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http://www.afpbb.com/article/economy/2796259/7107735
【4月19日 AFP】米格付け機関スタンダード&プアーズ(Standard and Poor's、S&P)が史上初めて米国債の長期格付け見通しを引き下げた。このことは、米国が債務不履行に陥る危険性があることを示唆しており、専門家たちは、この警告自体が米国や世界に劇的な変化を及ぼす可能性があると指摘する。
長期格付け業界で「AAA」は最高の信頼の証。AAAと格付けされた国や企業は、極めて低コストで資金を調達できる。逆にAAAの格付けがなければ低コストな資金調達はできない。
それゆえに、スタンダード&プアーズが18日に、米国の長期格付けが2年以内に3分の1の確率で引き下げられる可能性があると警告したことは大きな衝撃を持って受け止められた。
この発表について投資会社Meeschaert Capital Marketsのグレゴリー・ボロキン(Gregory Volokhin)氏は「炭鉱のガス爆発のようだった」と表現した。
影響は即座に株式市場や債券市場、為替市場にあらわれた。だが、最も大きな影響は、これまであり得ないと考えられていた「米国債の格付け引き下げ」が、実はかなりの確率であり得ることだと、認識されたことだろう。
■ドルの「途方もない特権」喪失か
S&Pの警告が大きな衝撃をもたらしたのだとすれば、それは実際に米国債引き下げが起きたときの衝撃が大きいとされているからだ。
米国みずほ証券(Mizuho Securities US)のチーフエコノミスト、スティーブン・リッチウト(Steven Ricchiuto)氏は「準備通貨としてのドルの価値が非常に深刻に損なわれることになる」と語る。
かつて「途方もない特権」などと呼ばれたドルの準備通貨としての価値は、コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)が2009年に発表した報告書によると、米国に年400億〜700億ドル(3兆3000億〜5兆8000億円)ほどの利益をもたらしている。
米国資産が外国の投資家から魅力的だったのは、安定していて、常に需要がある米ドルで価格がついていたからだ。このことによって米国の政府、家計、企業は低コストな資金調達が可能だった。
仏投資銀行ナティクシス(Natixis)のエコノミスト、Inna Mufteeva氏によると、米国の家計にとって米国債の格下げは住宅ローン金利の上昇をもたらし、すでに悪化している住宅市場にさらに打撃を及ぼす。一方、企業にとっては、「資金調達コストが増え、生産的投資の妨げになる」という。
また、米国と、米国債の主要債権国である中国や日本、欧州との関係も変化するだろう。AAA格付けを失うことで、米政府の資金調達コストが大幅に上がり、米国の財政赤字削減はより困難になる。
「アイルランドやポルトガルで起きたことをみればわかる」と、リッチウト氏は語る。2009年、アイルランドは財政赤字が膨らむ中、国債のAAA格付けを失った。結果、資金調達コストは2倍に跳ね上がった。
■米国の政治は行動できるか
アイルランドと同じことが米国に起きるかもしれない、とS&Pが警告したことを受けて、米政府が行動を起こすだろうと期待する人もいる。
だが、民主・共和両党が2012年大統領選挙に備える中では、両党が歩み寄る可能性はあまり高いとはいえない。
「両党は、自分たちの政策の正しさを示すものとしてこの『警告』を活用するだろう」と、野村証券(Nomura Securities)の雨宮愛知(Aichi Amemiya)氏とデビッド・レスラー(David Resler)氏は顧客に説明している。
米国債が発行限度額上限に達しつつある中、共和党は、上限引き上げを行う前に、まずは大幅な財政削減をするべきだと主張してきた。そして、今回のS&Pの警告も、その主張を裏付けるものだと述べている。
S&Pは発行限度額については触れていないが、7月までに限度額引き上げが議会で承認されなければ、米政府はデフォルト(債務不履行)に追い込まれる。
一方、ホワイトハウスはS&Pの警告を、早朝に鳴り響く目覚まし時計のアラームというよりも、付箋紙にかきつけたメモというふうに受け取っているようだ。ジェイ・カーニー(Jay Carney)米大統領報道官は「財政改革で両党が合意しなければならないことを思い出させるものだった」とだけ述べた。(c)AFP/Andrew Beatty
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