当然、値段は上がってくるわけで、そうなると遠方からも手当てするようになります。当然、運送費もかさみます。結果としてガソリンの値上がりが効いてくるのです。
トヨタは4月18日にやっと工場での生産を再開したものの、まだ多数の部品の手当てがつかず、フル生産にはほど遠い状態です。11−12月までは手探り状態で、現在から当分の間は5割の操業ということです。これでは新車も手に入りません。車の販売店はお客様から注文をいただいてもいつ納入になるのかわからず、頭を抱えている状態です。他の自動車メーカーも似たようなものです。
今、被災者の方々に一番売れているのは軽の中古車ということです。とにかく動くには車がいるし、いつも避難所の生活ではプライバシーもありません。自分達だけの空間が欲しいわけです。宮城県では県内の車の保有台数の1割にあたる15万台が津波で流されてしまったということです。福島県や岩手県の被害も大きく、合わせると大変な車の喪失となっています。これら被災された方々はすぐにでも車が欲しいところです。当然、中古車の相場はうなぎ登り、そこに持ってきてトヨタだけでなく、日本の主要メーカーは新車を供給できない状態ですからどうなりますか? 新車が供給できなければ当然、玉突き的に中古車は不足となります。被災地では中古車の値段は、今や震災前の1.6倍に急騰、さらに奪い合いになっているということなのです。
しかし、実はこれらはまだ、かわいいものかもしれません。というのも車にしても合板にしても塩化ビニールにしても、現在工場を必死で直していますから、いずれどこかの地点で復旧が終わり、供給に目途がついてくることでしょう。そうなれば値段は下がってくるかもしれません。
ところが値段が下がらない物があるのです。今見てきたように、値段が上がるということは需要に対して供給が少ない状態になることです。現在の東北地方の中古車の需給状況のようなものです。これはトヨタの生産が回復すれば需要に対して供給が見合うようになっていくかもしれません。そうなれば値段は下がりますよね。今度は逆に考えて、仮に供給が完全な途絶、ないしは供給がますます難しくなるとすればどうですか? そうなれば当然、物がないわけですから値段は上がる一方となっていくわけです。今の中古車の例ですと車の供給がますます途絶えてくるケースと思えばいいでしょう。
【迫りくる、食料など生活必需品の物価高】
このように供給に途絶が訪れて値段は急騰するケースが迫っているものがあるのです。それこそが、我々がまさに必要不可欠としている食料なのです。トヨタは部品が手当てできて工場生産を回復させれば、以前の状態に戻ることができるでしょう。しかし現在、壊滅状態となった三陸の漁業はいつになったら元に戻りますか? 津波で壊滅的な被害を受け、塩水だけでなく、がれきの山となった水田や畑は? これらの農業生産が1、2年で元に戻ると思いますか? 灌漑設備が破壊され排水やポンプ、液状化など、一体復旧にどれだけの時間と費用がかかるのか? その上、原発による被害、この震災で被害を受けた東日本6県でコメの生産量は、全国の4分の1を占めるのです。漁業も壊滅、三陸は日本でも屈指の漁場だったわけですが、今回は船だけでなく冷蔵庫や冷凍設備や燃料タンク、造船のドッグ、製氷機など、どうしても必要な設備が全滅状態です。それこそこれも1、2年で完全復旧ができると思いますか? その上、原発による海の汚染です。
三陸の漁業の全国生産におけるシェアを見てみると、ワカメは8割、牡蠣は3割、サンマは4割、サバも4割、サメは6割です。一方、今回水没したり、がれきに埋まって被害を受けた農地は岩手、宮城など6県でおよそ2万4000ヘクタール、これは東京都内の山手線内の面積の約4倍に匹敵する広さです。
一般的に農水産物の場合、平常時では1割供給が減ると3割値段が上がり、3割供給が減ると倍に値段が跳ねると言われています。今回は、これらの品だけでなく、複合的に品不足状態が訪れると思いますから、とても倍ぐらいの高騰ではすまないかもしれません。
