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http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920021&sid=am4krhhg5kDQ
4月14日(ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)のアジアに関する見通しは、高い評価を得ていない。日本の成長率の最新予想はその好例といえる。
IMFは今年の日本の成長率予想を1.4%と、従来の1.6%から下方修正した。修正幅は0.2ポイント。マグニチュード(M)9.0の地震、巨大な津波、原子力発電所の放射能漏れ事故による影響はほとんどないということだろうか。
3月11日の地震発生直後には、復興への取り組みが成長を支えるというシナリオも妥当な議論だった。しかしその後、停電などの影響でソニーやトヨタ自動車の工場は操業停止に追い込まれ、外国企業の幹部らは国外に脱出し、外国人観光客も激減した。
福島第一原子力発電所から放射性物質が何年にもわたって放出される可能性があることが分かったのもその後だ。原発事故の評価が国際原子力事象評価尺度(INES)で最も深刻な「レベル7」と、1986年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故と同水準に引き上げられたことも、既に脆弱(ぜいじゃく)な個人消費や設備投資に追い打ちをかけよう。
これは日本の「ニューノーマル」(新たな標準)であり、IMFは楽観的過ぎることが明白になるだろう。理由は3つある。
1つ目の理由は、国民の不安だ。ケインズ派経済学や日本の歴史に基づけば、震災は復興需要を生み出し、成長を押し上げるという見通しが生まれる。日本の国内総生産(GDP)の約8%を占める東北地方では、道路や橋、港湾、鉄道、建物の大がかりな再建が必要になる。ただここで見落とされているのは、東日本大震災がもたらしたトラウマ(心的外傷)だ。
トラウマ
日本経済の行方は東京が鍵を握っている。福島第一原発までの距離はわずか220キロだ。不透明感によって長年苦戦を強いられてきた業界は回復の道が既に閉ざされつつある。例えば不動産投資信託(REIT)は保有物件の売却を棚上げし、資金調達計画を凍結した。日本からの貨物船や航空機は、わずかな放射線量を理由に荷降ろしを拒否されている。
過去1カ月にわたり部品供給不足に苦しんだ製造業者は、日本国外に拠点を移す可能性がある。そうなれば今後数年は、海外諸国が日本の犠牲の上に設備投資の恩恵を受けることを意味する。
さらに余震や津波の再発、放射線汚染の忍び寄るような広がりを懸念し、日本の家計は貯蓄志向を一段と強めるかもしれない。将来への不安は節約や自粛をエスカレートさせている。高級品店や高級料理店では客の姿も少なく、日本人のお気に入りの娯楽であるショッピングも湿りがちだ。
脆弱な世界経済
2つ目の理由は、勢いに欠ける世界経済の成長だ。日本は最近、円安誘導の取り組みに成功したが、大方の見方ほどこれが輸出拡大につながることはないだろう。米国の成長がもたつき、欧州債務危機の影響がスペインに迫り、主要新興国の景気が鈍化し始めているためだ。これには日本最大の輸出相手国の中国も含まれる。
日本が95年の阪神大震災から急速に立ち直った理由の一つは、世界経済の堅調さだった。インターネットの出現で通信・情報革命が加速。米消費者の需要に支えられ、97−98年のアジア危機が日本に与えた悪影響は限定的だった。そして今日、ハイテクバブルははるか昔の出来事となり、米消費者も住宅バブル崩壊後の債務返済に追われている。
日本の政策の選択肢も底を突いている。短期金利は既にほぼゼロの水準にあり、公的債務は国内総生産(GDP)の2倍に膨らんでいる。信用格下げへの懸念から国会議員の間では復興資金調達のため、30年代のような国債の日銀引き受けの実施を求める声が上がっている。
リーダーシップ
外需の後押しがなければ、財政出動や金融緩和の効果は限られる。政策当局がインフレ抑制に取り組んでいる中国にも以前ほど頼れなくなった。中国の成長減速は、日本製品への需要縮小を伴う。
3つ目の理由はリーダーシップの弱さだ。大震災の直前までは違法献金スキャンダルや支持率低下を受け、菅直人首相の辞任観測が強まっていた。国民の期待を受けて昨年6月に誕生した菅政権は、デフレ終結、競争力強化、膨らみ続ける債務の削減、高齢化対策でほとんど成果を上げていない。
前途は一層困難になった。膨大な復興費用が必要になるため、長期的な成長に向けた構造改革の財源確保は難しくなる。原子力専門家の間で最悪のシナリオをめぐる意見が分かれる中、経済的な影響を予想することは次の地震を予知する試みと同じくらい難しい。
信頼感の欠如
福島原発事故は、チェルノブイリ事故と並んで歴史本に載ることになる。1億2700万人の国民と企業の経営陣らは固唾(かたず)をのんで事態の成り行きを見守っている。普段の生活が早期に戻ってくると思う人はいないだろう。
経済復興の成否は信頼感に大きく左右される。戦後最悪の危機が続く中、指導者に対する信頼感はほとんどない。こうした政治的停滞も、日本の「ニューノーマル」を把握する上で必要な要因の一つだ。
これはまた、日本がリセッション(景気後退)を回避できるかどうかを次に予想する際にIMFが検討すべき要因でもある。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
-- Editors: Charles W. Stevens, James Greiff
更新日時: 2011/04/14 14:42 JST
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