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次にスペインが救済される理由
2011.04.12(Tue) Financial Times
(2011年4月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
人口の3分の2が都市部に集中? 50年後の世界のために温暖化対策を - スペイン
皆が「スペインは安全」と言うけれど・・・(写真は首都マドリードの夕暮れ)〔AFPBB News〕
先週指摘したように、欧州の政治家には、危機の解決を永久に先送りするあらゆる動機がある。その間にも、複数のユーロ圏周縁国の債務が増加し続ける。
ポルトガルは6日、避けられない事態をようやく受け入れ、金融支援を要請した。欧州の当局者たちはすぐに、これが絶対に最後の救済になると宣言した。ブリュッセルの誰もが必死になって、スペインは安全だと主張した。
欧州中央銀行(ECB)は7日、主要政策金利を0.25%引き上げ、1.25%とすることを決めた。今回の利上げは事前にはっきり合図が出されていたが、利上げは今後も続くだろう。筆者はECBの主要政策金利が今年末までに2%に上昇し、2013年には3%になると考えている。
ECBの利上げがスペインの不動産市場を直撃
こうした軌道はECBのインフレ目標と一致しているが、特にスペインに悪影響を及ぼす。経済成長に対する直接的な影響は別として、金利上昇はスペインの不動産市場に打撃を与えるからだ。
スペインの住宅ローンはほぼすべてが1年物の欧州銀行間取引金利(EURIBOR)に基づいており、1年物金利は現在2%に迫り、上昇している。
スペインは危機以前に極度の不動産バブルを経験した。米国やアイルランドと異なり、価格はこれまで緩やかにしか下落していない。国際決済銀行(BIS)のデータによれば、スペインの実質住宅価格(1平方メートル当たりの価格を個人消費デフレーターで調整した数字)は、通貨同盟の当初から2007年6月のピークにかけて106%上昇した。
高値をつけた後は2010年末までに18%下落している。こうした計算は起点となる日に大きく左右されるが、スペインの実質価格は1990年代を通して比較的横ばい傾向が続いたため、これは比較的安全な起点と言えるだろう。
住宅価格はさらに40%下落
住宅価格の下落はどこで止まるだろうか? 筆者は、この上昇分がすべて帳消しになると見ている。ピークから大底までの下落幅は50%を超え、価格は現在の水準からさらに40%下がらなければならないだろう。
これは妥当な想定だろうか? 米国では、実質住宅価格は20世紀の大部分を通じて停滞した。供給を調整できる限り、例えば移民などを通じた需要の増加は、価格水準に影響しないはずだ。
スペイン、失業率20.33%に 先進国で最悪水準
スペインの昨年末時点の失業率は20%を超えている(マドリードの公共職業安定所前に並ぶ人々)〔AFPBB News〕
英国のように、供給に自然あるいは人為的な制約がある国では、状況が異なる。だが、供給条件の点では、スペインはむしろ米国とよく似ている。
筆者は、なぜ今のスペインの実質住宅価格が10年前より高くあるべきなのか、なぜ価格が上昇し続けるべきなのかを説明する合理的な理由をまだ1つも聞いたことがない。
スペインの住宅市場に関する最も重要な統計は、空き家の数だ。空き家は現在、およそ100万戸で、これは市場が今後数年間にわたって過剰供給に苦しめられることを意味している。これがさらなる価格下落の要因となる。
システムにかかるストレス、つまり、景気後退や高い失業率、弱い金融セクター、原油高、金利上昇といったものを考えると、住宅価格が大幅に下落し、水平トレンドラインを割り込む事態さえ予想されるかもしれない。
貯蓄銀行に大きな打撃
住宅価格の下落と住宅ローン返済額の増加は必ず、まだ高くない返済遅延率と差し押さえ件数を押し上げる。これはスペインのカハ(貯蓄銀行)のバランスシートに影響する。バランスシートはすべての不動産ローンと住宅ローンを原価で計上している。デフォルト(債務不履行)率が上昇するに従って、貯蓄銀行は損失をカバーするために資本を増強する必要が出てくる。
スペイン政府は必要な資本増強額が200億ユーロを下回るという疑わしい試算をしている。一方、その他の試算では、500億〜1000億ユーロという数字が挙げられている。
最も危険にさらされている資産は、建設・不動産セクターに対する融資で、その額は2010年末で4390億ユーロに上っている。スペインの銀行は、また別のリスクの源であるポルトガルに対しても1000億ユーロの債権を抱えている。
朗報は、最悪のシナリオの下でも、スペインにはまだ支払い能力があることだ。スペインの公的部門の対国内総生産(GDP)債務比率は、2010年末時点で62%だった。アーンスト・アンド・ヤングは最新のユーロ圏予測で、この債務比率が2015年までに72%に上昇すると予想している。それでもドイツ、フランス両国の水準を下回る比率だ。
しかし、スペインの民間部門の対GDP債務比率は170%に上っている。経常収支の赤字は2008年にGDP比10%でピークをつけたが、今も持続不能な高さで、2015年までGDP比3%を超す赤字が続くと予想されている。これはスペインがネット(純額ベース)の対外債務を積み上げていくことを意味している。
スペイン銀行によれば、同国のネットの対外資産負債残高(対外金融資産と対外債務の差)は2010年末時点でマイナス9260億ユーロだった。GDPの90%近い水準だ。
スペインは安全という声明は慢心
もしスペインの不動産市場に関する筆者の勘が正しければ、スペインの銀行セクターは現在試算されている以上の資本が必要となるだろう。それがいくらなのかは分からない。我々は予想モデルの範疇を大きく外れているからだ。
価格が急激に下がると、どんな資産査定(ストレステスト)でも捉え切れない大きな内部圧力が生じる。
多大な対外債務と金融セクターの脆弱性、そして資産価格がさらに下落する可能性という組み合わせは、ある時点で資金調達難が起きる確率を高める。このことはスペインが欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)に金融支援を求める次の国になることを意味している。
スペインは安全だという多くの公式声明について言えば、それは単に、欧州の危機を当初から特徴づけてきた慢心の度合いを測る指標だと筆者は思っている。
By Wolfgang Münchau
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