03. 2011年4月25日 17:05:31: cqRnZH2CUM
日銀会合は現状維持へ、6、7月追加緩和説増加−物価は上方修正に(1 4月25日(ブルームバーグ):日本銀行が28日開く金融政策決定会合は、有力日銀ウオッチャー14人の大方が現状維持を予想する一方で、6、7月会合での追加緩和を予想する向きが増えている。日銀が経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示す見通しは、11年度の実質国内総生産(GDP)成長率は下方修正、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比は上方修正されるとの見方が強い。 モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミストは「日銀の描く緩やかな成長軌道への復帰という中期シナリオは東日本震災により後ずれするものの、大筋でシナリオ変更の必要はないと日銀はみているようだ」という。ただ、「原発事故も含め情勢は依然流動的、かつ震災後の経済指標が限られることもあり、今回の予測は不確実性の高い予測になるとの注釈が付けられるだろう」とみる。 SMBC日興証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「成長率は11年度を1.0%近辺に下方修正し、その代わり12年度は2%台半ば近くに上方修正しよう。コアCPIは資源高の影響が徐々に波及する形で11年度は1月予想を若干上方修正する」とみる。 日銀は4月7日の前回会合で、東日本大震災の被災地の金融機関を対象に、復旧・復興に向けた資金需要への初期対応を支援するため、期間1年、金利0.1%、総額1兆円の「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション」を検討すると発表した。今会合ではその詳細を決定する。金融政策運営については現状維持の予想が大半だが、追加緩和を予想する声も少数だがある。 国債買い入れ上積みで何らかの決定も シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは「供給ショックが付随的な負の需要ショックを生むことを回避し、長期資金供給を強化し金融市場のさらなる安定化を図る」ため、現在月1.8兆円の国債買い入れ増額を見込む。資産買い入れ等基金については「各資産の買い入れ残高は3月に増額された枠をかなり下回っており、再増額してもアナウンスメント効果以上のものは期待できない」と否定的だ。 日銀は先月14日の会合で社債などリスク資産を中心に資産買い入れ等基金を5兆円程度増額することを決定した。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストも、今会合で「国債買い入れ額の上積みで何らかの決定があり得る」とみる。 もっとも、多くのエコノミストは、金融政策運営は現状維持との見方で一致する。岩下氏は「先行きの不確実性は大きく下振れ懸念はあっても、新たな決め手に欠ける。市場は今のところ落ち着きを取り戻しつつある。白川方明総裁が7日の会見で述べたように、金融緩和で供給制約を解消することはできず、追加緩和の緊急性はないと判断することになるだろう」とみている。 国債引き受けには反対の声 しかし、例え今会合は現状維持でも、日銀は今後2、3カ月のうちに追加緩和を行うとの見方が徐々に増えている。上野氏は「第2次補正予算が国会に提出されるとみられる6、7月までには、日銀は何らかの追加緩和を打ち出している可能性が高い」という。モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤氏も、2次補正予算前の6、7月ころまでに基金による国債買い入れ増額の可能性があるとみている。 次の一手としては、資産買い入れ等基金の増額を挙げる声が多い一方で、一部の政治家が主張する日銀の国債引き受けには否定的な声が強い。信州大学の真壁昭夫経済学部教授は「仮にそうしたことが実施されれば、わが国の財政法で規定された枠組みがもはや機能しないと市場が認識することにもなりかねない。そうなると、結果的に市場の信認を失い、悪い金利上昇が始まることも考えられる」という。 BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストも「たかだかGDPの2、3%程度の国債購入であればインフレにはつながらないと考えられるかもしれない。しかし、いったん日銀の国債引き受けが始まれば、復興国債だけでは済まなくなるはずだ。危機時の異例の政策がいつの間にか恒常的な政策となるというのが歴史の常だ」という。 増額繰り返せば引き受けと同じに さらに、「マネタイゼーションが続けられれば、その帰結は高率のインフレであり、長期金利上昇による財政危機だ。高水準の公的債務を抱える日本は、1、2ポイントの政府の資本コスト上昇が財政破綻をもたらす。危機から脱却するための政策のつもりが、新たな危機(財政危機)につながることは避けなければならない」と語る。 国債引き受けではなく、月1.8兆円の長期国債の買い入れ増額や資産買い入れ等基金による国債買い入れ増額であれば悪影響は少ない、との声も少なくない。しかし、JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「国債買い入れの増額の場合は、小幅の増額であれば市場が大きく反応する可能性は低いが、今後増額を繰り返すと、国債引き受けと同様の結果になるだろう」としている。============================================================◎見通しは次の通り(対前年度比、%。は見通しの中央値) 【エコノミストの大勢見通し】 【2011年度】 -0.6〜+1.2 +0.2〜+0.9 1月時点の見通し +1.4〜+1.7 0.0〜+0.4 【2012年度】 +1.8〜+3.7 0.0〜+0.7 1月時点の見通し +1.9〜+2.2 +0.2〜+0.8 【エコノミストの全員の見通し】 実質GDP コアCPI 【2011年度】 -1.2〜+1.2 -0.2〜+1.1 1月時点の見通し +1.4〜+1.8 -0.1〜+0.4 【2012年度】 +1.7〜+3.7 -0.5〜+0.7 1月時点の見通し +1.8〜+2.4 0.0〜+0.8 (注1)見通しはエコノミスト自身の予想、1月時点の見通しは日銀(注2)「大勢見通し」は見通しから上下1個ずつ除いたもの=============================================================◎利上げ予想時期は次の通り(敬称略)【2012年7−9月】信州大学真壁昭夫教授【2012年10−12月】クレディスイス証券の白川浩道チーフエコノミスト(0.0−0.1%から0.1%へ)【2013年1−3月】SMBC日興証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト【2013年4−6月以降】みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト、東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト、JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト、第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト、モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミスト、東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト、野村証券松沢中チーフストラテジスト(0.0−0.1%から0.1%へ)、シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト、バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト【2014年以降】三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジスト、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト=============================================================無担保コール翌日物金利の予想は以下の通り(敬称略50音順) 11 11 11 12 12 12 12 13 6末 9末 12末 3末 6末 9末 12末 3末 ------------------------------------------------------------- 調査機関 14 14 14 14 14 14 14 14 中央値 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 最高 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25 0.25 0.30 最低 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 ------------------------------------------------------------- 三菱UFJ・MS 石井 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 SMBC日興証 岩下 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.30 みずほ証 上野 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 東短リサーチ 加藤 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 JPモルガン証 菅野 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 第一生命経研 熊野 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 BNPパリバ証 河野 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 モルガン・スタンレーMUFG 佐藤 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 東海東京証券 佐野 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 クレディS証 白川 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10*0.10*0.10 信州大 真壁 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25 0.25 0.25 野村証 松沢 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 シティG証 村嶋 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 バークレイズC証 森田 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 (注)無担保コール翌日物金利の予想の0.10%は政策金利「0.0−0.1%」の現状維持を意味します。白川氏は12年10−12月に「0.1%前後」へ引き上げを予想。アンケート回答期限は22日午前8時。「日銀サーベイ」金利予想、経済・物価情勢、金融政策の展望コメントを25日朝に送信しました。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 Masahiro Hidaka mhidaka@bloomberg.net 更新日時: 2011/04/25 13:25 JST |