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ほんとに経済学者?
金融資産課税で預金引き出しや国債売却が行われたら、結局、日銀引き受けしなければならなくなる
大企業の内部留保のかなりの割合は既に、内外の資本財に変わっているが、それを売れっていうのか?
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20110426/219663/?ST=print
日経ビジネス オンライントップ>投資・金融>復興への道
復興の財源はストックにあり
日本大学 円居総一教授に聞く
2011年4月28日 木曜日
激震と津波に加えて、人災とも言える原発危機の発生は、出口が見えない未曾有の複合危機の様相を呈している。原発危機は、経済、社会の前提となる生命、安全を脅かす。さらに、原発危機がもたらす様々な不確実性の拡大が、経済の損失と落ち込みを助長する。その影響の規模を現段階で試算しても意味はない。
今、求められるのは、以下の二つだ。第1に、影響の最小化をどう図り、経済復興をどう進めるべきか。第2に、原発危機が明らかにしたエネルギー政策や組織ガバナンスの欠陥など経済・社会システム上の改革をどう進め、社会の再生と新たな持続的成長パスへの移行をどう図っていくか。ここでは、復興の政策課題に絞って考えてみたい
被害額の多寡よりも「不確実性」の波及が問題
まず被害の状況について見る。原発危機は継続中であり、その全貌はつかみ得ない。大災害の損失は、被災地の家屋や事業所、設備などのハードの損失を直接被害、経済活動というフローの面での損失を間接被害として捉える。OECDや内外の金融機関の当初の推計では、総計で概ね25兆円前後であった。これら推計は、自動車部品の問題で広く知られるようになったサプライ・チェーンの問題など、他の地域の経済活動への影響や電力制約の影響などは含んでいない。
こうした直接の被害だけでも、最大級の惨事だが、出口の見えない原発危機の発生は、経済活動にとって致命的な不確実性の拡大をもたらし、経済的損失を拡大している。不確実性は、一定の計算や推測が可能なリスクとは異なり、予測が覚束ないものだ。電力制約への不確実性のみならず、先行きへの不安は、復興需要への期待を全般的に削いで、企業の生産や設備投資の抑制、消費の委縮など、自己防衛行動と経済の委縮を広く進めてしまう。日銀が直近に発表した企業短期経済観測調査(短観)や同支店長会議報告でも、落ち込みの波及が確認されるところだ。
IMFは損失を50兆円規模に修正したが、焦点は規模そのものにあるのではない。原発危機のような致命的不確実性が伴わなければ、災害は一方的な需要の喪失を招くものではない。その規模に匹敵する復興需要を生むから、波及効果も含めて、かえって経済の成長を高めることにもなる。災害後の展開は通常そうなる。
だが、経済は調和的に動いて行くのではなく、先行き期待により、上にも下にも自己実現的に増幅していくものだ。例えば、復興需要が期待されるにもかかわらず、投資家は建設株に投資していない。これに象徴されるように、復興期待の前に、不確実性の広がりが、足元の落ち込みを拡大させているのが現状だ。不確実性が長期化すれば、復興以前に経済が再びデフレ・サイクルに陥りかねない。今は、その分水嶺にあると見なすことができるだろう。
母体となる経済が落ち込みサイクルに入ってしまっては、復興自体も厳しくなろう。復興に向けては、まず不確実性の拡大と、その経済活動への波及を最小化していくことが急務であり、必要不可欠だ。その優先課題は、電力供給の不確実性の改善に向けた電力の確保と、被災地域の部品製造ラインの復旧を核とするサプライ・チェーンの建て直しだ。ともに経済を落ち込ませる波及効果が大きいからだ。
遺産や金融資産課税に目を向けよ
経済の維持を図りつつ、被災地自体の生活基盤、社会インフラの復旧を同時に急ぐ必要がある。その際、大事なことは、復興プランの論議にも増して、経済の拡大均衡につながる資金を早急に投入することだ。
財源について見よう。国家財政は火の車だ。累積債務に加え、年度予算の4割半ばを赤字国債で賄っている。これ以上、赤字は増やせないから、政策予算の一部組み換えに加えて増税が必要だ、となるのが一般的だ。消費税の特別引き上げ論議などはその典型だ。
確かに、赤字を膨らませないで資金を手当てするには、増税か、日銀の国債引き受けによる通貨の増発しかない。しかし、問題は、それを今の経済活動の流れ(フロー)の中で考えていることにある。細かな議論は差し置くとして、今のフローの枠内で増税し、それを財源に支出することは、右のポケットから左のポケットにお金を移すことと大差ない。それでは、拡大均衡にはつながり難い。
拡大への投資は、他からの借金で賄うのが基本だ。他とは何か? ストックとしてある貯蓄である。特別会計の剰余金(いわゆる霞が関埋蔵金)の発掘や、一昨年度予算の決算剰余金の前倒し活用などが、この発想に入る。それでも賄いきれなければ、ストックとしての資産課税で調達することだ。相続税の一部引き上げや0.5%前後の金融資産課税などがその際の選択肢だろう。これらを、例えば、東日本大震災支援のための3年間の時限措置として実行すれば、消費税や所得税の増税より、はるかに効果的で強い説得性を持って社会を説得できるだろう。消費税や所得税の増税は消費を縮ませ、経済を縮小させかねない。
内部留保の取り崩しを促せ
日銀による国債引き受けは可能な限り避けるべきだろう。中央銀行と通貨の基本的信頼性に関わってくる。それに換えて、民間金融機関が保有する国債を買い切る「買いオペ」をさらに拡大することだ。その資金の円滑な還流を促すために、金融監督庁が現実的な臨時対応−−被災地域で営業する銀行に対して資本を注入したり、復興関連融資への規制の一部を緩和したりする――を図るなどすれば、日銀引き受けと同等の効果が期待できよう。
一方、企業部門は、ストックとして約260兆円に上る内部留保を有している。これに対しては、復興関連投資を対象に投資減税を導入し、取り崩しを促すのが効果的だろう。
要は、フローの枠内でだけ考えて、財政赤字の縛りにとらわれて財源論議の小田原評定を重ねる時間はない。調達先を見誤っては、復興どころか、経済をさらに萎縮させかねないということだ。適切な財源の目途をつけ、直ちに、復旧を促進することが肝要だ。
このコラムについて
復興への道
東日本大震災は日本の経済、産業、社会、そして人々の心に大きな爪痕を残した。復興の道のりは果てしなく長く、国民の英知を結集して辛抱強く取り組む必要がある。未曾有の大災害から立ち上がるための方策とは何か。各専門分野から「復興への道」を提言、提示する。
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著者プロフィール
円居 総一(えんきょ・そういち)
日本大学教授。
1948年生まれ。1973年大阪外国語大学卒業。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス博士課程修了。経済学博士。
東京銀行、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て1997年より現職
<主な著書>『米国の経済』(共著、早稲田大学出版会)。『国際収支の経済学』(編・共著、有斐閣)。
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