http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/579.html
Tweet |
Bloomberg Businessweek 米金融規制改革が大手金融機関による寡占化を促進?
2011年4月22日 金曜日
Karen Weise(Bloomberg Businessweek記者)
米国時間2011年4月7日更新「Banks 'Too Big to Fail' Could Get Bigger」
「大きすぎて潰せない」金融機関が存在する−−こんな危険な状態から脱却しなければならない。これは、米議会が金融規制改革法案を審議するに当たっての最重要課題だった。米国は、巨大金融機関が金融システム全体を危機に陥れないよう、公的資金を投じて金融機関を救済した。こんな事態の再発を許してはならない。
金融規制改革法(ドッド・フランク法)が成立した2010年7月当時、大手金融機関10社の総資産額は全金融機関の4分の3を占めていた。この割合は2006年の68%と比べて上昇していた。その要因は経営難に陥った金融機関を、大手が救済合併していたからだ。米ハーバード大学経営大学院のデービッド・A・モス教授は「金融システム全体に影響を及ぼす巨大金融機関の存在は、金融危機を招いた重大要因だった」と指摘する。
このため、米金融監督当局がドッド・フランク法の詳細な施行規則を定めるに当たって、巨大金融機関の支配力を強化するような規則を導入したことは大きな驚きである。例えば、米連邦準備理事会(FRB)は、不動産ローン会社の契約手数料を制限する新規則を発表した。不動産ローン会社が、住宅購入者を高リスクの不動産ローン契約に誘わないようにするためだ。この新規則により、不動産ローン市場で大手金融機関の支配力が強まる可能性がある。
サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)が広まり住宅バブルが起きたころ、住宅ローン仲介業者は十分な返済能力のない消費者にもリスクの高いローン契約を売り込み、手数料収入を荒稼ぎしていた。より低利のローンを受けられる資格がある借り手にも、負担が大きいローンを売り込むことが多かった。
現在の規則は、ローンの利率に連動した手数料報酬を出すことを禁じている。いい加減な住宅ローン仲介業者から利用者を保護する規制は必要なことである。ただし、住宅ローン仲介業者は、様々な融資業者が提供する住宅ローンの中から、借り手が適切なものを選ぶ際の力添えになる。消費者の利益にもなっているのだ。
FRBの新規則は大手金融機関に有利
FRBによる新規則はこうした仲介業者に壊滅的な打撃を与える。証券ブローカーと同様、ローン仲介業者の報酬は、取引の出来高に大きく左右される。米住宅ローン専門紙インサイド・モーゲージ・ファイナンスの発行人ガイ・セカラ氏は「住宅ローン仲介業者は、リテール業務を展開する大手銀行との競争に敗れ、淘汰されてきている。大手行は支店網と給与報酬で働く従業員の営業力で、他社を圧倒できる」と指摘する。
6つの関係政府機関が3月末に発表した新規則も、大手金融機関に有利に働く規制だ。この新規則は、住宅ローン担保証券(MBS)を発行する金融機関に対し、発行証券の5%を継続して保有することを義務づける。新規則の狙いは、リスク資産を金融機関に保有させることで、怪しげな融資を防止することだ。厳しい審査をしたうえで信用を供与した住宅購入者――クレジットスコア(信用度を点数化した評価)が高く、最低2割以上を頭金で支払っている人など――への融資は、この規制の適用対象外となる。
米業界団体「独立系地域金融機関連合会(ICBA)」のカレン・M・トーマス政府関係・公共政策担当副専務理事は、この規制について「大手金融機関は規則通りにリスク資産を抱える余裕があるが、地域金融機関は財務余力が乏しく、必要となる追加の資金調達も難しい」と批判する。
2010年、米国の住宅ローン全体の4分の1を融資した米銀大手ウェルズ・ファーゴ(WFC)は、さらに厳しい規制を求めてロビー活動を展開。「規制の適用対象外にするのは、3割を頭金で支払った借り手へのローンのみに限定すべきだ」と主張した。セカラ氏は「ウェルズ・ファーゴは規模が大きく、豊富な資金力を持っていることが競争上有利に働くとみている」と語る。
大手を厳しく監督する仕組みが導入されるかは不透明
デリバティブ(金融派生商品)の規制でも、中小金融機関より大手金融機関が有利になる。デリバティブ市場は既に寡占化が進んでいる。商業銀行によるデリバティブ取引の96%は大手5社が取り扱っている。
米商品先物取引委員会(CFTC)で高官を務めた、米メリーランド大学法科大学院のマイケル・グリーンバーガー教授は「大手金融機関は、ドッド・フランク法施行後の市場を支配しようと、あらゆる手立てを使っている」と語る。ドッド・フランク法は、市場に参加するプレイヤーに担保を供出することや、大半のデリバティブ取引を取引所経由で実施することを義務づけている。
金融監督当局が、大手金融機関による取引所支配を防止する対策を取るかどうかは定かではない。2010年秋、CFTCは主要金融機関が取引所の5%まで支配することを認めるルール案を示した。米司法省は「上限規制を設けなければ、大手事業者が取引所を支配し、中小事業者が締め出されるリスクを十分に抑えられない」と問題を提起した。
ハーバード大のモス教授は「大手金融機関が市場を支配する事態を防止するため、金融監督当局が極端に厳しく取り締まれば、大手金融機関に有利に働くルールがあっても問題ないかもしれない」と語る。だが、どのようなルールになるかは依然として不透明な状態だ。
ドッド・フランク法は「大きすぎて潰せない」巨大金融機関の問題に対処することを目指して制定された。だが、むしろ、同法が大手金融機関を肥大化させているが懸念されている。
© 2011 Bloomberg L.P. All Rights Reserved
■BusinessweekのRSSフィード
「すべて」の記事はこちら
「グローバル(アジアと欧州を含む)」こちら
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110420/219528/?ST=print
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。