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日本と米国の状況は、似てくるね
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財政タカ派が繰り出した異例の財政改革案 財政再建重視派にアピールする一方、高齢者の支持を失う可能性
2011年4月18日 月曜日
Bloomberg Businessweek
財政再建 オバマ大統領 医療費 ポール・ライアン メディケア 医療保険 メディケイド 予算 政治・経済
Heidi Przybyla(Bloomberg News記者)
Drew Armstrong(Bloomberg News記者)
米国時間2011年4月6日更新「 The Audacity of Paul Ryan 」
米下院予算委員会のポール・ライアン委員長(41歳)は4月5日、自らの政治理念を貫き、政治家として異例の行動に出た。共和党の次代を担うスターで、財政タカ派(財政再建重視派)の同委員長は、10カ年の財政再建計画を発表。ワシントンの政界に衝撃を与えた。
ライアン委員長が提唱する改革案の骨子は次の四つだ。(1)政府規模の縮小、(2)メディケア(高齢者向け公的医療保険)の民営化、(3)連邦政府の補助金支給により、メディケイド(低所得者向け公的医療保険)の運営主体を州政府に移管、(4)法人税と個人所得税の最高税率を25%に引き下げ。
ライアン委員長の案は、連邦政府の歳出を今後10年間で6兆ドル(約510兆円)削減する。同委員長は、増税することなく財政赤字を圧縮する考えだ。財政赤字を現在のGDP(国内総生産)比9%から、2022年にはGDP比2%まで圧縮する意向を示している。
この計画の問題点を上げるとすれば、極めて楽観的な見通しを前提としていることだ。例えば、2021年までに失業率が2.8%程度に下がると想定している。また、食料品購入券(フードスタンプ)や教育、交通整備などの予算削減は、民主党にとって政治的に受け入れがたい政策だ。しかも、この共和党の財政再建案では、これだけ大幅に予算を削減しても、2040年まで均衡を達成できない。その大きな要因は減税の実施だ。
多くの政治家が避けてきたメディケア改革を提唱
ライアン委員長の財政再建案を巡り、ワシントンで激しい論争が巻き起こっている。ワシントンでは、今後半年間の政府予算に関する合意が4月9日までに成立しなければ、連邦政府機関が閉鎖される懸念が高まっていた(注:期限ぎりぎりで合意が成立し、政府閉鎖は回避された)。しかし、ライアン委員長の改革案の方がはるかに大きな注目を集めている印象がある。
ライアン委員長の案で最も予想外だったのは、メディケア改革だと言えるかもしれない。連邦財政赤字を拡大させている最大の要因は年間事業費5000億ドル(約42兆円)のメディケアである。同委員長はこれを、2022年からバウチャー(サービス利用券)制度のような民間主体の制度に転換する、と提案している。
ライアン委員長がこの案を発表する1週間前、計画作成に携わった外部の専門家らは、メディケアが改革案に盛り込まれるかどうかは定かではないと語っていた。メディケアは社会保障年金と並ぶ社会セーフティーネットの根幹で、これまで政治家はメディケア予算に手をつけることを避けてきた。バラク・オバマ米大統領も2012年予算案において、メディケアを聖域扱いにしていた。
ライアン委員長の“賭け”にほくそ笑む民主党
民主党は、こうした共和党の動きにほくそ笑んでいる。ライアン委員長の改革案を争点にすれば、来年の大統領選挙を有利に戦えると考えているからだ。民主党幹部らは、少なくとも政治的な観点からは、ライアン委員長の改革案はジョージ・W・ブッシュ前大統領が2005年に試みて失敗した社会保障個人勘定制度の二の舞いになると見ている。民主党はブッシュ政権の試みを批判して高齢者の支持を獲得し、2006年に米議会において多数党の地位を取り戻した。
デビー・スタブノー上院議員(民主党、ミシガン州選出)はライアン委員長の改革案について「高齢者の老後の安定を奪うメディケアをつぶしの思惑が見え隠れする」と批判する。
共和党の政治家が、こうした改革案を打ち出すことにためらいがちなのは明らかだ。共和党下院指導部はライアン委員長の財政再建案を全般的に支持しているが、メディケア改革に対する言及は避ける場合が多い。
共和党は、財政赤字を懸念する無党派層の支持を得る作戦
共和党は、こうした改革に乗り出すリスクを、計算のうえで冒している。共和・民主両党の勢力が拮抗するペンシルベニア州やフロリダ州、アイオワ州などの州では、歳出削減の取り組みが、無党派層からの支持につながる可能性がある。2008年の大統領選でオバマ大統領に勝利をもたらした層だ。
もちろん、この改革案は高齢者の反発を招く恐れもある。だが、有権者に占める高齢者の割合は16%。無党派層の割合は29%だ。世論調査によれば、無党派層は現在、雇用に次いで財政赤字を米国の最も深刻な問題ととらえている。