突貫工事で復旧を目指しているトヨタの工場とは違います。簡単には回復できないのです。その上、原発の影響で、今後農漁業には放射能汚染のどんな規制が出てくるかもしれません。まさにこれから日本では食の危機が迫ってくるのです。考えてください。例年と違って、本来あるべきこれらの農作物や魚の供給が止まるのは秋からですよ! 本当の意味での供給の途絶、値段急騰の危機はこれからです。
日銀は、今後出てくる日本企業の予想以上の決算の下方修正をみて、更なる金融緩和に動くかもしれません。そしてこの非常時、そのようなマネーをばら撒く景気対策が世間では歓迎されるかもしれません。しかし、今や世界は、異常なマネー供給の副作用として、インフレの高まりに苦しみ始めています。やがて諸外国と同じように、日本ではもっと激しく、一気に円安と共にインフレが、大きく頭をもたげてくることでしょう。日本だけが違った世界、一人ぼっちでデフレの世界に住み続けると思いますか? 日本は食料自給率4割、食料のほとんどを輸入しているのです。そして今、世界を苦しめているのはこの食料品の高騰なのです。エジプトやチュニジア、リビアや他の中東各国の混乱も食料高騰が原因です。中国のインフレもしかり、世界中が食料の値段を抑えようと必死です。
今後の日本を考えてください! コメはどうなります? 魚はどうなります? パンや麺の原料の小麦はほぼ100%輸入ですよ。どうして世界的な食料高から逃れることができるのですか! これからではないですか! 国内の有数のコメどころが壊滅、同じく最高の漁場が壊滅、一体どうやって食料を確保するのですか?
今や風評被害もさらに激しくなってきているのです。穀物や鉄鉱石や石炭などの輸送はバルク船と言って包装しないまま、そのままにして運ぶことが多いのです。ところが現在、外国からの船は日本の近海や東京に近づくのを放射能を浴びるということで嫌ってきているのです。確かに福島原発からの放射能の関東各地に降り注いでいますから、多少の放射能汚染は受けるでしょう。しかし、それを理由にして東京湾への寄港を渋ったり、関西方面に回されてしまうということです。このため東京湾に寄港してもらうには1割程度の割り増し料金を払う必要があるというのです。
円安と相まってこの状況、また日本が大量の食料を輸入している中国では物価高は収まらず、特に食料は高騰中です。中国の通貨、元の相場は上昇気配です。当然、日本の輸入価格は上がります。
また統計を見ると、3月の日本の輸入物価は19%上昇、16ヵ月連続の上昇です。この16ヵ月間は円高だったのに、輸入物価は上昇していたのです!
4月に日本政府は、製粉会社に対しての小麦の引き渡し価格を18%引き上げました。これを受けて大手製粉会社は6月から小麦粉の価格を1割以上値上げします。いよいよパンや麺も値上げが始まります。小麦の国際価格は昨年の1ブッシェル4ドル台から倍の8ドル台後半へと上昇しています。まさに6月に値上げされても第一弾にしか過ぎません。この小麦の値上がりよりもっと激しいのがトウモロコシで、昨年の1ブッシェル3.5ドルから7.7ドルへと高騰です。もはや8ドル台乗せは必至とみられてきました。小麦の過去5年間の相場は平均して、トウモロコシに比べて49%ほど高かったのですが、ゴールドマン・サックスの予想によれば、両者の価格は逆転する可能性が高いとのことです。そうなれば影響を受けるのはどこの国か? トウモロコシの世界最大の輸入国は日本です。トウモロコシは飼料用として膨大な需要があります。牛肉や豚肉、鶏肉などへの値上がりは必至でしょう。一方、原料である綿花の高騰を受けてポロシャツなど繊維製品が米国では値上げが始まりました。このように我々の必需品である食料や衣料、エネルギーは値段が上昇する一方なのです。
驚くような物価高が迫ってきています。東日本震災が一夜で世の中が変えたように、ある日、日本の風景は急激な変化を見せるでしょう。驚くほどの物価の高騰に人々は声を失うことになるでしょう。被災地の困難を思うと胸が痛みます。しかしインフレという大波が今度は日本全土を包み、あらゆる人達を襲ってくるのです。
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