1998〜2002年に下院共和党の選挙活動を主導したトム・デービス元下院議員(共和党、バージニア州選出)は「ライアン委員長の改革案は、皆が予想しているような反発を招くことはないだろう。有権者にどう発信するかが重要が。最終的な選挙結果は無党派層の支持がどちらに向かうかにかかっている」と語る。
共和党指導部は、ライアン委員長の改革案の詳細にはあまり触れず、広範な歳出引き締めの姿勢を強調している。こうすることで、経済成長にとって重要な政府債務の削減と、膨張する社会保障費の抑制の道筋を有権者に示せると期待しているのかもしれない。
米下院のジョン・ベイナー議長(共和党、オハイオ州選出)の顧問を務める、共和党の世論調査コンサルタント、デービッド・ウィンストン氏は「これは単なる財政引き締め策ではない。レーガン政権時代への回帰であり、雇用創出につながる政策だ」と語る。
ライアン案では「大半の高齢者の医療費が増える」
ライアン委員長は65歳以上の高齢者を対象とするメディケア事業を実質的に民営化する計画を掲げている。同委員長の案では、2022年以降、対象者が保険を購入するための費用として、政府が約8000ドル(約68万円)を支出する。現在は政府が運営している事業を民間医療保険に置き換えることになる。同委員長の広報担当補佐を務めるコーナー・スウィーニー氏は「政府は、保険会社が提供する医療保険を承認する。高齢者は、政府の補助を受ける保険を“取引市場”で購入する」と語る。計画では、この高齢者向け保険市場に競争原理を導入する。政府補助の水準は所得に応じて変化させる。また、適用年齢を段階的に引き上げ、2033年までに対象を67歳以上とする計画だ。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)のジョナサン・グルーバー教授と米プリンストン大学のウーウェ・E・ラインハート教授は「新制度が導入されると、高齢者が保険を購入するための資金的余裕が現在よりも減る」と見る。ライアン委員長の改革案では、高齢者が購入できる保険の価格を消費者物価指数(CPI)と連動させる。CPIの上昇率は長い間、医療費の上昇よりも緩やかだ。
グルーバー教授らは、こう指摘する――支出を抑制する医療保険制度では、医療サービスの提供が制限されるかもしれない。裕福でない層は十分な医療サービスを受けられなく恐れがある。米議会予算局(CBO)も報告書で、「この改革案では、大半の高齢者は、現行制度と比べて医療費の負担が増えることになる」と分析している。
一方、ライアン委員長の案を支持する米保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の医療政策専門家ジョセフ・アントス氏は「この改革案の根本的な狙いは医療業界に対し、もはやメディケア予算でぼろ儲けすることはできないと通告することだ」と語る。
「我々は、必要な改革を断行しなければならない」
この改革案は政治的にリスクが高い。昨年の中間選挙で、共和党候補者は、オバマ政権が2010年に推進した医療費負担適正化法(医療保険制度改革法)を批判することで民主党現職議員を破った。同法がメディケアにかかわる支給の削減につながると、懸念を示したのだ。共和党は、高齢者の支持率において民主党と21ポイントの差を付けた。
ライアン委員長は4月5日、こうした政治的リスクがあることを認めた。だが「改革は待ったなしだ」と主張した。「我々は立ち上がり、必要な改革を断行しなければならないと判断した」(同委員長)。
共和党は、この改革案を現在55歳以下の層にだけ適用することで、ベビーブーム世代の反発を避けようと考えているのかもしれない。米ハーバード大学のロバート・ブレンドン教授(世論分析・医療政策論)は「高齢になった退職間近の有権者にとって、既存の社会保障が堅持されることは極めて重要だ」と指摘する。
オバマ政権が医療保険制度改革法案を作成していたころ、議会民主党への助言を行っていたグルーバー氏は「ライアン委員長の改革案は、オバマ政権の医療保険制度改革と似通った部分もある。高齢者が政府補助を受けた医療保険を購入できる政府統制市場の創設などいくつかの項目は、オバマ政権の医療費負担適正化法と同じだ」と主張する。
共和党議員はオバマ政権の医療保険制度改革に1人も賛成しなかった。そして、ライアン委員長の予算案はオバマ政権の医療保険改革を転覆させようとしている。まさしく大胆不敵な取り組みだ。
ライアン委員長が予算改革案を示したことで、焦点が、歳出項目の細かな問題から社会保障事業費の問題に移行している。また、この改革案は、共和党を攻撃するための政治的攻撃手段を民主党に与えることになる。
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